このページの要点

学校主催の海外研修は引率と事前指導が強みですが、費用の内訳・取消料・単位の扱いが見えにくい点が弱点です。

  • 利点は「学校が組む」こと。引率教員がつき、学校は外務省への旅行届や「たびレジ」への登録、緊急連絡体制の整備を求められています。国の国費高校生留学促進事業(1人6万円・令和8年度予算案)のように、原則として学校単位で応募する支援もあります。
  • 弱点は、家庭から見えにくいこと。旅行会社が学校の依頼でつくる研修は、価格が一式で示されがちです。契約が受注型企画旅行の場合、標準旅行業約款を使う旅行会社なら取消料の上限は約款で決まっていて、海外旅行(航空機利用)なら出発30日前から旅行代金の20%以内、前々日から50%以内、出発後は100%以内です(30日より前でも、企画料金を明示していればその額)。
  • 安全管理は学校が主体。文部科学省は2026年4月の通知で、修学旅行などの旅行・集団宿泊的行事について、関係業者に過度に依存せず学校が主体性をもって安全確保に努めるよう求めています。希望制の研修でも、旅行会社の手配に入っていない活動や保険の補償範囲は、説明会で直接確かめます。

学校が主催する海外研修は、引率教員の同行、事前・事後の指導、原則として学校単位で応募する国の支援など、個人で申し込む短期留学にはない利点があります。一方で、旅行会社と学校の間で計画が決まるため、参加費の内訳、申し込み後の取消料、参加人数による代金の変動、出席や単位の扱いが家庭からは見えにくくなります。取消料は受注型企画旅行なら標準旅行業約款で上限が定められています。旅行会社の特別補償は事故によるけがへの定額の補償金・見舞金で、けがや病気の治療費の実費や家族の渡航費は払われないため、海外旅行保険が欠かせません。本記事は、旅行業約款、文部科学省の通知・調査、外務省の案内をもとに、参加を決める前に確かめることを整理します。

本記事は、標準旅行業約款(観光庁・消費者庁、令和8年4月1日から適用の版)、文部科学省「高等学校等における国際交流等の状況について」(令和5年度調査)、文部科学省の令和8年度予算(案)資料、文部科学省・外務省による海外修学旅行等の安全確保に関する通知と案内、文部科学省の通知「学校における校外活動の安全確保の徹底等について」(令和8年4月7日)と、同通知のきっかけとなった事故に関する文部科学省の見解(令和8年5月22日)、文部科学省「高等学校等における海外留学に関する危機管理ガイドライン」、学校教育法施行規則、トビタテ!留学JAPAN 第12期(高校生等対象)の募集要項、消費者庁の消費者ホットラインの案内を、当サイトが2026年10月11日に取得して整理したものです。研修の契約の形や費用、取消料、単位の扱いは学校・研修ごとに異なります。申し込みの前に、必ず学校の募集要項と旅行会社の契約書面をご確認ください。

結論:学校主催の海外研修の利点と弱点を1枚で確認する

POINT

学校主催の研修は「安全と手間」の面で個人申込より有利ですが、「費用・取消・学校生活への影響」は家庭から見えにくくなります。見えにくい部分は、説明会と契約書面で確かめれば判断できます。

学校主催の海外研修のデメリット早見表(当サイトの整理。費用・取消・補償の行は約款から)

弱点なぜ起きるか確かめること
参加費の内訳が見えにくい学校の依頼で旅行会社が計画をつくり、一式の価格で示されることが多い航空券・滞在費・研修費・保険・引率者や添乗員の費用が含まれるか
参加人数で代金が変わることがある約款上、利用人員で代金が異なる旨を契約書面に書けば、人数変更で代金を変えられる定員に届かない場合や辞退者が出た場合の代金の扱い
申し込み後にやめにくい受注型企画旅行なら、取消料の上限が約款の表(後述)で段階的に決まっている契約の形と取消料の表、学校独自の辞退の締切
日程・行き先を選べない学校の行事として日程が決まる部活動の大会・模試・補習と重ならないか
日本人同士で固まりやすい同じ学校の生徒がまとまって参加する現地校での授業やホームステイの割合
治療費や家族の渡航費は旅行会社の補償外特別補償はけがへの定額の補償金・見舞金で、けが・病気とも治療費の実費や救援者費用は払われない保険の傷害治療費用・疾病治療費用・救援者費用の補償額
出席・単位の扱いが学校ごと短期研修の扱いは法令で一律に決まっていない授業日にかかる場合の出欠、単位や評価への反映

