このページの要点
江副記念リクルート財団の奨学金は、器楽・スポーツ・アート・学術の4部門がある返済不要の給付型奨学金です。
- 高校生の家庭から見た入口は2つある。ひとつは学術部門で、海外大学の理系学部に「入学を目指す」段階から応募できます。2026年度に採用された学術部門6名のうち3名は、在籍校が高校(Winchester High School/Memorial High School/聖光学院高等学校)として公表されています。もうひとつはスポーツ部門で、募集要項に「高校生以下の方で、特筆すべき実績とポテンシャルがあると認められた方は、海外留学を前提に研鑽を積む場合に限り、特別奨学生として採用することがあります」と明記されています。
- 金額の建て付けが部門で違う。学術部門は「年間上限95,000ドル」で、これは学費と生活費を合わせた上限です(生活費は年26,400ドル=月2,200ドルまで)。スポーツ部門の高校生以下の特別奨学生も年間上限95,000ドルとされていますが、その内訳は要項に示されていません。スポーツ部門の通常枠は月額2,700ドルまたは月額300,000円、アート部門と器楽部門は月額2,700ドル(ポンド2,000・ユーロ2,300、器楽は円200,000も)です。上限額だけを見て比べると中身を読み違えます。
- 併給の扱いも部門で違う。スポーツ・アート・器楽の各要項は、文言の細部は違うものの、いずれも他の奨学金との併給を認め、差し引きの規定を置いていません。一方で学術部門だけは「他の奨学金制度との併用は可能。その場合は他機関からの受給額を差し引いて支給」と書かれています。学術部門は、他の給付型を取っても手取りが増えない設計です。
公益財団法人江副記念リクルート財団は、1971年に始まった「リクルートスカラシップ」を50年以上続けている財団です。返済の必要がない給付型で、2026年度は新たに19名(第55回生)を採用しました。内訳は器楽2名・スポーツ7名・アート4名・学術6名です。採用予定人数は学術部門が5名程度、スポーツ部門が最大12名、器楽部門が9名程度、アート部門が1〜2名程度と、いずれも枠が小さい制度です。応募の締切は部門ごとにばらばらで、2027年度は学術が2026年9月8日、アートが9月15日、器楽が10月15日、スポーツが11月6日でした。お子さんの進路がどの部門に当たるかを先に決め、その部門の募集要項だけを読み込むのが近道です。
この記事の金額・条件・日程は、2026年11月5日に江副記念リクルート財団の公式サイトで確認した2027年度の各部門募集要項(学術・スポーツ・アート・器楽)と、2026年4月1日公表の「2026年度 奨学生決定のお知らせ」にもとづきます。募集要項は年度ごとに改定され、対象分野・対象校・金額・日程が変わります(実際に器楽部門は年度によって対象楽器が替わります)。応募を検討する際は、必ず財団公式サイトで最新年度の募集要項をご確認ください。
結論:4部門の早見表と、高校生が関係する部門
POINT
リクルートスカラシップは4部門の総称で、対象分野・学校段階・金額・締切がそれぞれ違います。高校生のご家庭が直接関係するのは、主に学術部門とスポーツ部門です。
まず全体像から押さえます。「江副記念リクルート財団の奨学金」と検索すると海外大学の理系向け(学術部門)の説明が出てくることが多いのですが、それは4つあるうちの1部門です。お子さんが音楽・スポーツ・美術の道を考えている場合は、別の部門が入口になります。
リクルートスカラシップ4部門の比較(2027年度募集要項より)
| 部門 | 対象 | 給付額 | 採用予定 | 応募締切(2027年度) |
|---|---|---|---|---|
| 学術 | 理系分野専攻で海外大学・大学院へ正規留学する、2027年4月1日時点で24歳以下(※心理学・建築学は除外) | 年間上限95,000ドル(うち生活費26,400ドル=月2,200ドル) | 5名程度 | 2026年9月8日 |
| スポーツ | オリパラ競技(カテゴリーA)/ゴルフ・テニス・アイスホッケー等(カテゴリーB)。年齢下限なしで中学生・高校生も対象 | 月額2,700ドルまたは月額300,000円。高校生以下の特別奨学生は年間上限95,000ドル | 最大12名 | 2026年11月6日 |
