このページの要点
山村留学は、小中学生が1年単位で農山漁村に移り住み、住民票を移して地元校に転校する制度です。
- 全国山村留学協会の2024年度調査では687人(小学生437人・中学生250人)が参加。いちばん多いのは親子で移り住む家族方式(275人)で、子どもだけで暮らす寮・ホームステイ・併用は小学1年生の参加が0人
- 体験イベントではなく転校。文部科学省の調査では、受け入れ実績のある教育委員会67のうち65が住民票を移して受け入れており、住民票を残す区域外就学は例外的
- 子どもだけの方式の費用は、公式募集要項で月約4.9万〜7.9万円。入園金・施設費を足した1年目の基本額は約58万〜112万円(当サイト試算)で、ここに預り金・学校の徴収金・面会や帰省の交通費が乗る
山村留学は、都市部などに住む小中学生が、自然豊かな農山漁村に1年単位で移り住み、地元の小中学校に通いながら暮らす取り組みです。1976年に長野県八坂村(現在の大町市)で始まり、現在は各地の市町村や団体がそれぞれの方式で実施しています。夏休みのキャンプとの決定的な違いは、学籍が移ることです。子どもは住民票を移して現地の学校に転校し、寮や受入家庭、または家族と一緒に暮らします。この記事では、方式ごとに選べる学年、学籍と住民票の扱い、公式の募集要項から積み上げた年間費用、見学のときに確認すべき項目、申込までの逆算スケジュールを、全国山村留学協会と文部科学省の資料をもとに整理します。
結論:山村留学は「1年間の転校」。方式と学年から先に絞る
POINT
山村留学で最初に決めるのは「どの地域か」ではなく「どの方式か」です。方式によって受け入れる学年も費用も保護者の関わり方も変わるため、地域選びはその後になります。
全国山村留学協会は、山村留学を「自然豊かな農山漁村に、小中学生が一年間単位で移り住み、地元小中学校に通いながら、さまざまな体験を積む」活動と説明しています。北海道教育庁の説明もほぼ同じで、「1年以上親元を離れて、あるいは親とともに農山漁村地域に転居し」「現地の学校に通学すること」としたうえで、制度は「小中学校の設置者である各市町村が独自に実施」していると書いています。つまり国が一律に定めた制度ではなく、市町村や団体ごとに条件が違うというのが出発点です。
山村留学の早見表(全国山村留学協会・文部科学省・各地の募集要項より)
| 項目 | おおよその実態 | 確認先 |
|---|---|---|
| 対象 | 小学1年生〜中学3年生。ただし子どもだけの方式は小学3〜4年生以上が多く、中学3年生の新規は少ない | 各実施団体の募集要項 |
| 期間 | 4月〜翌3月の1年単位。年度途中の受け入れは少ない。継続には審査や年数の上限がある団体も | 募集要項・面接時 |
| 学校 | 地元の公立小中学校に転校。1学年1クラスの小規模校が多い | 受入市町村の教育委員会 |
| 住民票 | 現地に移すのが一般的。住民票を残す区域外就学は例外 | 受入側と、いま住んでいる市区町村の教育委員会 |
| 暮らし方 | 寮・ホームステイ・併用(学園)・家族の4方式 | 募集要項 |
| 費用 | 子どもだけの方式で月謝概ね4万〜9万円+入園金・学校経費など | 募集要項の費目一覧 |
| 申込 | 前年度の秋〜12月が中心。体験留学と親子面接を経て1月前後に決定 | 各団体の案内 |
規模も確認しておきましょう。協会の「2024年度版 全国の山村留学実態調査報告書」によると、2024年度の実施地域は19道府県・65市町村で、このうち留学生を受け入れたのは18道府県・60市町村、参加者は687人(小学生437人、中学生250人)でした。参加者がもっとも多かったのは2004年度の860人で、その後は市町村合併や受入家庭の高齢化、学校の統廃合で減り、2015年度には479人まで落ちました。近年は増加に転じ、2024年度は「ほぼ2007年度の水準まで戻りました」と報告されています。受け入れの多い県は鹿児島県(216人)、長野県(156人)、北海道(62人)の順です。
この調査は、協会が把握している実施地域にアンケートを配り、回答のあった学校分だけを集計したものです(2024年度は小学校89校・中学校61校が有効回答)。また調査上の「山村留学」は、山村留学だけでなく義務教育期間中の国内留学制度全般の総称で、離島の学校の受け入れも含まれます(九州沖縄に多い家族方式は主に離島で実施されていると報告書は書いています)。全国のすべての受け入れを数えた統計ではない点に注意してください。
