このページの要点
オーストラリアの大学には、日本の高校卒業と共通テストの結果で直接出願できる大学があります。
- UNSWの2026年直接入学要件表は、日本の資格として「共通テスト(旧センター試験)+高校卒業証明」を掲示している。ファウンデーションは必須ではなく、3つのルートのうちの1つ
- 学士課程は3年のものが多い。ANU(Go8の1校)の2027年度の留学生向け年額はBachelor of Artsで51,170豪ドル。3年分の学費とOSHCで約1,717万円(生活費は別)
- 3年制でも日本の大学院に出願する道は学校教育法施行規則第155条第1項第4号の2に定めがある。ただし根拠条項は志望先の募集要項で確認する
「オーストラリアの大学に進学するには、まずファウンデーションコースに1年通うのが一般的」——検索上位の記事はほぼ例外なくこう書いています。ところが大学側が公表している受入資格を読むと、話は変わります。ニューサウスウェールズ大学(UNSW)が出している2026年の学部直接入学要件表には、日本の欄に「大学入学共通テスト(表記はNational Center Test)と高校卒業の証明」が受入資格として並んでいます。つまり直接入学・ファウンデーション経由・ディプロマ経由の3つは、どれが正しいかではなく、お子さんの成績と英語力、そしてご家庭がかけられる年数とお金で選ぶものです。この記事では、その3ルートの違いを年数と総額で整理し、さらに3年制の学位が帰国後にどう扱われるかまで、大学公式と法令の原文で確認していきます。
結論:3つのルートと、年数で決まる総額
POINT
オーストラリアの大学進学で最初に決まるのは学費ではなく在学年数です。学士課程が3年なので、直接入学かディプロマ経由なら合計3年、ファウンデーションを挟むと4年になります。1年増えるかどうかが、総額を数百万円単位で動かします。
日本の大学が4年制であるのに対し、オーストラリアの学士課程は3年のものが多くあります。オーストラリア国立大学(ANU)のBachelor of ArtsとBachelor of Scienceはどちらも「3 year full-time」、シドニー工科大学(UTS)のBachelor of Businessも「3 years full time」と公表されています。同じ年額なら、4年かかる進路に比べて1年分の学費と生活費がまるごと不要になります。ここがオーストラリアを選ぶ経済的な理由の中心です。ただし後述のとおり分野によっては3年で終わらないプログラムもあるため、年数は志望プログラムの公表値で確認してください。
進学ルート別・学士取得までの年数(入口の資格はUNSWの2026年直接入学要件表の区分に対応)
| ルート | 入口になる資格 | 大学で過ごす年数 | 学士取得までの合計 |
|---|---|---|---|
| 直接入学 | 高校の卒業+共通テストの結果(UNSWの区分H=recognised high school qualification) | 3年 | 3年 |
| ファウンデーション経由 | 高校の卒業+英語力(UNSWは「Go8のいずれかのFoundation Year program」を受入資格に挙げる) | 準備課程1年+3年 | 4年 |
| ディプロマ経由 | 高校の卒業+英語力(UNSWの区分D=college or polytechnic diploma の修了) | ディプロマ1年+2年次以降2年 | 3年 |
| 日本の大学に1年通ってから | 日本の大学の1年次修了(UNSWの区分B) | 3年 | 日本で1年+3年=4年 |
ディプロマ経由で「3年」になるのは、ディプロマで取った科目が学位の1年次分として認定され、2年次に編入する設計のためです。認定される単位数は提供機関と専攻によって違うので、志望校のカレッジが公表している編入条件を必ず確認してください。なお後述のとおり、ディプロマ経由はJASSOの支援対象の判定に関わる可能性があります。
日本の高校卒業から「直接入学」できるのか
POINT
できる大学があります。UNSWは国別の受入資格表で、日本について「共通テスト(表記はNational Center Test)+高校卒業の証明」を掲示しています。ただし必要な点数は公表されていません。卒業したという事実ではなく実際の成績で審査されるため、志望校への個別確認が最短経路です。
UNSWが公開している「Undergraduate direct entry requirements for 2026」には、国ごとの受入資格を並べた表があります。そのJapanの行には「B」「D」「H」の3つの記号が立ち、資格名として次のように書かれています。