ここで挙げた弱点の多くは、研修そのものが悪いという意味ではありません。学校と旅行会社の間で決まっている事柄が、案内の紙1枚では家庭に伝わりきらない、というのが本質です。逆に言えば、どこを聞けばよいかが分かれば、参加するかどうかは判断できます。なお、短期の海外体験そのものの効果や、個人で申し込む短期留学の全体像は高校生の短期留学ガイドにまとめています。本記事は「学校が主催する研修」に固有の論点に絞ります。

学校の海外研修とは:修学旅行・個人の短期留学との違い

POINT

文部科学省の調査では、2023年度に外国への研修旅行(3か月未満)に参加した高校生は延べ31,711人でした。希望制の研修は、修学旅行とは参加が任意である点が違い、教育課程上の位置づけも学校ごとに異なり修学旅行と同じとは限りません。個人申込の短期留学とは契約と安全管理の形が違います。

文部科学省の「高等学校等における国際交流等の状況について」(令和5年度調査、2025年3月公表)は、研修旅行を「語学等の研修や国際交流等のために外国の高等学校や語学研修所等において学習したり、又は交流事業等に参加したりすることを目的とする旅行」と定義しています。この調査によると、2023年度に外国への研修旅行(3か月未満)に参加した高校生は延べ31,711人で、コロナ禍の2021年度(1,217人)から大きく回復しましたが、2017年度(42,793人)には届いていません。延べ数なので、複数の国・地域を訪れた生徒はそれぞれに数えられ、学校主催と個人手配の内訳も示されていません。生徒を派遣した学校は1,484校で、行き先はオーストラリア(7,774人)、アメリカ(4,626人)、台湾(3,214人)、イギリス(2,826人)、カナダ(2,604人)の順でした。同じ調査で、修学旅行で外国を訪れた高校生は66,618人です。

修学旅行・学校主催の研修・個人申込の短期留学の違い(当サイトの整理)

項目海外修学旅行学校主催の希望制研修個人申込の短期留学
参加原則として学年全員希望者。定員と選考があることも家庭が自由に決める
教育課程上の位置づけ特別活動の学校行事学校ごとに異なる(行事、課外活動、科目の一部など)学校の教育活動の外
主な契約の相手学校の依頼で旅行会社が計画(受注型企画旅行が多い)同左。学校が姉妹校と直接調整する部分もある留学会社・語学学校・旅行会社と家庭が直接契約
日程・行き先学校が決める学校が決める家庭が選べる
安全管理学校が主体(引率・旅行届・連絡体制)学校が主体(同左)家庭と事業者。学校は関与しないことが多い
研修・留学向けの公的支援—国費高校生留学促進事業(原則として学校単位で応募)、自治体の補助トビタテ、自治体の補助など(要件は制度ごと)

保護者にとっての一番の違いは、計画を決めるのが学校で、家庭はそれに乗るかどうかを選ぶ立場になることです。個人申込なら、気に入らない条件があれば別のプログラムを選べますが、学校主催の研修では日程・行き先・滞在方法を選べる幅は小さく、複数のコースから選ぶ程度のことが多いでしょう。そのぶん手間と不安は減りますが、条件が合わないときに調整する余地も小さくなります。

学校主催ならではの利点:引率・安全の手続き・学校経由の支援

POINT

学校が渡航する場合、外務省への旅行届、「たびレジ」への登録、緊急連絡体制の整備、全員の保険加入が求められています。国費の6万円支援は原則として学校単位で応募するもので、家庭から直接は申し込めません。

