このページの要点

アメリカの大学に4年間通う費用は、留学生向けの公表額で年6万〜10万ドル前後が中心です。

  • 州立大学(州外料金)なら4年で約25万〜28万ドル、私立なら約39万ドル台という大学の公表額の例がある
  • 4年で卒業するのは初回入学・フルタイム学生の49.1%(NCES・2017年入学コホート)。5年目の1年分を予算に入れておく
  • 円建ての負担を押し上げているのは授業料よりも為替。ドルの公表授業料は実質では下がっている年もある

「アメリカの大学の学費は4年間でいくら」という問いには、2つの答え方があります。1つはCollege Boardが毎年出す平均(2025-26年度は州立の州外で年$50,920、私立非営利で年$65,470)、もう1つは志望校が留学生向けに公表している実額です。保護者が予算を決めるときに使うべきは後者で、そこには医療保険や国際学生料金など平均に入らない費目が載っています。さらに「4年で終わる」前提と「為替が動かない」前提の2つを外すと、必要額は大きく変わります。この記事では公表額を積み上げたうえで、その2つの前提を数字で外し、日本側で使える資金手段までつなげます。

結論:ルート別の4年間の総額早見表

POINT

まず押さえるのは「年間総額(Cost of Attendance)×4年」の相場です。州立の州外料金なら4年で約3,900万〜4,400万円、私立なら約6,100万円という水準になります。コミュニティカレッジ経由と私立大学では約2倍の差がつくのが、アメリカの特徴です。

アメリカの大学費用は「授業料」だけを見ても意味がありません。大学は Cost of Attendance(在学にかかる費用の見積り、以下COA)という形で、授業料・諸費・住居費・食費・書籍・交通・雑費をまとめて公表します。留学生が実際に用意すべき額はこのCOAで、I-20(入学許可証に相当する書類)に書かれる額の土台にもなります。

ルート別・4年間の総額(各大学が公表する2026-27年度の留学生向け年額を4年続くと仮定した単純積算。1ドル=156円換算)

ルート年間の公表額4年間の単純積算円換算(概算)
州立大学・州外料金(例:コロラド州立大学)$62,186$248,744約3,880万円
州立大学・州外料金(例:アリゾナ州立大学)$69,906$279,624約4,362万円
州立大学・州外料金(例:ワシントン大学シアトル校)$67,800$271,200約4,231万円
私立大学(例:ボストン大学)$98,419$393,676約6,141万円
コミュニティカレッジ2年+州立4年制2年(シアトルカレッジズ+アリゾナ州立大学)$28,500→$69,906$196,812約3,070万円

参考として、College Boardの2025-26年度の平均(米国人学生の学生予算)では、公立4年制の州外が年$50,920、私立非営利4年制が年$65,470です。4年分に単純に伸ばすと$203,680(約3,177万円)と$261,880(約4,085万円)になります。実際の志望校の公表額が平均より高めに出るのは、平均が米国人学生向けの予算で、留学生固有の費目を含まないからです(詳しくは後述します)。

出典:College Board「Trends in College Pricing and Student Aid 2025」図CP-1(2025-26年度・在学者数で重み付けした平均)、Arizona State University「International Student Cost of College」(2026–2027)、University of Washington「Cost of attendance」(2026-27・9か月)、Colorado State University「Estimated Expenses」(2026-2027)、Boston University「Tuition and Fees」(2026/2027)、Seattle Colleges International Programs「Cost of Attendance」(Fall 2026 - Summer 2027)。いずれも2026年10月30日に当サイトが取得。円換算は日本銀行「為替相場(東京インターバンク相場・月次)」の2026年9月の月中平均156.23円を1ドル=156円に丸めた値です。上表は各校の2026-27年度の額が4年続くと仮定した単純積算で、毎年の値上げは織り込んでいません。なお、各校の「年間の公表額」は含む費目が揃っていません。アリゾナ州立大学とコロラド州立大学は医療保険を総額に含みますが、ワシントン大学の予算表には保険の行がなく、ボストン大学は保険を別建てで請求します。シアトルカレッジズの$28,500には雑費(同校の注記で1学年$1,800)が含まれていません。費目の違いは次の2つの見出しで扱います。学費・諸費は各大学の決定で変わるため、出願時は必ず志望校の公式ページで最新額を確認してください。

