このページの要点
J-1ビザの高校交換留学は、米国の連邦規則で期間も参加回数も上限が決まっています。
- 期間は1〜2学期まで。「気に入ったので延長して卒業する」は制度の外です(22 CFR 62.25(c)(2))
- 同じ形での再参加はできない。過去にF-1かJ-1で米国の学校に通ったお子さんも対象外です(同(e)(3))
- 「公立高校のみ」は誤り。規則は認定された公立・私立の中等学校と、認定ボーディングスクールを認めています(同(a))
アメリカの高校交換留学で使うJ-1ビザは、米国務省が所管する連邦規則 22 CFR 62.25(Secondary school students)が中身を定めています。参加資格は「母国で初等・中等教育を11年を超えて修了していない」または「プログラム開始時点で15歳以上18歳6か月以下」——条文はこの2つを or で結んでいますが、国務省の案内ページは2つを並列に並べており読み方が割れているため、両方を満たす前提で準備するのが安全です。期間は「1学期以上2学期以下」、そして同じ区分での再参加は認められていません。過去にF-1またはJ-1の資格で米国の学校に通ったことがあるお子さんも、この条文では対象外です。一方で「公立高校にしか通えない」「英語はELTiSで何点以上」といった説明は条文には書かれておらず、団体ごとの運用です。法令と運用の線引きを押さえると、団体選びの質問が変わります。アメリカの高校留学の全体像とあわせてご覧ください。
この記事が参照した情報:すべて2026年11月3日に、米国政府の公式情報源で確認した内容です。主な出典は、連邦規則集(eCFR)の 22 CFR 62.25(Secondary school students)・22 CFR 62.10(Program administration)・22 CFR 62.14(Insurance)、8 CFR 214.13(SEVIS fee)・8 CFR 214.2(j)(Exchange visitors)・8 CFR 214.2(f)(Students)、および米国務省 BridgeUSA(j1visa.state.gov)の「Secondary School Student」「Eligibility and Fees」「How to Apply」と、同省が公表する交換訪問者の参加者数データです。日本語訳は当サイトによる要約で、原文の逐語訳ではありません。制度・金額・運用は改定されます。申請の前に必ず、米国務省・米国大使館/領事館の最新情報と、お申し込みになるスポンサー団体の案内でご確認ください。
結論:J-1ビザの高校交換留学で、先に決まっていること
POINT
団体を比べる前に、連邦規則がすでに決めてしまっている枠を知っておきます。ここに引っかかると、どの団体を選んでも結果は変わりません。
アメリカの高校交換留学は、国務省が指定したスポンサー団体(designated sponsor)を通してのみ参加できます。団体ごとに費用も選考もサポート体制も違いますが、その上に共通の枠として連邦規則がかぶさっています。まず、その枠を一覧にします。各項目の詳しい根拠は、以下の章で順に見ていきます。
J-1ビザ(中等学校交換留学)で連邦規則が定めていること
| 項目 | 規則が決めていること | 根拠 |
|---|---|---|
| 年齢・就学年数 | プログラム開始時点で15歳以上18歳6か月以下、または母国で初等・中等教育を11年を超えて修了していないこと(条文はこの2つを or で結ぶ。国務省の案内ページは並列に並べており、読み方が割れている=後述) | 22 CFR 62.25(e)(1) |
| 再参加 | 過去に米国での学年・学期の交換プログラムに参加したこと、またはF-1・J-1の資格で米国の学校に通ったことがある場合は不可 | 同(e)(3) |
| 期間 | 1学期以上、2学期以下(学期制以外はこれに相当する期間) | 同(c)(2) |
| 学校 | 認定された公立または私立の中等学校。滞在はホストファミリーまたは認定ボーディングスクール | 同(a) |
| 入学の確保 | スポンサーが事前に学校から書面の受け入れ承諾を取り、授業料の支払いまたは免除も書面で取り決める | 同(f)(1) |
| 入国できる時期 | DS-2019に記載された開始日の30日前から。終了後は30日以内に出国(または合法的な資格の維持を図る) | 8 CFR 214.2(j)(1)(ii)(C) |
| 就労 | 常勤・パートタイムの就労は不可。ベビーシッターや庭仕事のような散発的なものは可 | 22 CFR 62.25(i) |
