このページの要点
トビタテ!留学JAPAN(高校生等対象)は返済不要で、家計基準内なら支給対象月1回分12万〜16万円+準備金21万・35万円が出ます。
- 支援額:家計基準内なら支給対象月1回分あたり12万円または16万円(留学先の地域区分による)+留学準備金21万円または35万円。家計基準を超える場合は月6万円相当で、採用は支援予定人数全体の1割程度が上限。
- 入口は広く、段取りは重い:成績・語学試験スコアは要件になっていません。一方で応募は在籍高校を通じてのみ(個人応募不可)、面接は対面で交通費は自己負担、事前・事後研修は参加必須です。
- 振込の時期に注意:留学期間124日以下の場合、奨学金は留学終了後に一括支給。渡航費や現地費用はいったん家庭が立て替える前提で資金を用意します。
- 第12期(2027年度)を募集中:支援予定人数は600名(第11期は700名)。在籍高校から機構への応募申請期限は、第一日程が2027年1月21日、新高校1年生だけが選べる第二日程が2027年4月21日です。生徒から学校への提出期限はそれより前に各校が決めます。
トビタテ!留学JAPANは、文部科学省とJASSOが推進し、民間企業・個人等からの寄附を原資にJASSOが運営する返済不要の留学支援制度です。1人あたりの支給額が大きい高校生向けの給付型として代表的な制度で、第11期(2026年度)は高校生等対象で700名の支援が予定され、実際には718名が採用されました。2026年10月1日に募集要項が公開された第12期(2027年度)の支援予定人数は600名です。特徴は、留学のテーマ・行き先・期間を自分で設計して応募する点と、選考で「人物」を重視する点です。この記事では支援額と振込の時期、応募できる条件、学校を通す手続き、選考の観点、採用後の義務、そして地域に関わる2種類の枠(拠点形成支援事業と地域応援枠)までを、募集要項の記載にもとづいて保護者向けに整理します。
本記事の制度の内容(金額・要件・日程など)は、文部科学省・独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)が2026年10月に公開した「トビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム【高校生等対象】2027年度(第12期)派遣留学生募集要項」、応募・採用の実績は文部科学省が2026年6月4日に公表した第11期(2026年度)の選考結果にもとづきます(2026年10月時点)。本文の「機構」はJASSOを指します。金額・コース・日程・要件は期ごとに改定されるため、応募時は必ず公式サイトの最新の募集要項と在籍校の担当者にご確認ください。
トビタテ!留学JAPANとはどんな制度か
POINT
民間企業等からの寄附を基に、日本学生支援機構(JASSO)が運営する返済不要の奨学金です。学校が用意した派遣プログラムに乗るのではなく、生徒が自分で留学計画を作って応募する点が他の制度と決定的に違います。
現行は「新・日本代表プログラム」と呼ばれる第2ステージにあたります。高校生等対象と大学生等対象があり、高校生等対象は在籍する高校を通じて応募します。留学の内容は探究活動・インターンシップ・ボランティア・研究など幅広く認められます。ただし要項は「語学学習のみを行う計画は、支援の対象外」と明記しています。語学学習が認められるのは、留学全体の準備過程または補助的な位置づけとして計画の一部に含まれる場合だけです。つまり「夏休みに語学学校へ3週間」という計画をそのまま出しても対象外です。「どこの語学学校に行くか」ではなく「何を探究するために行くか」を言語化できて、はじめて応募が成立します。
制度の基本仕様(第12期=2027年度の募集要項より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施主体 | 文部科学省と日本学生支援機構(JASSO)が推進し、JASSOが運営。民間企業・個人等の寄附が原資 |
| 返済 | 不要(給付型) |
| 支援予定人数 | 高校生等対象で600名(4つの探究コースに配分。第11期は700名) |
| 応募できる学年 | 2027年4月に高校等の第2・3学年に進級する生徒等(新高校2・3年生)と、2027年4月に高校等に進学する生徒等(新高校1年生)。高等専門学校は第3学年以下(第4学年に進級する人は応募不可) |
| 留学期間 | 14日以上1年以内。2027年7月10日〜2028年3月31日の間に開始する計画が対象。2028年3月に高校等を卒業予定の人は2028年3月31日までに帰国する必要があり、留学期間は最大で2027年7月10日〜2028年3月31日になる |