| アート | 現代アートで海外大学・大学院へ正規留学する24歳以下(※映像制作・デザイン・建築は除外) | 月額 米ドル2,700/ポンド2,000/ユーロ2,300 | 1〜2名程度 | 2026年9月15日 |
| 器楽 | 2027年度は弦楽器(ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ)専攻。海外の教育機関に在籍または2029年3月までに進学予定 | 月額 米ドル2,700/ポンド2,000/ユーロ2,300/円200,000 | 9名程度 | 2026年10月15日 |
表のとおり、今回確認した2027年度の4部門の募集要項のうち、「高校生」を明記しているのはスポーツ部門だけです。ただし学術部門は応募資格を「2027年4月から2028年3月の間に対象校に在籍または入学」としているため、高校在籍中に応募し、海外大学に入学する年度から受け取る形が成り立ちます。実際に2026年度の学術部門では、在籍校が高校として公表された奨学生が3名います。アート部門と器楽部門については、高校在籍中に応募できるかを要項から読み取れませんでした。
確認ポイント:器楽部門の応募資格は「海外の教育機関に在籍もしくは2029年3月までに進学予定の方」で、学校段階の指定がありません。アート部門も「学部・修士・博士課程への正規留学のみ」とあるだけで、入学前の段階から応募できるかは書かれていません。どちらも高校在籍中の応募が可能かを要項から読み取れないため、該当する場合は財団公式サイトの問い合わせ窓口(財団事務局)へ直接確認してください。
江副記念リクルート財団とはどんな財団か
POINT
1971年に始まった50年以上続く給付型奨学金で、2026年度は19名が採用されました。枠が小さく、分野を絞って「世界に挑戦する人」を支援する設計です。
公益財団法人江副記念リクルート財団は、「リクルートスカラシップ」という返済不要の給付型奨学金を運営しています。財団は、この奨学金を50年以上にわたり実施してきたこと、対象が「世界に挑戦し、ずば抜けた活躍をしそうな日本の若者」であることを公式サイトに記しています。制度の始まりは1971年です。
2026年4月1日に公表された「2026年度 奨学生決定のお知らせ」によると、この年に新しく採用されたのは19名(第55回生)でした。内訳は器楽2名・スポーツ7名・アート4名・学術6名です。奨学生の氏名と在籍校・所属が部門ごとに公表されており、学術部門にはカリフォルニア工科大学・スタンフォード大学・コロンビア大学の在籍者が並びます。
ここで保護者として押さえておきたいのは、規模の小ささです。4部門を合わせても年間20名前後で、1部門あたりでは1〜12名です。給付額が大きい制度ほど枠は小さくなります。海外大学の返済不要奨学金まとめで全体を見渡したうえで、複数の制度を併願する前提で考えるのが現実的です。
確認ポイント:2027年度の各部門の募集要項には、応募者数・選考通過者数の記載がありません。そのため直近の倍率は計算できません。「倍率◯倍」と書いている情報を見かけた場合は、何年度の数字なのか出典を確かめてください。本記事でも倍率の数値は示しません。
高校生の家庭に関係する2つの入口
POINT
ひとつは学術部門を「入学を目指す」段階で使う道、もうひとつはスポーツ部門の高校生以下の特別奨学生です。前者は海外大学進学、後者は高校留学そのものに使えます。
入口1:学術部門を高校在籍中に出す
学術部門の応募資格は「2027年4月から2028年3月の間に対象校に在籍または入学」です。つまり、すでに海外大学にいる学生だけでなく、これから入学する人も対象になります。高校3年生が、海外大学の合否が出る前に応募する形です。
この設計が効いているのは、2026年度の採用者に表れています。学術部門6名のうち、池田隼さん(カリフォルニア工科大学)・黒田凛さん(スタンフォード大学)・佐藤美樹さん(コロンビア大学)は大学名で公表される一方、土田仁吉さん(Winchester High School)・細川修司さん(Memorial High School)・付聖宣さん(聖光学院高等学校)の3名は在籍校が高校として公表されています。半数が高校在籍の段階で採用されたことになります。