「National Center Test for University Admission (Sentā) and evidence of successful completion of the Japanese Upper Secondary School Diploma」(大学入学共通テストと、日本の高等学校卒業を修了した証明)。出典:UNSW「Undergraduate direct entry requirements for 2026」(CRICOS Provider Code 00098G)。
同じ資料の「Accepted qualifications key」で記号の意味が定義されています。H=recognised high school qualification の修了、B=recognised university の学士課程1年次の修了、D=recognised college or polytechnic diploma の修了です。日本の行にHが立っているということは、高校の資格が学部の直接入学で受け付けられる資格として公表されている、という意味になります。シドニー大学が公開している受入資格の一覧でも、日本の資格は「National Center Test (Sentaa)」と記載されています。
それでも「ファウンデーションが一般的」と書かれる理由
受入資格として掲示されていることと、出願すれば通ることは別です。UNSWの同じ表には、ATAR・IB・中国の高考・韓国のCSATなど主要な資格ごとの必要点数を学部別に並べた一覧が付いています。ところがその点数表に日本の列はありません。つまり共通テストが何点なら足りるのかは公表されておらず、個別審査になります。表自体にも「This table is a guide only and actual entry requirements may be higher or lower than those indicated(この表は目安であり、実際の要件はこれより高いことも低いこともある)」「Students are assessed on actual results achieved and not simply completion of the qualification(卒業したという事実ではなく、実際に取った結果で評価する)」という注記が付いています。
基準が公表されていないルートは、エージェントにとっても見通しが立てにくく、成功率を示しにくいルートです。一方ファウンデーションは入口の基準が明示され、修了すれば提携大学へ進める設計になっています。説明しやすいほうが「一般的」として紹介されやすい——という構造を踏まえて読むと、上位記事の書き方の理由が見えてきます。参考までに、オーストラリアの大学が公表している学力水準の目安として、ANUのBachelor of ArtsとBachelor of Scienceはいずれも「ATAR 80/IB 31」を掲げています(検討の対象になる最低ランクは70、80以上で入学が保証されるという書き方です)。日本の資格の換算値がこれと並んで公表されていないことが、確認を必須にしています。
確認ポイント:UNSWもシドニー大学も「National Center Test(センター試験)」という表記を使っていますが、これは2020年1月の実施を最後に終了した旧試験の名称で、2021年1月から大学入学共通テストに替わっています。表記が更新されていないため、共通テストの成績がそのまま読み替えられるか、どの科目・何点が必要かは、出願前に各大学のアドミッションへ直接確認してください。 また、UNSWが見込み成績(forecast or predicted results)を受け付ける資格の一覧に日本の資格は含まれていません。
ファウンデーションとディプロマは、何がどう違うのか
POINT
ファウンデーションは「大学1年次の前に1年足す」準備課程、ディプロマは「大学1年次の代わりに1年使う」課程です。合計年数が4年と3年に分かれるのはこの違いによります。向き不向きは、学力より専攻が決まっているかどうかで分かれます。
ファウンデーションが向くご家庭
ファウンデーションは、進学先と専攻を在学中に決められるのが利点です。英語で学ぶ作法(レポートの書き方、引用、ディスカッション)を1年かけて身につけてから学位課程に入るので、1年次でつまずくリスクを下げられます。お子さんが「海外の大学に行きたいが学部は決めきれていない」「英語力が出願基準に少し届かない」という状態なら、この1年は保険として機能します。UNSWが受入資格に「Go8のいずれかの大学のFoundation Year program」を挙げているように、ファウンデーションは正式な入学資格の一つとして位置づけられています。
ディプロマが向くご家庭