「学費」と「4年間でかかるお金」は別物

POINT

公表される「授業料・諸費」は、総額の半分前後にすぎません。College Boardの2025-26年度の学生予算で見ると、公立4年制の州外では$50,920のうち授業料・諸費が$31,880、残りは住居食費$13,900と書籍・交通・雑費$5,140です。

「アメリカの大学の学費」で検索すると授業料の数字が出てきますが、家計から出ていくのはその上に住居費・食費・書籍・交通・雑費が乗った額です。College Boardはこれを「学生予算(student budget)」と呼び、各大学の奨学金課が作成するもので、COAを決める土台になると説明しています。つまり学生予算=COAの考え方です。

College Board 2025-26年度・区分別の学生予算の内訳(在学者数で重み付けした平均・米ドル)

区分授業料・諸費住居費・食費書籍・交通・その他年間の学生予算
公立2年制・地区内(通学)$4,150$10,850$6,320$21,320
公立4年制・州内(学内居住)$11,950$13,900$5,140$30,990
公立4年制・州外(学内居住)$31,880$13,900$5,140$50,920
私立非営利4年制(学内居住)$45,000$15,920$4,550$65,470

ここから読み取るべきことは2つあります。第一に、授業料の差は大きくても住居費・食費の差は小さいということです。公立4年制では州内でも州外でも住居食費は同じ$13,900で、差がつくのは授業料だけです。ただしこれは区分ごとの平均の話で、大学単位では都市部ほど高くなります(本記事が引く実額では、ボストン大学の住居費$13,170+食費$7,570に対し、シアトルカレッジズは住居費・食費を合わせて$13,350です)。第二に、だからこそ「授業料が安い大学を選ぶ」ことの効き目には上限があります。住居費・食費・書籍・交通・雑費の合計は、公立4年制なら年$19,000前後かかり、どの大学を選んでもほぼ発生します。海外大学の学費と年間費用の全体像では国をまたいだ比較で同じ構造を扱っているので、アメリカ以外も検討している場合は併せて読んでください。

出典:College Board「Trends in College Pricing and Student Aid 2025」図CP-1。「書籍・交通・その他」は、同図の学生予算から授業料・諸費と住居費・食費を差し引いた残差です(公立4年制は報告書本文でも$5,140と示されています)。公立2年制の学生予算$21,320は地区内に居住する通学者向けの数字で、留学生は原則として地区内料金を使えません。

平均に入っていない、留学生だけが払う費目

POINT

College Boardの平均は米国人学生の予算です。留学生の請求書や予算表には、医療保険や国際学生料金が加わります。帰国のための渡航費も、大学の予算表に計上される場合とされない場合があります。これが「平均より高く出る」理由で、しかも大学によって総額に含まれているかどうかが違います。

ここが各社の費用記事でいちばん抜けやすいところです。同じ「総額」という言葉を使っていても、医療保険が中に入っている大学と、別建てで請求される大学があります。実際に4校の公表ページを並べると、扱いがはっきり分かれます。

留学生固有の費目が総額に含まれるかどうか(各大学の公表ページ・2026-27年度)

大学公表されている年間総額医療保険その他の留学生固有費目
アリゾナ州立大学(州立)$69,906総額に含む($2,765)International student fee $400、Travel $1,650 を総額に含む
コロラド州立大学(州立)$62,186総額に含む($2,556)Other Expenses $5,538 の中に保険・書籍・雑費をまとめて計上
ワシントン大学シアトル校(州立)$67,800(非居住者)予算表に行がない予算表は書籍・住居食費・雑費・交通と授業料のみ
ボストン大学(私立)$98,419総額に含まない(別途請求)マサチューセッツ州法により医療保険の加入が義務。要件を満たす保険を示せない場合は大学のプランを購入
シアトルカレッジズ(コミュニティカレッジ)$28,500総額に含む($1,500)医療保険は加入必須で、各学期の登録時に自動で課される