| 英語力 | 客観的な方法で測ること。試験・学校の署名入り書面・記録された面接の3通りを規則が認める | 22 CFR 62.10(a)(2) |
| SEVIS費用 | J-1は220ドル。ビザ発給前に支払う | 8 CFR 214.13(a)(2)・(d)(1) |
この表にないもの——プログラム費用、ELTiSなどの試験の合格点、出願の締切、州や地域の希望が出せるか——は、すべてスポンサー団体の運用です。団体に質問するときは、「規則で決まっているのか、御団体の方針なのか」を分けて聞くと、話が早く進みます。交換留学の団体の比べ方もあわせてご覧ください。
最初の関門は年齢ではなく「過去の米国就学歴」
POINT
22 CFR 62.25(e)(3) は、過去に米国での交換プログラムに参加した子と、F-1・J-1の資格で米国の学校に通ったことがある子を対象外にしています。駐在に帯同していた、中学で1年通った——そのどれもがここに当たります。
参加資格の条文は、22 CFR 62.25(e) にまとまっています。スポンサー団体が確認しなければならないのは、次の3点です。
- 就学年数または年齢:母国で初等・中等教育を11年を超えて修了していないこと、またはプログラム開始時点で15歳以上18歳6か月以下であること((e)(1))
- 適性:成熟度(maturity)、人格(good character)、学業適性(scholastic aptitude)を示すこと((e)(2))
- 過去の米国就学歴がないこと:米国での学年・学期の中等学校交換プログラムに参加したことがなく、かつF-1またはJ-1の資格で米国の学校に通ったことがないこと((e)(3))
検討の初期に効いてくるのは3つ目です。お子さんが保護者の駐在に帯同して米国の学校に通っていた場合、その在留資格がF-1またはJ-1だったかどうかで扱いが変わります。この条文が挙げているのはF-1とJ-1の2つで、駐在員の帯同家族が取ることの多いL-2やH-4といった資格は文面に出てきません。ただし、どの資格で在籍していたかはご家庭の記録で確認する必要があり、該当するかどうかの最終判断はスポンサー団体が行います。心当たりがあるなら、費用や行き先の話に入る前に、当時の在留資格を伝えて適格性を確認してください。ここで外れると、どの団体を選んでも結果は同じです。
1つ目の条件には、条文と国務省の案内ページで書き方が違うという注意点があります。22 CFR 62.25(e)(1) は「11年を超えて修了していない」と「15歳以上18歳6か月以下」を or で結んでいますが、国務省 BridgeUSA のプログラム紹介ページは、この2つを並列の箇条書きとして並べています。どちらの読み方が優先されるのかは、公開されている資料からは読み切れません。原級留置や休学があって片方から外れそうなご家庭は、両方を満たす前提で準備を進めたうえで、早い段階でスポンサー団体に個別確認するのが安全です(学年と年齢の数え方は不登校の高校生の留学と単位認定でも扱っています)。
避けたい
団体のパンフレットで「15〜18歳」とだけ確認し、年齢が範囲内だから大丈夫だと判断する
こうすればOK
年齢・就学年数・過去の米国就学歴の3点をセットで確認する。特に米国の学校に通った経験は、年齢とは無関係に参加資格そのものを左右します
避けたい
「18歳6か月」を出願時点の年齢で数える
こうすればOK
条文が基準にしているのは「プログラム開始時点(as of the program start date)」です。出願から渡航まで半年以上空くことを前提に、開始日で逆算します
期間は1〜2学期。入国は30日前から、出国は終了後30日以内
POINT
22 CFR 62.25(c)(2) は、受け入れ期間を「1学期以上2学期以下」と定めています。延長して卒業する道は、この区分には用意されていません。
条文は「Allow entry of exchange students for not less than one academic semester…and not more than two academic semesters…duration」——1学期を下回らず、2学期を超えない期間、と書いています。国務省が公表している区分比較表(2016年6月版)でも、中等学校交換留学の滞在期間は同じ記述で、「Repeat Participation(再参加)」の欄は、他の多くの区分が「Yes」であるのに対して「No」とされています。「現地で気に入ったら延長して卒業まで」という進み方は、J-1の中等学校交換留学の枠組みの外にあります。アメリカの高校を卒業する形を考えるなら、F-1(私費留学)という別のルートになります——アメリカ高校留学ガイドで両者を比べています。
