このページの要点
渡航しない学び方なので費用は抑えられますが、高校の単位や国が数える留学には原則つながりません。
- 「オンライン留学」には中身の違う3種類があります。語学学校のオンラインコース、海外の高校のオンライン授業、大学の正規単位(credit)が出る講座で、費用の桁も違います
- オンライン授業の受講のみで高校の単位認定を行うことはできません(文部科学省の事務連絡)。学校教育法施行規則第93条の単位認定は「外国の高等学校に留学すること」を前提にした制度です
- 学校現場でのオンライン活用は令和3年度の1,129校から令和5年度は785校へ減少し、対面の国際交流が回復しています(文部科学省の調査)
オンライン留学(バーチャル留学・自宅留学とも呼ばれます)は、海外に渡航せず、自宅から海外の学校や講師の授業を受ける学び方です。航空券・滞在費・保険・ビザが要らないので、費用と安全面のハードルは確実に下がります。一方で、渡航留学に付いてくる制度上の扱い——在籍校の単位認定、国の統計に数えられる「留学」、渡航を前提に設計された公的支援——は原則として付いてきません。この記事では、法令の条文と文部科学省の通知、そして公式価格を確認できたプログラムの実額を並べ、ご家庭が「何のために使うのか」を決められる形に整理します。
出典と前提(2026年11月4日時点)。 法令の条文はe-Gov法令検索(学校教育法施行規則)、単位認定の取扱いは文部科学省総合教育政策局国際教育課の事務連絡(令和3年4月19日)、高校生の留学・国際交流の数は文部科学省「令和5年度 高等学校等における国際交流等の状況について」(令和7年3月28日公表)、プログラムの費用は各提供機関の公式ページによります。「オンライン留学の費用相場」として広く出回っている金額は、当サイトが確認した上位記事のいずれも出典を示していませんでした。そのため本記事では相場表を作らず、公式ページで金額を確認できたものだけを実額で示します。制度・料金・募集要件はいずれも改定されます。申し込み前に必ず在籍校と提供機関の公式情報でご確認ください。
結論:オンライン留学は「留学の代わり」ではなく「別の道具」
POINT
費用と安全面のハードルは確実に下がります。ただし高校の単位認定・帰国生入試の在外要件・渡航前提の公的支援には原則つながりません。「渡航留学の代わり」ではなく「渡航の前に挟む準備」や「学校の外での学び」として使うのが、現実的な位置づけです。
最初に全体像を置きます。保護者の方が本当に知りたいのは「安い代わりに何が手に入らないのか」だと思います。オンライン留学で手に入るのは、英語を使う時間と、海外の授業の雰囲気、そして修了証(履修の記録)です。手に入らないのは、現地生活の経験と、渡航を前提に組み立てられている制度上の扱いです。この2つをきちんと分けると、判断は難しくありません。
渡航留学と比べて、オンライン留学で手に入るもの・手に入らないもの(2026年11月4日時点)
| 項目 | オンライン留学 | 根拠・補足 |
|---|---|---|
| 費用 | 渡航費・滞在費・保険が不要になる | 当サイトの整理では、渡航する短期留学(1〜2週間)のプログラム料金が15〜45万円、1年の高校留学はおよそ200〜600万円(高校留学の費用)。このうち渡航・滞在・保険にあたる部分が消えます |
| ビザ・パスポート | 不要 | 渡航しないため在留資格の話になりません。逆にいえば「学生として海外に滞在した記録」も残りません |
| 在籍校の単位認定(施行規則第93条) | 原則対象外 | オンライン授業の受講のみで単位認定を行うことはできません(文部科学省 事務連絡・令和3年4月19日)。第93条は「生徒が外国の高等学校に留学すること」の許可を前提にした制度です |
| 学校外の学修としての単位認定(第98条) | 列挙に挙がっていない | 第98条第1号の対象を定める文部科学省告示が挙げているのは、大学・高等専門学校・専修学校、大学の公開講座や公民館等の社会教育施設の講座です。海外の語学学校のオンライン講座は列挙に見当たりません(受け皿となる「その他これらに類する学修」に当たるかは校長の判断) |