ただし条件は厳しめです。理系分野専攻であること、対象校が世界ランキング30位以内(または理系部門ランキング30位以内、または各国の1位大学)であること、直近1年の学業成績が平均90%以上であること、英語圏ならTOEFL iBTまたはIELTS 7.0点以上などの水準が求められます(TOEFLは受験日によって基準の表記が違います。後述します)。海外大学進学ガイドで全体の準備量を把握したうえで判断してください。
入口2:スポーツ部門の「高校生以下の特別奨学生」
スポーツ部門の募集要項には、次の一文があります。「高校生以下の方で、特筆すべき実績とポテンシャルがあると認められた方は、海外留学を前提に研鑽を積む場合に限り、特別奨学生として採用することがあります。」
この枠が特別なのは、大学進学ではなく高校留学の段階に使える点です。リクルートスカラシップの4部門のうち、海外の中学・高校へ進むことを前提にした記述があるのはここだけです。しかも給付額は通常枠(月額2,700ドルまたは月額300,000円)ではなく、年間上限95,000ドルと学術部門と同じ水準が示されています。ただしこの95,000ドルの内訳(学費と生活費の配分)は要項に示されていません。
スポーツ部門は年齢の下限がなく(上限は2026年4月1日時点で24歳以下)、中学生も対象です。2026年度の採用者7名のうち、長﨑大星さん(ゴルフ・勇志国際高等学校)と田畑遼さん(テニス・S高等学校)の2名は高校在籍です。競技でトップを目指しながら海外で学ぶ進路を考えているご家庭は、高校生の留学で使える民間奨学金とあわせてこの枠を確認する価値があります。
避けたい
「リクルートスカラシップは海外大学の理系の奨学金」と理解して、スポーツや音楽の道のお子さんでは検討から外してしまう
こうすればOK
4部門あることを前提に、お子さんの分野に対応する部門の募集要項を直接読む。高校留学の段階で使えるのはスポーツ部門の特別奨学生の記述だけ
避けたい
「大学に合格してから奨学金を探そう」と考えて、高3の夏の締切を逃す
こうすればOK
学術部門は「入学を目指す」段階で応募する制度。合否が出る前に出願が締まることを前提に、高2のうちから日程を逆算する
避けたい
上限額の「95,000ドル」だけを見て、他の給付型と併願すれば合計で受け取れると考える
こうすればOK
学術部門は他機関からの受給額を差し引いて支給される。部門ごとに併給の条文が違うので、応募前に該当部門の要項で確認する
「年間上限95,000ドル」の中身——学費と生活費は別枠
POINT
学術部門の給付は「学費+生活費で年間上限95,000ドル」という建て付けで、そのうち生活費は年26,400ドル(月2,200ドル)が上限です。留学先の通貨で支給されます。
学術部門の金額は、進学先の国の通貨ごとに上限が決められています。合計額をざっくり円に直して捉えるのではなく、学費の実費と生活費の定額上限の組み合わせとして理解してください。
学術部門の給付上限(2027年度募集要項より・通貨別)
| 通貨 | 年間上限 | うち生活費の上限(年) | 生活費の月額換算 |
|---|---|---|---|
| 米ドル | 95,000ドル | 26,400ドル | 2,200ドル |
| ポンド | 68,000ポンド | 20,400ポンド | 1,700ポンド |
| カナダドル | 118,000カナダドル | 24,000カナダドル | 2,000カナダドル |
| 豪ドル | 121,000豪ドル | 36,000豪ドル | 3,000豪ドル |
読み方の注意点が3つあります。ひとつは、生活費の上限は年間上限とは別に決まっていることです。米ドルの例では、年間上限95,000ドルのうち生活費として受け取れるのは26,400ドルまでで、残りは学費に充てられます。学費が上限に満たない場合に、その差額を生活費として追加で受け取れるわけではありません。