保護者の実務としては、志望校のCOAページを開いたときに「health insurance」の行があるかどうかを最初に確認してください。行がなければ、その大学の総額は保険料を含まない数字で、年$1,500〜$3,000前後が上に乗ります。4年で$6,000〜$12,000、円換算で約94万〜187万円の差になるので、見落とすと予算が狂います。

出典:各大学の公表ページ(2026年10月30日に当サイトが取得)。アリゾナ州立大学の医療保険$2,765には同ページに「表示されている学生医療保険の料率は2025-2026年度のもので、2026-2027年度の料率は確定後に更新する」との注記があります。ワシントン大学の予算表に保険の行がないことは、同大学で保険が不要であることを意味しません。留学生への保険加入義務と料率は大学ごとに異なるため、志望校の国際学生課のページで必ず確認してください。

同じ大学でも年3万ドル違う——州内料金は使えない

POINT

州立大学には州内料金と州外料金があり、留学生は原則として州外料金です。ワシントン大学シアトル校の2026-27年度では、同じ住まい方で州内$36,746・非居住者$67,800。年$31,054の差で、4年なら約1,938万円の差になります。

「州立は安い」という言い方は、その州の住民にとっては正しく、留学生にとっては成り立ちません。州立大学の授業料が安いのは州の税金が投入されているからで、その恩恵は州内居住者に向けられています。日本から出願する場合はこの前提が効かないため、州立と私立の差は想像より小さくなります。

ワシントン大学シアトル校・学部学生の予算(2026-27年度・9か月・学内または学外居住の場合)

費目州内居住者非居住者(留学生を含む)
授業料$13,406$44,460
住居費・食費$18,858$18,858
書籍・教材$900$900
雑費$2,508$2,508
交通費$1,074$1,074
年間合計$36,746$67,800
4年間の単純積算$146,984(約2,293万円)$271,200(約4,231万円)

この表が示しているのは、差がついているのは授業料の1行だけだということです。住居費から交通費までは州内・非居住者で完全に同額です。したがって「州立の中で安い大学を探す」ときに見るべきは州外料金の額であり、州内料金のランキングはほとんど役に立ちません。アメリカ進学のルートそのものを比べたい場合はアメリカの大学進学の進め方を、国別に安い順で見たい場合は海外大学の費用が安い国を参照してください。

出典:University of Washington「Cost of attendance」(admit.washington.edu/costs/coa/・2026-27年度の9か月予算・2026年10月30日取得)。同ページには「シアトルの学生については年$210のU-Pass費用が授業料・諸費に含まれる」「専攻やプログラムによって追加の費用がかかる場合がある」との注記があります。州内料金の適用要件は州ごとに定められており、留学生がF-1の身分で居住要件を満たせるかは州と大学の規定によります。4年間の単純積算は2026-27年度の額が4年続くと仮定した計算です。

4年で卒業できるのは約半数——5年目を予算に入れる

POINT

アメリカの4年制大学で、初回入学・フルタイムの学士課程学生が4年で卒業する割合は49.1%です(NCES・2017年入学コホート)。同じ統計の非居住外国人の区分では56.5%とやや高くなりますが、それでも4割強は4年で終わっていません。「4年間でいくら」を計算するときは、5年目が起きうる前提で予算を組むのが現実的です。

日本の大学は4年で卒業するのが標準的な想定で、学年と単位の積み上げもそれに合わせて設計されています。アメリカは単位制の自由度が高く、専攻の変更・編入・インターンでの休学・履修の遅れなどで在学が延びることが珍しくありません。国の統計がそれをはっきり示しています。

アメリカの4年制大学の卒業率(初回入学・フルタイム・学士課程学生/2017年入学コホート)

設置区分全学生:4年以内全学生:6年以内非居住外国人:4年以内非居住外国人:6年以内
全体49.1%64.5%56.5%73.5%
公立46.1%63.4%54.0%71.1%
私立(非営利)56.5%68.5%60.4%77.0%

