このページの要点

マレーシアの大学の順位は、どのランキングを見るかで大きく動き、分校に付いた順位は本校のものです。

  • THE2027でマレーシア所在の最上位は University of Malaya の194位。THEで見るかぎり、世界トップ100に入るマレーシアの大学は0校です
  • 「モナシュ大学マレーシア校36位」は分校の順位ではありません。世界ランキングに載っているのは本校1校だけです
  • 日本語でよく名前が挙がる Taylor's・UCSI・INTI は、THE2027に1校も載っていません。ただし載らない理由は「質が低い」ではありません

マレーシアの大学を調べると、「早慶より上の大学が複数ある」「東大と同じ順位の大学がある」といった見出しの記事が並びます。ところが物差しを変えると結果は変わります。THE(Times Higher Education)の2027年版を公式データから全件確認すると、マレーシア所在で順位が付いているのは29校、最上位の University of Malaya は194位で、世界トップ100には1校も入っていません。さらに重要なのは、日本語の一覧記事が共通して取り違えている点です。モナシュ大学やノッティンガム大学の順位は、マレーシア校ではなく本校(豪州・英国)に付いた順位です。この記事では、順位の数字そのものより「その数字が何を測っていて、どこまで使えるのか」を保護者の判断材料として整理します。マレーシア大学留学ガイドの全体像とあわせてご覧ください。

この記事が参照した情報:順位と指標のスコアは、2026年11月3日に Times Higher Education(THE)公式サイトが配信している World University Rankings 2027年版のデータファイル(THE自身がランキング表の設定として出力している配信URL)から取得し、マレーシア所在の収録校全36件を機械的に抽出したものです。指標の配分と除外基準は同じくTHE公式の方法論ページ、マレーシアの公的評価はマレーシア高等教育省 高等教育局(JPT)の公式ページ、プログラム認定はマレーシア資格庁(MQA)の資格登録簿(MQR)で確認しました。QS World University Rankings については、公式サイトが当サイトの環境から取得できなかったため、本記事では個別の順位を事実として記載していません(理由と扱いは本文で説明します)。順位は毎年改定されます。出願をご検討の段階では、必ず各ランキングの公式サイトで最新版をご確認ください。

結論:順位の数字より先に、3つの前提を押さえる

POINT

マレーシアの大学の順位を比べる前に、「どのランキングか」「分校か本校か」「載っていない大学はどう扱うか」の3点を決めておきます。ここを飛ばすと、どの一覧を読んでも判断が揺れます。

検索して出てくる一覧記事は、ほとんどが同じ形をしています。QSの順位を公立・私立・海外分校の3つに分けて並べ、日本の大学と対照させる——という形です。情報としては出発点になりますが、保護者が知りたい「わが家の子にとって良い大学か」には、順位表だけでは答えが出ません。まず前提を3つ揃えます。

マレーシアの大学ランキングを見る前に決めておく3つの前提

前提押さえることこの記事での扱い
どのランキングかTHEとQSは測っている中身が違い、同じ大学でも順位が大きく動く。版(年)が変わると数字も動く原典を全件確認できたTHE2027を一覧として示し、QSは「配分の違う別の物差し」として扱う(順位一覧の章と、順位が動く理由の章)
分校か本校かMonash・Nottingham・Southampton などのマレーシア校は、世界ランキングに別エントリとして存在しない。載っているのは本校原典の機械確認の結果を示し、分校をどう確かめるかを別に示す(分校の章と、最後の手順の章)
載っていない大学THEには論文数などの除外基準があり、満たさない大学は載らない。載らないことは質の評価ではない除外基準とReporterの定義を示し、代わりに見る物差しを示す(ランキングに載らない大学の章と、公的評価の章)

この3点を押さえたうえで、最後に「順位をどう使うのか」を決めます。実は順位は、進学先を選ぶ材料であると同時に、奨学金に応募できるかどうかを左右する要件でもあります(後半の奨学金の章で扱います)。そこまで含めて見ると、順位表の読み方が変わります。

THE2027:マレーシア所在29校の全順位(公式データから全件)

POINT

THE World University Rankings 2027年版の公式データから、マレーシア所在の収録校を全件抽出しました。順位が付いているのは29校、最上位は University of Malaya の194位です。世界トップ100に入るマレーシアの大学はありません。

順位が付いた29校(総合+5つの柱)