| 大学の正規単位(credit) | 出るプログラムもある | 大学が自校の科目として開講しているオンライン講座なら、その大学の単位が出ます(後述のHarvard Summer Schoolの例)。日本の高校の単位になるかは別問題です |
| 国の統計上の「留学」 | 数えられない | 文部科学省の調査が数えているのは「高校生の外国への研修旅行(3か月未満)」「高校生の留学(3か月以上)」で、いずれも外国への渡航です |
| 渡航を前提にした公的支援 | 設計が合わない | トビタテ!留学JAPAN(高校生等)のFAQは「留学期間終了後、10日以内に帰国する必要があります」としており、渡航を前提に組まれています |
| 現地生活・ホームステイの経験 | 得られない | 生活の中で言葉を使う経験、時間の使い方、家庭文化の違いはオンラインでは代替できません |
この表の読み方はひとつだけです。オンライン留学は「安い留学」ではなく「留学とは別の商品」だということです。だから比べる相手は渡航留学ではなく、英会話スクールや塾、あるいは国内留学のような学校外の学びになります。この前提で見ると、使いどころははっきりします。
オンライン留学とは何か——オンライン英会話との違い
POINT
オンライン留学は「海外の学校が開いているコースを、渡航せずに受ける」仕組みです。オンライン英会話との最大の違いは、カリキュラムと期間が決まっていて、クラスメイトがいることです。逆にいえば、それ以外の違いは提供機関ごとにばらばらです。
「オンライン留学」は法令や行政が定めた言葉ではなく、提供する側が付けた商品名です。バーチャル留学・自宅留学・オンライン語学研修など呼び方もまちまちで、中身を決める共通ルールはありません。そのため、資料に書かれた言葉ではなく「何をどれだけ受けるのか」を自分で確かめる必要があります。
オンライン留学とオンライン英会話の典型的な違い(提供機関により異なります)
| 比べる点 | オンライン留学と呼ばれるもの | オンライン英会話 |
|---|---|---|
| 形式 | グループ授業が中心(マンツーマンの枠もある) | マンツーマンが中心 |
| 期間 | 1週間・4週間などコース単位で決まっている | 月単位の会員制で、いつ始めてもよい |
| カリキュラム | レベル分けされた決まった進度で進む | 教材を自分で選び、回ごとに完結しやすい |
| 授業の相手 | 世界各国から集まった受講生と一緒に受ける | 講師と1対1 |
| 終わったとき | 修了証(履修の記録)が出る場合がある | 通常は出ない |
| 費用の形 | コース料金の前払い(登録料が別にかかることがある) | 月額の支払い |
保護者の方に押さえていただきたいのは、修了証は「このコースを受けた」という履修の記録であって、学校の単位でも、資格でもないという点です。入試や就職でどう評価されるかを示す公的な資料は、当サイトでは確認できていません。期待値はここで正確に置いておくほうが、あとで落胆しません。
「オンライン留学」は3種類ある——同じ言葉で費用の桁が違う
POINT
ひとつの言葉の中に、語学学校のコース・海外の高校の授業・大学の正規単位が出る講座が混ざっています。この3つは目的も金額も違うので、まず「わが家が探しているのはどれか」を決めてください。
ここが、オンライン留学でいちばん誤解が起きるところです。検索して出てくる「1か月◯万円」という金額は、ほぼすべて①の語学コースの話です。③の大学の正規単位が出る講座は、同じ「オンライン」でも桁が変わります。
「オンライン留学」の3つの層(2026年11月4日時点・公式ページで確認できた金額のみ記載)
| 層 | 中身 | 得られるもの | 費用(当サイトが公式で確認できたもの) |
|---|---|---|---|
| ①語学学校のオンラインコース | 海外の語学学校が、対面コースと同じ教材をオンラインで提供する。レベル分けされたグループ授業が中心 | 英語を使う時間、修了証(履修の記録) | 提供機関ごとに大きく異なります。広く引用されている相場額は出典が確認できないため、本記事では金額を示しません。各社の公式ページで「登録料・授業料・教材費・時間帯指定の追加料金」を分けて確認してください |