なお、山村留学は義務教育の段階の仕組みです。高校生が地方の学校で学ぶ場合は、受験と入学(または1年間の国内留学)という別の制度になります。高校段階を考えているご家庭は、地域みらい留学の仕組みや、自治体が独自に募集する高校の離島留学を読んでください。国内留学全体の地図は国内留学のガイドにまとめています。
4つの方式と、方式ごとに選べる学年
POINT
子どもだけで暮らす寮・ホームステイ・併用の3方式は、2024年度に小学1年生の参加がゼロでした。低学年なら家族方式、小学3〜4年生以上なら子どもだけの方式も選択肢に入る、というのが実態です。
全国山村留学協会は、子どもの暮らし方によって山村留学を4つの方式に分けています。どの方式でも学校は地域の公立校に通います。違うのは、放課後と休日をどこで誰と過ごすかです。
山村留学の4方式(方式の説明は全国山村留学協会、人数は2024年度実態調査より)
| 方式 | 暮らし方 | 2024年度の参加者 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 寮方式 | 1年間、山村留学センターなどの寮で集団生活。専門の指導員が常駐している場合が多い | 248人 | 同世代との集団生活や、休日の野外活動を重視したい |
| ホームステイ方式 | 1年間、地域の家庭で暮らす(里親型と呼ばれることもある) | 72人(前年度から30人減) | 家庭的な環境で、地域の暮らしに深く入りたい |
| 併用方式(学園方式) | 寮とホームステイを組み合わせる。協会の説明は「月の半分を寮で生活し、残りの半分は地域の家庭にホームステイをする方式」 | 92人 | 集団生活と家庭の両方を経験させたい |
| 家族方式 | 保護者(家族の一部を含む)と一緒に移り住む | 275人(全体の約40%) | 低学年、または家族ごと暮らしを変えたい |
学年×方式で見ると、選べる範囲がはっきりする
2024年度の調査には、方式別・学年別の参加者数が載っています。ここから読み取れるのは、子どもだけの方式は小学4年生から一気に増え、家族方式は低学年でも一定数いるということです。小学1年生の参加26人は全員が家族方式でした。小学2年生も35人中29人が家族方式です。協会のQ&Aも「家族方式以外の山村留学では、小学校3年生以上を対象にしている地域が多いようです」と書いています。
方式別・学年別の参加者数(全国山村留学協会「2024年度版 全国の山村留学実態調査報告書」)
| 方式 | 小1 | 小2 | 小3 | 小4 | 小5 | 小6 | 中1 | 中2 | 中3 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 寮 | 0 | 5 | 10 | 35 | 42 | 37 | 53 | 45 | 21 |
| ホームステイ | 0 | 1 | 4 | 9 | 14 | 17 | 7 | 11 | 9 |
| 併用 | 0 | 0 | 4 | 7 | 19 | 18 | 23 | 13 | 8 |
| 家族 | 26 | 29 | 44 | 48 | 39 | 29 | 27 | 16 | 17 |
| 合計 | 26 | 35 | 62 | 99 | 114 | 101 | 110 | 85 | 55 |
もう1つ目立つのが中学3年生の少なさです(55人)。協会は「中学3年生からの新規留学生を受け入れているところは多くありません(中学2年生からの継続の場合は除きます)」と案内しており、理由として高校受験への対応を挙げています。実際、大鹿村(長野県)は「小学校1年生~中学2年生」、売木学園(同)は「小学2年生-中学2年生(原則)」を対象としています。中学生で考えるなら、中1か中2で始めるのが現実的です。
ホームステイ方式が減っている点も知っておきたいところです。報告書は、前年度より30人減ったことについて「高齢化による担い手不足が顕著」と書き、ホームステイから寮や家族方式へ切り替える地域が増えているとしています。農家などの家庭で家族の一員のように暮らす型を希望する場合、選べる地域は限られていると考えてください。