まず順位そのものを見ていただきます。下の表は、THEが公式サイトで配信しているランキングデータから、所在地がマレーシアの収録校を機械的に抜き出したものです(2026年11月3日取得・2027年版)。総合だけでなく5つの柱のスコアも併記しています。この柱別の数字が、この記事でいちばん使ってほしい部分です。

THE World University Rankings 2027:マレーシア所在のランク付与校29校(2026年11月3日・THE公式データより。スコアは100点満点。順位の「=」は同順位、「301–325」のような範囲表記はTHEが帯で公表しているもの)

順位大学総合教育研究環境研究の質産学国際性
=194University of Malaya(UM)59.552.744.871.666.090.4
=242Universiti Teknologi Petronas(UTP)57.340.441.679.095.877.6
283Sunway University55.728.436.890.357.497.1
301–325Universiti Kebangsaan Malaysia(UKM)53.4–54.848.138.364.463.582.9
326–350Universiti Sains Malaysia(USM)52.3–53.346.635.866.275.180.4
401–450Universiti Teknologi Malaysia(UTM)48.9–50.446.333.261.472.274.9
451–500Universiti Putra Malaysia(UPM)47.4–48.744.834.551.860.384.2
451–500Universiti Utara Malaysia(UUM)47.4–48.741.534.560.133.481.3
501–550Management and Science University(MSU)46.0–47.339.517.870.233.094.3
551–600Universiti Tenaga Nasional(UNITEN)44.5–45.930.820.673.381.968.2
601–650Universiti Malaysia Pahang Al-Sultan Abdullah(UMPSA)43.4–44.438.627.657.655.864.5
601–650Universiti Pendidikan Sultan Idris(UPSI)43.4–44.441.631.446.558.884.5
801–1000Mahsa University36.4–40.125.211.971.017.890.4
801–1000Multimedia University(MMU)36.4–40.127.624.947.175.274.0
801–1000Universiti Malaysia Terengganu(UMT)36.4–40.124.823.456.544.865.8
801–1000Universiti Sultan Zainal Abidin(UniSZA)36.4–40.128.616.561.821.552.7
801–1000Universiti Tunku Abdul Rahman(UTAR)36.4–40.126.623.553.064.957.2
1001–1200Asia Pacific University of Technology & Innovation(APU)33.3–36.327.413.256.018.585.3
1001–1200Universiti Malaysia Sarawak(UNIMAS)33.3–36.332.125.630.980.661.6
1201–1400International Islamic University Malaysia(IIUM)30.5–33.229.620.438.137.060.9
1201–1400Universiti Tun Hussein Onn Malaysia(UTHM)30.5–33.236.517.538.234.859.1
1401–1600Universiti Teknikal Malaysia Melaka(UTeM)27.3–30.434.914.425.638.049.2
1401–1600Universiti Teknologi MARA(UiTM)27.3–30.426.020.734.244.931.1
1601–1800Lincoln University College24.2–27.136.211.115.518.796.8
1601–1800Universiti Malaysia Kelantan(UMK)24.2–27.119.015.037.235.351.9
1601–1800Universiti Malaysia Perlis(UniMAP)24.2–27.124.615.832.940.640.6
1601–1800Universiti Malaysia Sabah(UMS)24.2–27.124.815.729.027.742.2
1801–2000Islamic Science University of Malaysia(USIM)20.4–24.122.012.424.917.141.3
1801–2000Universiti Kuala Lumpur(UniKL)20.4–24.123.111.723.829.940.1

なお、この表には公立・私立・分校といった設置形態のラベルを付けていません。THEが公開しているデータに設置形態の項目がなく、この表の出典だけでは各行を分類できないためです。マレーシアの大学の3タイプ(公立=IPTA・私立=IPTS・海外大学の分校)の違いはマレーシア大学留学ガイドで整理しています。

この29校に加えて、データを提出したものの順位が付かなかった「Reporter」が7校あります(Al-Madinah International University、Jesselton University College、North Borneo University College、Perdana University、Universiti Geomatika Malaysia、Universiti Poly-Tech Malaysia、University of Cyberjaya)。この「Reporter」が何を意味するかは、ランキングに載らない大学の章で説明します。合わせると、THE2027に名前が出てくるマレーシア所在の高等教育機関は36校です。

