廃車になった車は、その後どうなる?部品や素材として生まれ変わる仕組み
「廃車」と聞くと、使えなくなった車がそのまま捨てられるように思えます。実際には、使用済自動車として引き渡された車は、制度に沿って引き取られ、解体され、部品・素材・熱として役割を変えていきます。使えない部分も、決められた手順で適正に処理されます。
この記事では、まずその仕組みと、よく見かけるリサイクル率の数字の読み方を整理します。後半では、手放す前に確かめたい「最初の入口」の違いを扱います。
最終更新日: 編集:RAXUS Link編集部
この記事で分かること
- 1廃車後の車がたどる5段階と、部品・素材・熱回収という3つの行き先
- 2リサイクル率の数字が何の割合か(年度・定義・出典)を読む方法
- 3手放す前に確かめたい、使用済自動車として渡すか中古車として売るかの違い
廃車になった車は、捨てられるのではなく役割が変わる
使用済自動車のリサイクルでは、フロン類、エアバッグ類、シュレッダーダスト(破砕後に残るごみ。ASR と呼ばれます)の3つを、自動車メーカー・輸入事業者が適正に処理します。この処理にかかる費用がリサイクル料金で、車の所有者が原則として前払いで支払います(出典:JARC「自動車リサイクル制度の概要」2026年10月8日取得)。
つまり、車が役目を終えたあとの処理は、最後の持ち主の善意ではなく、費用の仕組みまで含めた制度で支えられています。「価値がなくなった車」というより、「役割が変わる車」と見たほうが実態に近いでしょう。
「廃車」と言うとき、何を指している?
日常で使う「廃車」には、いくつかの意味が混ざっています。
- 登録を抹消すること(一時抹消・永久抹消)
- 車を解体すること
- 買い取った事業者が中古車として転売すること
法律では、使用を終えた車を「使用済自動車」と呼びます。倉庫など運行以外の用途での使用を終えた場合も含みます(出典:JARC「用語集」)。所有者が引取業者に渡すときは、使用済みにする意思を書面などで明確に示す必要があります(同出典)。また、経済産業省と環境省は、「廃車にする」と言うと使用済自動車か中古自動車かが分からなくなるため、関係者に「廃車」の用語を使わないよう周知しています(同出典)。
登録の面では、普通自動車の場合、車を解体して永久抹消登録する場合と、一時的に抹消する一時抹消登録とで手続きが異なります(出典:国土交通省 近畿運輸局「自動車・二輪の登録についてのよくある問い合わせ」)。永久抹消登録は、自動車を解体した場合の手続きです(出典:国土交通省 東北運輸局「自動車の登録(永久抹消登録)」)。
登録上の「廃車」の詳しい説明は、廃車と買取の違い(「廃車にする」とはどういうことか)にまとめています。以降は、使用済自動車として引き渡された車の話に範囲を限ります。
引き渡された車がたどる5段階
JARC(自動車リサイクル促進センター)の説明に沿って、引き渡しから処理までを5段階に整理します。段階の番号は、この記事での整理です。
引き渡し
自治体の登録・許可を受けた引取事業者に、使用済自動車を引き渡します
フロン類の回収
カーエアコンのフロン類を回収し、自動車メーカー・輸入事業者に引き渡します
解体
エアバッグ類を回収してメーカー等に引き渡し、エンジンやドアなど有用な部品・部材を取り除いてから、解体自動車を破砕事業者へ送ります
破砕と金属回収
解体自動車をシュレッダーマシンで破砕し、鉄などの有用な金属を回収します
ASR の引き渡し
分別・回収したシュレッダーダストをメーカー・輸入事業者に引き渡します。最終的にメーカー等が、ASR・エアバッグ類・フロン類を適正に処理します
出典:JARC「使用済自動車のリサイクル処理の流れ」(2026年10月8日取得)
部品・素材・熱回収の3つの行き先
この流れの中で、車の各部分は大きく3つの行き先に分かれます。
- 有用な部品部品として取り外される(エンジンやドアなど)
- 破砕後に回収された金属素材として再資源化される(鉄など)