文部科学省が学校向けに掲載している外務省の「海外修学旅行等実施校へのご案内」は、学校が海外へ生徒を連れて行くときの手順を定めています。旅行届や日程表を遅くとも出発の15日前までに外務省に届くよう提出すること、行き先を決めるときに外務省の海外安全情報を参考に慎重に検討し、出発前に最新情報を確かめること、緊急連絡体制表と参加者名簿をつくることなどです。外務省の海外旅行登録「たびレジ」については「学校(団体)一行代表者は必ず登録してください」とし、日本で待つ保護者にも簡易登録を案内するよう求めています。保険についても「旅行参加者全員が十分な補償の海外旅行傷害保険に必ず加入してください」と書かれています。

こうした手続きを、個人で申し込む短期留学では家庭が自分で調べて行う必要があります。学校主催の研修では、引率教員がいて、学校・教育委員会・外務省の連絡の経路があらかじめできていることが、最大の利点と言えます。初めての海外で、子ども一人での移動に不安があるご家庭にとっては、この安心感は費用に換算しにくい価値です。

原則として学校経由で応募する国の支援

文部科学省の国費高校生留学促進事業は、「自治体や学校等が主催する原則10日以上1か月未満の海外派遣プログラムに、学校教育活動の一環として参加する中学生・高校生等の生徒を対象に、都道府県を通じて支援する。」制度です。令和8年度予算案では、支援額は1人6万円、対象人数は1,700人です。派遣前の語学学習、オリエンテーション、帰国後のフォローアップを十分に行うことが条件とされ、「学校単位での応募を原則とする」と書かれています。つまり、在籍校が研修をこの事業に申請していなければ、家庭がどれだけ希望しても使えないのが原則です。なお、金額や人数は令和8年度予算案の数字で、翌年度(令和9年度)の研修にそのまま当てはまるとは限りません。

また、先の調査では、2023年度に「研修旅行にかかる経費の支援」を行った都道府県が25ありました。学校の研修に自治体の補助がつくことがあるので、案内に書かれていなければ学校に聞いてみる価値があります。ただし、トビタテ!留学JAPAN 第12期の募集要項には、国費高校生留学促進事業の留学支援金との「併給はできません」と明記されています。研修で国費の支援を受ける予定があり、同じ時期にトビタテへの応募も考えている場合は、どちらを使うかを学校と相談してください。自治体の補助の探し方は自治体の高校生留学支援、トビタテ本体はトビタテ!留学JAPANの高校生向けガイドで整理しています。

デメリット①費用:参加費の内訳と「人数で変わる代金」

POINT

学校の依頼で旅行会社がつくる研修は、価格が一式で示されがちです。約款上、参加人数によって代金が変わる旨を契約書面に書けば、人数の変化で代金が変わることもあります。内訳と変動の条件を確かめます。

学校の海外研修の多くは、学校が旅行会社に依頼して計画をつくってもらう形で行われます。標準旅行業約款は、こうした旅行を「受注型企画旅行」と呼び、旅行会社が「旅行者からの依頼により」目的地、日程、運送や宿泊の内容、旅行代金を定めた計画をつくって実施する旅行と定義しています(どの契約の形かは研修ごとに異なるため、当サイトの一般的な整理です)。約款は、旅行代金の内訳として企画に関する取扱料金(企画料金)を明示することがあるとしていますが、航空券・宿泊・研修費などの細かい内訳まで示すことは求めていません。約款上も細かい内訳の明示は義務ではないため、案内には「参加費 ○○万円」と総額しか書かれていないことがあります。

契約後に旅行代金が変わる場面も、約款に定められています(受注型企画旅行の場合)。

  • 参加人数による変動:利用する人数によって旅行代金が異なる旨を契約書面に書いた場合、旅行会社の責任によらず人数が変わったときは、書面に従って代金を変えることがあります。参加者が少ない年や辞退者が出た場合に、当初の案内より金額が変わり得るということです。
  • 運賃の大幅な変更:利用する運送機関の公示運賃・料金が、著しい経済情勢の変化などで通常の想定を大幅に超えて上がった(下がった)場合は、その範囲で旅行代金を増額(減額)できます。増額するときは、旅行開始日の前日から起算してさかのぼって15日目に当たる日より前に通知することになっています。
  • 契約内容の変更:天災地変や運送機関のサービス中止など旅行会社の関与し得ない事由で日程などが変わり、費用が増減した場合も、代金が変わることがあります。