もうひとつ、保護者が見落としやすいのが前後の日付の上限です。入国・出国の期限は連邦規則の別の場所、8 CFR 214.2(j)(1)(ii)(C) に書かれています。
J-1の高校交換留学|時期の上限(8 CFR 214.2(j)(1)(ii)・22 CFR 62.25(c))
| 場面 | 決まっていること | 家庭側で起きること |
|---|---|---|
| 入国できる最も早い日 | DS-2019に記載された報告日・プログラム開始日の30日前から | その前に観光や語学研修を挟む計画は、別の在留資格の検討が必要になる |
| プログラムの期間 | 1学期以上2学期以下(22 CFR 62.25(c)(2))。J-1全体の入国許可期間は最長4年だが、この区分は上の上限が優先する | 学年留学か学期留学かを出願の段階で決める。到着後の切り替えは前提にできない |
| 2学期目からの開始 | 米国の受け入れ校(条文は「the school in which the exchange student is enrolled」)が書面で特に認めた場合に限り、米国の学年の2学期目から開始できる(同(c)(3)) | 日本の学年暦に合わせた1月出発は、米国の受け入れ校の書面の承諾が前提になる |
| 終了後に滞在できる期間 | プログラム終了日から30日。目的は出国の準備、または合法的な資格の維持を図ること | 卒業式のあと家族で長く旅行する計画は、この30日の中に収める必要がある |
| 期間が短縮されたとき | 新しい終了日から30日以内に出国する | 途中帰国の判断が出た場合、日程の余裕は30日しかない |
終了後の30日は、渡航や滞在のための余白ではなく「出国の準備期間」として条文に書かれています。現地の家族旅行や大学見学を考えているご家庭は、この枠内に収まるかを早めに確認してください。なお日本側では、留学期間を在籍校の単位としてどう扱うかが別途問題になります。こちらは高校留学の単位認定で扱っています。
「J-1は公立高校だけ」ではない——規則が認めている学校の範囲
POINT
22 CFR 62.25(a) は、通う先を「認定された公立または私立の中等学校」、滞在先を「アメリカのホストファミリー、または認定された米国のボーディングスクール」と書いています。公立限定とはどこにも書かれていません。
日本語で読める解説の多くは「J-1の交換留学は公立高校に通う制度」と説明しています。しかし条文の目的規定((a))は、「foreign secondary school students are afforded the opportunity to study in the United States at accredited public or private secondary schools for an academic semester or an academic year, while living with American host families or residing at accredited U.S. boarding schools」と書いています。米国務省 BridgeUSA のプログラムページも同じく「an accredited public or private high school」「with an American host family or at an accredited boarding school」です。つまり私立校やボーディングスクールでの受け入れも、制度上は認められています。
では、なぜ実際には公立校がほとんどなのでしょうか。手がかりは授業料の扱いにあります。規則(f)(1)は、スポンサーが事前に学校から書面の受け入れ承諾を取り、そこに「授業料の支払い、または該当する場合はその免除についての書面の取り決め(written arrangements concerning the payment of tuition or waiver thereof)」を含めることを求めています。さらに(f)(3)は、「DS-2019の発行前に書面で確定していない私立校の授業料を、生徒に請求してはならない」と定めています。授業料を免除する形で受け入れてくれる学校が公立に多い、という運用上の事情があるわけです。
- 公立限定は規則ではなく団体の運用。私立やボーディングスクールを希望するなら、扱っている団体があるかを個別に確認する