ふたつめが、保護者にとっていちばん重要です。要項でいう「学費」には寮費と食費が入っていません。募集要項は「学費とは、授業料、入学金等、大学から一括で請求される費用を指します(寮費、食費等は学費に含まれません)」と定義しています。つまり寮費・食費は、生活費の枠(米ドルなら年26,400ドル=月2,200ドル)の中から出すことになります。アメリカの住居費・食費の水準は、アメリカの大学の学費・4年間の総額でまとめているとおり、College Boardの2025-26年度の学生予算(在学者数で重み付けした平均・学内居住の場合)で公立4年制が年$13,900、私立非営利4年制が年$15,920です。生活費の枠(年26,400ドル=月2,200ドル)でこれを賄えるかどうかが、自己負担額を左右します。都市部の大学ほど高くなる点にも注意してください。
3つめは、支給が留学先の通貨で行われることです。円安・円高による目減りを気にせずに済む一方、家計側の準備は円で行うため、為替の影響は「財団から受け取る額」ではなく「自己負担分」に表れます。実際にいくら足りないのかは、海外大学の学費はいくらかかるかで志望校の水準を確かめ、寮費・食費を生活費の枠と突き合わせて差額を計算してください。アメリカの4年間の総額はアメリカの大学の学費・4年間の総額にまとめています。
確認ポイント:渡航費(航空券)と留学生保険の扱いについては、学術部門の募集要項に記載が見当たりませんでした。給付の対象になるのか、自己負担なのかは応募前に財団事務局へご確認ください。満額採用されても自己負担がゼロになるとは限らない前提で資金計画を立てることをおすすめします。
なお、スポーツ部門の通常枠は月額2,700ドルまたは月額300,000円、アート部門と器楽部門は月額2,700ドル(ポンド2,000・ユーロ2,300、器楽は円200,000も選択肢)と、月額の定額です。これら月額定額の3者と違い、学術部門は「学費の実費+生活費の定額上限」という性格を持ちます(スポーツ部門の高校生以下の特別奨学生は年間上限95,000ドルとされていますが、内訳は要項に示されていません)。
併給の扱いは部門で違う——学術部門だけ差し引かれる
POINT
スポーツ・アート・器楽は、いずれも併給を認めていて差し引きの規定がありません。学術部門だけは「他機関からの受給額を差し引いて支給」と書かれています。併願の戦略が変わります。
奨学金を複数併願するとき、保護者がいちばん気にするのは「両方受かったら両方もらえるのか」です。リクルートスカラシップは、ここが部門によって条文が違います。
部門別・他の奨学金との併給の扱い(2027年度募集要項より)
| 部門 | 募集要項の記載 | 実質的な意味 |
|---|---|---|
| 学術 | 他の奨学金制度との併用は可能。その場合は他機関からの受給額を差し引いて支給 | 併願・併採用はできるが、合計の手取りは増えない |
| スポーツ | 当財団からの奨学金と重複して、他の奨学金を受けられても差し支えありません | 差し引きの記載がなく、重ねて受け取れる |
| アート | 当財団からの奨学金と重複して、他の奨学金を受給しても差し支えありません | 差し引きの記載がなく、重ねて受け取れる |
| 器楽 | 当財団からの奨学金と重複して、他の奨学金を受給しても差し支えありません | 差し引きの記載がなく、重ねて受け取れる |
学術部門を志望する場合、この一文は併願の考え方を変えます。たとえば柳井正財団の奨学金のような大型の給付型に採用されていれば、リクルートスカラシップ学術部門からの支給はその分だけ減ることになります。「両方取って上乗せする」ことを前提にした資金計画は立てられません。一方で、併願そのものは認められているので、どちらかに通ればよいという意味での「保険」としては機能します。
逆にスポーツ・アート・器楽の3部門は、要項に差し引きの記載がありません。他の民間財団や自治体の制度と重ねられる可能性があるため、併願の価値はより大きくなります。ただし相手方の制度が併給を認めているかは別途確認が必要です。併給の可否は「両方の要項」を突き合わせて初めて決まります。
確認ポイント:各部門の募集要項には、家計・所得による応募制限の記載がありません。ただし「記載がない」ことと「所得は一切見ない」ことは同じではありません。選考の過程で家計の状況を尋ねられる可能性を含め、気になる場合は応募前に財団事務局へご確認ください。
いつ動くのか——応募は入学の約1年前に締まる
POINT