金額の妥当性を判断するには、比べる相手が必要です。当サイトの高校生の短期留学の費用では、個人で申し込む1〜2週間の短期留学の総額(プログラム料金に航空券・保険・渡航認証・小遣いを加えた額)を約30〜60万円としています。研修の日数がこれと違う場合は、そのぶん差し引いて比べてください。学校の研修の参加費がこれより高くても、引率教員や添乗員の同行、学校の事前・事後の指導が含まれていれば、高すぎるとは言い切れません。逆に、参加費に保険や現地の食費が含まれていないなら、総額はさらに増えます。

  1. 1参加費に含まれるもの:航空券、空港までの移動、滞在費(ホームステイ・寮・ホテル)、現地の研修費、食費、保険、ビザ・渡航認証の費用。
  2. 2引率者・添乗員の費用:引率教員や添乗員の旅費を参加費で分担するのかどうか(学校や設置者によって扱いが異なるため、学校に確かめます)。
  3. 3金額が変わる条件:参加人数による変動、運賃の大幅な変更による増額があるか。
  4. 4支払いの時期と方法:一括か分割か、申込金はいつ払うのか。

デメリット②キャンセル・途中帰国:取消料は約款で上限が決まっている

POINT

契約が受注型企画旅行の場合、取消料の上限は標準旅行業約款の表(下表)で、出発が近づくほど段階的に高くなります。学校独自の辞退の締切もあわせて確かめます。

研修に申し込んだあとで、体調や家庭の事情で参加できなくなることもあります。旅行会社との契約が受注型企画旅行であれば、取消料は標準旅行業約款の別表第一で上限が定められています。海外旅行で、出国や帰国に航空機を使う場合は次のとおりです。

受注型企画旅行(海外・航空機利用)の取消料の上限(標準旅行業約款 別表第一から当サイトが整理)

解除する時期取消料の上限
下の時期より前契約書面で企画料金の金額を明示している場合に限り、企画料金に相当する額
旅行開始日の前日から起算してさかのぼって30日目に当たる日以降旅行代金の20%以内
旅行開始日の前々日以降旅行代金の50%以内
旅行開始後の解除、または連絡のない不参加旅行代金の100%以内

上の表は、標準旅行業約款を使っている旅行会社の場合の上限で、実際の取消料は契約書面に書かれます。チャーター便(貸切航空機)を使う研修は別の表になり、出発90日前から20%以内(企画料金を明示した場合はそれより前もその額)、30日前から50%以内、20日前から80%以内、3日前以降と無連絡の不参加は100%以内です。一般のパッケージツアー(募集型企画旅行)には、年末年始・ゴールデンウィーク・夏休みの「ピーク時」は出発40日前から10%以内という区分がありますが、受注型企画旅行の海外旅行の表にはこの区分がありません。つまり受注型企画旅行なら、夏休みの研修でも上の表どおりで、ピーク時だからといって早く取消料がかかることはありません。研修が募集型企画旅行として売られている場合は、ピーク時の区分が適用されることがあります。

一方で、学校が独自に「○月○日以降の辞退は認めない」「選考後の辞退は原則不可」といった決まりを設けていることがあります。約款の取消料とは別の話なので、両方を確かめておきましょう。取消料がかからない場合や、出発後に帰国する場合の扱いは、約款で次のように定められています(受注型企画旅行の場合)。