- 破砕後に残るシュレッダーダスト自動車メーカー・輸入事業者が引き取り、大部分はマテリアルリサイクルと熱回収で再資源化され、残りは適正に処理される
- フロン類・エアバッグ類メーカー・輸入事業者が回収して適正に処理する
出典:JARC「使用済自動車のリサイクル処理の流れ」(2026年10月8日取得)、経済産業省・環境省「自動車リサイクル法の施行状況」(令和7年9月5日)
法律上の「再資源化」には、原材料や部品として使える状態にすることに加えて、熱を得ることに利用できる状態にすることも含まれます(自動車リサイクル法第2条第9項。出典:経済産業省・環境省「自動車リサイクル法の施行状況」令和7年9月5日)。熱回収も再資源化に数えられる点は、次の節の数字を読むときに大事です。
ここで書いたのは行き先の種類です。どれだけの割合が部品になるか、といった内訳は、この記事では扱いません。「すべてが部品や素材になる」わけではなく、どちらにもならないものは適正に処理されます。
中古部品や車は海外にも出ている
公的な資料で確認できる範囲は、次のとおりです。
- 中古自動車と、使用済自動車から取り外された部品は、リユースを目的に有価で輸出されるのが一般的で、基本的には廃棄物に当たらない、という整理があります(平成24年・2012年11月時点。出典:環境省 中古自動車等の輸出に関する検討会「中古自動車等の輸出をめぐる現状及び課題への対応について」)。
- 使用済自動車から部品を取り外す行為(部品取り)は、同じ資料では基本的に解体行為と整理されています(2012年時点。例外あり)。
- 部品別の輸出量や海外の需要の強さを示す公的な統計は、この記事を書く時点で確認できていません。
台数や件数で確認できるものは、次の2つです。数えているものが違うので、足し合わせたり、同じ土俵で比べたりはできません。
| 指標 | 値 | 何を数えたものか |
|---|---|---|
| 輸出抹消登録台数 | 184万台(令和6年度) | 中古自動車として輸出された台数。使用済自動車の台数ではなく、部品の輸出量でもない |
| 非認定全部利用(ガラ輸出) | 213,499件(令和6年度。解体工程から) | 破砕を経ず、解体自動車をプレス処理して電炉等に投入するか、スクラップ源として輸出する「全部利用」のうち、解体工程から出たもの。ほかに破砕工程から4,935件 |
出典:経済産業省・環境省「自動車リサイクル法の施行状況」(令和7年9月5日)
リサイクル率の数字は、何の割合?
「車の何%がリサイクルされる」という数字は、出所によって、何を分母と分子にしているかが違います。年度と定義をそろえて、3種類を並べます。
| 数字 | 値 | 何の割合か | 年度・出典 |
|---|---|---|---|
| ASR 再資源化率(法定の指標) | 96.7%(全義務者平均。法定基準は70%) | 車全体ではなく、シュレッダーダスト(ASR)のうち再資源化された割合。熱回収を含む | 令和6年度。経済産業省・環境省「自動車リサイクル法の施行状況」(基準70%は平成27年度〜) |
| 車両全体のリサイクル率の試算 | サーマル(熱回収)を加味すると99%、マテリアルリサイクルのみで86% | 使用済自動車1台分に対する試算。金属類等の回収(部品回収を含む)を82%、残りを ASR の18%として計算 | 平成25年度(2013年度)上期のデータ。日本自動車工業会(自工会)の2014年11月の試算(ART/TH チーム利用施設のデータ。法定の指標ではない) |
| 「使用済自動車全体のリサイクル率」 | 約99% | 算定方法・分母分子の記載なし | 平成25年度。国立環境研究所 環境展望台「自動車リサイクル技術」(2022年10月改訂) |
この3つは同じものではないので、混ぜて「車の99%がリサイクルされている」と言うことはできません。
適正に手放すことが、なぜ大切か
使用済自動車の処理費用は、先に見たとおりリサイクル料金に含まれています。適正に引き渡された車は、この仕組みの中で処理されます。