| ②海外の高校のオンライン授業 | 現地の高校が、その国の正規の教育方法としてメディアを利用して行う授業 | 現地校の授業そのもの。ただし日本の高校の単位になるかは別問題 | 学校ごと。渡航とセットでないと施行規則第93条の単位認定には乗りません(次章) |
| ③大学が開講するオンライン講座(正規単位あり) | 大学が自校の科目として開き、高校生の受講を認めているもの。評価が付き、大学の単位(credit)が出る | 大学の正規単位と成績。海外大学への出願材料になりうる | Harvard Summer SchoolのSecondary School Programは、オンラインで4週間が4 credit hoursで$4,180、7週間が4 credit hoursで$4,180・8 credit hoursで$8,160、別途出願料$75(同校公式・2027年セッション) |
③の例として挙げたHarvard Summer SchoolのSecondary School Programは、公式ページによると対象が「2027年・2028年・2029年に高校を卒業して大学に進む人」で、年齢は「2027年6月13日時点で16歳以上、2027年7月31日より前に19歳にならないこと」とされています。出願締切は早期が2027年1月13日、通常が2月10日、最終が3月31日の3段階です。4週間のオンラインは開講科目が限られるとも書かれています。なお「Harvard Summer Schoolが発行するI-20で渡米する国際学生は、オンラインの授業を受けられない」との注記があります。日本から受ける場合は渡航しないため、この注記には当たりません。
避けたい
「オンライン留学は1か月5万円くらい」という相場観だけで予算を立て、資料請求してから金額の違いに驚く
こうすればOK
先に①②③のどれを探しているのかを決め、そのうえで候補を2〜3件に絞って公式ページの金額を並べる。③を狙うなら年単位の予算と出願締切から逆算する
避けたい
「海外の学校の授業が受けられる」という説明だけで、日本の高校の単位になると考える
こうすればOK
単位の話は在籍校の教務・進路担当にしか答えられないと理解し、申し込む前に「この受講を単位認定の対象にできるか」を書面で確認する
オンライン受講は「留学」として単位認定されるのか
POINT
文部科学省は、オンライン授業の受講だけをもって単位認定を行うことはできないと明記しています。施行規則第93条の単位認定は「外国の高等学校に留学すること」が前提で、対面授業を相当の時間数受けていることも求められます。
条文は「外国の高等学校に留学すること」を前提にしている
ここが本記事の核心で、当サイトが確認した上位の解説記事はどれも触れていませんでした。条文から順に見ていきます。高校留学で単位が認定される根拠は学校教育法施行規則第93条です。第1項は「校長は、教育上有益と認めるときは、生徒が外国の高等学校に留学することを許可することができる」、第2項は「校長は、前項の規定により留学することを許可された生徒について、外国の高等学校における履修を高等学校における履修とみなし、三十六単位を超えない範囲で単位の修得を認定することができる」と定めています。つまり認定の対象は、許可を受けて外国の高等学校で履修した学修です。
文部科学省は「オンライン受講のみでは認定できない」と整理している
では、その「外国の高等学校」の授業がオンラインだったらどうなるのか。文部科学省総合教育政策局国際教育課は令和3年4月19日の事務連絡で、こう整理しています。「学校教育法施行規則第93条に規定する海外留学による単位認定には、外国の高等学校において、メディアを利用して行う授業を、当該外国における正規の教育方法として実施される場合についても、その対象に含まれます」。ただし認定にあたっては「同時かつ双方向に行うことや対面授業を相当の時間数行うことといった国内制度の趣旨及び留意事項を踏まえる」ことが必要だとしています。ここでいう相当の時間数は、同じ事務連絡の注記で「50分を1単位時間とした場合、履修する各教科・科目等ごとに年間2単位時間以上(各教科・科目等の単位数を1単位と定めている場合には年間1単位時間以上)」と示されています。