日本の大学と並べるとどこに位置するか

日本の大学と対照させると位置関係が見えます。同じTHE2027で、東京大学27位・京都大学62位・東北大学106位・大阪大学147位・東京科学大学185位・名古屋大学242位・九州大学301〜325位・筑波大学376〜400位・慶應義塾大学と早稲田大学は801〜1000位です。つまり University of Malaya(194位)は、このランキング上では東京科学大学(185位)と名古屋大学(242位)の間あたりに位置し、早慶より上になります。一覧記事が書いている「早慶より上」という記述は、THEで見ても確かにそうなります。ただし——その「上」が何の上なのかは、次の2つの章で必ず確認してください。

同じ大学の順位が記事ごとに違う理由:配分と、版と、転記

POINT

THEは研究に関する2つの柱で全体の59%を占め、国際性は7.5%にとどまります。配分が違えば順位は動きます。加えて、日本語の一覧記事は同じ版を名乗りながら数値が食い違っており、転記の段階でもずれています。

まずTHEの配分です。公式の方法論によると、2027年版は5つの柱からできています。

THE World University Rankings 2027の指標配分(THE公式方法論)

柱配分主な中身
Teaching(教育)29.5%教育の評判15%/学生教員比4.5%/博士号授与対教員5.5%/博士対学士2%/機関収入2.5%
Research Environment(研究環境)29%研究の評判18%/研究収入5.5%/研究生産性5.5%
Research Quality(研究の質)30%被引用インパクト15%/研究の厚み・卓越性・影響力 各5%
International Outlook(国際性)7.5%留学生2.5%/外国人教員2.5%/国際共同研究2.5%
Industry(産学)4%産学収入2%/特許2%

研究環境29%と研究の質30%で、合わせて59%。つまりTHEの総合順位は、半分以上が研究に関する評価でできています。一方で、保護者が気にする「留学生としての受け入れ環境」に近い国際性は7.5%しかありません。別のランキングがこの配分を変えれば、同じ大学の順位は当然動きます。「マレーシアのA大学は世界〇〇位」という一文は、どのランキングの何年版かを言わないと意味が確定しない、というのはこういうことです。

ここで、QSについて正直にお伝えしておきます。QS World University Rankings は、当サイトの環境から公式サイトを取得できませんでした(2026年11月3日時点)。そのため本記事では、QSの個別の順位を事実として書いていません。これは意地ではなく、次の実測があるためです。「QS2026」という同じ版を名乗る日本語の一覧記事2本を同じ日に読み比べたところ、同じ大学の順位が一致していませんでした。

同じ「QS2026」を名乗る日本語記事2本の数値の食い違い(2026年11月3日に当サイトが実測)

大学A記事の記載B記事の記載
Taylor's University253位251位
UCSI University269位265位
Sunway University410位539位
Asia Pacific University(APU)597位611〜620位

Sunway University は410位と539位、129も開いています。どちらが正しいかは、公式を引けない当サイトでは判定できません。2本とも出典リンクを示しておらず、方法論の説明も「学術的な評判、雇用者からの評判、研究成果、国際性」といった語の列挙にとどまります。ここから得られる教訓は「どの記事を信じるか」ではなく、「版と出典が書かれていない順位表は、使う前に公式で引き直す」という手順です。引き直し方は最後の章にまとめました。なお当サイトのマレーシア大学留学ガイドはQS2026年版を紹介していますが、これは本記事のTHE2027とは別のランキングの別の版です。どちらかが誤りということではありません。

【最重要】「モナシュ大学マレーシア校36位」は分校の順位ではない

POINT

THE2027のマレーシア所在36校に、Monash Malaysia・Nottingham Malaysia・Southampton Malaysia は1件も含まれていません。世界ランキングに載っているのは本校(豪州・英国)1エントリだけです。分校の順位として紹介されている数字は、本校に付いた順位です。

マレーシアには、欧米の有名大学がキャンパスを置いています。モナシュ大学(豪)、ノッティンガム大学(英)、サウサンプトン大学(英)、カーティン大学(豪)、スウィンバーン工科大学(豪)、ヘリオット・ワット大学(英)、レディング大学(英)、ニューカッスル大学(英)、厦門大学(中)など。現地で学んで本校の学位を取得できるという点は事実で、マレーシア進学の大きな魅力です。問題は、その「順位」の扱いです。