学籍と住民票:山村留学は「転校」として手続きする
POINT
山村留学は、いまの学校に籍を置いたまま参加するものではありません。住民票を移して現地の学校に転校するのが基本で、終わったら元の地域へ戻る転校をもう一度します。
見落とされやすいのが、学籍の扱いです。協会は「義務教育期間のため、子どもたちは住民票を現地に移し、地元学校に転校という形で通学します」と説明しています。小中学校の就学先は、原則として住んでいる市町村の教育委員会が決めます。その根拠となる学齢簿は住民基本台帳をもとに作られるため、住民票の移動が手続きの起点になります(海外の場合の同じ仕組みは小学生の親子留学と学校の扱いでも解説しています)。
文部科学省の調査:受け入れ実績のある教育委員会の97%が住民票を移す方法
文部科学省の「就学校の指定・区域外就学の活用状況調査」(令和5年3月公表)は、回答した全国1,751の教育委員会に山村留学・漁村留学の受け入れ方を尋ねています。過去3年間に他の市区町村の児童を受け入れた例があったのは、小学校等で67の教育委員会でした。そのうち65(97%)が「住民票を受け入れ市区町村に移し、学齢簿を編製した上で受け入れている」と答え、「住民票を住んでいた市区町村に残したまま、区域外就学制度を活用して受け入れている」は3にとどまります(複数回答。中学校等でも51のうち49が住民票を移す方法)。
区域外就学は、学校教育法施行令第9条にもとづく仕組みです。住所地以外の学校に通わせる場合、保護者は通わせたい学校を設置する教育委員会の承諾を証する書面を添えて、住所地の教育委員会に届け出ます。制度としては住民票を動かさない道もあるということですが、山村留学で使っている例は少数です。住民票を残したい事情がある場合は、受け入れ側の教育委員会と、いま住んでいる市区町村の教育委員会の両方に、区域外就学で受け入れてもらえるかを申込前に確認してください。
山村留学の学籍と住民票の扱い(文部科学省の調査区分と、各地の募集要項より)
| 受け入れ方法 | どういう扱いか | 使われ方 |
|---|---|---|
| 住民票を移して転校 | 現地の市町村の学齢簿に載り、現地の学校の児童生徒になる | 主流(受け入れ実績のある教育委員会の97%)。鹿追町は「修了式後速やかに住民票の移動が必要」と明記 |
| 区域外就学(住民票はそのまま) | 住所地の教育委員会への届出と、受入側の承諾で現地の学校に通う(学校教育法施行令第9条) | 例外的(67のうち3)。受入側が認めるかを個別に確認 |
| 住民票は移さず事実上の居住で学齢簿へ | 住民票はそのままだが、実際の居住をもとに受入側が学齢簿に載せる | 例外的(67のうち3) |
住民票を移すと変わるもの(確認ポイント)
- 子ども医療費・給食費などの助成:受入市町村の制度が適用されます。大鹿村は住民票の異動で「各種の補助や助成が受けられます」とし、給食費や教材費の全額補助を挙げています。逆に、いまの市区町村の助成は受けられなくなります。
- 児童手当・就学援助など:子どもだけが転出する場合の扱いは制度と自治体によって異なります。申込が決まった段階で、いまの市区町村の担当窓口に確認してください(この記事では断定しません)。
- 中学生の高校受験:受験する高校の所在地や出願資格の扱いが変わることがあります。中学2年生で留学し3年生で戻る場合などは、戻った先の都道府県の入試要項と照らして早めに確認しましょう。
- 戻るときの転校:留学を終えたら元の地域の学校へ転校し直します。協会は、小規模校から都会の学校に戻ると「雰囲気の違いや友人関係でしばらくは悩むこともあるようです」と書いています。
ホームステイ方式では、受け入れる家庭の側に手続きが生じることがあります。児童福祉法第30条は、四親等内の児童以外の児童を親権者から離し、3か月を超えて同居させる意思をもって自宅に同居させた場合などに、都道府県知事への届出を定めています(「単に下宿させた者」などは除外)。個々の山村留学が該当するかは受入側の制度設計によるため、ホームステイ方式を選ぶ場合は、受入家庭の選定や届出をどう扱っているかを実施団体に確認してください。
費用:公式の募集要項から1年目の総額を積む