ディプロマは、専攻がすでに決まっている場合に効きます。1年目から専攻の科目を学び、それが学位の1年次分として認定されて2年次に編入するため、合計年数は直接入学と同じ3年に収まります。UTSが入学資格を「Australian Year 12 qualification, Australian Qualifications Framework Diploma, or equivalent Australian or overseas qualification at the required level」と書いているように、オーストラリアの資格枠組み(AQF)のディプロマは、現地の高校卒業資格と並ぶ正式な入学資格です。日本の「専門学校経由だから格下」という感覚とは制度上の位置づけが違う点に注意してください。
避けたい
「直接入学は無理だと言われたので、ファウンデーションで申し込む」とエージェントの説明だけで決める
こうすればOK
志望校のアドミッションに「共通テストの成績で直接出願できるか、必要な水準はどれくらいか」をメールで直接問い合わせ、回答を保存してから比較する
避けたい
ファウンデーションとディプロマを「どちらも1年の準備コース」と同じものとして費用だけで比べる
こうすればOK
合計年数(4年か3年か)で比べる。1年の差は学費だけでなく生活費・OSHC・仕送りの期間すべてに効く
避けたい
専攻が決まっていないのにディプロマを選び、2年次編入後に専攻を変えて単位を捨てる
こうすればOK
専攻が固まっていなければファウンデーション、固まっていればディプロマ。年数の損得より、やり直しが起きない設計を優先する
学費と必須費目:年額だけでは総額にならない
POINT
学費のほかに、留学生健康保険(OSHC)と学生サービス料(SSAF)が必須でかかります。さらに学費は在学中も毎年見直されます。「年額×3年」の単純積算は、構造的に下振れした数字です。
ANUが公表している2027年度の留学生向け年間目安額は、Bachelor of Artsが51,170豪ドル、Bachelor of Scienceが57,640豪ドルです(どちらも標準履修量144ユニット・3年)。専攻で年71万円ほど、3年で約214万円の差がつきます。円換算は、オーストラリア準備銀行(RBA)が公表した2026年10月30日の対円レート110.82円をもとに、本記事では1豪ドル=110円で概算します。
ANUの2027年度・留学生向け年額をもとにした3年間の積み上げ(1豪ドル=110円で概算。生活費・SSAF・在学中の値上げ分は含まない)
| プログラム | 年額 | 3年分の学費 | OSHC 36か月 | 合計(豪ドル) | 円換算 |
|---|---|---|---|---|---|
| Bachelor of Arts | 51,170豪ドル | 153,510豪ドル | 2,605豪ドル | 156,115豪ドル | 約1,717万円 |
| Bachelor of Science | 57,640豪ドル | 172,920豪ドル | 2,605豪ドル | 175,525豪ドル | 約1,931万円 |
OSHCは学生ビザの条件として加入が必須の留学生用健康保険です。ANUが示しているAllianz Care Australiaの料率(2026年7月1日以降に開始する契約)では、単身の場合12か月838豪ドル、24か月1,735豪ドル、36か月2,605豪ドル、48か月3,961豪ドルです。36か月なら約29万円になります。同時にANUは「Your OSHC policy duration must match the full length of stay for your student visa(OSHCの契約期間は学生ビザの滞在期間全体に一致させる必要がある)」と明記しています。ビザは課程の期間より長めに出るのが通例なので、36か月ぴったりでは足りず、48か月分(約44万円)を見ておくほうが現実的です。
学費以外に必須で発生する費目(出典:ANUの公表資料)
| 費目 | 内容 | 金額の例 |
|---|---|---|
| OSHC(留学生健康保険) | 学生ビザの条件。契約期間はビザの滞在期間全体に一致させる。上の3年間の積み上げは36か月で計算しているため、48か月分にすると1,356豪ドル(約15万円)が上乗せになる | 単身36か月で2,605豪ドル(約29万円)/48か月で3,961豪ドル(約44万円) |
| SSAF(学生サービス・アメニティ料) | ANUは「留学生は学費に加えてServices and Amenities Feeの支払いが必要」と明記 | 大学・年度ごとに公表(志望校の公表額で確認) |
| 学費の値上げ分 | ANUは「All fees are subject to annual reviews and indexation. This means that they may increase each year during your studies」と明記 | 在学中の毎年の改定分(単純積算には含まれない) |