そして添付されたQ&Aの答えが、保護者の疑問にそのまま答えています。渡航が難しい間に留学先の高校からオンラインで授業を受けた場合に単位認定できるかという問いに対し、「留学先の高等学校において、対面授業を相当の時間数行うことができない場合、メディアを利用して行われる授業の受講のみをもって単位認定を行うことはできません」と明言しています。一方で「渡航の見通しが立っている場合においては、渡航までの期間、所属する高等学校において、留学先の高等学校からメディアを利用して行われる授業を受け、留学に備えることは考えられます」とも書かれています。
オンラインでの学修と高校の単位認定(根拠条文・通知ごとの整理)
| どんな受け方か | 単位認定の枠組み | 結論 |
|---|---|---|
| 渡航して外国の高等学校に留学し、その国の正規の教育方法としてメディア授業も受ける | 施行規則第93条第2項(36単位まで) | 対象に含まれる。ただし同時かつ双方向であること、対面授業を相当の時間数受けていること、自校の教育活動と同等の教育効果があると校長が認めることが前提 |
| 渡航せず、留学先の高校のオンライン授業だけを受ける | 施行規則第93条第2項 | 受講のみをもって認定することはできない(文部科学省 事務連絡のQ&A) |
| 渡航前の準備として、留学先の高校のオンライン授業を受ける | 制度上の認定ではなく準備 | 「留学に備えることは考えられます」とされています。その場合は留学先校と十分に協議・連携することが必要 |
| 海外の語学学校のオンラインコースを受ける | 施行規則第98条(学校外における学修) | 第98条第1号の対象を定める告示が挙げているのは大学・高等専門学校・専修学校、大学の公開講座・公民館等の社会教育施設の講座で、語学学校のオンライン講座は列挙に見当たりません |
| 海外の大学が開くオンライン講座を受ける | 施行規則第98条第1号/告示(第98条第1号関係)の四 | 告示は「大学において開設する公開講座における学修……その他これらに類する学修」を挙げ、かつ「高等学校教育に相当する水準を有すると校長が認めたものに限る」としています。該当するかは在籍校の校長の判断です |
なお、第97条(他の高等学校での履修)と第98条(学校外における学修)で加えられる単位数は、第99条により合計36単位が上限と定められています。第93条の36単位とは別の枠です。混同しやすいところなので、単位認定の仕組みを通して理解したい場合は高校留学で留年しない条件を、認定を受けるための実務の流れは単位認定を確実に受ける手続きをご覧ください。
在籍校に確認するときの言い方。 「オンライン留学は単位になりますか」と聞くと、制度の枠組みが違うため話がかみ合いません。「この講座は施行規則第98条の学校外における学修として単位認定の対象になりますか。ならない場合、出席や評定にどう影響しますか」と聞くのが正確です。認定するかどうかは校長の判断で、学校ごとの内規によります。
数字で見る今のオンライン留学——学校現場では減っている
POINT
コロナ禍で広がったオンラインの国際交流は、ピークを過ぎています。学校でオンラインを活用した国際交流は令和3年度の1,129校から令和5年度は785校へ減り、対面の交流が回復しました。政府目標も渡航する留学を前提に置いています。
オンライン留学を紹介する記事の多くは「コロナ禍で広まった」と書いたところで時間が止まっています。その後どうなったのかは、国の調査で確かめられます。文部科学省は昭和61年度から隔年で「高等学校等における国際交流等の状況」を調査しており、令和7年3月28日に令和5年度分(18回目)が公表されました。調査対象は高等学校、中等教育学校の後期課程、特別支援学校の高等部、専修学校の高等課程です(公表資料の注記によれば令和5年度調査では専修学校高等課程も対象とされました。年度をまたいで比べるときの前提として押さえておいてください)。