留学生に近い区分(非居住外国人)で見ても、公立で54.0%、私立非営利で60.4%です。全学生平均より高いとはいえ、4割前後は5年目に入ります。この数字を予算に落とすと、こうなります。年$69,906の大学なら、5年目が1年分そのまま乗って総額は$349,530(約5,453万円)。4年で終わった場合との差は約1,091万円です。ここを見込まずに4年分だけ用意していると、最後の1年で資金が尽きて帰国せざるを得ない、という最悪の形になります。

  • 専攻を変えた——取り直しが必要な必修科目が出て、卒業要件の充足が後ろにずれる
  • コミュニティカレッジから編入したが単位が一部しか認定されなかった——2+2が2+2.5になる
  • 履修できる学期が限られる科目(年1回開講の必修など)を取り逃した
  • インターンや研究で1学期休学した——費用は減るが卒業は遅れる
  • 英語力や学力の面で履修単位数を抑えた——1学期あたりの進度が落ちる

出典:NCES「Digest of Education Statistics」表326.10(2024年12月作成・2017年入学コホート。IPEDS Graduation Rates componentによる)。「非居住外国人」は同表で人種・民族を集計しない区分として置かれているもので、留学生に最も近い区分ですが、日本人留学生に限った率ではありません。全学生の列と同じ2017年入学コホートの値です。志望校ごとの4年卒業率は各大学や College Scorecard で公表されている場合があるため、出願校を絞る段階で確認する価値があります。

「学費は毎年高騰している」は円で見た話

POINT

College Boardによると、2015-16年度から2025-26年度の10年で、インフレ調整後の公表授業料・諸費は公立4年制の州内で7%下落、私立非営利4年制で2%上昇にとどまります。一方でドルは、同じ10年(2015年9月→2025年9月)で120.13円から147.93円へ約23%、直近の2026年9月までの11年なら156.23円へ約30%高くなりました。円建ての負担を押し上げてきた主因は、学費よりも為替です。

ここは多くの費用記事が取り違えているところです。名目のドル額は毎年上がっています(2025-26年度は州内+2.9%、州外+3.4%、私立+4.0%)。しかしアメリカの物価上昇を差し引いた実質では、公立の授業料は10年前より下がっています。それでも日本の家計が「高くなった」と感じるのは、ドルを買う円の量が増えたからです。三層に分けると見通しがよくなります。

「高騰」を三層に分解する(公表授業料・諸費)

見る層期間変化出典
名目のドル額(前年比)2024-25 → 2025-26公立州内 +2.9%/公立州外 +3.4%/私立非営利 +4.0%College Board Trends 2025
実質のドル額(インフレ調整後)2015-16 → 2025-26公立2年制 地区内 −10%/公立4年制 州内 −7%/私立非営利 +2%College Board Trends 2025 図CP-4
円建ての為替要因(実質の10年と同じ期間)2015年9月 → 2025年9月1ドル120.13円 → 147.93円(+23.1%)日本銀行 為替相場(東京インターバンク相場・月次)
円建ての為替要因(直近まで)2015年9月 → 2026年9月1ドル120.13円 → 156.23円(+30.0%)日本銀行 為替相場(東京インターバンク相場・月次)

予算を立てるうえでの含意は明確です。志望校の授業料が来年どれだけ上がるかを当てようとするより、為替が動いたときに自分の家の予算がどこまで耐えられるかを先に決めるほうが実益があります。年$69,906の大学に4年通う場合、レートだけで次のように動きます。

為替レート別・4年間の総額(年$69,906が4年続くと仮定した$279,624を換算)

1ドルあたり4年間の円換算156円のときとの差
140円約3,915万円約−447万円
150円約4,194万円約−168万円
156円(2026年9月の月中平均)約4,362万円—
160円約4,474万円約+112万円
170円約4,754万円約+392万円

出典:College Board「Trends in College Pricing and Student Aid 2025」(名目の前年比は同報告のHighlights、実質の10年変化は図CP-4)、日本銀行 主要時系列統計データ表「為替相場(東京インターバンク相場・月次)」東京市場ドル・円スポット17時時点/月中平均(更新日時2026年10月30日・収録終了期2026年9月)。図CP-4は地区内・州内・私立非営利の3区分で作られており、公立4年制の州外料金の10年実質変化は示されていません。為替の表は計算例であり、将来のレートの予想ではありません。