POINT
月謝だけを比べると判断を誤ります。入園金・施設費・預り金・学校経費・支払う月数まで並べて、1年目に払う総額で比べてください。
協会のQ&Aは、費用について「月謝は概ね40,000円~90,000円くらいの範囲です」と答えています。長野県の「信州自然留学」のよくある質問も、1年滞在型の目安を「入園金10万~15万円」「月額負担金5万~9万円(食費、保険料、生活費等)」とし、このほかに給食費や教材費などの学校の経費がかかるとしています。幅が大きいのは、寮の維持費や指導員の人件費がかかる方式ほど月謝が高くなるためです。そこで、実施団体が公式に出している募集要項から、実際の費目を並べてみました。
子どもだけで暮らす山村留学の費用例(各団体の公式募集要項・2026年10月28日確認)
| 実施団体(方式・対象) | 公式に書かれている費目 | 1年目の基本額の試算(月謝・入園金・施設費) |
|---|---|---|
| 砥部町山村留学センター(愛媛県・寮・小1〜小6) | 居住費 月額52,500円(8月を除く11か月・年額577,500円)+預り金(学校関係費 年25,000円・生活費関係 年40,000円、年度末に精算) | 約58万円(577,500円。預り金65,000円は別) |
| 鹿追町自然体験留学センター(北海道・寮・小4〜中3) | センター料 年617,700円(月平均51,475円)+学校経費 年 小約27,000円・中34,000〜47,000円。給食費・18歳未満の医療費は無料 | 約62万円(617,700円。学校経費は別) |
| 上美生(北海道芽室町・センター・小4〜中3。中3は継続のみ) | 入居料14,700〜15,750円+食費33,000円+雑費1,000円=月48,700〜49,750円。中学は給食費 月5,000円・部活動費 年3万〜5万円など | 約58万〜60万円(12か月と仮定。中学生の給食費・部活動費などは別) |
| 売木学園(長野県売木村・寮・小2〜中2) | 月謝 小65,000円・中70,000円(学級費・日用品費は別途)、入学金100,000円(初年度)。給食費・教材は村が全額補助 | 小学生 約88万円/中学生 約94万円(12か月と仮定。学級費・日用品費は別) |
| 大岡ひじり学園(長野市・併用・小3〜中2) | 入園金84,000円(初年度)・施設費84,000円(年額)・月謝 小76,000円・中79,000円+預かり金(入園時20,000円、月10,000〜15,000円程度) | 小学生 約108万円/中学生 約112万円(12か月と仮定。預かり金は別) |
表の右端は、公式に書かれている月謝(居住費・センター料など)・入園金・施設費を当サイトが足し合わせた試算です。預り金・預かり金や学校の徴収金は団体ごとに扱いが違うため、そろえて除いています。たとえば大岡ひじり学園の預かり金は入園時20,000円と月10,000〜15,000円程度で、学校教材費・PTA会費・給食費や個人の消耗品費などに充てるものです。12か月で計算すると約14万〜20万円が上乗せになります(年度末に精算)。支払う月数が書かれていない団体は12か月と仮定しています。砥部町のように「8月を除く11か月」と明記している団体もあるので、月数は必ず募集要項か説明会で確かめてください。英語の環境で暮らす「英語山村留学」のくらぶち英語村(群馬県高崎市)は、国内の英語村の比較記事で整理したとおり月額が小学生82,500円・中学生91,300円で、月額では表の団体より高い水準です。
月謝の外でかかる費用
- 面会・行事・帰省の交通費:協会のガイドラインは、保護者が留学地を訪れる機会が「学期に一度程度」あるかを確認項目にしています。親子面接や体験留学も含め、遠方ほど交通費が年間の大きな費目になります。家族方式の例ですが、大鹿村の親子留学のように家族の来村交通費を補助する自治体もあります(月10,000円以内)。
- 学校の徴収金:給食費・教材費・PTA会費・修学旅行費など。売木村や大鹿村のように全額補助する自治体と、自己負担の自治体があります。
- 個人の費用:協会は散髪・通院・文具の購入などが「別に必要となる場合が多いようです」としています。
- 体験留学と面接の費用:申込前の体験留学は多くの団体で必須か推奨で、参加費と交通費がかかります。