- 授業料がかかるかどうかは、出発前に書面で分かる。規則(g)(5)は、出発前に渡す学校と地域のプロフィールに「その生徒が授業料を払うのかどうかを記載すること」を求めている
- 私立の授業料は、DS-2019が出る前に書面で確定していなければ請求できない。後出しの授業料請求は規則が想定していない
- 同じ学校に6人以上は入れられない。学校自身が書面で要請した場合を除き、1つの学校への配置は5人までとされている((f)(6))
なお、寮生活のボーディングスクールそのものを目的に検討されているなら、J-1の交換留学とは別にアメリカのボーディングスクールという選択肢があります。こちらはF-1が中心で、費用も進み方もまったく違います。
同じ「公立高校に1年」でも、F-1だと法令上の扱いが変わる
POINT
F-1(私費留学)で公立高校に通う場合、連邦規則は「非補助の一人当たり費用を全額償還したことの証明」と「通算12か月まで」という2つの制限を課しています。J-1にはこの制限がありません。
保護者から見ると、交換留学も私費留学も「アメリカの高校に1年通う」という同じ絵に見えます。しかし公立高校に通う場合、法令上の扱いははっきり違います。F-1については、8 CFR 214.2(f)(1)(i)(D) が入国の要件として「公立の中等学校で学ぶ場合は、在学期間について、学校を運営する地方教育機関に対し、教育提供にかかる非補助の一人当たり費用の全額を償還したことを示していること」を求めています。さらに同(f)(5)(i)(C) は、「公立高校に通うF-1の学生は、学校の休みや長期休暇を含めて通算12か月を超えない期間に制限される」と定めています。
公立高校に通う場合の法令上の扱い(J-1とF-1の比較)
| 論点 | J-1(中等学校交換留学) | F-1(学生) |
|---|---|---|
| 公立校の授業料 | スポンサーと学校が書面で取り決める(支払いまたは免除)。免除の形が多い | 非補助の一人当たり費用を全額償還したことの証明が入国の要件 |
| 公立校に通える期間 | 区分の上限として1〜2学期 | 休みを含めて通算12か月まで |
| 私立校 | 認定校なら可。授業料はDS-2019発行前に書面で確定 | 可。期間の12か月制限は公立校についての規定 |
| 必要な書類 | スポンサーが発行するDS-2019 | 学校が発行するI-20 |
| SEVIS費用 | 220ドル | 350ドル |
| 学校を選べるか | 選べない(スポンサーが配置する) | 自分で出願して選ぶ |
「公立高校に安く通える」と言われるのがJ-1の交換留学なのは、この授業料の扱いの差が背景にあります。一方で学校も地域もホストファミリーも選べないのがJ-1です。費用の全体像はアメリカ高校留学の費用と交換留学の費用で整理しています。
英語力は「ELTiSで何点」ではなく、測り方が3通り決まっている
POINT
22 CFR 62.10(a)(2) が求めているのは「客観的な方法で測ること」で、具体的な試験名や点数は定めていません。認められている確認方法は3通りあります。
日本語の解説では「ELTiS 689点以上」といった具体的な点数が要件のように書かれていることがあります。しかしこれは団体の運用で、連邦規則が決めている基準ではありません。規則(a)(2)は、スポンサーが応募者の英語力を次のいずれかで確認しなければならない、と書いています。
- 1認められた英語試験(a recognized English language test)
- 2学術機関または語学学校の署名入りの書面(signed documentation from an academic institution or English language school)
- 3記録に残る面接(a documented interview)。対面またはビデオ会議で行い、ビデオ会議が実行可能でない場合に限り電話で行う
求められているのは「プログラムに参加し、日常生活を送るのに十分な英語力(sufficient proficiency)」を、客観的な尺度で確認することです。どの試験を使うか、何点を合格とするかは、スポンサー団体が決めています。したがって、ある団体の試験で基準に届かなかったとしても、それは「アメリカの交換留学に参加できない」という意味ではありません。別の団体が別の方法で測っている可能性があります。もちろん、現地の授業についていけるだけの英語力が必要であることに変わりはありませんから、点数が足りないときに最初にやるべきは団体を変えることではなく、高校留学に必要な英語力を踏まえて準備期間を取り直すことです。