  • 取消料なしで解除できる場合(出発前):天災地変、戦乱、暴動、運送・宿泊機関のサービス提供の中止、官公署の命令などで、旅行の安全かつ円滑な実施が不可能になったとき、またはそのおそれが極めて大きいとき。旅行会社によって契約内容が重要な点で変更されたときや、運賃の変更で旅行代金が増額されたときも同様です。
  • 出発後に予定のサービスを受けられなくなった場合:旅行者の責任によらずサービスを受けられなくなったときは、その部分を取消料なしで解除できます。ただし旅行会社の責任によらない場合に払い戻されるのは、その部分の代金から、すでに支払った(またはこれから支払う)取消料などを差し引いた額です。
  • 病気やけがで保護が必要になった場合:旅行会社が取った措置の費用は、旅行会社の責任でなければ旅行者の負担とされています。

つまり途中帰国では、旅行代金の多くが戻らないうえに、帰国便の手配や家族が現地へ向かう費用が別にかかることがあります。こうした費用は、海外旅行保険の「救援者費用」などでまかなうことになるので、次の章の保険の確認とあわせて考えてください。

確認ポイント:学校の研修でも、旅行会社と直接契約するのが各家庭なのか、学校(代表者)なのかは研修によって違います。約款では、団体の場合に代表者(契約責任者)を通じて取引する形も定められています。また、姉妹校交流などで学校が現地と直接調整する部分や、留学会社が手配する語学研修の部分は、旅行契約に含まれないことがあります。取消料の表がどの契約のものかを募集要項と契約書面で確かめてください。取消料や返金について納得できないときは、消費者ホットライン「188」で最寄りの消費生活センターを案内してもらえます。

避けたい

「学校の行事だから、やめるときは担任に言えば費用は戻る」と考えて申し込む

こうすればOK

募集要項と契約書面で、契約の形(受注型企画旅行か)と取消料の表、学校独自の辞退の締切を確かめてから申し込む

避けたい

参加費の総額だけを見て、高い・安いを判断する

こうすればOK

参加費に含まれるもの・含まれないもの、人数や運賃で金額が変わる条件を聞き、日数の違いも考えながら個人申込の総額(1〜2週間で約30〜60万円)と比べる

デメリット③安全管理:「学校が一緒だから安心」の中身を確かめる

POINT

文部科学省は修学旅行などの旅行・集団宿泊的行事について、関係業者に過度に依存せず学校が主体となって安全を確保するよう求めています。希望制の研修でも、旅行会社の手配に入っていない活動はないか、保険で治療費や家族の渡航費まで補償されるかを確かめます。

2026年3月16日、京都府内の高等学校の校外活動中に生徒が死傷する事故が起きました。国内での研修旅行中の事故です。これを受けて文部科学省は4月7日に通知を出し、その「旅行・集団宿泊的行事における留意点」の項で、実施のねらいや行程の詳細を生徒・保護者に「予め十分に説明し、不利益が生じることがないようにすること」、「引率責任者を明確にする」こと、そして関係業者を利用する場合には「関係業者に過度に依存することなく、学校が主体性をもって旅行・集団宿泊的行事の安全確保につき万全を期すること」を求めました。この事故について文部科学省が5月に公表した「これまでの把握事項と文部科学省の見解」では、事故のあったプログラムは旅行会社の下見などの確認対象に入っておらず、学校も事前の下見をしていなかったこと、どのような船に乗るのかについて生徒や保護者への事前説明がなく、プログラムの詳細について十分な説明がなされていなかったことが指摘されています。

ここから保護者が学べるのは、「旅行会社が手配している部分」と「学校や現地が独自に用意している部分」は、安全確認の仕組みが違うということです。海外研修でも、姉妹校での活動、現地の団体が用意する体験、自由行動の時間などは、旅行会社の手配の外にあることがあります。説明会では、行程のどの部分を誰が手配し、誰が下見や安全確認をしているのか、自由行動のときの連絡方法はどうなっているのかを聞いてみてください。