| 生活費 | 住居・食費・交通など。学生ビザの財政能力要件として金額が定められている | 内務省の公式ページで最新額を確認(本記事では金額を示さない) |
この金額をオーストラリアの代表値として使わないでください。 ANUはGroup of Eight(研究型の有力8大学)の1校で、学費は大学・専攻によって幅があります。当サイトの海外大学の費用が安い国は、オーストラリアの学士課程を「20,000〜45,000豪ドル/年」(2024年時点の調査)として扱っており、ANUの額はその上限を超えます。年度が違い、対象にしている大学の範囲も違うためで、どちらかが誤りというわけではありません。予算を立てるときは、志望校が公表している年額に置き換えて計算してください。 国をまたいだ比較は海外大学の学費にまとめています。
確認ポイント:学生ビザ(subclass 500)の申請料と財政能力要件の額、そして出願時に求められるGenuine Student requirementの内容は、オーストラリア内務省(Department of Home Affairs)の公式ページで必ず最新額をご確認ください。本記事では、公式ページから金額を確定できなかったため数字を書いていません。なお検索上位の記事の1本は財政要件として「24,505豪ドル」を挙げていますが、この額には年度の記載がなく、要件額は改定されます。古い数字で資金計画を立てないよう注意してください。高校留学時のビザ手続きはオーストラリアの学生ビザと高校生の手続きで扱っています。
円換算について:本記事の円換算はRBAの2026年10月30日のレート(110.82円)に基づく概算です。海外大学の学費を国別に比べる記事やオーストラリア高校留学の費用の円換算は、それぞれ作成時点のレートに基づくため、同じ豪ドル額でも円の表示が異なります。比べるときは豪ドル額で突き合わせてください。
3年制が効くところ、引っかかるところ
POINT
3年で学士が取れるのは大きな利点ですが、日本の大学院に出願するときに「16年の課程」という要件が目に入って不安になるご家庭が多いところです。結論として、3年制でも出願できる道は学校教育法施行規則に定めがあります。ただしどの条項で資格を満たすかは志望先が決めます。
日本の大学院に入学できるのは学士の学位を持つ人が基本ですが、それ以外に「大学を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者」が学校教育法施行規則第155条第1項に列挙されています。このうち第2号は「外国において、学校教育における十六年(中略)の課程を修了した者」です。日本の高校までが12年、オーストラリアの学士が3年なので合計15年。この号だけを見ると1年足りないことになり、「3年制だと日本の大学院に行けないのでは」という心配が生まれます。
ところが同じ条文には第4号の2があり、次のように定められています。「外国の大学その他の外国の学校(その教育研究活動等の総合的な状況について、当該外国の政府又は関係機関の認証を受けた者による評価を受けたもの又はこれに準ずるものとして文部科学大臣が別に指定するものに限る。)において、修業年限が三年(中略)以上である課程を修了すること(中略)により、学士の学位に相当する学位を授与された者」。つまり修業年限3年以上の課程で学士相当の学位を得た人は、大学を卒業した者と同等以上の学力があると認められる対象に含まれています。さらに第8号には、大学院による個別の入学資格審査で認められ22歳に達した者という道もあります。
日本の大学院への出願資格と、オーストラリアの3年制学士の関係(学校教育法施行規則第155条第1項)
| 条項 | 定めている要件 | 3年制学士の扱い |
|---|---|---|
| 第2号 | 外国において学校教育における16年(医学等の博士課程への入学は18年)の課程を修了した者 | 12年+3年=15年のため、この号だけでは満たさない |
| 第4号の2 | 認証評価を受けた外国の学校で、修業年限3年以上の課程を修了して学士相当の学位を授与された者 | 3年制でも該当しうる。実務上の根拠になる条項 |
| 第8号 | 大学院の個別の入学資格審査により、大学卒業と同等以上の学力があると認められ22歳に達した者 | 条項での判定が難しい場合の個別審査の道 |
確認ポイント:第4号の2には「当該外国の政府又は関係機関の認証を受けた者による評価を受けたもの又はこれに準ずるものとして文部科学大臣が別に指定するものに限る」という限定が付いています。志望する大学院がどの号を根拠に出願資格を認めるかは、その大学院の募集要項が定めます。 進学を具体的に考える段階になったら、候補の大学院の「入学資格」の条項と、個別の入学資格審査の有無・締切を必ず確認してください。日本の大学と併願する場合の整理は海外大学と日本の大学の併願にまとめています。