| 成績・語学要件 | 応募の必須要件になっていない |
| 応募方法 | 在籍高校等(新高校1年生は入学予定の高校等)を通じてのみ(個人での応募申請は不可) |
| 対象年齢 | 2027年4月1日時点で30歳以下 |
| 再応募 | 過去に本制度・拠点形成支援事業・旧制度で採用された者は応募できない(不採用だった人の応募は制限されない。ただし学年などの要件は満たす必要がある) |
高校生が使える返済不要の制度としては規模が大きく、留学団体の奨学金や自治体の支援と並べても第一候補になります。制度全体の見取り図は高校生の留学奨学金ガイドにまとめました。
4つの探究コースと、コースごとの枠
POINT
第12期も4つの探究コースに分かれ、コースごとに支援予定人数が決まっています。合計は第11期の700人から600人に減り、4コースとも枠が小さくなりました。ただしコースは計画の内容で決まり、枠の大きさで選ぶものではありません。募集要項は、STEAM領域の内容やAI・IoT、理科・数学の見方を活用する計画は「STEAM探究コース」に、スポーツや芸術に関する計画は「スポーツ・芸術探究コース」に応募するよう求めています。枠の大きさは、計画の内容に合うコースが決まったあとの前提条件として把握しておくものです。
応募は「新高校2・3年生/新高校1年生」の第一日程と、「新高校1年生」だけの第二日程に分かれており、コースごとに日程別の人数まで示されています。新高校2・3年生は第一日程のみ、新高校1年生は第一日程か第二日程のどちらか一方に応募します(両方への応募は不可)。第二日程は枠が小さく、選考方式も異なります(後述)。
コースと支援予定人数(第12期=2027年度。右から2列目は第11期の合計)
| コース | 第12期 合計 | 第一日程 | 第二日程 | 第11期 合計 | 対象になる留学計画 |
|---|---|---|---|---|---|
| STEAM探究コース | 140人 | 115人 | 25人 | 160人 | 科学・技術・工学・芸術・数学の領域で問いを設定した探究、AI・IoT・理科や数学の見方を活用する探究 |
| スポーツ・芸術探究コース | 120人 | 100人 | 20人 | 140人 | 実技経験や実績の有無を問わず、スポーツ・芸術分野で問いを設定し、その分野の発展に寄与する探究 |
| マイ好奇心探究コース | 210人 | 175人 | 35人 | 250人 | 「知りたい」「明らかにしたい」という興味・関心に基づく問いを設定し、未知を既知にする探究 |
| 社会課題探究コース | 130人 | 110人 | 20人 | 150人 | 世界・日本・地域の社会課題を自分ごととして考え、課題解決やSDGs・社会貢献に寄与する探究 |
| 合計 | 600人 | 500人 | 100人 | 700人 | — |
もう一つ押さえておきたいのが期間の枠です。第11期・第12期とも、留学期間が125日以上の「ロング」の計画は、支援予定人数全体のうち20人程度の採用予定とされています。つまり長期の留学計画は枠が極端に小さい構造です。1学期以上を希望する場合は、この現実を踏まえて他の制度(留学団体の奨学金・自治体の派遣)も並行して検討してください。なお募集要項には「採用人数は応募状況等により変動する場合があります」とあり、第11期は支援予定700人に対して718人が採用されました。
コース名・人数・期間の扱いは期ごとに変わります。たとえば第9期(2024年度)は「マイ探究コース」「社会探究コース」など現在とは異なる区分でした。応募する期の募集要項でコースと枠を必ず確認してください。
いくら受け取れて、いつ振り込まれるか
POINT
支給額は「留学先の地域」×「家計基準」×「活動日数」で決まります。そして見落とされがちなのが振込の時期です。短期(124日以下)の奨学金は留学終了後の一括支給で、渡航前の支出は家庭の立替になります。
奨学金の月額(支給対象月1回分・第12期の募集要項より。第11期と同額)
| 留学先の地域区分 | 家計基準内 | 家計基準外 |
|---|---|---|
| 区分①:北米・シンガポール・欧州・中近東(一部の国は区分②を適用) | 160,000円 | 60,000円 |
| 区分②:アジア(シンガポールを除く)・大洋州・中南米・アフリカ、および区分①の除外国 | 120,000円 | 60,000円 |