旅行会社の「特別補償」と海外旅行保険の違い

企画旅行には、旅行会社に過失がなくても一定の額を払う「特別補償」があります。ただし対象は、急激かつ偶然な外来の事故によるけがで(細菌性食物中毒は含まない)、払われるのは死亡補償金(海外旅行は2,500万円)、後遺障害補償金、入院・通院の日数に応じた定額の見舞金(海外旅行の場合、入院見舞金は4万〜40万円、通院見舞金は2万〜10万円)と、携帯品の損害(1企画旅行で15万円が限度)です。通院見舞金は通院が3日以上になった場合に限られます。けがでも病気でも、治療費の実費や、家族が現地に駆けつける費用(救援者費用)は払われません。また特別補償は企画旅行のものなので、手配旅行や留学会社が手配する部分にはなく、契約書面で旅行会社の手配したサービスを一切受けない日と明示された日(自由行動日など)も対象外になり得ます。

外務省の案内も、不測の事態に備えて参加者全員が海外旅行傷害保険に加入するよう求めています。文部科学省の危機管理ガイドラインは、研修旅行にも参考にできるとしたうえで、「傷害治療費用」「疾病治療費用」「救援者費用」は十分な補償が不可欠だとし、保護者にも補償の対象と免責事由を確認してもらう必要があるとしています。学校がまとめて加入する保険がある場合は、この3つの補償額と、持病がある場合の扱いを確かめましょう。保険の選び方は高校生の留学保険の選び方で整理しています。

行き先の安全情報は、外務省の海外安全ホームページで確認できます。危険情報は、レベル1「十分注意してください。」、レベル2「不要不急の渡航は止めてください。」、レベル3「渡航は止めてください。(渡航中止勧告)」、レベル4「退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)」の4段階です。どのレベルになったら研修を中止するか、中止のときの費用の扱いはどうなるかは、学校や設置者によって判断が異なります(確認ポイント)。保護者自身も「たびレジ」に簡易登録しておくと、行き先の安全情報をメールで受け取れます。

デメリット④定員・選考・出席と単位の扱いは学校ごと

POINT

外国の高校への留学は、校長が許可すれば36単位まで認定できると法令で定められていますが、短期研修の出欠や単位の扱いは学校ごとです。定員と選考、事前研修への参加義務とあわせて確かめます。

学校教育法施行規則第93条は、校長が教育上有益と認めるとき、生徒が外国の高等学校に留学することを許可でき、留学先での履修を36単位を超えない範囲で認定できると定めています。これは外国の高校に在籍して学ぶ「留学」の規定です。数日から数週間の学校主催の研修を、学校行事として扱うのか、課外活動とするのか、科目の授業の一部とするのかは、学校ごとに異なります。研修が授業日にかかる場合に、その日を出席扱いにするのか、課題や試験はどうなるのかも、学校の決まりで決まります。

希望制の研修では、定員と選考もあります。応募者が多ければ、成績、英語の資格、作文、面接などで選ばれることがあり、選ばれなかったときに別の機会があるのかも学校によって違います。また、国費の支援を受ける研修では派遣前の語学学習やオリエンテーション、帰国後のフォローアップが条件になっているため、出発前に事前研修への参加が求められます。部活動の大会や模試、補習と重ならないか、帰国後の報告会や課題の負担はどの程度かを、年間の予定と照らし合わせておきましょう。

確認ポイント:短期研修の出欠・単位・評価への反映、選考の基準、事前研修の回数は、本記事では一般化できません。学校の募集要項に書かれていなければ、説明会や担当の先生に直接お聞きください。

学校主催と個人申込、どちらを選ぶか

POINT

初めての海外で安全と手間を重視するなら学校主催、日程や英語を使う量を自分で選びたいなら個人申込が向いています。研修で手ごたえを得て、次は個人で長く行くという段階の踏み方もあります。

学校主催の研修と個人申込の短期留学の比較(当サイトの整理)