一方で、不法投棄や不適正な保管が現に起きています。全国の不法投棄・不適正保管車両は、令和6年度末の時点で累計4,666台です(年間の発生数ではなく、その時点で残っている累計。出典:経済産業省・環境省「自動車リサイクル法の施行状況」)。
自動車由来の1台当たりの最終処分量は、平成17年度の64kgから令和6年度は6kgになっています(同出典)。
手放す先を選ぶときの確認
手放し方を考えるとき、廃車後に起きることを決めるのは、引き渡し先の事業者の工程です。所有者が決められるのは、最初の入口、つまり使用済自動車として引き渡すのか、中古車として売却・下取りに出すのかです。この入口で、料金の動きと書類と、その後の行き先が変わります。
| 比べる点 | 使用済自動車として引き渡す | 中古車として売却・下取りに出す |
|---|---|---|
| 料金の動き | 未支払い分のリサイクル料金があれば、その料金を支払う | 相手方から、車両価値金額とリサイクル料金相当額を受け取る(資金管理料金は受け取りの対象外) |
| 受け取る書類 | 引取業者から、永久抹消登録に必要な使用済自動車引取証明書を受け取る | 使用済自動車引取証明書は、使用済自動車として引き渡す場合の書類。売買の書類は契約先に確認する |
| その後の行き先 | 5段階の解体の工程に入る | 中古車として扱われる。その先は買い取る事業者の扱いによる |
出典:JARC「リサイクル料金の支払い・受け取りの流れ」(2026年10月8日取得)
どちらの入口になるかは、車の状態や年式だけでは決まりません。引き渡し先の事業者に確認する必要があります。「廃車にしたい」と伝えるだけでは、使用済自動車なのか中古車なのかが曖昧になります。
引き渡す前に、次の点を確かめておきましょう。
- 引き渡し先は、自治体の登録・許可を受けた引取事業者か
- リサイクル料金は、自分が支払う側か、受け取る側か
- 使用済自動車引取証明書を受け取れるか
- 永久抹消登録に必要な、解体報告記録がなされた日と移動報告番号を教えてもらえるか
- 車検の残りが1か月以上あるなら、永久抹消登録と同時に重量税の還付を申請するか(後から単独では申請できません。条件は売る前にやることチェックリストで確認)
出典:国土交通省 東北運輸局「自動車の登録(永久抹消登録)」(解体報告記録がなされた日・移動報告番号・重量税の還付)、JARC「使用済自動車のリサイクル処理の流れ」(自治体の登録・許可を受けた引取事業者)
軽自動車の手続きは、この記事では扱いません。廃車と買取の違いや売る前のチェックリストで確認してください。
一時抹消済みの車を解体した場合は、「解体の届出」の手続きを行います(出典:国土交通省 東北運輸局「自動車の登録(永久抹消登録)」。普通自動車の場合)。
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次にやること
出典
- 公益財団法人 自動車リサイクル促進センター(JARC)「使用済自動車のリサイクル処理の流れ」
- JARC「自動車リサイクル制度の概要」
- 経済産業省自動車課・環境省資源循環制度推進室「自動車リサイクル法の施行状況」(産業構造審議会 自動車リサイクルWG 参考資料2。令和7年9月5日)
- JARC「用語集」
- JARC「リサイクル料金の支払い・受け取りの流れ」
- 国土交通省 東北運輸局「自動車の登録(永久抹消登録)」
- 国土交通省 近畿運輸局「自動車・二輪の登録についてのよくある問い合わせ」
- 中古自動車等の輸出に関する検討会(環境省)「中古自動車等の輸出をめぐる現状及び課題への対応について」(平成24年11月)
- 一般社団法人 日本自動車工業会(自工会)「自動車リサイクル制度の評価・検討について」(2014年11月11日。環境省の審議会資料 資料3-1)
- 国立環境研究所 環境展望台「自動車リサイクル技術」(2022年10月改訂)