この月額は、留学期間の日数から算出した「支給対象月数」に応じて支給されます。14日以上31日以下で1回分、以降おおむね31日ごとに1回分ずつ増え、342〜365日で12回分が上限です。したがって家計基準内・区分①で1年なら192万円、区分②なら144万円が奨学金の上限になります。これに加えて留学準備金が、アジア地域21万円・その他の地域35万円(円安・物価高騰分の増額を含む)支給されます。期間別の総額は返済不要の留学奨学金でいくら残るかで費用と並べて計算しています。
支給の時期(第12期の募集要項より)— ここが資金計画の分かれ目
| 支給の種類 | 留学期間 | 申請の時期 | 振込の時期と方法 |
|---|---|---|---|
| 奨学金 | 124日以下(ロング以外) | 留学終了後に、生徒の提出書類を確認した在籍高校が機構へ申請 | 申請確認後に支給総額を一括支給 |
| 奨学金 | 125日以上(ロング) | 留学開始前および留学期間中、毎月申請(在籍高校が毎月の在籍・学修状況を確認) | 支給対象月の翌月に月額を送金(予定) |
| 留学準備金 | 共通 | 事前研修に参加した後、在籍高校が機構へ申請 | 原則として留学開始前に一括支給 |
もう一つ、資金計画に直結する条件があります。受入先機関の所在地が外務省「海外安全ホームページ」の危険情報・感染症危険情報で「レベル2:不要不急の渡航は止めてください」以上に該当する場合、その計画は対象外です。応募時点でレベル2以上でも選考には差し支えありませんが、留学開始時点または留学中にレベル2以上となった場合は原則として奨学金の支給対象外とされています。短期は帰国後の一括支給ですから、立替だけが残る事態を避けるため、渡航先の危険情報レベルは応募時と渡航直前の両方で確認してください。
短期留学を計画する家庭にとって、これは重要な事実です。留学準備金(21万円または35万円)は渡航前に受け取れますが、奨学金の本体は帰国後です。航空券・プログラム費用・保険料の支払いは渡航前に発生するため、その時点では家庭の資金で立て替えることになります。「奨学金が出るから大丈夫」と考えて手元資金を確保しないと、支払いのタイミングで詰まります。総額の把握は高校留学の費用ガイドを使って先に済ませてください。いつ・いくら立て替えるかはトビタテ採用後の保護者負担額で時系列に整理しています。
応募できる条件(第12期の10要件)
POINT
成績・語学スコアは要件ではありません。代わりに家計基準・在籍状況・過去の採用歴・併給といった形式要件が細かく定められています。形式要件は1つでも外れると支援の対象外です(家計基準だけは、超えていても応募できます)。
- 1日本国籍を有する、または応募時までに日本への永住が許可されている
- 2事前・事後研修と「派遣留学生ネットワーク」の活動に参加する意思を表明している
- 3在籍高校等で卒業を目的とした課程に在籍している
- 4在籍高校等が派遣を許可し、受入先機関が受入れを許可している
- 5JASSOの国内貸与奨学金「第二種奨学金(予約採用)」の家計基準を満たす(超えていても応募は可能。ただし採用は支援予定人数全体の1割程度が上限)
- 6留学に必要な査証を確実に取得し得る
- 7留学終了後、在籍高校等に戻って学業を継続する、または卒業を目指す
- 82027年4月1日時点の年齢が30歳以下
- 9他団体等からの給付型奨学金やインターンシップ等の報酬の総額が、本制度の奨学金総額(留学準備金を除く)を超えない(相手方の団体が本制度との併給を認めない場合があるため、その団体に確認するよう注記あり。文部科学省「初等中等教育段階からの国際交流促進事業(国費高校生留学促進事業)」の留学支援金とは併給不可)
- 10過去に本制度・拠点形成支援事業・旧制度の派遣留学生として採用されていない(本人の責によらず留学開始前に辞退した場合は除く)
家計基準の判定は、生計維持者(原則として父母2名)の収入・所得にもとづいて在籍高校が行います。第12期では、2025年1月〜12月の所得を反映した2026年度(令和8年度)の課税証明書(自治体によっては所得証明書)で確認するとされています。保護者側の準備は、この書類を早めに用意しておくことです。基準を超える場合も応募自体は可能ですが、支給額は月6万円相当に下がり、採用枠も1割程度に限られます。
避けたい
所得が基準を超えていそうだから応募を諦める
こうすればOK
応募は可能。ただし支給額(月6万円相当)と採用枠(支援予定人数全体の1割程度が上限)を理解した上で、他の制度と並行して検討する
避けたい
他の給付型奨学金と両方もらえる前提で資金計画を立てる
こうすればOK
併給の上限(本制度の奨学金総額以内)と相手側の併給可否を先に確認する。国費高校生留学促進事業の留学支援金とは併給できない
避けたい
一度採用されたら翌年も別の計画で応募できると考える
こうすればOK
過去に採用された者は応募できない。チャンスは1回という前提で計画の完成度を上げる