比べる点学校主催の研修個人申込の短期留学
手配の手間学校と旅行会社が行う家庭がプログラム・航空券・保険を選ぶ
日程の自由度小さい(学校が決める。コースを選べる程度のことが多い)夏休み・春休みなど家庭の都合で選べる
費用の見え方一式の価格。内訳は問い合わせが必要プログラム料金と別費用を比べて選べる
安全管理引率教員・学校の連絡体制・外務省への旅行届事業者の現地サポートと家庭の準備
英語を使う量日本人の仲間と一緒で、少なくなりがち一人参加ならホームステイなどで増やしやすい
研修・留学向けの支援国費の6万円(原則として学校単位で応募)、自治体の補助トビタテ、自治体・民間の奨学金など
取消・変更取消料の表と学校独自の締切の両方事業者ごとの規定

同じ学校の仲間と一緒に行く研修は、安心感がある反面、現地でも日本語で過ごす時間が長くなりがちです。英語に触れる量を重視するなら、研修の中に現地校での授業やホームステイがどれだけあるかを確かめましょう。短期の海外体験で得られること・得られないことは短期留学は意味ない?で、調査結果とあわせて整理しています。

将来、海外の大学への進学を考えている場合は、学校の研修を下見の機会として使う考え方もあります。現地の高校生と同じ教室で過ごす、大学のキャンパスを訪れるといった経験は、進路を考える材料になります。海外大学進学の全体像は海外大学進学ガイドにまとめています。研修に参加しなかった場合でも、夏休みや春休みに個人で短期留学をする選択肢は残ります。時期ごとの考え方は高校生の春休み留学ガイドも参考にしてください。

避けたい

「学校の研修だから英語力が大きく伸びるはず」と期待して参加を決める

こうすればOK

研修の目的(交流・体験・語学)と、現地で英語を使う時間の割合を確かめ、帰国後にどう続けるかまで家族で決めておく

説明会で聞くべき質問リスト

POINT

迷ったら、費用・取消・安全・保険・学校生活の5分野で質問を用意して説明会に臨みます。答えが募集要項や契約書面に書かれているかも確認します。

説明会・面談で聞く質問(当サイトの整理。根拠は本記事の各章)

分野質問なぜ聞くか
費用参加費に含まれるもの・含まれないものは何ですか総額を個人申込と比べるため
費用参加人数や運賃の変更で、金額が変わることはありますか約款上、人数や公示運賃の大幅な変更で代金が変わり得るため
費用国費高校生留学促進事業や自治体の補助の対象ですか原則として学校単位で応募する支援があるため
取消契約の相手は誰で、受注型企画旅行ですか。取消料の表と、学校独自の辞退の締切はどうなっていますか約款の取消料の表(受注型企画旅行の場合)と学校の決まりは別のため
取消途中で帰国する場合、費用と付き添いはどうなりますか旅行開始後の払い戻しは限られ、保護措置の費用は原則として旅行者の負担になり得るため
安全引率は何人で、引率責任者は誰ですか。添乗員は同行しますか文部科学省が旅行・集団宿泊的行事で引率責任者の明確化を求めているため
安全旅行会社の手配に入っていない活動(自由行動・学校が直接依頼した訪問先)はありますか手配の外の活動は安全確認の仕組みが違うため
安全外務省の危険レベルがどうなったら中止しますか。中止のとき費用はどうなりますか中止の判断と費用の扱いは学校ごとのため
保険学校が加入させる保険の、傷害治療費用・疾病治療費用・救援者費用の補償額はいくらですか旅行会社の特別補償は定額の補償金・見舞金で、治療費の実費や救援者費用は払われないため
学校生活授業日にかかる場合の出欠、単位や評価への反映、事前研修の回数はどうなりますか短期研修の扱いは学校ごとのため

すべてにその場で答えてもらえなくても構いません。大切なのは、答えが書面に残っているかどうかです。説明会の資料や募集要項、旅行会社の契約書面に書かれていない点は、後日でよいので文書やメールで回答をもらっておくと、あとで行き違いが起きにくくなります。

まとめ:学校主催の研修は「見えにくい部分」を聞いてから決める

学校が主催する海外研修は、引率教員の同行、外務省への旅行届やたびレジへの登録、緊急連絡体制、全員の保険加入など、安全の仕組みがあらかじめ組まれている点が強みです。国費高校生留学促進事業の6万円(令和8年度予算案)のように、原則として学校単位で応募する支援もあります。