文部科学省「令和5年度 高等学校等における国際交流等の状況について」(令和7年3月28日公表)。対面とオンラインは延べ数で、両方を実施した学校が重複して数えられています(足しても実施校数にはなりません)
| 項目 | 令和5年度 | 令和3年度 | 平成29年度 |
|---|---|---|---|
| 高校生の外国への研修旅行(3か月未満) | 31,711人 | 1,217人 | 42,793人 |
| 高校生の留学(3か月以上) | 3,174人 | 1,901人 | 4,076人 |
| 国際交流活動を実施した学校(かっこ内は各年度の回答総数に対する割合) | 1,697校(30.2%) | 1,373校(24.8%) | —(調査なし) |
| うち対面で実施した学校 | 1,241校(22.0%) | —(当サイトが確認した公表資料に記載なし) | —(調査なし) |
| うちオンラインを活用した学校 | 785校(14.0%) | 1,129校(20.4%) | —(調査なし) |
| 海外の高等教育機関等への進学者 | 1,635人 | 1,424人 | —(調査なし) |
公表資料は「高等学校等における国際交流活動については、前回調査時(令和3年度)からオンラインを活用した校数が減少したが、全体としての実施校数は増えた」と述べています。つまり学校現場では、渡航できなかった時期の代替手段としてのオンラインは役割を終えつつあり、対面に戻っています。3か月以上の留学は3,174人で、平成29年度の4,076人には届いていません。また同資料は、政府目標である第4期教育振興基本計画の数値目標を「2033年に日本人高校生の海外留学生12万人」と記しています。この目標が数えるのも、渡航する留学です。
この数字は「オンライン留学には価値がない」という意味ではありません。読み取るべきは、オンラインは学校の教育課程の中では主役にならなかったということです。だからご家庭でオンラインを使うなら、学校の制度に乗せることを期待せず、「家庭が自分の判断で選ぶ学校外の学び」として位置づけるのが実際に合っています。
渡航留学の代わりになるのか——前に挟む使い方なら噛み合う
POINT
「代わり」にはなりませんが、「前段」としては制度の側も否定していません。文部科学省のQ&Aも、渡航の見通しが立っている場合に渡航までの期間オンラインで留学に備えることは「考えられます」としています。
渡航留学で起きる失敗のうち、お金がかかるものの多くは出発前に原因があります。英語が足りず授業が分からない、現地校の進度や課題の出し方に慣れない、ホストファミリーとのやりとりが怖くて黙ってしまう——こうした「初月のつまずき」は、短期留学は意味がないのかでも扱っているとおり、期間が短い留学ほど致命的になります。オンラインで先に済ませられるのは、まさにこの部分です。
- 1渡航の半年〜3か月前:オンラインのグループ授業で「複数人の中で発言する」経験を作る。1対1の英会話では練習にならない部分です
- 2渡航の3か月前:留学先が決まっていれば、その学校がオンライン授業を提供していないか確認する。提供している場合は、在籍校と留学先校の両方に「渡航前の準備として受ける」ことを伝えて連携してもらう
- 3渡航の1〜2か月前:英語の授業形式(ディスカッション、プレゼン、課題提出)に触れておく。現地での成績は授業外の提出物で決まることが多いためです
- 4帰国後:現地で作った関係を切らさないために、オンラインの枠を短期間だけ使う。費用が小さいので継続のハードルが低いのが利点です
逆に、渡航の予定がまったくない段階でオンラインに大きな金額を投じるのは、費用対効果が見えにくくなります。その場合は、オンラインにこだわらず国内留学や高校生の短期留学と並べて、同じ予算で何が得られるかを比べるほうが判断しやすいはずです。お子さんが海外大学も視野に入れているなら、英語の積み上げ方は海外大学進学ガイドの準備ロードマップと合わせて考えてください。