学術部門は「2027年4月〜2028年3月に入学」する人を2026年の夏に募集します。海外大学の合否が出るより前に、応募が締め切られます。
この制度でもっとも事故が起きやすいのが時期です。学術部門の2027年度募集は、応募期間が2026年6月30日〜9月8日、最終選考(面接)が2026年11月5・7・8日のいずれか1日で1人30分程度、採否の通知が11月30日でした。対象となるのは「2027年4月から2028年3月の間に対象校に在籍または入学」する人です。
つまり、2027年の秋に海外大学へ入学したい高校生は、その前年の夏(高3の夏)に応募を締め切られることになります。アメリカの大学はRegular Decisionなら合否が出るのは翌年3月前後ですから、合否が分かる半年以上前に、奨学金の応募を終えていなければなりません。
この「合格前に出す」構造は、募集要項の応募区分に表れています。カテゴリーAは「2027年度に対象大学に入学・編入希望、もしくは2026年秋に入学予定・済の方」、カテゴリーBは「2026年秋時点で対象大学の2年・3年に在籍・編入する方」と定義されています。高校在籍中に応募する場合は、進学先が未決定でもカテゴリーAに当たります。出願予定校は「3校まで(もしくは入学が決定した学校)」を書く形です。
準備の負担として見落とせないのが推薦状です。カテゴリーAでは2通(現在の教育機関から1通、課外活動の指導者から1通)が必要です。加えて、学びたい理由・10年後のビジョン・その年の目標といった設問に答えるエッセイがあります。海外大学そのものの出願書類づくりと、同じ時期に並行して進めることになるため、推薦を依頼する先生への声かけは夏休み前に済ませておくのが安全です。海外大学側の出願の流れは海外大学の出願の流れと時期にまとめています。
応募までにご家庭で進めることを、順番に並べると次のようになります。
- 1志望校が対象校の基準(QS/THEの世界ランキング30位以内、理系部門ランキング30位以内、各国の1位大学)に入っているかを確認する。ここで外れると他の条件を満たしても応募できません。
- 2志望分野が理系分野の定義に入るかを確認する(心理学・建築学は除外されています)。
- 3直近1年の学業成績が平均90%以上かを在籍校の成績表で確かめる。
- 4英語試験のスコアを用意する。TOEFLは受験日によって基準の表記が違うため、要項の該当行と照らし合わせる。
- 5推薦状2通の依頼先(在籍校の先生と課外活動の指導者)を決め、締切の2〜3か月前に依頼する。
- 6出願予定校3校までを決め、エッセイの各設問を書く。
- 7募集要項の公表(過去2年は6月下旬〜7月中旬)を待ち、応募期間内にWEBエントリーを完了させる。
学術部門の逆算スケジュール(2027年度の実日程をもとにした時系列)
| 時期 | 起きること | 保護者がしておくこと |
|---|---|---|
| 高2の冬〜高3の春 | 英語試験(TOEFL iBT/IELTS 7.0 など。TOEFLの基準は受験日で異なる)のスコアづくり、学校成績の確認 | 成績平均90%以上という水準を満たせるか、在籍校の成績表で確認しておく |
| 高3の6月下旬〜7月 | 募集要項の公表と応募受付の開始(2027年度は6月30日開始) | 志望校が対象校(世界ランキング30位以内等)に入っているかを要項の基準で照合する |
| 高3の9月上旬 | 応募締切(2027年度は9月8日23:59・日本時間) | 大学出願の準備と重なる時期。提出物の締切を1枚のカレンダーにまとめておく |
| 高3の10月中旬 | 書類選考の通過通知 | 面接日(11月上旬)の予定を空けておく |
| 高3の11月上旬〜下旬 | 最終選考(面接・1人30分程度)と採否の通知(2027年度は11月30日) | 不採用だった場合に備え、他の制度の冬の締切を調べておく |
| 高3の翌年4月〜 | 支給開始(対象校への在籍・入学が条件) | 入学しなかった場合の扱いを要項で確認しておく |
