車両保険を付け続けるかは、車の年数だけでは決まりません。更新案内の車両保険金額、同じ条件での「あり/限定型/なし」の年間保険料差、免責後に受け取れる額、修理や買い替えを賄える自己資金、ローン残債を並べて判断します。この記事は2026年10月13日時点(各ページの取得日)の保険会社・損害保険料率算出機構の公開情報で書いています。保険料の例は、それぞれ保険始期が異なる特定条件の1例です。
この記事の要点
- 車両保険の保険金額は「契約時の時価相当額」で決まり、自由には設定できません。年式が古くなるほど選べる金額は下がります
- 「初度登録から10年程度」はSBI損保が示す検討の目安で、保険会社の基準ではありません。15年超〜20年では引受されない場合もあります
- 公表例の年間差額と、仮定した時価(20〜100万円)を割った編集部算出の単純式で、見直しの補助線を引けます。事故確率は含まず、一律基準にはなりません
- 全損なら免責は引かれず保険金額が全額、分損は損害額から免責を引いた額です。時価が低いと少額修理には使いにくくなります
- 残債・災害リスク・車がないと困る度合いが高いなら、古い車でも補償を残す余地があります
車両保険は車齢だけでなく時価・保険料差・自己資金・残債の4軸で決める
車両保険の必要性は車齢だけでなく、受取上限となる車両保険金額、年間保険料差、免責、自己資金、残債を並べて判断します。次の表で、自分の状況に近い行を探してください。
| 状況 | 候補 | 理由 |
|---|---|---|
| 修理や買い替えの費用を自己資金で賄え、車がなくても大きく困らない | なし、または限定型 | 保険料差を自己負担に回せる |
| 自己資金は賄えるが、盗難・火災・台風などは備えたい | 限定型(エコノミー型) | 相手車両との事故・火災・台風・盗難・飛び石などは補償される一方、単独事故・転覆墜落は対象外(SBI損保「車対車+限定A」) |
| 自己資金が不安で、単独事故も含めて備えたい | 一般型 | 補償範囲が広い。ただし保険金額の上限は時価相当額 |
| 古い車だが中古車ローンの残債が残っている | 付ける余地あり | SBI損保は、ローン残債・自然災害リスクが高い地域での保管・車がないと生活に支障が出る場合を、古い車でも検討する場面として挙げる |
車両保険金額は、契約時の時価相当額(同車種・年式・型式・消耗度が同程度の市場販売価額相当額)で設定します(SBI損保)。古い車ほど時価が下がり、選べる金額も低くなります(アクサ損保)。表の「保険金額」に当たる数字は、保険証券や更新案内で確認できます。なお、中古車を購入する場面では 中古車 初めて 購入 で購入全体の準備を整理しています。
10年は見直しの目安だが、加入できる上限年数ではない
「何年目で外すか」は、保険会社の基準ではなく目安の話です。次の表では、見直しの目安と加入の可否に関わる話を分けています。
| 年数・条件 | 内容 | 出典・条件 |
|---|---|---|
| 1年で約1割程度 | 購入後に経過した車の時価相当額の目安の下がり方(「1割」が前年比か新車価格比かは原文に記載なし) | SBI損保 |
| 初度登録から10年程度 | 古い車の車両保険が必要な期間の1つの目安。時価が高いうちは自己負担の修理費が高額になるため | SBI損保の見解 |
| 初度登録から15年を超えたあたり | 車両保険に加入できなくなる場合がある(保険会社により異なる) | SBI損保 |
| 初度登録から15〜20年経過 | 保険会社が引受をしない可能性が高くなる | SBI損保 |
| 初度登録(検査)年月から18年以上 | 車両保険をつけられない場合がある。車両料率クラスが17の車も同様 | ソニー損保の例。他社と基準は異なる |
つまり、10年は「見直しを始める目安」、15〜20年は「引受可否を確認する目安」であり、どちらも一律の基準ではありません。更新時は、契約継続のたびに車両保険金額が下がっていく点(ソニー損保)も確認してください。
損害保険料率算出機構の参考純率では、普通・小型乗用車の車両保険には初度登録後の経過期間による区分がありません。型式別料率クラスは自家用普通・小型乗用車で1〜17のクラスがあり、クラス17と1の較差は約4.30倍です(参考純率。実際の保険料は各社が設定)。保険料は年式だけでなく、型式なども関わります。
保険金額が上がっても保険料はあまり変わらない例