もう一つの落とし穴:Honoursで4年になる場合
「3年で終わる」は、そのプログラムの標準修業年限が3年の場合の話です。オーストラリアにはHonours(優等学位)という仕組みがあり、扱いは大学によって2通りに分かれます。ANUの Bachelor of International Relations (Honours) は「A single one year undergraduate award」=学士を終えた人が入る独立した1年のプログラムで、2027年度の留学生向け年額は54,540豪ドル(約600万円)、48ユニットです。一方UNSWの2026年直接入学要件表には、B Engineering (Hons)・B Psychology (Hons)・B Social Work (Hons)・B City Planning (Hons)・B Landscape Architecture (Hons) など、学位名にはじめから (Hons) を含むプログラムが多数並んでいます。工学・心理・社会福祉・都市計画などの分野では、Honoursは研究職向けの上乗せではなく学位そのものの形です。
つまり「オーストラリアの学士は3年」は、すべてのプログラムに当てはまる一般則ではありません。3年分の予算だけを組んでいると、進路が見えてきた3年目に「もう1年」が浮上して資金計画が崩れます。出願の段階で、志望プログラムの公表されている修業年限と、Honoursが別課程か学位に含まれるかを確認してください。
日本側の資金手段:JASSOの支援は「どのルートか」で変わる
POINT
JASSOの海外留学支援制度(学部学位取得型)は、オーストラリアなら月額29万7,000円。ただし授業料は支給されません。さらにファウンデーション(大学入学準備コース)が対象になるのは「日本の高校資格では入学条件を満たさない場合」に限られ、編入前提のルートは対象外とされています。ルート選びが支援の可否に直結します。
海外の大学で学士を取る日本人学生向けの公的支援として、JASSO(日本学生支援機構)の「海外留学支援制度(学部学位取得型)」があります。2027年度の募集要項によると、奨学金月額は留学先の国・地域で区分され、オーストラリアは区分Bの29万7,000円(2026年度実績)です。新規採用者には支援開始時に渡航支援金1万円が支給されます。奨学金だけで36か月受け取れば合計1,069万2,000円です。
JASSO海外留学支援制度(学部学位取得型)の奨学金月額・2026年度実績(主な区分を抜粋。出典:2027年度募集要項)
| 区分 | 月額 | 主な国・地域 |
|---|---|---|
| A | 352,000円 | カナダ・アメリカ合衆国・英国・シンガポール |
| B | 297,000円 | オーストラリア・ニュージーランド |
| C | 294,000円 | フィンランド・オランダ |
| D | 239,000円 | マレーシア |
| G | 194,000円 | フランス・ドイツ・イタリア・スペイン |
| H | 139,000円 | 台湾 |
ここで保護者が押さえておくべき点が3つあります。1つ目は、この制度の募集要項に「授業料」という語が一度も出てこないことです。支援の内容は奨学金月額と渡航支援金で、授業料の補助はありません。アメリカや英国のA区分と比べてオーストラリアは月5万5,000円低く、36か月で約198万円の差になりますが、どちらにしても学費は家庭の負担として残ります。2つ目は採用規模で、2026年度の採用人数は140名(2027年度は未定)。枠は広くありません。
3つ目が、本記事のルート選びに直結する点です。募集要項は対象となる大学について、「短期大学や専修学校の専門課程又は専攻科、コミュニティカレッジ等に入学し、その後、大学に編入学して学士の学位取得を目指す場合は、本制度の支援対象外です」と明記しています。対象課程も「学士の学位が取得でき、かつフルタイムの学生として在籍する課程」で、学位の英語表記が原則Bachelorであることが条件です。さらに支援期間中に他大学へ転学・編入することは原則認められません。
ファウンデーションは対象になる。ただし条件が付く
募集要項は対象課程として、学士課程とは別に「大学入学準備コース(該当者のみ上記(1)開始前に対象)」を立てています。定義は「学士課程への入学に必要な準備を目的として、諸外国等に所在する留学先大学の付属機関やそれに準ずる教育機関によって提供されるコース」で、ファウンデーションがこれに当たります。ただし条件が2つあります。
- 「原則、日本の中等教育修了資格が留学先大学の学士課程入学条件を満たさない場合に限り、当該学生を対象とした大学入学準備コースも支援の対象課程とします」——つまり直接入学できる大学に出願できる学力があるなら、準備コースは支援の対象になりません。前半で見た「日本の高校資格で直接出願できるか」の確認が、ここで資金面にも効いてきます。