避けたい
1つの団体の説明会で「ELTiSが基準に届かないので難しい」と言われ、アメリカ行きそのものを諦める
こうすればOK
「その点数は規則上の要件ですか、御団体の基準ですか」と確認する。規則は測り方を3通り認めていて、点数は定めていません
避けたい
英語の試験対策だけを進めて、学業成績や出席を軽く見る
こうすればOK
規則(e)(2)は学業適性(scholastic aptitude)と人格も要件に挙げています。成績証明と在籍の記録は、英語力と同じくらい見られます
ビザ手続きの順番と、お金の流れ
POINT
DS-2019はスポンサーが発行します。家庭が動くのは、SEVIS費用の支払いとDS-160の記入、そして面接の予約からです。順番を間違えると予約が取れません。
米国務省 BridgeUSA が公表している手順は、次の流れです。最初の一歩はビザの申請ではなく、スポンサー団体への申し込みだという点に注意してください。
- 1国務省が指定したスポンサー団体に直接申し込む。団体が参加者の選考・支援・在籍期間中のモニタリングに責任を負う。指定スポンサーかどうかは国務省BridgeUSAのスポンサー検索(sponsor-search)で確認でき、母国で活動している団体を探す検索(sponsor-by-country)も用意されている
- 2合格するとスポンサーがDS-2019を発行する。この書類は入国時にも提示が必要で、お子さん本人の名前で発行される(8 CFR 214.2(j)(1)(i))
- 3SEVIS費用(I-901)を支払う。J-1は220ドル(8 CFR 214.13(a)(2))。ビザが発給される前に支払う必要がある(同(d)(1))
- 4DS-160(オンライン非移民ビザ申請書)を記入し、ビザ申請料を支払う
- 5面接を予約する。空きは季節で大きく変動するため、国務省の案内も「早いほどよい」と書いている
- 6面接当日は、DS-2019の原本・DS-160の確認ページ・パスポート・写真・申請料の領収書を持参する
- 7発給後、スポンサーと渡航の準備を進める
SEVIS費用は、団体がまとめて代納していることがあります。国務省の案内も「スポンサーがこの費用をあなたに代わって支払う場合、スポンサーは支払いを証明する領収書を渡します」と書いています。参加費にSEVIS費用が含まれているのかどうかを、申込みの前に確認してください。含まれている場合は、領収書を必ず受け取って保管します。面接に必要になるためです。
金額について:SEVIS費用(I-901)の220ドルは連邦規則 8 CFR 214.13(a)(2) に定められた額で、本記事の取得日時点の条文に基づいています。一方、ビザ申請料(非移民ビザ申請手数料)の額は本記事では示しません。米国務省の手数料ページが取得できず、国務省が公開しているステップガイドPDF(2023年版)の記載額は現行額と異なるためです。金額は必ず、申請先の米国大使館・領事館の手数料案内でご確認ください。同様に、面接が必要かどうか・免除の扱いがあるかどうかも大使館・領事館の最新案内でご確認ください。
費用についてもうひとつ、知っておくと役に立つ規則があります。22 CFR 62.10(b) は、出発前にスポンサーが参加者へ提供しなければならない情報を列挙していて、その中に「参加予定者が支払うすべての費用の項目別の一覧(スポンサーに払うものと第三者に払うものを含む)」((b)(5))、「滞在中に発生しうるその他の費用の内容と金額」((b)(6))、「住居の内容と想定される費用」((b)(4))、「医療と保険の内容・費用・要件」((b)(7))が含まれています。見積もりが「一式」でしか出てこないときは、この項目別の一覧を求めてください。規則が求めている情報です。国務省自身も、申し込みを決める前に「複数のスポンサーから、すべての費用の内訳を取るように」と案内しています。
行き先は選べない。ただし「どこに行くことになるか」は公表データで分かる
POINT
米国務省は、中等学校交換留学で新たに受け入れた生徒の人数を、送り出し国別・受入州別に毎年公表しています。2025年の新規受け入れは17,863人、うち日本は399人でした。
J-1の交換留学では、学校もホストファミリーも地域も選べません。「どこになるか分からない」という説明で終わってしまうことが多いのですが、実際にどこへ行くことになりやすいのかは、国務省が公表しているデータから見当がつきます。2025年(暦年)の受入上位の州は次のとおりです。