その一方で、参加費の内訳、人数や運賃で代金が変わる条件、取消料と学校独自の辞退の締切、旅行会社の手配の外にある活動、保険の補償範囲、出席や単位の扱いは、家庭から見えにくい部分です。これらは研修の欠点というより、聞かなければ分からない部分です。説明会で質問リストを使って確かめ、納得できれば参加させる、という順番で判断してください。研修で手ごたえがあれば、次は夏休みや1学期の留学へとつなげることもできます。

Q.学校の海外研修と海外修学旅行は何が違いますか?

修学旅行は特別活動の学校行事に位置づけられ、原則として学年全員が参加します。希望制の海外研修は、参加するかどうかを家庭が選び、定員や選考があることもあります。どちらも学校が主体となって安全管理を行い、外務省への旅行届やたびレジへの登録などの手続きをとる点は共通です。研修の教育課程上の扱いは学校ごとに異なります。

Q.参加費の内訳を学校に聞いてもよいのでしょうか?

聞いて構いません。旅行会社が学校の依頼でつくる研修は一式の価格で示されることが多く、約款も細かい内訳の明示までは求めていません。航空券・滞在費・研修費・保険・引率者や添乗員の費用が含まれるか、参加人数や運賃の変更で金額が変わる条件があるかを確かめると、個人で申し込む短期留学(1〜2週間で総額約30〜60万円)と比べやすくなります。日数が違う場合は、その差も考えて比べてください。

Q.申し込んだあとにキャンセルすると、費用はどれくらいかかりますか?

旅行会社との契約が受注型企画旅行で、海外へ航空機で行く場合、標準旅行業約款の取消料の上限は、出発30日前から旅行代金の20%以内、前々日から50%以内、出発後や連絡のない不参加は100%以内です。30日より前でも、企画料金を明示していればその額がかかります。実際の額は契約書面に書かれ、チャーター便を使う場合は別の表になります。学校独自の辞退の締切があることもあるので、募集要項もあわせて確認してください。

Q.学校の研修でも、海外旅行保険に入る必要はありますか?

必要です。外務省の案内は、参加者全員が十分な補償の海外旅行傷害保険に加入するよう求めています。旅行会社の特別補償は、事故によるけがに対する死亡・後遺障害の補償金や入院・通院の日数に応じた定額の見舞金などで、けがや病気の治療費の実費や、家族が駆けつける救援者費用は払われません。学校がまとめて加入する保険がある場合は、傷害治療費用・疾病治療費用・救援者費用の補償額と、持病がある場合の扱いを確かめてください。

Q.国の6万円の支援は、家庭から申し込めますか?

家庭から直接は申し込めません。文部科学省の国費高校生留学促進事業は、学校教育活動の一環として参加する原則10日以上1か月未満の派遣プログラムを対象に、都道府県を通じて支援するもので、学校単位での応募が原則です(令和8年度予算案で1人6万円・1,700人)。在籍校の研修が対象になっているかを学校に確かめてください。トビタテ!留学JAPANの奨学金とは併給できません。

Q.研修で授業を休む日が出る場合、欠席になりますか?

学校によって異なります。外国の高校に在籍して学ぶ留学は、校長の許可で36単位まで認定できると法令で定められていますが、数日〜数週間の研修を学校行事・課外活動・科目の一部のどれとして扱うか、授業日を出席扱いにするかは、学校の決まりで決まります。課題や定期試験の扱いとあわせて、説明会や担当の先生に確認してください。

Q.行き先の治安が悪くなったら、研修は中止になりますか?

中止の判断基準は学校や設置者によって異なるため、事前に確認しておくことをおすすめします。学校は出発前に外務省の海外安全情報で最新の状況を確認するよう求められています。また受注型企画旅行の約款では、戦乱や暴動、官公署の命令などで旅行の安全な実施が不可能になった、またはそのおそれが極めて大きいときは、旅行開始前に取消料なしで解除できると定めています。