日本語の一覧記事はほぼ例外なく、海外分校の欄に「モナシュ大学マレーシア校 36位」のように数字を入れています。しかしTHE2027の公式データで大学名を機械的に検索すると、結果はこうなります。

THE2027で「分校を持つ大学」を名称検索した結果(2026年11月3日・THE公式データより)

検索した名称THE2027に収録されているエントリマレーシア校の別エントリ
MonashMonash University(オーストラリア)61位 — 1件のみなし
NottinghamUniversity of Nottingham(英国)=157位(別法人の Nottingham Trent University も英国に収録)なし
SouthamptonUniversity of Southampton(英国)=136位なし
CurtinCurtin University(オーストラリア)=292位なし
SwinburneSwinburne University of Technology(オーストラリア)294位なし
HeriotHeriot-Watt University(英国)451〜500位なし
ReadingUniversity of Reading(英国)=219位なし
NewcastleNewcastle University(英国)=154位/University of Newcastle(オーストラリア)295位なし
XiamenXiamen University(中国)=224位なし

所在地がマレーシアの収録校36件の中に、これらの分校は1件も入っていません。世界ランキングは原則として大学を1つの機関として評価するため、分校のキャンパスだけを切り出した順位は存在しないということです。したがって「マレーシア校◯◯位」と書かれた数字は、豪州や英国にある本校全体に付いた順位を転記したものになります。ここで一点お断りしておきます。日本語記事がモナシュについて挙げている「36位」という数字は、THE以外のランキングで本校に付いたもので、当サイトが原典を確認できた範囲には出てきません。当サイトが確認できたTHE2027では、本校であるモナシュ大学(オーストラリア)が61位です。数字が36でも61でも、マレーシア校単独の順位ではないという結論は変わりません。

これは細かい揚げ足取りではありません。保護者の判断に直接響きます。本校が世界61位であることは、クアラルンプールのキャンパスの教員数・学生教員比・施設・現地の就職支援を保証しません。学位は本校のものでも、お子さんが3〜4年を過ごす場所は分校です。だから分校を選ぶときに見るべきなのは世界順位ではなく、「そのキャンパスで何が提供されるか」になります。では分校はどう確かめればよいのか。世界ランキングでは測れないので、キャンパス単位の情報を各校の公式資料で見るのが基本になります(手順は最後の章にまとめました)。マレーシア国内には政府の格付け制度もありますが、当サイトは中身を確認できていません。その事情は後ほど正直に書きます。

避けたい

一覧記事の「海外分校」欄にある順位を見て、マレーシア校がその順位の大学だと受け取る

こうすればOK

その数字は本校に付いた順位だと理解する。分校を比べるときは、順位ではなく、そのキャンパスの学生数・教員体制・提供されている学位プログラム・卒業後の進路実績を各校の公式資料で確認します

避けたい

「本校と同じ学位が取れる=本校と同じ教育が受けられる」と考える

こうすればOK

学位の授与元と、教育が行われる場所を分けて確認する。授与元は本校でも、履修できる専攻・教員・設備・学費はキャンパスごとに違います。志望専攻がそのキャンパスで開講されているかを、まず確かめてください

総合順位ではなく「柱」で読む:Sunwayと九州大学の例

POINT

Sunway University は283位で九州大学(301〜325位)より上ですが、教育の柱は28.4対52.9で約半分です。Sunwayの総合を押し上げているのは研究の質90.3と国際性97.1です。総合順位だけでは、何が強いのかが分かりません。

先ほどの一覧表に柱別スコアを付けたのは、この読み方をしていただくためです。具体例を並べます。すべて同じTHE2027のデータです。

総合順位が近い大学を柱別に並べる(THE2027・2026年11月3日取得)

大学総合順位総合教育研究環境研究の質産学国際性
Sunway University(マレーシア)28355.728.436.890.357.497.1
九州大学(日本)301–32553.4–54.852.948.855.299.149.9
University of Malaya(マレーシア)=19459.552.744.871.666.090.4
慶應義塾大学(日本)801–100036.4–40.137.328.848.572.042.4
早稲田大学(日本)801–100036.4–40.133.930.747.368.553.7
京都大学(日本)=6274.685.084.558.5100.045.6