申し込む前に確認すること——前払いと提供停止のリスク
POINT
オンライン留学はコース料金の前払いが一般的です。提供する学校が事業を停止すると、受講する権利そのものが消えます。実際に、大手の語学学校が破産を申請して全クラスを即日中止した例があります。
これは想像上のリスクではありません。カナダの大手語学学校ILAC(International Language Academy of Canada)は、自社サイトで「On Friday, September 18th, ILAC filed for bankruptcy protection」「All classes and programming have been cancelled, effective immediately.(すべてのクラスとプログラムを即時中止した)」と告知しました。2026年9月18日(金)の出来事で、The Globe and Mail は2026年9月20日付で、30年以上カナダで運営してきた学校が突然閉鎖し多数の学生が影響を受けたと報じています。本記事を公開した時点から2か月足らず前のことです。
注意していただきたいのは、当サイトが確認した上位の解説記事のうち複数が、この学校のオンラインプログラムを今も「おすすめ」として掲載していることです。そのうち1本は2025年4月付で、書かれた時点では正しい情報でした。問題は、破産から1か月以上たっても記事が更新されていないことです。オンライン留学の紹介記事は一度書かれると更新されないまま残りやすく、提供機関のその後まで追いかけていません。だからこそ、記事ではなく提供機関の公式サイトを自分で開いて確かめる必要があります。
避けたい
比較記事の「おすすめプログラム」から選び、紹介ページのリンクからそのまま申し込む
こうすればOK
提供機関の公式サイトを直接開き、コースが現在も募集中か、運営主体の名前と所在国、問い合わせ先を確認してから申し込む
避けたい
数か月分をまとめて前払いして割引を受ける
こうすればOK
初回は最短期間で試す。長期の前払いをする場合は、中止・延期になったときの扱い(返金・振替の条件)が書面にあるかを先に確認する
申し込む前に確認すること
ひとつでも空欄があるうちは、支払いを止めてください。
チェックはこの画面の中だけの表示で、保存も送信もされません。
メリットとデメリットを保護者の4つの関心で整理する
POINT
費用・安全・進路・手続きの4つに分けると、オンライン留学の損得は整理できます。強いのは費用と安全、弱いのは進路への接続です。
メリットとデメリットを長い箇条書きで並べると、どれが自分の家庭にとって重いのか分からなくなります。保護者の方が実際に気にしている4点で並べ替えます。
保護者の4つの関心から見たオンライン留学
| 関心 | 良い点 | 弱い点・注意点 |
|---|---|---|
| 費用 | 渡航費・滞在費・海外旅行保険・ビザ関連費がかからない。短い期間から試せるので、合わなかったときの損失が小さい | 前払いが一般的で、提供停止のリスクを家庭が負う。登録料や時間帯指定の追加料金が別にかかることがある |
| 安全 | 自宅から受けるため、治安・交通・体調の不安がほぼない。保護者が様子を見られる | 画面の前での学習になるため、生活リズムと目の負担の管理が必要。深夜・早朝の時間帯になる場合は学校生活と衝突する |
| 進路(帰国後・その先) | 英語を使う時間が確保でき、渡航留学や海外大学出願の前段として積み上げられる | 在籍校の単位認定・帰国生入試の在外要件・国の留学統計には原則つながらない。修了証が入試でどう評価されるかを示す公的資料は確認できていない |
| 手続き | パスポート・ビザ・予防接種・渡航手配が不要で、申し込みから受講までが短い | 手続きが軽い分、在籍校との事前相談が省かれやすい。出席や評定への影響は学校に確認しないと分からない |