アクサ損保の公表例(2026年9月時点の記載・保険始期2026年6月1日)では、カローラ(MZEA17)・初度登録2026年1月・20等級・東京在住47歳・免責5万円(1回目)/10万円(2回目以降)の条件で、車両保険金額245万円の年間保険料は30,390円、270万円は30,810円でした。25万円の増額で年420円(編集部算出)の差です。
この1例だけで「保険金額が上がっても保険料はほぼ変わらない」とは言えません。ただ、保険金額と保険料が必ずしも比例しないことは、金額を選ぶときに覚えておく価値があります。
車両保険金額を年間差額で割ると費用対効果の補助線が引ける
年間の保険料差と車の時価を並べると、「何年分の差額で時価に届くか」を概算できます。三井ダイレクト損保の公表例(保険始期2025年10月1日・年払・免責1回目5万円/2回目以降10万円)の年間保険料は次のとおりです。
| 区分 | 30代の例(ヴェゼル RV5・車両保険金額265万円) | 40代の例(セレナ C28・車両保険金額250万円) |
|---|---|---|
| 一般タイプ | 39,170円 | 34,160円 |
| 限定タイプ | 28,070円 | 23,180円 |
| 車両保険なし | 13,570円 | 11,740円 |
| 一般−なしの差(編集部算出) | 25,600円 | 22,420円 |
| 限定−なしの差(編集部算出) | 14,500円 | 11,440円 |
注意点として、この「あり」の金額には新車特約と車両保険無過失事故特約が含まれ、「なし」にはどちらもありません。差額は車両保険だけの差ではありません。
この差額で、時価を割った年数(編集部算出・単純式)は次のとおりです。時価20〜100万円は編集部が置いた仮定値で、公表値ではありません。時価の毎年の低下と保険料の変動は考慮していません。
| 仮定した時価 | 30代の例(年25,600円差) | 40代の例(年22,420円差) |
|---|---|---|
| 20万円 | 7.81年 | 8.92年 |
| 30万円 | 11.72年 | 13.38年 |
| 50万円 | 19.53年 | 22.3年 |
| 100万円 | 39.06年 | 44.6年 |
差額を積み上げると、30代の例で10年分は256,000円、40代の例で10年分は224,200円、5年分は112,100円です(編集部算出・保険料一定の単純合計)。SBI損保も、保険を使うかの判断で「今後5〜6年程度の保険料増加額の目安と修理費を比較」するよう説明しています。
この試算の限界
- 特定車種・特約込みの1例による単純式で、古い車の実際の保険料ではありません
- 事故に遭う確率、時価の毎年の低下、受け取れる額が免責で減ることは含みません。期待損益ではなく、加入要否の一律基準でもありません
- 見直しの出発点は、自分の更新案内にある保険金額と、同条件で車両保険だけを外した見積もりの差額です
時価が低い車は免責と等級ダウンまで見ると少額修理で使いにくい
保険金の支払いは、全損なら保険金額の全額、分損なら損害額から免責金額を差し引いた額です(アクサ損保)。全損では免責が引かれず、自己負担が発生しない点は、SBI損保・東京海上ダイレクトとも同じ説明です。修理費が時価額を超える場合などが全損になります。
分損で受け取れる上限の目安は、時価と免責の組合せで決まります。時価20万円・50万円と免責5万円・10万円は編集部の仮定値です。
| 時価(仮定) | 免責5万円 | 免責10万円 |
|---|---|---|
| 20万円 | 150,000円 | 100,000円 |
| 50万円 | 450,000円 | 400,000円 |
(いずれも「時価−免責」の編集部算出。修理費が時価に達して全損になれば、時価の全額で免責は引かれません)
車両保険を使うと、翌年度の等級は事故の種類により1等級または3等級下がります(アクサ損保)。保険金を受け取った事故1件では翌年度に3等級下がり、たとえば18等級は15等級になります。火災・落下物との衝突などは1等級のみです。「事故有」の区分は事故1件につき3年間(火災などは1年)適用されます(損害保険料率算出機構)。
時価が低い車では、受け取れる額から等級ダウンによる保険料の増加を考える必要があります。事故後に使うかどうかの計算は 事故修理 保険 損益分岐 で扱っています。
外すのが不安なら限定型と免責引上げで補償範囲と保険料を調整できる
「付ける」と「外す」の間に、限定型(エコノミー型)と免責の引上げがあります。SBI損保の公表例(保険始期 令和6年(2024年)7月)では、ノート(E13)・初度登録令和3年1月・東京都35歳・20等級・車両保険金額195万円・免責5-10万円の条件で、一般車両が30,750円、車対車+限定Aが22,530円でした。差額は年8,220円(編集部算出)です。