「見せる額」と「払う額」「払う時期」は別

POINT

I-20を出してもらうために証明する額と、実際に大学へ払う額と、それを払う時期は、3つとも別の話です。連邦規則はF-1の入国要件として「I-20に記載された額の資金的裏づけを示す書面を持っていること」を求めており、支払いは多くの大学で学期ごとの前払いです。

ここを分けて理解していないと、「4年分の資金を最初に用意しなければいけないのか」「口座にいくら入れておけばいいのか」で混乱します。順番に見ていきます。

  1. 1大学がCOA(1学年分の費用の見積り)を算定し、その額をI-20に記載する。コロラド州立大学は「Form I-20とForm DS-2019には資金の証明書類が必要で、当大学はこの見積り費用をその最低額として使っている」と明記しており、表に出ている「年間総額」がおおむねこれに当たる。
  2. 2出願者は、I-20に記載された額について資金的裏づけを示す書面(残高証明や奨学金の決定通知、保護者の支援誓約書など)を大学に提出する。連邦規則8 CFR 214.2(f)(1)(i)(B)は、F-1での入国にあたり「I-20に記載された額の資金的裏づけを示す書面を持っていること」を要件としている。
  3. 3実際に大学へ払うのは、学期ごとの請求書に対して。ボストン大学は「大学の請求は学期単位で、第1学期分は8月初旬までに全額支払い」と明記している。
  4. 4医療保険など別建ての費目は、大学によって第1学期の請求に合算される。ボストン大学は学生医療保険について「第1学期の請求とともに支払う」としている。

つまり「見せる額」は原則1学年分、「払う額」は学期ごとに半分ずつ、というのが一般的な形です。4年分を入学前に送金する必要はありませんが、入学前の数か月で初年度の半分近い金額が動くので、資金のタイミングは年単位ではなく学期単位で考える必要があります。日本側で資金を手当てする場合、入学手続きの締切と融資の実行日が噛み合うかを早めに確認してください。

出典:8 CFR 214.2(f)(1)(i)(B)(連邦規則集。条文本文を2026年10月30日に確認)、Colorado State University「Estimated Expenses」、Boston University「Tuition and Fees」(2026/2027年度。いずれも2026年10月30日取得)。I-20に記載される額や必要書類の様式は大学によって異なります。ビザ申請料やSEVIS費などの渡航前にかかる公的費用は改定されることがあり、金額は米国国務省(travel.state.gov)と米国移民関税執行局(ice.gov)の公式ページで最新の額を確認してください。本記事では金額を記載していません。

総額を下げる3つの道と、日本側の資金手段

POINT

下げ方は大きく3つです。①最初の2年をコミュニティカレッジに置き換える ②奨学金・大学の援助で自己負担を下げる ③そもそも州外料金が低い大学を選ぶ。そのうえで、足りない分を日本側の制度で埋めます。

① 最初の2年をコミュニティカレッジに置き換える

シアトルカレッジズの留学生向け公表額は、大学編入コースを含む区分で年$28,500(授業料$11,700・諸費$750・住居食費$13,350・書籍$750・医療保険$1,500・交通$450)です。これを2年、そのあとアリゾナ州立大学(年$69,906)を2年とすると、総額は$196,812(約3,070万円)。4年とも州立4年制に通った場合($279,624)との差は$82,812、約1,292万円になります。年額の差$41,406の内訳を見ると、約7割($30,159)は授業料・諸費の差で、住居費・食費の差は$5,469($13,350と$18,819)です。生活費はどのルートでも最初の2年から発生するので、下がるのは主に授業料の部分だと考えてください。制度の仕組みと注意点はコミュニティカレッジ留学で詳しく扱っています。