読み取れることを順に書きます。第一に、Sunway University は総合では九州大学より上ですが、教育の柱は28.4で、九州大学の52.9の半分強にとどまります。Sunwayの総合を支えているのは研究の質90.3と国際性97.1です。「総合で上」を「教育環境が上」と読み替えると、判断を誤ります。第二に、University of Malaya は教育52.7で、慶應37.3・早稲田33.9より高く出ています。つまりUMについては、教育の柱で見ても早慶より上という結果になります(あくまでTHEが測る指標上の話です)。第三に、京都大学は教育85.0・研究環境84.5が非常に高く、研究の質58.5はマレーシアの上位校より低いという、逆向きの形をしています。

柱の中身は、先ほどの配分表のとおりです。教育の柱は、評判調査に加えて学生教員比・博士号授与数・機関収入でできており、研究の質は被引用を中心に測ります。同じ「総合」でも、その内訳はまったく違う形になりえます。保護者としては、「お子さんが4年間受ける教育」に近いのは教育の柱、「研究大学としての実力」に近いのは研究の2柱、と分けて見るのが実務的です。なお、ここで比較している数値はTHEという1つの機関の指標上の評価であり、入試の難易度や卒業後の処遇を表すものではありません。

ランキングに載らない大学=悪い大学ではない

POINT

THEには除外基準があり、2021〜2025年の関連論文が1,000本未満(年100本未満)の大学は対象外です。日本語記事でよく勧められるTaylor's・UCSI・INTIはTHE2027に1校も載っていません。個別校が載らない理由は公表されていませんが、いずれにせよ「教育の質が低い」という意味ではありません。

先ほどの一覧表を見て、「あれ」と思われた方がいるかもしれません。日本語の記事でよく名前が挙がる Taylor's University・UCSI University・INTI International University が、1校も入っていないのです。公式データを名称で検索しても、THE2027に該当するエントリは存在しませんでした。一方で、同じくマレーシアの Sunway University は283位に入っています。

ランキングに載らない道筋は2つあります。1つは、THE公式の方法論に書かれている除外基準に当たる場合です。次のいずれかに当たる機関は、ランキングの対象になりません。

  • 学士課程の教育を行っていない
  • 2021〜2025年の関連論文が1,000本未満(かつ年100本未満)
  • 研究成果の80%以上が単一の分野に集中している

もう1つは、そもそもTHEにデータを提出していない場合です。THEのランキングは、データを出し、かつ一定規模以上の研究活動がある大学を並べた表だということになります。教育を主に担い、研究論文の産出が少ない大学は、質に関係なく土俵に乗りません。個別の大学がどちらの理由で載っていないのかは公表されていませんが、どちらであっても「教育が良くない」という意味にはなりません。これは日本の大学にも同じように効きます。たとえば立命館アジア太平洋大学はTHE2027で後述の「Reporter」扱いです(立命館APUの評判では別の公表データで見ています)。なお同じ「APU」でも、上の表にある Asia Pacific University はマレーシアの別の大学です。

その「Reporter」の定義も公式に書かれています。「データは提出したが、順位を付与する適格基準を満たさなかった機関」です。先に挙げたマレーシアの7校がこれに当たります。データを出していない大学より情報は多いものの、順位としては比較できない状態です。

では、こうした大学はどう確かめればよいのでしょうか。保護者として最低限押さえるのは、①プログラムがマレーシア資格庁(MQA)の認定を受けているか ②マレーシア政府の公的評価でどう位置づけられているかの2点です。①はマレーシア資格庁の資格登録簿(MQR)で大学名と課程名から検索できます(収録されるのは認定済みのプログラムのみです)。確認の手順そのものはマレーシア大学留学ガイドで扱っているので、ここでは繰り返しません。②を次の章で扱います。

マレーシア政府の公的評価「SETARA」と「MyQUEST」

POINT

マレーシア高等教育省は、SETARAとMyQUESTという自国の格付け制度を運用し、結果を公式ページで公表しています。国際ランキングとは別の物差しとして存在を知っておく価値がありますが、対象機関の範囲も個別の結果も、当サイトは公式ページの本文から確認できませんでした。

ここが、日本語の「マレーシア 大学 ランキング」記事に出てこない部分です。マレーシアには、政府自身が運用する高等教育機関の格付け制度があります。所管はマレーシア高等教育省(Kementerian Pendidikan Tinggi)の高等教育局(Jabatan Pendidikan Tinggi、JPT)で、SETARAとMyQUESTという2つの名称で結果が公表されています。国際ランキングが世界中の大学を同じ指標で並べるのに対し、こちらはマレーシア国内の制度として運用されている点が違います。