- 自宅側の費用:子どもが不在でも、自宅の住居費や家族の生活費は続きます。二拠点分の家計になる点を見込んでください。
家族方式は住宅費が安くても、家計全体が動く
家族方式は、住宅の家賃が安く設定されていることが多い一方、保護者の仕事や二重生活の費用が判断の中心になります。たとえば大鹿村は「山村留学住宅」の使用料を月額16,000円(光熱費は実費)とし、家電や家具も貸し出しています。鹿追町の親子留学は公営住宅で、家賃は「年収・住宅により17,000円〜30,000円程度」です。ただし、保護者の働き方、車の維持費、冬の灯油代、残った家族の生活費は家庭ごとにまったく違います。家族方式は留学費用ではなく「1年間の移住の家計」として試算してください。
見学で使う確認リスト:文部科学省委託のガイドラインから
POINT
協会は、受け入れ体制は「千差万別」で、ミスマッチによるトラブルもあると注意を促しています。見学や体験留学のときは、文部科学省の委託で作られたチェックリストの物差しで確認すると、団体同士を比べやすくなります。
全国山村留学協会は、保護者向けのお願いの中で、山村留学という名称で「全国約60ヶ所で児童生徒の募集が行われています」としつつ、受入体制や指導体制、生活形態、食事提供内容などは「千差万別の状況となっています」と書いています。協会に寄せられたトラブルの例として、里親・教育委員会・学校の連携がなく里親独自の判断で不適切な指導が行われていた例、全寮制なのに専門の指導員がいなかった例、食事が貧弱だった例、家族留学で地域から孤立した例、保護者同士の不協和が地域まで巻き込んだ例が挙げられています(加盟団体に限らない例とされています)。
こうしたミスマッチを防ぐために、協会は平成27年度の文部科学省委託事業として「山村留学ガイドライン」を作りました。チェックリストは運営団体・指導員・運営状況・受入家庭と地域・安全管理・学校・体験活動の7項目×10問=70問です。全部を聞く必要はありませんが、保護者の判断に直結する項目を抜き出すと次のようになります。
見学・体験留学で確認したい項目(「山村留学ガイドライン・チェックリスト」から抜粋)
| 分野 | ガイドラインの問い | 保護者がその場で聞くこと |
|---|---|---|
| 運営団体 | 山村留学にかかる費用は明確になっていますか | 月謝に含まれる費目と含まれない費目、支払月数、途中で退所した場合の返金 |
| 運営団体 | 連絡相談窓口は設置されていますか | 困ったときに保護者が連絡する先は誰か。指導員か、教育委員会か |
| 指導員 | 概ね留学生6人に対して 1 人以上の指導員配置になっていますか | 今年度の留学生数と指導員の人数。夜間・休日は誰がいるか |
| 指導員 | 山村留学指導員として少なくとも3年程度の職歴がある人がいますか | 指導員の経験年数と入れ替わりの頻度 |
| 運営状況 | 2年目以降に継続することができますか | 継続の可否と審査。中学進学時に続けられるか |
| 運営状況 | 保護者が山村留学地を訪れる機会は学期に一度程度ありますか | 面会・行事の頻度と、帰省のルール |
| 安全管理 | 近隣に 24 時間体制の医療機関がありますか | 夜間に発熱やけがをしたときの搬送先と所要時間 |
| 安全管理 | 山村留学中は傷害保険に加入していますか | 保険の種類と補償範囲(ガイドブックは「保険の加入は必須です」と解説) |
| 学校 | 留学決定前に教職員と懇談する機会が設けられていますか | 担任や窓口の先生と話せるか。学習の進度や受験への対応 |
チェックリストは協会のサイトからPDFで入手できます(ウェブ上で回答する仕組みは、2026年10月22日付で協会が停止中と案内しています)。体験留学に行く前に印刷して持っていき、複数の団体を同じ70問で比べると、印象ではなく事実で選べます。方式によって該当しない項目(寮がないので指導員がいない、など)がある点は協会も断っています。
得られる体験と、向いている子・向かない子、よくある失敗
POINT
山村留学がうまくいくかを決める最大の要素は、子ども本人の「行ってみたい」という気持ちです。保護者の希望だけで送り出したり、悩みの解決を山村留学に託したりすると、かえってつまずきやすくなります。