注意すべきなのは単位の移行です。編入先で単位が一部しか認定されないと在学が延び、節約した分を5年目の費用で失います。編入協定(articulation agreement)の有無と、認定される単位の範囲を、コミュニティカレッジを選ぶ段階で確認してください。

② 奨学金・大学の援助で自己負担を下げる

返済不要の奨学金や大学独自の給付が得られれば、総額そのものより自己負担が下がります。留学生が応募できる制度と、大学側が留学生に出す援助の有無は制度ごとに大きく違うため、個別の条件は海外大学の返済不要の奨学金にまとめています。この記事では「総額を下げる手段の一つ」として位置づけ、応募要件の詳細には立ち入りません。

③ 日本側の資金手段:国の教育ローン

日本政策金融公庫の「教育一般貸付(国の教育ローン)」には海外留学向けの扱いがあり、通常の上限350万円に対して、お子さま1人につき上限450万円まで借り入れできるとされています。公表されている条件を整理すると次のとおりです。

教育一般貸付(国の教育ローン)の海外留学向けの扱い(日本政策金融公庫の公表内容)

項目公表されている内容
融資限度額上限450万円までお借入可能(通常は上限350万円)
金利固定金利 年4.05%(令和8年7月時点)
対象となる留学短期(3ヵ月以上)留学も対象
世帯年収世帯年収(所得)の上限額が緩和
奨学金との関係日本学生支援機構の奨学金と併用できる

4年分の総額が3,000万円を超える世界では450万円は大きな額ではありませんが、入学前後に集中する支出のつなぎとして現実的な選択肢になります。高校留学の段階で同じ制度を検討する場合は高校留学で使える教育ローンも参考にしてください。

出典:日本政策金融公庫「教育一般貸付(国の教育ローン)」(jfc.go.jp/n/finance/search/ippan.html・2026年10月30日取得)。金利は同ページに「令和8年7月時点」と明記された値で、変動します。融資限度額450万円は「一定の要件に該当する場合」の上限として示されているもので、適用の可否・返済期間・保証の方法・必要書類は必ず公庫の公式ページと教育ローンコールセンターで確認してください。本記事では原典に記載のない条件(返済期間など)は記載していません。

見落とされがちな日本側の2つ——扶養控除と送金の記録

POINT

子が海外の大学に進学して非居住者になっても、19歳以上23歳未満であれば特定扶養親族として63万円の扶養控除の対象になり得ます。ただし年末調整や確定申告で送金関係書類の提出を求められるため、送金の記録を残しておく必要があります。

費用の話は「出ていくお金」だけで語られがちですが、日本側の税制で実質負担は変わります。令和5年分以後の所得税では、非居住者である扶養親族は原則として対象外になり、例外として(1)16歳以上30歳未満(2)70歳以上(3)30歳以上70歳未満で、留学により国内に住所および居所を有しなくなった人・障害者である人・納税者からその年において生活費または教育費に充てるための支払を38万円以上受けている人、のいずれかに該当する場合に限り控除対象扶養親族になります。大学生の年齢(18〜22歳前後)は(1)に収まるため、留学ビザ等書類は通常は不要です。

海外の大学に進学した子に関する扶養控除の整理

論点内容
控除額特定扶養親族(その年12月31日現在19歳以上23歳未満)は63万円。一般の控除対象扶養親族は38万円
非居住者でも対象か令和5年分以後は、16歳以上30歳未満であれば控除対象扶養親族に該当する
留学ビザ等書類30歳以上70歳未満で留学により国内に住所・居所がなくなった親族の場合に、親族関係書類に加えて必要。大学生の年齢では通常は不要
必要な書類親族関係書類と、送金関係書類または38万円送金書類。外国語の書類は和訳文も必要
所得の要件子の年間の合計所得金額が58万円以下(給与のみなら給与収入123万円以下)。令和8年分から適用される金額は62万円以下

実務としては、学費の送金を保護者名義から子の口座へ行う場合、金融機関の送金控えを年ごとにまとめて保管してください。学費を大学へ直接払った記録だけでは、子への生活費送金の証憑としては足りない場合があります。どの書類が必要かは勤務先の年末調整の案内か税務署で確認するのが確実です。