生徒の要件だけでなく「留学計画の要件」もある
見落とされがちですが、応募者本人の要件とは別に留学計画そのものの要件が定められています。ここを外すと、書類の完成度に関係なく対象外になります。
留学計画の要件(第12期の主なもの)
| 要件 | 保護者が確認すること |
|---|---|
| 留学開始日が2027年7月10日〜2028年3月31日の間 | 「留学開始日」は受入先機関で活動を始める日。出国日・現地到着日ではない |
| 活動期間が14日以上1年以内 | 渡航・帰国にかかる期間や移動日は、その日に受入先機関での活動を行わない場合、留学期間に含まれない。活動日で数える。活動終了後10日以内に帰国し、ロング(125日以上)は2029年1月31日までに留学を終える。2028年3月に卒業予定の人は2028年3月31日までに帰国する |
| 受入先機関の受入許可を得られる | 日本に所在する法人・団体(海外事務所は可)、滞在先(ホームステイ先・寮・ホテル等)、留学あっせん業者(計画の活動内容がその業者の業務・活動に関するものである場合のみ可)、個人(個人が経営する事業での活動なら可)は受入先機関として認められない。修了証明書等で活動を証明できることも必要 |
| 在籍高校等が教育上有益な学修活動と認める | 語学学習のみの計画は支援の対象外(補助的に含む場合は対象) |
| 留学の目的に沿った探究活動を含む | 「問い」が計画書の中心になる |
| アンバサダー活動・エヴァンジェリスト活動を含む | 留学先で日本や地域の良さを発信し、留学中・帰国後に留学の魅力や成果を発信する活動を計画に書く |
| 受入先機関の所在地が外務省の危険情報レベル2以上でない | 応募時点でレベル2以上でも選考には差し支えないが、留学開始時点または留学中にレベル2以上になると原則として奨学金の支給対象外 |
応募は在籍高校を通じてのみ——最初の関門は学校
POINT
募集要項には「個人で応募申請することはできません」と明記されています。応募から採用後の全手続きが学校経由で、学校側にも満たすべき体制要件があります。
手続きはオンラインシステムで行いますが、まず在籍高校がシステムのアカウントを持っている必要があります(初めて応募者が出る学校は申請が必要で、第8〜11期に応募実績のある学校は従来のアカウントを引き続き使います)。そのうえで生徒が校内の期限までに計画を提出し、学校が内容を確認して機構へ申請します。留学計画は在籍高校の長が「教育上有益な学修活動」と認める必要があり、作成段階から学校の担当者と相談することが前提です。
締切は3段階で、校内が最も早い(第12期=2027年度の募集要項より)
| 手続き | 第一日程(新高校2・3年生/新高校1年生) | 第二日程(新高校1年生のみ) |
|---|---|---|
| 応募者から在籍高校等への提出 | 各高校(または入学予定の高校)が指定する期間(学校ごとに異なる) | 各高校(または入学予定の高校)が指定する期間 |
| 在籍高校等から機構への応募申請の開始 | 2026年12月上旬(予定) | 2027年4月1日 |
| 在籍高校等のアカウント申請期限 | 2027年1月15日 | 2027年4月15日 |
| 在籍高校等から機構への応募申請期限 | 2027年1月21日 | 2027年4月21日 |
| 採否結果の通知 | 2027年4月下旬(予定) | 2027年5月下旬(予定) |
学校側の要件は3つです。①留学中の学修活動状況を適切に管理する体制、②危機管理体制(文部科学省「高等学校等における海外留学に関する危機管理ガイドライン」の事項に対応でき、機構・生徒・保護者と連絡が取れること)、③事務手続きを遅滞なく行う体制。前例のない学校では、この確認から始まります。だからこそ、募集開始を待ってから動くのでは間に合いません。留学を考え始めた段階で学校に伝えておくのが最善の準備です。
応募書類は日本語で作成し、応募申請期限後は差替えや訂正が一切認められません。面接で計画の変更を申し出ることはできますが、それによって変更が受理されるわけではないと明記されています。校内締切の2〜3週間前に一度完成させる進め方が安全です。
選考は「人物」を重視する
POINT
審査の観点は「人物」と「計画」の2つで、募集要項は「人物」の観点をより重視すると明記しています。成績や語学力を測る制度ではありません。