受け入れが多いのは中西部の州
2025年 中等学校交換留学の新規受け入れが多い州(米国務省公表・上位14州)
| 順位 | 州 | 人数 |
|---|---|---|
| 1 | テキサス | 1,927人 |
| 2 | ミシガン | 1,328人 |
| 3 | カリフォルニア | 855人 |
| 4 | ミネソタ | 806人 |
| 5 | ウィスコンシン | 803人 |
| 6 | インディアナ | 769人 |
| 7 | オハイオ | 627人 |
| 8 | ミズーリ | 588人 |
| 9 | イリノイ | 547人 |
| 10 | ワシントン | 545人 |
| 11 | フロリダ | 522人 |
| 12 | ノースカロライナ | 504人 |
| 13 | オレゴン | 499人 |
| 14 | コロラド | 488人 |
カリフォルニアは3位ですが、1位のテキサスの半分以下です。上位にはミシガン・ミネソタ・ウィスコンシン・インディアナ・オハイオ・ミズーリと、中西部の州が並びます。「アメリカ留学」と聞いて思い浮かべる西海岸や東海岸の都市部とは、実際の分布がかなり違います。これは制度の性格から考えると自然なことで、規則はスポンサー側からホストファミリーへの金銭の支払いや報奨を禁じており(22 CFR 62.25(d)(6))、受け入れはあくまで地域のボランティアに支えられています。冬の寒さや公共交通の少なさを含めて、「中西部の小さな町に行く可能性が高い」という前提でお子さんと話しておくと、現地での落差が小さくなります。
送り出し国の顔ぶれと、細っていく枠
送り出し国の側も見ておきます。2025年の上位はドイツ3,955人、スペイン3,322人、イタリア2,442人、フランス1,140人、ブラジル1,010人と続き、日本は399人で6番目です。韓国は194人、台湾は153人でした。ヨーロッパからの参加が圧倒的に多く、同じ家庭に同じ国・同じ母語の生徒を2人置くことは規則で禁じられていますから(同(l)(1)(ii))、現地では日本人がいない環境になることがほとんどだと考えておくのが現実的です。
そして、枠そのものが細っています。国務省が公表している区分別の参加者数(プログラム開始年別)では、中等学校交換留学の新規受け入れは2019年の23,558人から2025年の17,863人へ、6年で約24%減りました(2015年は24,948人)。コロナ禍で2020年に4,795人まで落ち込んだあと、2021年18,525人・2022年21,144人と戻しましたが、2022年の21,144人を境に、2023年20,114人・2024年19,077人・2025年17,863人と3年続けて減っています(いずれもコロナ前の2019年の水準には戻っていません)。「来年でいいか」と先送りした分だけ、選べる団体も受け入れ先も減っていく可能性があります。
滞在中にできること・できないこと
POINT
アルバイトは不可、部活は学区と州の競技資格当局の承認が必要、パスポートとDS-2019は本人が持っておく——いずれも規則に明記されています。
参加が決まったあとの生活についても、22 CFR 62.25 はかなり細かく定めています。保護者から質問が多いところを拾います。
J-1の高校交換留学|滞在中のルール(22 CFR 62.25)
| 場面 | 規則が定めていること | 条項 |
|---|---|---|
| アルバイト | 常勤・パートタイムの就労は不可。ベビーシッターや庭仕事のような散発的・断続的なものは受けてよい | (i) |
| 部活・スポーツ | 学校が認め主催する課外活動には参加できるが、在籍する学区の承認と、該当する場合は州の競技資格を判断する機関の承認が必要。スポンサーは運動能力に基づく配置の当事者になってはならない | (h) |
| パスポート・DS-2019 | 政府発行の書類を本人の手元から取り上げてはならない | (d)(8) |
| 実の親との連絡 | 電話とメールで実の親・家族と合理的に連絡できる状態にしておくこと | (d)(7) |
| 団体からの連絡 | 地域コーディネーターは最低でも月1回生徒と個人的に接触する。最初の1回は対面。ホストファミリーとも月1回、学期ごとに1回は対面で接触する | (d)(11)・(d)(13) |
| 配置の距離 | 対応にあたる地域コーディネーターの自宅から120マイルを超える場所には配置しない | (d)(5) |
| 同じ家庭の人数 | 1つの家庭に交換留学生は2人まで。しかも2人目を置くには、ホストファミリー・実の親・配置される生徒本人の事前の明示的な書面同意が必要。同じ国・同じ母語の生徒を同じ家に置かない | (l)(1)(ii) |