進路への接続が弱いことは、使い方次第で補えます。1年間の留学が帰国生入試の要件に届かないという話と構造は同じで、「どの入試で使うのか」を先に決めておけば無駄になりません。1年留学は帰国子女枠の対象になるかで扱っているとおり、要件は大学ごとに違うため、出願要件の文言を先に読むのが最短です。
向いているご家庭・向かないご家庭
POINT
目的が「英語を使う時間を増やす」「渡航に備える」「大学の単位を取る」のいずれかに定まっていれば向いています。「留学の実績をつくる」ことが目的だと、期待と結果がずれます。
オンライン留学が噛み合うかどうかの目安
| ご家庭の状況 | 向き不向き | 理由と次の一手 |
|---|---|---|
| 渡航留学を計画していて、出発までに英語と授業形式に慣れさせたい | 向いている | 文部科学省のQ&Aも渡航前の準備としてオンラインを受けることは考えられるとしています。留学先校と在籍校に伝えて連携してもらってください |
| 費用や家庭の事情で渡航は難しいが、英語を使う環境を作りたい | 向いている | ただし比べる相手は渡航留学ではありません。国内留学や英語合宿と同じ予算で並べて選んでください |
| 海外大学進学を考えていて、出願材料を増やしたい | 条件つきで向いている | ①の語学コースではなく、③の大学の正規単位が出る講座を探す必要があります。年齢要件と出願締切から逆算してください |
| 在籍校の単位にして、留年を避けたい | 向かない | オンライン受講のみでは第93条の単位認定はできません。目的が単位なら高校留学で留年しない条件を読み、渡航する留学の設計に戻してください |
| 「留学経験」として履歴に書けるものが欲しい | 向かない | 修了証は履修の記録です。入試での評価を示す公的資料は確認できていません。評価されるのは何をどう使ったかなので、総合型選抜で留学経験を活かす方法の考え方で設計してください |
| お子さんが画面越しの発言をかなり苦手にしている | 慎重に | グループ授業では発言機会を自分で取る必要があります。最短期間で試してから延長を決めてください |
まとめ:何のために使うのかを先に決める
オンライン留学は、費用と安全のハードルを下げる代わりに、渡航留学に付いてくる制度上の扱いを手放す選択です。文部科学省は、オンライン授業の受講のみで高校の単位認定を行うことはできないと明記しており、国の調査が数える「留学」も外国への渡航を指しています。学校現場でのオンライン活用も令和3年度の1,129校から令和5年度は785校へ減りました。
それでも、渡航の前に授業形式と英語に慣れる、帰国後に関係を切らさない、大学の正規単位を取る——という目的が決まっていれば、オンラインは噛み合う道具です。やることは3つです。①語学コース・②海外の高校の授業・③大学の正規単位のどの層を探しているのかを決める ②提供機関の公式サイトで募集状況と総額と中止時の扱いを確認する ③在籍校に出席・評定・単位の扱いを確認する。この順番で進めれば、費用の桁を間違えることも、単位になると思い込むこともありません。渡航する留学との費用差を具体的に見たい場合は高校留学の費用を、留学そのものの全体像は高校留学の完全ガイドをご覧ください。
Q.オンライン留学は高校の単位になりますか?
オンライン授業の受講だけでは単位認定はできません。文部科学省総合教育政策局国際教育課の事務連絡(令和3年4月19日)の添付Q&Aは「留学先の高等学校において、対面授業を相当の時間数行うことができない場合、メディアを利用して行われる授業の受講のみをもって単位認定を行うことはできません」と明記しています。学校教育法施行規則第93条は「生徒が外国の高等学校に留学すること」の許可を前提にした制度で、オンライン授業が対象に含まれるのは、渡航して留学した生徒が、その国の正規の教育方法としてメディア授業を受ける場合です。学校外の学修として認める第98条についても、文部科学省告示の列挙は大学・高等専門学校・専修学校、大学の公開講座や公民館等の社会教育施設の講座で、語学学校のオンライン講座は見当たりません。単位の仕組み全体は高校留学で留年しない条件をご覧ください。
Q.オンライン留学の費用はいくらくらいですか?