次年度以降の日程を知りたい場合の目安として、過去2年の実績を並べておきます。2026年度はWEBエントリーが2025年7月14日〜9月16日、最終選考が2025年11月19〜22日、結果通知が2025年11月26日頃でした。2027年度は2026年6月30日〜9月8日で、最終選考が11月上旬、通知が11月30日です。2年続けて「6月下旬〜7月中旬に開始、9月上旬〜中旬に締切、11月下旬に結果」という形でした。ただしこれは観測された傾向であって、次年度も同じという保証はありません。必ず公式サイトで最新の募集要項をご確認ください。
他部門の2027年度の日程も、締切が秋に集中しています。アート部門は2026年7月1日〜9月15日(最終選考10月20日または21日、通知11月末)、器楽部門は9月1日〜10月15日(実技審査15分+面接5分を12月21日に実施)、スポーツ部門は9月14日〜11月6日(書類結果は12月末まで、最終選考はオンライン面接で2027年1月26日または28日、最終結果は2月中旬頃)です。海外大学の出願スケジュール全体は海外大学の出願の流れと時期で確認できます。
英語スコアの基準と、よくある読み違い
POINT
TOEFLは受験日によって求められる点数の表記が変わります。2026年1月20日以前の試験は100点以上、2026年1月21日以降の試験は「5以上」です。スコアの読み替えを間違えると、足りているのに諦めることになります。
学術部門では、英語圏の大学へ新規入学・編入する場合に英語試験のスコアが求められます。ここで注意したいのが、TOEFLのスコア体系が切り替わったことです。2027年度の募集要項は、TOEFL iBT(複数回の受験から項目ごとの最高点を組み合わせる「MyBest®スコア」も可)について「2026年1月20日以前の試験:100点以上」「2026年1月21日以降の試験:5以上」と、受験日で基準を書き分けています。2026年1月21日以降のTOEFL iBTは点数の表記法が変わっており、要項の「5以上」はその新しい表記にもとづく基準です。
つまり、同じ「TOEFLの基準」でも、お子さんがいつ受験したかで見るべき数字が違います。古い情報を載せたまま更新されていないまとめサイトは「TOEFL iBT 100点以上」とだけ書いていることが多く、新しいスコア体系で受けた場合に自分が基準を満たしているのか判断できません。必ず最新の募集要項で、受験日に対応する基準を確認してください。IELTSは7.0点以上が示されています。
試験そのものの仕組みはTOEFL iBTとは、IELTSとはにまとめています。Duolingo English Testについては、2026年度の募集要項に「Duolingo English Test130点以上」が選択肢として示されていました。Duolingo English Testと海外大学もあわせてご覧ください。
確認ポイント:Duolingo English Testが2027年度の学術部門でも引き続き有効なスコアとして認められるかは、公式の募集要項で明記を確認できませんでした。Duolingoでの出願を考えている場合は、応募前に財団事務局へご確認ください。また、学業成績については「直近1年間の学業成績が平均90%以上」が条件です。高校在籍中に応募する場合は高校の成績がそのまま審査の対象になります。
採用されたあとに続く義務
POINT
月1回のレポート提出、年1〜2回程度の財団イベント参加、広報への協力が求められます。レポートは財団サイトに掲載される可能性があります。
返済不要とはいえ、採用後は「受け取って終わり」ではありません。学術部門の募集要項は、月1回のスカラシップレポートの提出、年2回程度実施される財団イベント(オンラインおよび対面)への参加、財団活動の広報への協力を義務として挙げています。器楽部門も月1回のレポートと年1回の財団イベント参加、広報協力が示されています。
スポーツ部門の要項には、レポートについて「なお『スカラシップレポート』は財団ホームページ等に掲載をする可能性があります」という記載があります。お子さんの留学中の様子が公開される前提になるため、本人が納得しているかを応募前に話し合っておくことをおすすめします。
支給期間は、確認した範囲ではいずれもまず2年間です。スポーツ・アート・器楽の各部門は2027年4月〜2029年3月、学術部門の2026年度は2026年4月〜2028年3月でした。重要なのはその先で、学術部門の要項は「上記支給期間後も、毎年度実施する更新審査を通過した方には、対象校在籍中において奨学金を支給します」「また27歳になる年度末(3月)で支給が停止します」としています。