SETARA・MyQUESTについて、当サイトがJPT公式ページで確認できたこと/できなかったこと(2026年11月3日)

項目確認できたこと確認できなかったこと
公表の主体と場所マレーシア高等教育省 高等教育局(JPT)の公式ページに、SETARAとMyQUESTの格付け結果が掲出されている—
公表されている文書報道発表・SETARAの結果・MyQUESTの結果・FAQの4本が一覧として掲出されている各文書の本文(ページを開いても本文が取得できず、中身を読めなかった)
最新の公表サイクルページの表題が「SETARAおよびMyQUEST 2022の格付け結果」で、より新しいサイクルの掲出は確認できなかった2022年より後のサイクルが実施・公表されているかどうか
対象となる機関の範囲—どの種類の機関がSETARA/MyQUESTそれぞれの対象なのか。外国大学のマレーシア分校が含まれるかどうかも未確認
格付けの中身—段階(ティア)の数、参加した機関の数、個別の大学の格付け結果

この制度を紹介する理由は、国際ランキングとは別の物差しが公的に存在することを知っておいてほしいからです。世界ランキングは世界中の大学を1つの指標で並べるため、研究規模の下限で対象が絞られ、分校のキャンパスも単独では評価されません。マレーシア国内の制度はそれとは成り立ちが違うので、志望校がマレーシアの機関として公的にどう位置づけられているかを調べる手がかりになりえます。ただし、上の表のとおり当サイトは中身を確認できていません。この記事はSETARAの結果を使って大学を比べることはせず、公的な格付けが存在するという事実と、その確認先だけをお伝えします。

使うときの注意も正直にお伝えします。当サイトが確認できた最新の公表サイクルは2022年で、国際ランキングが毎年更新されるのに対し、この制度の結果は数年前のものになっている可能性があります。「最新の国際順位」と「数年前の国内格付け」を、時点の違いを意識して並べてください。そして繰り返しになりますが、対象機関の範囲も個別の結果も当サイトは未確認です。志望校が固まった段階で、JPTの公式ページに掲出されている結果の文書を直接ご確認いただくか、志望校の国際課に「SETARA(またはMyQUEST)の対象か、対象なら直近の結果はどうか」を問い合わせてください。

順位は奨学金の応募要件に直結する(ここが実務の山場)

POINT

東京都の都立高校等海外大学進学支援制度は、THE・QSの世界大学ランキングで総合100位以内などを対象大学の要件にしています。THE2027ではマレーシア所在の大学は1校も100位以内にないため、どちらのランキングを指定する制度かで可否が変わります。

「順位を見てどうするのか」に、はっきりした答えが1つあります。給付型奨学金の対象大学の要件です。たとえば東京都の都立高校等海外大学進学支援制度は、THE・QSの世界大学ランキングで総合100位以内などの大学に進学する人を対象にしています(制度の内容と要件は東京都の高校生留学支援で詳しく扱っています)。ここで本記事の事実が効いてきます。

THE2027において、マレーシア所在で世界トップ100に入っている大学は0校です。最上位の University of Malaya が194位ですから、THEの順位だけで判定する制度であれば、マレーシアの大学は対象になりません。一方で先に見たとおり、ランキングによって順位は大きく動きます。つまり「THEの100位以内」と書かれているか、「QSの100位以内」と書かれているか、「THE・QSのいずれか」と書かれているかで、応募できるかどうかが変わるということです。

ここは必ず要項でご確認ください。確認すべきは次の3点です。①どのランキングを指定しているか(THEか、QSか、いずれかか、別の指標も認めるか)②どの版(年)を基準にするか ③総合順位か、分野別順位も認めるか。この3つが揃わないと判定できません。また分校を志望する場合は、「本校の順位で判定されるのか、キャンパス所在地で判定されるのか」も確認が必要です。本校が英国の大学のマレーシアキャンパスに進学する場合、制度が本校の順位を見るのかどうかは要項の書き方によります。給付型奨学金全体の探し方は海外大学の奨学金にまとめています。

逆の見方もしておきます。奨学金の要件に届かないからマレーシアを外す、という順番にはしないでください。マレーシアを選ぶ理由は、順位ではなく費用と英語環境にあります。学費の総額はマレーシア大学留学の費用で課程別に出しており、欧米に比べて総額が大きく下がるために、そもそも大型の奨学金を前提にしなくても成り立つという組み立てが可能です。海外大学と国内大学どっちの比較軸と合わせて、順位・費用・奨学金の3つを同じ表に並べて検討してください。