出典:国税庁タックスアンサーNo.1180「扶養控除」および「国外居住親族に係る扶養控除等の適用について」(いずれも2026年10月30日取得。根拠法令等=所法2、79、84、85、措法41の16)。税制は改正されます。合計所得金額の基準については、国税庁のページに「令和8年12月1日に施行され、令和8年分から適用される金額は『62万円以下』です」との注記があります。ご家庭の具体的な適用可否は、勤務先の年末調整の担当か所轄の税務署で確認してください。

保護者はこの順番で確認する

POINT

総額の計算は、志望校を決めてから始めるものではありません。「いくらまで出せるか」を先に決め、その枠に入る大学を探すほうが、出願の失敗が減ります。確認は4ステップです。

  1. 1ご家庭が4年間(+5年目の1年分)で出せる上限額を円で決める。為替が160円・170円になっても耐えられる額かを確認する。
  2. 2その上限を156円で割り、ドル建ての総額の枠を出す。5年分で割れば、年間いくらまでの大学なら狙えるかが出る。
  3. 3志望校候補のCOAページを開き、年間総額と、医療保険が総額に含まれているかを1校ずつ確認する。州立なら必ず州外料金の額を見る。
  4. 4枠に入らない場合は、コミュニティカレッジ経由・奨学金・州外料金の低い大学の3つを順に当てる。それでも入らなければ志望校の層を下げるか、ほかの国も含めて検討する。

避けたい

「州立なら安い」と聞いて、州内料金のランキングで志望校を絞った

こうすればOK

留学生は原則として州外料金なので、各大学の非居住者向け料金で比べる。ワシントン大学シアトル校では州内と非居住者で年$31,054の差がある

避けたい

年間総額×4年で資金計画を立て、ちょうど4年分を用意した

こうすればOK

4年で卒業するのは初回入学・フルタイム学生の49.1%(公立46.1%)、留学生に近い非居住外国人の区分でも56.5%(公立54.0%)。5年目の1年分を別枠で確保しておく

避けたい

「アメリカの学費は毎年高騰している」と聞いて、毎年10%増を見込んだ過大な試算をした

こうすればOK

名目の前年比は2025-26年度で+2.9〜4.0%、インフレ調整後の10年変化は公立で下落。円建ての変動は為替の影響が大きいので、学費の上昇率ではなく為替に対する耐性を確認する

避けたい

大学が出している総額に医療保険も入っていると思い込んだ

こうすればOK

COAページで「health insurance」の行を探す。行がなければ年$1,500〜$3,000前後を別に積む

避けたい

I-20のために4年分の資金を用意しなければならないと考えて断念した

こうすればOK

証明を求められるのはI-20に記載された額(原則1学年分)。実際の支払いは学期ごとの前払いなので、年単位ではなく学期単位で資金のタイミングを合わせる

まとめ:総額は「4年分×為替」ではなく「5年分×耐性」で考える

アメリカの大学の学費を4年間で見ると、州立の州外料金で約3,900万〜4,400万円、私立で約6,100万円という水準になります。ただしこの数字をそのまま予算にすると、2つの前提で足をすくわれます。4年で卒業するのは約半数(留学生に近い区分でも56.5%)という前提と、為替が動かないという前提です。この2つを外して「5年分」「レートが160円・170円でも耐えられるか」で枠を決めておけば、合格してから資金で詰まるという事態は避けられます。

そのうえで、志望校のCOAページを1校ずつ開き、年間総額と医療保険の扱いを確認することが最初の実務になります。足りない分はコミュニティカレッジ経由・奨学金・国の教育ローン・扶養控除の順に当てていけば、どこまで埋まるかが具体的に見えてきます。国をまたいだ比較に広げたいときは海外大学の学費と年間費用から、アメリカ進学のルート自体を考え直したいときはアメリカの大学進学の進め方から続けてください。