| 親族宅への滞在 | 親族の家には配置しない | (d)(4) |
| 住所等の変更 | 電話番号・メール・実際の住所が変わったら10日(暦日)以内にスポンサーへ報告する | 22 CFR 62.10(d)(3) |
部活の扱いは、進路を考えるうえで無視できません。アメリカでは州の高校体育連盟が留学生の出場資格を独自に判断しており、規則もその承認を前提にしています。「現地でバスケットボール部に入って活躍する」という絵を描いているなら、配置先の州で留学生が公式戦に出られるのかどうかを、団体に確認してください。同時に規則(h)(2)は、スポンサーが運動能力を理由にした配置の当事者になってはならないと定めています。「スポーツ推薦のような形で学校を選ぶ」ことは、この制度では想定されていません。
滞在先のホストファミリーがどう選ばれるのかは、同じ22 CFR 62.25の(j)と(l)に詳しく定められています。同居家族全員との対面面接、地域からの推薦2名、18歳以上の同居者全員の犯罪歴照会など、審査の手順そのものが法令になっています。詳しくは高校留学のホームステイでまとめました。保険についても、22 CFR 62.14 が最低の補償額を定めています——こちらは高校生の留学保険で条文ごと扱っています。
保護者が渡航前に確認しておく項目
POINT
規則が定めているのは「スポンサーが出すべき情報」です。つまり、ここに挙げた項目は、本来ご家庭から請求できるものです。
22 CFR 62.25(g) と 22 CFR 62.10(b) は、出発前にスポンサーが提供しなければならない情報を具体的に挙げています。届いていないものがあれば、「規則で定められている」と伝えて請求できます。渡航前のチェックに使ってください。
出発前に、手元にそろっているか
いずれも連邦規則がスポンサーに提供を求めている情報です。届いていない項目は、出発前に請求してください。
チェックはこの画面の中だけの表示で、保存も送信もされません。
6つ目の帰国義務について補足します。J-1のビザには、区分や資金の出どころによって「プログラム終了後、本国に2年間滞在しなければ一定の米国ビザを申請できない」という要件(いわゆる212(e))がかかる場合があります。この要件が中等学校交換留学にどう適用されるかを、当サイトは一次情報で確認できていないため断定しません。確かなのは、22 CFR 62.10(b)(2) が「出発前に、この帰国義務についての情報を提供すること」をスポンサーに義務づけているという点です。DS-2019の該当欄とスポンサーの説明で、自分のケースを必ず確認してください。将来の海外大学進学を視野に入れているご家庭は、ここを曖昧にしないでください。
まとめ:法令の枠を知ってから、団体を比べる
J-1ビザの高校交換留学は、「安く行ける」という点だけで語られがちですが、実際には連邦規則がかなり細かく枠を決めている制度です。期間は1〜2学期まで、同じ形での再参加はできず、過去にF-1・J-1で米国の学校に通った経験があれば参加できません。学校も地域もホストファミリーも選べず、行き先は中西部の小さな町になる可能性が高く、新規受け入れの枠は6年で約24%減っています。
一方で、規則がご家庭の側を守っている部分もあります。費用は項目別の一覧で出させることができ、授業料の有無は出発前に書面で分かり、パスポートとDS-2019は本人が持ち続け、実の親との連絡手段は保障され、団体は月1回以上お子さんと接触しなければなりません。「決まっていること」と「団体の運用」を分けて把握することが、団体選びの質問を具体的にします。次の一歩は、高校留学の準備の逆算スケジュールに、この記事の時期の上限を重ねて、出願の締切から逆算することです。
Q.子どもが小学生のときに親の駐在でアメリカの学校に通っていました。高校の交換留学には参加できますか。
当時の在留資格によります。22 CFR 62.25(e)(3) が対象外としているのは、米国での学年・学期の中等学校交換プログラムに参加したことがある場合と、F-1またはJ-1の資格で米国の学校に通ったことがある場合です。条文が挙げているのはこの2つの資格で、駐在員の帯同家族が取ることの多い資格は文面に出てきません。ただし該当するかどうかの判断はスポンサー団体が行いますので、当時の在留資格を調べたうえで、費用や行き先の相談より先に適格性を確認してください。
Q.1年行ってみて良かったら、そのままアメリカの高校を卒業させることはできますか。