最新版を自分で引く手順(この記事も必ず古くなります)

POINT

ランキングは毎年更新され、記事は必ず古くなります。公式の一覧を国で絞って引く手順と、公的評価・プログラム認定を確かめる手順を、3ステップで固定しておきます。

この記事の順位は2026年11月3日時点の2027年版です。来年には別の数字になります。だから数字を覚えるのではなく、引き方を覚えてください。

  1. 1世界順位は、ランキング機関の公式サイトで直接引く。THE(timeshighereducation.com)の世界ランキング一覧には国で絞り込む機能があり、マレーシアだけを表示できます。QS(topuniversities.com)も公式サイトで最新版を公表していますので、そちらで志望校を確認してください。いずれもまとめ記事の転記ではなく、公式の一覧で志望校の行を直接見ます。見るときは版(年)と、総合だけでなく柱別のスコアを必ず一緒に記録します。
  2. 2マレーシア国内の公的評価は、高等教育省(JPT)の公式ページで確認する。SETARAとMyQUESTの結果が公表されています。掲出されている最新サイクルの年と、志望校がその制度の対象に含まれているかを一緒に確認してください(当サイトは対象機関の範囲を確認できていません)。
  3. 3プログラムの認定は、マレーシア資格庁(MQA)の資格登録簿(MQR)で確認する。大学名と学位名で検索し、認定済みかどうかを見ます。暫定認定は別のポータルに分かれており、マレーシア国外での提供は原則として収録されない点に注意してください。

そのうえで、順位では測れない3点を、各校の公式資料で確認します。①志望する専攻がそのキャンパスで開講されているか ②学位の授与元がどこか(本校か現地法人か) ③卒業生の進路実績がどの国に向いているか。この3点は、どのランキングにも出てきません。しかし進学後の4年間と卒業後を決めるのは、この3点です。海外大学進学ガイドの準備ロードマップに重ねて、高2のうちに候補を3校程度に絞っておくことをおすすめします。

まとめ:順位は入口、確かめるのは中身

マレーシアの大学ランキングについて、この記事で確定したことを整理します。THE2027でマレーシア所在のランク付与校は29校、最上位は University of Malaya の194位で、世界トップ100は0校。Sunway University(283位)は九州大学(301〜325位)より総合で上ですが、教育の柱は28.4対52.9で約半分です。そして当サイトが読んだ日本語の一覧記事3本がいずれも載せている「モナシュ大学マレーシア校36位」型の数字は、分校ではなく本校に付いた順位で、THE2027のマレーシア所在36校に分校は1件も含まれていません。

順位は候補を絞る入口としては有効です。ただし入口から先は、別の物差しが必要になります。研究規模の下限などで対象が絞られるため載らない大学がある(Taylor's・UCSI・INTIはTHE2027に不在。ただし個別校が載らない理由は公表されていません)、分校のキャンパスは世界順位で評価できない、国内の公的評価(SETARA・MyQUEST)は公表サイクルが2022年——こうした限界を知ったうえで、志望専攻の開講状況・学位の授与元・MQA認定・費用の総額という、順位表に出てこない4点を各校の公式資料で確かめてください。次の一歩としては、マレーシア大学留学ガイドで進学ルート(ファウンデーション・ツイニング・3+0)を把握し、費用の総額を課程別に積み上げるところからお始めになるのが実務的です。

Q.記事によってマレーシアの大学の順位が違います。どれを信じればよいのでしょうか。

どの記事かではなく、どのランキングの何年版かで決まります。THEとQSは指標の配分が違うため、同じ大学でも順位は動きます。さらに当サイトが2026年11月3日に実測したところ、同じ「QS2026」を名乗る日本語記事2本で、Sunway Universityの順位が410位と539位に分かれていました(Taylor'sは253位と251位、UCSIは269位と265位、APUは597位と611〜620位)。どちらも出典リンクがありません。版と出典が書かれていない順位表は、使う前に公式サイトで引き直してください。引き直す手順は本文の最後の章にまとめています。