- 「留学開始時(支援期間開始時)に、応募書類に記入した第1希望~第4希望のうち、いずれかの留学先大学における学士課程の「条件付」入学許可を得ていることが条件です」——準備コースに入るだけでは足りず、その先の学士課程の内定が要ります。
- 「語学力の不足等を補うための語学学校や語学コース(ESL等)等のことではありません」——英語力を上げるための語学留学は対象外です。
支援期間は「原則4年」で、「学士課程の学生として留学先大学が定める学位取得に必要な最短期間(標準修業年限)及び(該当者のみ)大学入学準備コースの期間を合わせて」と定義されています。学士が3年のオーストラリアなら、準備コース1年+学士3年=4年がちょうど収まる計算です。延長は原則認められません。
見落とされやすい資格要件:応募は高校在学中か卒業後3年以内が基本で、かつ「応募締切時までに、国内外の高等教育機関(大学院、大学、短期大学、高等専門学校(第4学年以上)、専修学校の専門課程又は専攻科)及び大学入学準備コース等に在籍したことがない者」と定められています。先にファウンデーションへ入ってから応募することはできません。 語学要件はIELTS 6.0(Academic Module Overall Band Score)以上等、成績要件は在学した全高校の全履修科目の評定平均値が5段階で3.7以上に相当することが求められます。
確認ポイント:ディプロマ経由(大学付属カレッジ等で1年学んでから2年次に編入する設計)については、募集要項に明記がありません。「コミュニティカレッジ等に入学し、その後、大学に編入学して」に該当するのか、それとも「大学入学準備コース」として扱われるのかで結論が変わるため、この制度の利用を考えているなら出願前にJASSOへ直接確認してください。 対象は2027年4月1日から2028年3月31日までに留学を開始する計画です。完全オンラインで日本以外に滞在せずに学位を取得できる課程も対象外とされています。民間と自治体の制度は返済不要の海外大学奨学金で扱っています。
出願から渡航までの時期:3月卒業との接続に注意
POINT
入学の回数は大学によって違います。ANU・UTSは2月と7月の2学期制、UNSWは2月・6月・9月の3学期制です。日本の高校は3月卒業なので2月入学には卒業が間に合わず、どの入学回を狙えるかで空白期間が決まります。
ANUはSemester 1が2月、Semester 2が7月の開始で、国際出願の受諾期限はSemester 1が海外から1月15日、Semester 2が6月30日と公表されています。UTSのBachelor of BusinessもAutumn(2〜3月)とSpring(7〜8月)の2回です。一方UNSWは3学期制で、合格通知の時期を「September to January for Term 1 (February intake)/May for Term 2 (June intake)/June to August for Term 3 (September intake)」と公表しており、2月・6月・9月の3つの入学回があります。「オーストラリアの大学は2月と7月」と一括りにせず、志望校の学年暦を確認してください。日本の高校の卒業は3月なので、どの大学でも2月中旬に始まる回には卒業証明が間に合いません。
ここで前述のUNSWの注記が効いてきます。UNSWが見込み成績(forecast or predicted results)を受け付ける資格の一覧には、IB・GCE A-Level・インドのCBSE・韓国CSATの模試などが並ぶ一方で、日本の資格は含まれていません。つまり確定した結果での出願が前提になります。共通テストは1月実施、高校卒業は3月。この2つが揃うタイミングから考えると、2学期制のANU・UTSなら7月入学、3学期制のUNSWなら6月(Term 2)または9月(Term 3)が、卒業後に狙える最初の入学回になります。
入学回と、日本の3月卒業からの接続(ANU・UTS・UNSWの公表日程をもとに整理。受諾期限はANUの国際出願で Semester 1 が海外から1月15日、Semester 2 が6月30日)
| 入学回 | 開始 | 採用している大学の例 | 日本の3月卒業からの接続 |
|---|---|---|---|
| 2月(Semester 1/Term 1) | 2月中旬 | ANU・UTS・UNSW | 卒業前のため同年の入学は難しい。翌年2月なら卒業から約11か月空く |
| 6月(Term 2) | 6月 | UNSW(3学期制) | 卒業から約3か月。2学期制の大学にはない選択肢 |