ここは読み違えやすいところです。「27歳まで自動的にもらえる」のではありません。最初の2年間を過ぎたあとは、毎年度の更新審査に通り、かつ対象校に在籍し続けていることが条件で、そのうえで27歳になる年度末が上限になります。応募時の年齢要件(24歳以下)と、この更新の上限(27歳の年度末)は別物なので混同しないでください。
確認ポイント:更新審査に通らなかった場合に支給がどうなるか(その年度で停止するのか、再度申請できるのか)は、募集要項に規定が見当たりませんでした。長期の資金計画に関わる点なので、採用後も含めて財団事務局に確認しておくと安心です。
向いている家庭・慎重に考えたい家庭
POINT
分野と進学先がはっきり決まっていて、締切から逆算できる家庭に向きます。志望校が対象校から外れる場合や、他の給付型との上乗せを前提にする場合は別の制度を軸にしたほうが現実的です。
- 向いている:お子さんの分野(理系/競技/現代アート/弦楽器)が部門の対象にはっきり当てはまる。
- 向いている:志望校が対象校の基準(学術は世界ランキング30位以内など、アートはQS「Art & Design」TOP50など)に入っている。
- 向いている:高2のうちから英語スコアと学校成績を整え、高3の夏の締切に間に合わせられる。
- 向いている:スポーツで海外の中学・高校へ進む計画があり、「高校生以下の特別奨学生」の要件に当てはまりそうな実績がある。
- 慎重に考えたい:志望校が対象校の基準から外れる。学術部門は対象校が世界ランキング上位に限られ、範囲が狭いです。
- 慎重に考えたい:学術部門で、他の給付型奨学金との「上乗せ」を資金計画の前提にしている(差し引かれます)。
- 慎重に考えたい:器楽部門で、お子さんの楽器が当年度の募集対象でない(2027年度は弦楽器で、2026年度はピアノでした)。
枠が1〜12名の制度を資金計画の軸に据えるのは危険です。採用されれば大きい一方、採用されなかった場合に進学計画が崩れない設計にしておく必要があります。海外大学の返済不要奨学金まとめで他の給付型を、孫正義育英財団や柳井正財団で近い性格の制度を確認し、複数を併願したうえで、どれも通らなかったときの進路まで決めておきましょう。
まとめ:分野で部門を決め、締切から逆算する
江副記念リクルート財団のリクルートスカラシップは、器楽・スポーツ・アート・学術の4部門からなる返済不要の給付型奨学金です。2026年度の採用は19名で、学術部門6名のうち3名は在籍校が高校として公表されています。高校生のご家庭から見た入口は、学術部門を「入学を目指す」段階で出す道と、スポーツ部門の「高校生以下の特別奨学生」の2つです。最初にすべきことは、お子さんの分野がどの部門に当たるかを決め、その部門の募集要項だけを公式サイトで読み込むことです。金額の建て付けも、併給の扱いも、締切も部門ごとに違うため、まとめ記事の一般論では判断を誤ります。
応募を検討する前のチェック
次の項目を親子で確かめてから、応募の準備に入りましょう。
チェックはこの画面の中だけの表示で、保存も送信もされません。
Q.江副記念リクルート財団の奨学金に高校生は応募できますか?
部門によります。スポーツ部門は募集要項に「高校生以下の方で、特筆すべき実績とポテンシャルがあると認められた方は、海外留学を前提に研鑽を積む場合に限り、特別奨学生として採用することがあります」と明記されており、年齢の下限もないため中学生・高校生が対象です。学術部門は応募資格が「2027年4月から2028年3月の間に対象校に在籍または入学」なので、高校在籍中に応募して海外大学入学年度から受け取る形になります。実際に2026年度の学術部門では、在籍校が高校として公表された奨学生が6名中3名いました。アート部門は「学部・修士・博士課程への正規留学のみ」が対象と示されていますが、入学前の段階で応募できるかは要項から読み取れませんでした。器楽部門も高校生の応募可否が明記されていません。いずれも財団事務局への確認が必要です。
Q.リクルートスカラシップの倍率はどれくらいですか?