Q.「モナシュ大学マレーシア校は世界36位」と書かれていました。マレーシアで世界36位の大学に通えるということですか。

その順位は本校(オーストラリアのモナシュ大学)に付いた順位です。THE2027の公式データでマレーシア所在の収録校を全件(36件)確認しましたが、Monash Malaysia・Nottingham Malaysia・Southampton Malaysia はいずれも1件も含まれていません。Monashは「Monash University(オーストラリア)61位」という1エントリだけでした。なお「36位」はTHE以外のランキングで本校に付いた数字で、当サイトが原典を確認できた範囲には出てきません。数字が36でも61でも、マレーシア校単独の順位ではないという点は変わりません。世界ランキングは原則として大学を1つの機関として評価するため、分校のキャンパスだけを切り出した順位は存在しません。学位の授与元が本校であることは事実ですが、順位がキャンパスの教育環境を保証するわけではありません。分校を比べるときは、そのキャンパスで志望専攻が開講されているか、教員体制や進路実績がどうかを公式資料でご確認ください。

Q.Taylor's大学やUCSI大学がランキングの表にありません。評価が低い大学なのでしょうか。

そうとは言えません。THE公式の方法論には除外基準があり、2021〜2025年の関連論文が1,000本未満(かつ年100本未満)の機関、学士課程を持たない機関、研究成果の80%以上が単一分野に集中している機関は対象外になります。THEのランキングは一定規模以上の研究活動がある大学を並べた表で、教育を主に担う大学は質に関係なく土俵に乗りません。Taylor's・UCSI・INTIはTHE2027に該当するエントリがありませんでした。こうした大学を確かめるには、マレーシア資格庁(MQA)の資格登録簿(MQR)でプログラムの認定を確認し、高等教育省(JPT)が公表する国内の格付け(SETARA・MyQUEST)を見るのが筋です。

Q.SETARAという格付けを初めて知りました。これを見れば分校も比べられますか。

分校まで比べられるかどうかは、当サイトでは確認できませんでした。SETARAとMyQUESTは、マレーシア高等教育省の高等教育局(JPT)が結果を公表している国内の格付け制度です。マレーシア国内の制度なので、世界ランキングが本校単位でしか評価しない分校のキャンパスを確かめる手がかりになりうると考えて本記事で紹介しました。ただしどの種類の機関がそれぞれの対象なのか、外国大学のマレーシア分校が含まれるのかを、当サイトは公式ページの本文から確認できていません。格付けの段階数・参加校数・個別校の結果も同様で、本記事では数値を一切記載していません。さらに確認できた最新の公表サイクルは2022年で、毎年更新される国際ランキングとは時点が揃いません。志望校が固まった段階で、JPTの公式ページに掲出されている結果の文書を直接ご確認いただくか、志望校の国際課に「SETARA(またはMyQUEST)の対象か、対象なら直近の結果はどうか」を問い合わせてください。

Q.順位が高いマレーシアの大学に行けば、日本の奨学金の対象になりますか。

要項がどのランキングを指定しているかで変わります。たとえば東京都の都立高校等海外大学進学支援制度は、THE・QSの世界大学ランキングで総合100位以内などを対象大学の要件にしています。ここで重要なのは、THE2027ではマレーシア所在の大学が1校も世界トップ100に入っていない(最上位のUniversity of Malayaが194位)という事実です。THEの順位だけで判定する制度なら対象外になります。応募をご検討なら、①どのランキングを指定しているか ②どの版(年)が基準か ③総合順位か分野別も認めるかの3点を要項で必ず確認してください。分校志望の場合は、本校の順位で判定されるのかどうかも確認が必要です。制度の詳細は東京都の高校生留学支援と海外大学の奨学金をご覧ください。

Q.結局、順位は何位くらいを目安に選べばよいのでしょうか。

順位に目安の線を引くことはおすすめしません。理由は本文のとおりで、①ランキングによって順位が大きく動く ②総合順位は中身が分からない(Sunway Universityは九州大学より総合で上ですが、教育の柱は約半分です)③研究規模の下限で載らない大学がある ④分校は評価されない、という4つの限界があるためです。実務的には、順位は「候補を10校から3校に絞る」段階で使い、絞ったあとは順位表に出てこない4点——志望専攻がそのキャンパスで開講されているか、学位の授与元はどこか、MQA認定を受けているか、卒業までの費用総額はいくらか——で決めてください。費用はマレーシア大学留学の費用で課程別に積み上げられます。