| 7月(Semester 2) | 7月中旬 | ANU・UTS | 卒業から約4か月。2学期制の大学で卒業後に狙える最初の回 |
| 9月(Term 3) | 9月 | UNSW(3学期制) | 卒業から約6か月。準備期間を長めに取りたい場合の選択肢 |
空いた期間の使い方は、資金と目的で決めてください。英語力が出願基準に届いていなければ語学課程やIELTSの受験に充てる選択があります(IELTSとはで試験の仕組みを整理しています)。逆に基準を満たしているなら、空白を短くできる7月入学を軸に、出願実務を前倒しするのが有利です。出願書類の揃え方は海外大学の出願にまとめています。
向いているご家庭・慎重に考えたいご家庭
POINT
オーストラリアが向くのは「3年で学位を取り、費用と期間を圧縮したい」ご家庭です。逆に、進路の選択肢を広く残したい場合や、専攻が固まっていない場合は、年数が伸びる前提で資金計画を組む必要があります。
- 向いている:専攻が決まっていて、3年で学士を取り切りたい。英語力が出願基準に近く、直接入学かディプロマで年数を増やさずに進める見通しがある。
- 向いている:日本との時差が小さく(1〜2時間程度)、保護者が連絡を取りやすい環境を重視したい。渡航の負担も北米・欧州より軽い。
- 慎重に考えたい:専攻が固まっていない。ファウンデーションで1年増える前提の資金計画になるため、総額が4年分に近づく。
- 慎重に考えたい:帰国後に日本の大学院を強く想定している。出願できる道はあるが、志望先ごとに根拠条項と個別審査の確認が必要になる。
- 慎重に考えたい:JASSOの学部学位取得型を資金計画の柱にしている。授業料は支給されず、採用枠も限られ、ルートによって対象外の判定がありうる。
もう一つ、保護者からよく聞かれるのが卒業後です。オーストラリアには、学位を修了した留学生が一定期間現地で就労できるTemporary Graduate visa(subclass 485)という枠組みがあります。ただし対象となる学位・申請できる期間・年齢の要件は改定が重ねられている分野です。本記事では内務省の公式ページから要件を確定できなかったため、期間や年齢の数字は示しません。現地就職やその先の滞在まで視野に入れるご家庭は、内務省の公式ページで最新の要件を必ずご確認ください。
なお、高校段階からオーストラリアに出す選択とは別の判断です。高校留学を検討されている場合はオーストラリアの高校留学をご覧ください。国をまたいで進学先を比べる段階なら海外大学進学ガイド、アメリカと並べて考えるならアメリカの大学進学が土台になります。
保護者の確認順序:この4つを順番に埋める
POINT
情報が大学ごとに散らばっている分野です。確認する順番を決めておくと、説明会やエージェント面談で聞き漏らしがなくなり、話を比較できる形で持ち帰れます。
- 1志望校のアドミッションに直接聞く:共通テストの結果で直接出願できるか、必要な水準はどれくらいか、見込み成績を受け付けるか。回答はメールで保存する(基準が非公表なので、ここが最も情報価値が高い)。
- 2年数を確定する:直接入学・ファウンデーション・ディプロマのどれになるか。合計が3年か4年かで、学費・生活費・OSHCの期間がすべて動く。Honoursが前提の分野かも確認する。
- 3必須費目を足す:学費の年額に、OSHC(ビザ期間に合わせた月数)とSSAF、そして在学中の値上げ分を加える。生活費は内務省の財政能力要件の最新額で確認する。
- 4帰国後と資金手段を確認する:日本の大学院を想定するなら志望先の入学資格の条項。JASSOを使うなら、選んだルートが対象になるかをJASSOへ確認する。
まとめ
オーストラリアの大学進学は、「ファウンデーションが必須」という前提から入ると選択肢を1つ失います。UNSWの2026年直接入学要件表には日本の高校資格が受入資格として掲示されており、直接入学・ファウンデーション経由・ディプロマ経由・日本の大学1年次修了後という複数の入口が公表されています。ただし日本の資格については必要点数が公表されておらず、見込み成績も受け付けられないため、志望校への直接確認が最初の一手になります。
費用は年額だけでは決まりません。学士課程が3年という構造が効く一方で、ファウンデーションを挟めば4年になり、OSHCとSSAF、在学中の値上げ分が上に乗ります。ANUの2027年度の公表額で見ると、Bachelor of Artsの3年分とOSHC36か月で約1,717万円、Bachelor of Scienceで約1,931万円(1豪ドル=110円換算、生活費は別)という水準です。帰国後の進路については、3年制でも日本の大学院への出願資格の定めが学校教育法施行規則第155条第1項第4号の2にあります。JASSOの学部学位取得型はオーストラリアで月額29万7,000円ですが授業料は出ず、編入前提のルートは対象外とされています。年数・必須費目・帰国後の資格・資金手段の4つを、この順番で埋めていってください。