まず、山村留学で得られるものを確認しておきます。協会は「四季を通したさまざまな自然体験、キャンプなどの野外活動、小規模校での授業、地元との交流など」を挙げ、受け入れ先の学校は「ほとんどが小規模校で、1学年1クラスのことが多く」、きめ細かな指導が行われていると説明しています。寮のように専門の指導員がいる方式では、休日の活動の幅が広がりやすいともしています。保護者にとっても、地域や保護者同士の交流が生まれる場になるとしています。一方で、学力や自己肯定感などの効果を数値で示した全国的な調査は見当たらないため、得られるものは「体験の機会」であって、成果が約束されるものではないと受け止めておきましょう。
協会のQ&Aは、留学を途中で断念した原因の例として、本人が行きたくなかったのに保護者が無理に行かせた、留学生活に目的を持てなかった、自然や屋外の遊びに興味が持てなかった、受け入れ側とのトラブル、保護者が留学先のルールに従わず現地を混乱させた、などを挙げています。また、山村留学はカウンセラーや養護・福祉の専門スタッフが常駐する仕組みではないため、「養護や療育、更生などに重きをおいた受け入れはおこなっておりません」と明記しています。
不登校の経験があるお子さんについて、協会は「単に素行を改善したい、学校不適応や家庭事情で留学させたいといったことは、かえって山村留学がマイナスになってしまう場合があります」と書いています。山村留学は地元校への通学が前提なので、学校に通う意思があるかどうかが出発点になります。小規模校の環境が合う子もいますが、その判断は体験留学と面接で受け入れ側と一緒に行うものです。
避けたい
「自然の中に行けば変わるはず」と、保護者の判断だけで決める
こうすればOK
体験留学に本人を連れて行き、「1年間ここで暮らしたいか」を本人の言葉で確認してから申し込む
避けたい
月謝の安さだけで団体を選ぶ
こうすればOK
入園金・施設費・支払月数・学校経費・交通費まで足した1年目の総額と、指導員の人数をセットで比べる
避けたい
中学3年生から新しく始めようとする
こうすればOK
中学生なら中1・中2で始める。受験の時期と戻り先の入試要項を、申込前に確認する
避けたい
住民票や手当のことは決まってから考える
こうすればOK
申込の段階で、受入側の教育委員会と、いま住んでいる市区町村の窓口に学籍と各種手当の扱いを確認する
避けたい
留学中も自宅と同じルール(ゲーム・スマホ)を求める
こうすればOK
多くの留学地でテレビや漫画、ゲームに制限がある前提で、事前に本人と話し合っておく
山村留学が向いている家庭・慎重に考えたい家庭(全国山村留学協会のQ&Aをもとに当サイトが整理)
| 向いている | 慎重に考えたい |
|---|---|
| 本人が体験留学を経て「行きたい」と言っている | 本人が乗り気でなく、保護者の希望が中心 |
| 小3〜中2で、身の回りのことを少しずつ自分でできる | 定期的な通院や特別な環境整備が必要(受け入れが難しくなると協会は案内) |
| 集団生活や年の違う子との関わりを経験させたい | 私立中学の受験や塾通いを続けたい(協会は塾に通うことは難しいと案内) |
| 保護者が学期ごとの面会や行事に通える距離・時間がある | 保護者が留学先のルールに合わせる余裕がない |
申込までの逆算スケジュール
POINT
4月に始まる山村留学の申込は、前年度の秋から12月が中心です。思い立ったのが年明けだと、その年度は間に合わないことが多いと考えてください。
協会は「山村留学開始までの大まかなスケジュール」として、前年度の9月頃から資料の取り寄せと説明会、10月頃から留学地の選定、11月頃から体験留学、12月頃に親子面接会、1月頃に留学決定と準備(転校手続きなど)という流れを示しています。長野県の案内も、12月頃までに体験留学、書類審査と面接を経て1月頃に受け入れが決まり、2月以降に転校や住民票の異動の手続きをする流れです。
- 1前年度の春〜夏:夏休みの短期山村留学(キャンプ)で、本人が自然の中での集団生活を楽しめるかを見る。長野県によると、夏休みのキャンプは5月頃、冬休みは10月頃、春休みは1月頃から募集が始まることが多い。
- 29〜10月:方式と学年で候補を絞り、説明会に出る。費用の費目、支払月数、継続の可否を聞く。