一概に言えません。「オンライン留学」には語学学校のオンラインコース、海外の高校のオンライン授業、大学の正規単位が出る講座が混ざっており、費用の桁が違います。当サイトが上位の解説記事を確認したところ、よく見かける相場額はいずれも出典が示されていなかったため、本記事では相場表を作っていません。公式ページで金額を確認できた例として、Harvard Summer SchoolのSecondary School Programのオンラインは4週間が4 credit hoursで$4,180、7週間が8 credit hoursで$8,160、別途出願料$75です(同校公式・2027年セッション)。語学コースを検討する場合は、登録料・授業料・教材費・時間帯指定の追加料金に分けて、各社の公式ページで総額を出してください。
Q.オンライン留学とオンライン英会話は何が違うのですか?
一般的な違いは、オンライン留学がコース単位(1週間・4週間など)で期間とカリキュラムが決まっていて、世界各国の受講生と一緒にグループで受ける点、オンライン英会話が月額の会員制でマンツーマン中心という点です。ただし「オンライン留学」は法令や行政が定めた言葉ではなく提供機関が付けた商品名なので、中身を決める共通ルールはありません。資料の言葉ではなく「週に何時間、何人のクラスで、どんな教材を使うのか」を確認してください。グループで発言する練習がしたいなら前者、特定の技能を1対1で詰めたいなら後者が合います。
Q.渡航留学の代わりにオンラインで済ませても大丈夫でしょうか?
代わりにはなりません。現地生活の経験、在籍校の単位認定、国の統計に数えられる留学、渡航を前提に組まれた公的支援のいずれも、オンラインでは置き換えられません。一方で、渡航前の準備としては制度の側も否定していません。文部科学省のQ&Aは「渡航の見通しが立っている場合においては、渡航までの期間、所属する高等学校において、留学先の高等学校からメディアを利用して行われる授業を受け、留学に備えることは考えられます」としています。その場合は留学先の高校と在籍校の双方に伝えて連携してもらってください。
Q.オンライン留学にトビタテなどの奨学金は使えますか?
渡航を前提に設計されているため、噛み合わないと考えてください。トビタテ!留学JAPAN(高校生等対象)のFAQは「留学期間終了後、10日以内に帰国する必要があります」としています。大学生等向けのJASSO海外留学支援制度(協定派遣)は「8日以上1年以内の期間、派遣するプログラム」を対象とし、派遣校が配布する案内には「派遣先国・地域に不在の期間があった月、在籍確認が取れない月は奨学金を支給できません」と書かれています。なお、オンラインを明示的に対象外とする文言を公式サイトで確認できたわけではないため、検討中の制度があれば募集要項で直接ご確認ください。給付型奨学金の全体像は海外大学の給付型奨学金で一覧にしています。
Q.修了証(サーティフィケート)は入試で評価されますか?
修了証は「このコースを履修した」という記録で、学校の単位でも資格でもありません。入試や就職でどう評価されるかを示す公的な資料は、当サイトでは確認できていません。総合型選抜などで評価されるのは、受講して何を考え、その後どう動いたかという中身です。受けること自体を実績として扱うのではなく、総合型選抜で留学経験を活かす方法の組み立て方に沿って、志望理由とつなげて使ってください。
Q.申し込んだあとにプログラムが中止になることはありますか?
あります。カナダの大手語学学校ILACは、自社サイトで「On Friday, September 18th, ILAC filed for bankruptcy protection」「All classes and programming have been cancelled, effective immediately.」と告知しました(2026年9月18日。The Globe and Mail が2026年9月20日付で報じています)。オンライン留学はコース料金の前払いが一般的なので、提供機関が止まると受講する権利が消えます。初回は最短期間で試し、長期の前払いをする場合は中止・延期時の返金や振替の条件が書面にあるかを先に確認してください。比較記事の「おすすめ」は更新が止まっていることがあるため、必ず提供機関の公式サイトで現在の募集状況を確かめてください。