最後にチェック
動き出す前に、次の項目を確認できているかを見てください。
チェックはこの画面の中だけの表示で、保存も送信もされません。
Q.日本の高校を卒業しただけでは、オーストラリアの大学に入れないのですか。
大学によります。UNSWの「Undergraduate direct entry requirements for 2026」には、日本の受入資格として「大学入学共通テスト(表記はNational Center Test)と高校卒業の証明」が掲示されており、高校の資格(区分H)で学部に直接出願する道が公表されています。シドニー大学の受入資格一覧にも日本の資格として同じ試験名が載っています。ただし必要な点数は公表されておらず、「卒業したという事実ではなく実際の成績で審査する」と注記されています。志望校のアドミッションに直接確認してください。
Q.オーストラリアの大学は3年で卒業できるので、日本の4年制より安く済むということでしょうか。
年数の面では有利です。ANUのBachelor of ArtsとBachelor of Science、UTSのBachelor of Businessはいずれも3年制と公表されています。ただし留学生向けの学費は国内学生とは別で、ANUの2027年度はBachelor of Artsが年51,170豪ドル、Bachelor of Scienceが年57,640豪ドルです。3年分とOSHC36か月で約1,717万〜1,931万円(1豪ドル=110円換算・生活費別)になります。安さではなく「同じ金額で1年短い」という構造で捉えてください。
Q.3年制の学士だと、帰国後に日本の大学院を受けられないと聞きました。
一般論としては成り立ちません。学校教育法施行規則第155条第1項第2号は「外国において、学校教育における十六年(中略)の課程を修了した者」を挙げており、12年+3年=15年ではこの号を満たしません。しかし同項第4号の2が、認証評価を受けた外国の学校で修業年限3年以上の課程を修了して学士相当の学位を授与された者を対象に含めています。第8号には大学院による個別の入学資格審査の道もあります。どの号を根拠にするかは志望先の募集要項が定めるため、出願前に確認してください。
Q.入学の時期はいつを狙えばよいですか。
日本の高校は3月卒業なので、2月に始まる回には卒業証明が間に合いません。狙えるのは卒業後の回です。ANU・UTSは2月と7月の2学期制で、この場合は7月入学が卒業後の最初の回になります(ANUの受諾期限はSemester 1が海外から1月15日、Semester 2が6月30日)。一方UNSWは3学期制で、合格通知の時期を2月(Term 1)・6月(Term 2)・9月(Term 3)の3つの入学回について公表しているため、6月や9月という選択肢もあります。UNSWが見込み成績を受け付ける資格の一覧に日本の資格が含まれていないことも、確定した成績が出てからの回を選ぶ理由になります。志望校の学年暦を必ず確認してください。
Q.学費以外に、必ずかかるお金は何ですか。
留学生健康保険(OSHC)と学生サービス・アメニティ料(SSAF)です。OSHCはANUが示すAllianz Care Australiaの料率(2026年7月1日以降開始の契約)で単身36か月2,605豪ドル、48か月3,961豪ドル。ANUは契約期間を学生ビザの滞在期間全体に一致させる必要があると明記しているため、課程が3年でも48か月分を見込むほうが安全です。ANUは学費について「毎年見直しと指数調整の対象で、在学中に毎年上がる可能性がある」とも明記しています。生活費と学生ビザの財政能力要件の額は、内務省の公式ページで最新額をご確認ください。
Q.JASSOの奨学金はオーストラリアでも使えますか。
海外留学支援制度(学部学位取得型)の対象で、2027年度募集要項では区分Bの月額29万7,000円(2026年度実績)、新規採用者に渡航支援金1万円です。ただし注意点があります。募集要項に「授業料」の記載がなく授業料の補助はないこと、2026年度の採用人数が140名で枠が限られること、「コミュニティカレッジ等に入学し、その後、大学に編入学して学士の学位取得を目指す場合は支援対象外」と明記されていることです。ファウンデーション(大学入学準備コース)は対象課程に挙げられていますが、「原則、日本の中等教育修了資格が留学先大学の学士課程入学条件を満たさない場合に限り」対象で、留学開始時に第1〜第4希望のいずれかの大学の学士課程の「条件付」入学許可が必要です。また応募締切時までに大学入学準備コース等に在籍したことがない者という要件があるため、先にファウンデーションへ入ってからの応募はできません。ディプロマ経由の扱いは明記がないので、JASSOへ直接確認してください。