財団は応募者数も選考通過者数も公表していないため、倍率は計算できません。公表されているのは採用予定人数(2027年度は学術5名程度・スポーツ最大12名・器楽9名程度・アート1〜2名程度)と、採用された奨学生の人数・氏名・在籍校です。2026年度は4部門合わせて19名が採用されました。倍率の数値を示している情報を見かけた場合は、その出典を確かめてください。
Q.年間95,000ドルというのは、全額が自由に使えるお金ですか?
いいえ。学術部門の年間上限95,000ドルは学費と生活費を合わせた上限で、そのうち生活費として受け取れるのは年26,400ドル(月2,200ドル)までです。学費が上限に満たなくても、差額を生活費として追加で受け取れるわけではありません。支給は留学先の通貨で行われ、ポンドは年68,000(生活費20,400)、カナダドルは年118,000(同24,000)、豪ドルは年121,000(同36,000)が上限です。さらに要項は「学費とは、授業料、入学金等、大学から一括で請求される費用を指します(寮費、食費等は学費に含まれません)」としているため、寮費・食費は生活費の枠から支出することになります。渡航費や保険の扱いは要項に記載が見当たらず、採用されても自己負担がゼロになるとは限りません。
Q.他の奨学金と一緒に受け取れますか?
部門で扱いが違います。スポーツ・アート・器楽の各募集要項は、文言の細部こそ違うものの(アートと器楽は「他の奨学金を受給しても差し支えありません」、スポーツは「他の奨学金を受けられても差し支えありません」)、いずれも併給を認めていて差し引きの規定がありません。一方、学術部門は「他の奨学金制度との併用は可能。その場合は他機関からの受給額を差し引いて支給」と記載されており、併採用されても合計の手取りは増えません。なお、相手方の制度が併給を認めているかは別途その要項で確認する必要があります。
Q.理系以外でも学術部門に応募できますか?
できません。学術部門は理系分野専攻が対象で、QS/THEのEngineering & Technology、Life Sciences & Medicine、Natural Sciencesなどに該当する分野とされています。募集要項では心理学と建築学は除外されています。美術系はアート部門が対応しますが、こちらも現代アートが対象で、映像制作・デザイン・建築は除外されています。分野の線引きが細かいので、志望分野が対象に入るかは要項で必ず確認してください。
Q.器楽部門はピアノでも応募できますか?
募集年度によります。2027年度の器楽部門は弦楽器(ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ)専攻が対象で、2026年度はピアノ、2025年度は弦楽器が対象でした。志望する楽器がその年度の募集対象かどうかを、応募前に当該年度の募集要項で確認してください。なお器楽部門は対象校の指定がなく、応募資格は「海外の教育機関に在籍もしくは2029年3月までに進学予定の方」とされています。
Q.一度落ちたら、翌年もう一度応募できますか?
できます。学術部門の募集要項は「応募資格を満たしていれば何度でもご応募いただけます。また、再応募が選考に不利になることはありません」と明記しています。高校3年生で不採用だった場合も、海外大学に在籍しながら応募資格(対象校在籍・24歳以下・成績要件など)を満たしていれば、改めて応募できます。ただし応募区分は年次によって変わるため、その時点で自分がどの区分に当たるかを要項で確認してください。
Q.次の募集はいつですか?
次年度の日程は公式に発表されるまで分かりません。参考として、学術部門は2026年度がWEBエントリー2025年7月14日〜9月16日、2027年度が2026年6月30日〜9月8日と、2年続けて6月下旬〜7月中旬に開始し9月上旬〜中旬に締め切られています。2027年度の他部門はアートが7月1日〜9月15日、器楽が9月1日〜10月15日、スポーツが9月14日〜11月6日でした。ここに挙げたのはあくまで過年度と2027年度の実績で、開始・締切の時期に見られる規則性も2年分の観測にすぎません。次年度の日程を保証するものではないため、財団公式サイトの募集要項ページで最新の日程をご確認ください。