| 補償 | 内容(SBI損保「車対車+限定A」) |
|---|---|
| 補償される | 相手車両との事故、火災、台風、盗難、飛び石など |
| 補償されない | 単独事故、転覆・墜落など |
| あて逃げ | 2025年12月31日以前の始期の契約では対象外、2026年1月以降の始期から対象 |
免責を上げた場合は、東京海上ダイレクトの公表例(保険開始2026年7月1日)が参考になります。ヤリス(KSP210)・初度登録2026年6月・40歳ゴールド・20等級・東京都・限定タイプ・車両保険金額200万円の条件です。
| 免責(1回目−2回目以降) | 年間保険料 | 免責0−0からの減額(編集部算出) |
|---|---|---|
| 0万円−0万円 | 25,425円 | − |
| 5万円−10万円 | 22,834円 | 2,591円 |
| 10万円−10万円 | 22,063円 | 3,362円 |
免責を引き上げても保険料の減り方は限定的で、自己負担は増えます。SBI損保では免責の選択肢が0-10、5(車対車免0)-10、5-10、10-10万円(1回目−2回目以降)と複数あり、「5(車対車免0)」は相手を確認できる車同士の事故なら1回目がゼロです。保険料をさらに見直す方法として、運転実績で割引を受ける テレマティクス保険 デメリット も確認できます。
ローン・災害・生活必需性がある車は古くても補償を残す余地がある
SBI損保は、次の場合は古い車でも車両保険を検討するよう案内しています。
- 自然災害のリスクが高い地域に車を保管している
- 古い車を中古車ローンで購入し、残債がある
- 車がないと生活に支障が出る
一方で、事故が原因でない故障は車両保険の対象外です(SBI損保)。外すと決めたときに残る穴は、単独事故の修理費、盗難や災害での買い替え費用、そして自己資金で賄えない場合の車がない期間です。ローンの組み方と手元資金の考え方は 中古車 現金購入 メリット デメリット ローン比較 にまとめています。
古い車で修理費が時価を超えるとき
古い車は、修理費が車両保険金額を超えることもあります。SOMPOダイレクト(おとなの自動車保険)の車両全損修理時特約は、車両保険の補償対象となる事故で修理費が車両保険金額を超える場合に、50万円を限度に上乗せして補償します。セットできるのは、保険始期日の属する月が初度登録年月の翌月から数えて25か月を超えている場合です。
同社の事例では、8年経過の車・車両保険金額40万円・修理費70万円で、特約があれば修理する場合は40万円+30万円=70万円、廃車する場合は40万円です。他社は名称・限度額・条件が異なります。詳細は 事故 修理費 上限 超えたら で扱っています。
よくある質問
Q1. 車両保険は何年目で外すべきですか?
年数だけで決められる基準はありません。SBI損保は古い車の車両保険について、初度登録から10年程度を1つの目安としています(保険会社の基準ではありません)。更新案内の車両保険金額、同条件の年間保険料差、自己資金、ローン残債を並べて決めてください。
Q2. 10年落ちでも車両保険は必要ですか?
時価が高いうちは自己負担の修理費が高額になるため、10年程度が検討の目安とされています。ただし、ローン残債が残っている、自然災害リスクが高い地域に保管している、車がないと生活に支障が出る場合は、古い車でも検討する余地があります(SBI損保)。
Q3. 15年・18年を超えると車両保険に入れませんか?
一律には決まっていません。SBI損保は、初度登録から15年を超えたあたりから加入できなくなる場合があり、15〜20年経過した車は引受されない可能性が高くなると説明しています。ソニー損保では、初度登録(検査)年月から18年以上の車は、つけられない場合があります。保険会社ごとに基準は異なります。
Q4. 全損では免責金額が引かれますか?
引かれません。SBI損保・東京海上ダイレクトとも、全損の場合は免責が適用されず自己負担は発生しないと説明しています。分損は、損害額から免責金額を差し引いた額が支払われます(アクサ損保)。
Q5. 車両保険を外す前に何を確認すべきですか?
更新案内の車両保険金額、同条件で車両保険を外した見積もりの差額、免責後の受取額、修理や買い替えを賄える自己資金、ローン残債を確認してください。故障は対象外なので、故障への備えは別に考える必要があります。限定型や免責の引上げで中間案を見積もるのも一案です。