J-1の中等学校交換留学の枠組みではできません。22 CFR 62.25(c)(2) が受け入れ期間を「1学期以上2学期以下」と定めており、国務省の区分比較表でも再参加は「No」とされています。アメリカの高校を卒業する形を考えるなら、F-1(私費留学)という別のルートになります。ただしF-1で公立高校に通う場合は、8 CFR 214.2(f)(5)(i)(C) により休みを含めて通算12か月までに制限され、同(f)(1)(i)(D) により非補助の一人当たり費用の全額償還が入国の要件になります。卒業を目指すなら私立校が現実的な選択肢です。アメリカ高校留学ガイドで比べています。
Q.ELTiSの点数が足りないと言われました。アメリカの交換留学は諦めるしかないのでしょうか。
その点数は連邦規則の要件ではなく、団体の基準です。22 CFR 62.10(a)(2) が求めているのは「客観的な方法で十分な英語力を確認すること」で、具体的な試験名も合格点も定めていません。規則が認めている確認方法は、①認められた英語試験 ②学術機関や語学学校の署名入り書面 ③記録に残る面接(対面またはビデオ会議。実行可能でない場合に限り電話)の3通りです。測り方は団体によって違います。ただし現地の授業についていける英語力が必要なことに変わりはないので、まずは必要な英語力を踏まえて準備期間を取り直すことをおすすめします。
Q.行き先の州や都市について、希望は出せますか。
希望が出せるかどうかは団体の運用で、規則は配置の権限をスポンサーに置いています。22 CFR 62.25(f)(7) は「DS-2019を発行した時点で、スポンサーは学校とホストファミリーの配置を確保する全責任を負う」と定めています(条文上の例外は、生徒本人が自主的に辞退した場合とビザが拒否された場合の2つだけです)。希望の受付を有料オプションにしている団体もありますが、保証されるものではありません。実際の分布としては、2025年の受入上位はテキサス1,927人・ミシガン1,328人・カリフォルニア855人・ミネソタ806人・ウィスコンシン803人で、中西部の州が多くを占めています(米国務省公表)。都市部を前提にせず、中西部の小さな町になる可能性を織り込んでお子さんと話しておいてください。
Q.現地でアルバイトをして小遣いを稼ぐことはできますか。
できません。22 CFR 62.25(i) は「交換留学生は常勤・パートタイムのいずれでも就労してはならない」と定めています。認められるのは「ベビーシッターや庭仕事のような散発的・断続的なもの(sporadic or intermittent employment such as babysitting or yard work)」だけです。小遣いは日本から送る前提で、現地での金額感をホストファミリー向けの案内で確認しておいてください。なお規則(d)(6)は、スポンサー側がホストファミリーに金銭や報奨を支払わないことをスポンサーに担保させています。受け入れは報酬ではなくボランティアとして成り立っている、という前提です。
Q.SEVIS費用やビザ申請料は、参加費に含まれていますか。
団体によります。米国務省の案内は「スポンサーは、SEVIS費用(I-901)をあなたが支払う必要があるのか、すでに参加費に含まれているのかを伝えます。スポンサーがあなたに代わって支払う場合は、支払いを証明する領収書を渡します」と書いています。J-1のSEVIS費用は220ドル(8 CFR 214.13(a)(2))で、ビザが発給される前に支払う必要があります(同(d)(1))。ビザ申請料は別途かかりますが、金額は改定されるため、申請先の米国大使館・領事館の手数料案内でご確認ください。なお22 CFR 62.10(b)(5) は、出発前に「支払うすべての費用の項目別の一覧」を提供することをスポンサーに義務づけています。「一式」の見積もりしか出てこないときは、この一覧を求めてください。
Q.出発はいつからできますか。プログラムの前後に家族で旅行する余裕はありますか。
入国できるのはDS-2019に記載された開始日の30日前からで、終了後は30日以内に出国します(8 CFR 214.2(j)(1)(ii)(C))。この終了後の30日は、条文上「出国の準備、または合法的な資格の維持を図るため」の期間と位置づけられており、滞在を延ばすための余白ではありません。前に語学研修や観光を挟む計画、後ろに長い家族旅行を置く計画は、この30日の枠に収まるかを先に確認してください。なお期間が途中で短縮された場合も、新しい終了日から30日以内の出国になります。