- 310〜12月:体験留学と見学。ガイドラインのチェックリストを持参し、指導員・学校・受入家庭と話す。申込書を出す(砥部町の令和9年度募集は10月1日〜12月15日、鹿追町は例年12月8日必着で作文と通知表の写しを添付)。
- 412〜2月:親子面接・審査を経て受け入れ決定(砥部町は2月中旬までに通知、鹿追町は12月下旬までに書面で通知)。
- 52〜3月:在籍校への転校の連絡、住民票の異動、各種手当の確認、持ち物の準備。
- 64月:留学開始。年度末に継続するかを本人と受け入れ側で話し合う。
募集期間・定員・費用は年度ごとに変わります。この記事の日付や金額は2026年10月28日時点の各公式ページの記載です。申し込む前に、必ず実施団体と受入市町村の最新の募集要項で確認してください。
まとめ:判断の順番は「方式→学年→学籍→費用→見学」
POINT
山村留学は、子どもにとっても家族にとっても1年間の転校です。制度の中身を先に押さえておけば、体験留学の場で何を見ればよいかがはっきりします。
まず、子どもだけで行くのか家族で行くのかを決めます。次に、その方式がお子さんの学年を受け入れているかを確かめます。そのうえで、住民票を移す前提で学籍と手当の扱いを確認し、募集要項の費目を足し上げて1年目の総額を出します。最後に、体験留学で指導員の人数や安全体制をチェックリストの物差しで確かめ、本人の気持ちを聞きます。高校段階で地方の学校を考えるなら、高校2年生の1年間だけ地方の高校で学ぶ地域みらい留学365や高校の離島留学が選択肢になります。
申し込む前に確認
チェックはこの画面の中だけの表示で、保存も送信もされません。
Q.山村留学は何年生から参加できますか?
制度上は小学1年生から中学3年生までですが、子どもだけで暮らす寮・ホームステイ・併用の方式は、小学3〜4年生以上を対象にしている団体が多くなっています。全国山村留学協会の2024年度調査では、小学1年生の参加者26人は全員が家族方式でした。低学年で考えるなら、保護者と一緒に移り住む家族方式が現実的です。
Q.中学3年生から山村留学を始めることはできますか?
受け入れている団体は多くありません。協会は、中学3年生の新規受け入れは少なく、中学2年生からの継続の場合は別だと案内しています。高校受験への対応が難しいためです。中学生で考えるなら、中学1年生か2年生で始め、戻り先の都道府県の入試要項を早めに確認してください。
Q.住民票を移さずに山村留学できますか?
制度上は、学校教育法施行令第9条の区域外就学を使えば住民票を残したまま他の市町村の学校に通う道があります。ただ、文部科学省の調査では、山村留学の受け入れ実績がある67の教育委員会のうち65が住民票を移す方法をとっており、区域外就学は3にとどまりました。住民票を残したい場合は、受け入れ側と、いま住んでいる市区町村の両方の教育委員会に申込前に確認してください。
Q.山村留学の費用は年間でいくらかかりますか?
子どもだけで暮らす方式なら、公式の募集要項の月謝・入園金・施設費を積み上げると、1年目の基本額はおおよそ58万〜112万円の範囲でした(砥部町の寮で約58万円、大岡ひじり学園の中学生で約112万円など。当サイトの試算で、月数が書かれていない団体は12か月と仮定)。これに預り金や給食費などの学校の徴収金、面会や行事の交通費、個人の費用、体験留学の費用が加わります。団体によって支払月数や入園金の有無が違うので、総額で比べてください。
Q.不登校の子でも山村留学を利用できますか?
一律には言えません。山村留学は地元校への通学が前提で、全国山村留学協会は養護や療育を目的とした受け入れは行っていないと明記しています。また、学校不適応などを理由に保護者の意向だけで送り出すと、かえってマイナスになる場合があるとしています。本人に通学の意思があるかを含め、体験留学と面接で受け入れ側とよく話し合ってください。
Q.夏休みだけの短期山村留学もありますか?
あります。長野県の案内では、短期山村留学(2泊3日〜1週間)の費用は1万数千円〜7万円程度で、ほかに現地までの交通費がかかります。夏休みのキャンプは5月頃から募集が始まることが多いので、1年間の留学を考えている場合も、まず短期で本人の反応を見るのがおすすめです。