最後にチェック

予算の枠を決める前に、次の項目を確認できているかを見てください。

チェックはこの画面の中だけの表示で、保存も送信もされません。

Q.アメリカの大学の学費は、4年間で結局いくら用意すればよいのでしょうか。

大学が留学生向けに公表している年間総額(COA)を4年分積むのが出発点です。州立の州外料金なら年$62,000〜$70,000前後の例があり4年で約3,880万〜4,362万円、私立では年$98,000台の例があり4年で約6,141万円になります(1ドル156円換算)。ただし4年で卒業するのは初回入学・フルタイム学生の49.1%、留学生に近い非居住外国人の区分でも56.5%なので、5年目の1年分を別枠で確保しておくことをおすすめします。

Q.州立大学のほうが安いと聞きましたが、留学生でもそうなりますか。

州立の授業料が安いのは州内居住者向けの料金で、留学生は原則として州外料金です。ワシントン大学シアトル校の2026-27年度では、州内居住者の年間総額$36,746に対して非居住者は$67,800で、年$31,054の差があります。差がついているのは授業料の行だけで、住居費・食費・書籍・交通・雑費は同額です。州立を候補にする場合は必ず州外料金の額で比べてください。

Q.大学が公表している総額を用意すれば、ほかに費用はかからないのでしょうか。

大学によって違います。アリゾナ州立大学やコロラド州立大学は医療保険を総額に含めていますが、ボストン大学は医療保険を別建てで請求し、ワシントン大学の予算表には保険の行がありません。医療保険は年$1,500〜$3,000前後が目安で、4年で約94万〜187万円の差になります。COAページで「health insurance」の行があるかを確認してください。渡航前のビザ関連費用も別に必要です。

Q.アメリカの学費は毎年高騰していると聞きます。何%の上昇を見込めばよいですか。

2025-26年度の公表授業料・諸費の前年比は、公立4年制の州内が+2.9%、州外が+3.4%、私立非営利が+4.0%です(インフレ調整前)。一方で2015-16年度から2025-26年度の10年を見ると、インフレ調整後では公立4年制の州内は7%下落、私立非営利は2%上昇にとどまります。円建ての負担が重くなった主因は学費より為替で、同じ10年(2015年9月→2025年9月)で1ドルは120.13円から147.93円へ約23%、直近の2026年9月までなら156.23円へ約30%動いています。学費の上昇率を当てるより、為替への耐性を確認するほうが実益があります。

Q.コミュニティカレッジから編入すると、どのくらい下がりますか。

シアトルカレッジズの留学生向け公表額は年$28,500で、これを2年、そのあと年$69,906の州立大学を2年とすると総額$196,812(約3,070万円)です。4年とも州立4年制に通う$279,624(約4,362万円)との差は約1,292万円になります。ただし年額の差$41,406のうち約7割は授業料・諸費の差で、住居費・食費の差は$5,469にとどまります。生活費は最初の2年からどのルートでも発生します。編入先で単位が一部しか認定されないと在学が延びて節約分を失うので、編入協定と認定単位の範囲を先に確認してください。

Q.I-20をもらうために、4年分の資金を証明しなければならないのでしょうか。

証明を求められるのはI-20に記載された額で、これは原則として1学年分のCOAです。連邦規則8 CFR 214.2(f)(1)(i)(B)は、F-1での入国の要件として「I-20に記載された額の資金的裏づけを示す書面を持っていること」を定めています。実際の支払いは学期ごとの前払いが一般的で、ボストン大学は「請求は学期単位で、第1学期分は8月初旬までに全額支払い」と公表しています。必要書類の様式は大学ごとに異なるため、志望校の国際学生課のページを確認してください。

Q.子が海外の大学に進学すると、扶養控除は使えなくなりますか。

年齢によります。令和5年分以後の所得税では、非居住者である扶養親族は原則として控除対象外になりますが、16歳以上30歳未満であれば控除対象扶養親族に該当します。大学生の年齢(18〜22歳前後)はここに収まり、そのうち19歳以上23歳未満は特定扶養親族として63万円の控除対象です。ただし親族関係書類と送金関係書類(または38万円送金書類)の提出が必要で、子の年間の合計所得金額が58万円以下(令和8年分から62万円以下)という要件もあります。送金の控えは年ごとに保管してください。