第一日程は書面審査(一次)を通過した人が個人面接(二次)に進みます。第二日程は、応募者全員に書面審査と面接審査(個人面接)をあわせて行う「総合審査」です。面接は対面で行われ、日時と会場は在籍校の所在地・応募者の居住地・対象人数などを踏まえて機構が指定します。第12期の予定は、第一日程が2027年3月20日〜30日(東京・岡山・沖縄・札幌・大阪・仙台・福岡・名古屋)、第二日程が5月4日〜9日(東京・岡山・大阪・札幌・福岡)で、応募状況によって日程・会場が変わることがあります。指定された日時と会場は原則変更できず、交通費は応募者の自己負担です。身体等に障害があって配慮が必要な場合は、在籍校を通じて事前に相談できます。
審査で見られるもの(第12期の募集要項の記載)
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 人物(より重視) | 多様な価値観を柔軟に取り入れる意欲/社会に貢献しようとする志/好奇心を原動力に新たな価値を創造する力/探究心を持ち視野を広げる姿勢/失敗を恐れず挑戦し続ける気持ち/リーダーシップを発揮し周囲を巻き込む力/多様な人々と対話し協働する姿勢 |
| 計画 | 留学の目的や学びたいこと、応募理由が明確か/目的を達成するために適切な「留学先」「期間」「探究活動内容」か/得た成果を将来にどう活かし、社会にどう還元するか |
保護者として意識したいのは、ここが受験対策とは別の軸だということです。模範解答を用意するほど「人物」は見えにくくなります。子どもが自分の言葉で問いを語れるかが評価されるため、大人が計画書を書き直してしまうと逆効果になりかねません。なお、選考・審査に関する問い合わせや採否結果の理由には一切回答されないと明記されています。採用可能性の構造はトビタテの倍率と採用の実態で数字から整理しました。留学計画書の設問・字数と、書き始める順番はトビタテの応募書類の書き方にまとめています。
採用後に発生する義務
POINT
返済は不要ですが、時間の義務があります。事前研修(半日)と事後研修(1日)は参加必須で、留学中・帰国後の発信活動にも参加します。
- 事前研修(必須・半日):留学開始前。日時と会場は機構が指定し、途中参加・途中退出は認められません。第12期は2027年6月12日・13日(東京)、19日・20日(大阪)の4日程のいずれかが指定される予定です。交通費の支給はなく、留学準備金に含まれる扱いです
- 事後研修(必須・1日):帰国後に順次開催(第12期は2027年秋以降。留学終了月から1年以内、かつ2029年3月までに参加)。日時・会場は帰国日等に応じて機構が指定します
- 留学状況報告書:事後研修に参加してから1か月以内に提出します
- 壮行会(任意):支援企業・支援者が派遣留学生を激励する会。要項上は任意ですが、東京の事前研修を指定された場合はその日の午前の壮行会に、大阪の事前研修を指定された場合は6月19日の壮行会に「参加いただきます」と案内されています
- アンバサダー活動:留学先で日本や自分の地域の良さを発信する
- エヴァンジェリスト活動:留学中・帰国後に、留学の意義や成果を国内で発信し、留学の機運を高める
- 派遣留学生ネットワーク:留学機運醸成の活動や、支援企業等への活動報告・成果提供に参加する
- 書類の提出:採用決定後に登録書類・支給申請書類・誓約書などを提出する
この制度が民間の寄附で成り立っていることを踏まえると、発信活動は「おまけ」ではなく制度の中核です。応募要件にも研修・ネットワークへの参加意思の表明が入っています。学校行事や部活動、受験準備との日程が重なる可能性があるため、応募前に家族で年間予定を確認しておくと安心です。
地域に関わる枠は2種類ある——「拠点形成支援事業」と「地域応援枠」
POINT
混同しやすいのですが、地域に関わる枠は2種類あります。拠点形成支援事業(採択された府県が独自に選抜する別ルート)と、全国枠の中にある地域応援枠(都道府県ごとの応募者数が一定以上ある場合に、その都道府県の上位者を優先して採用する仕組み)です。
「拠点形成支援事業」は、地域の産学官が協働して高校生等に留学機会を提供する取り組みで、令和5年度に始まりました。文部科学省の公表によれば、採択されたのは令和5年度が石川県・静岡県・滋賀県、令和6年度が福島県・高知県、令和7年度が群馬県・富山県・京都府・和歌山県・徳島県・福岡県です。ただし令和5年度採択の3県は令和7年度で「拠点形成支援事業」としての支援が終了しており、第11期の採用人数には計上されていません(3県はいずれも独自に事業を継続し、「トビタテ!留学JAPANアライアンス事業」として事前・事後研修やコミュニティ活動に参加できるとされています)。第11期の選考結果では、全国枠の採用718名に対し拠点形成支援事業で365名が採用され、高校生等の採用人数は合計1,083名と、文部科学省の発表で「過去最多」となりました。
対象地域に該当する場合は、その府県のプログラムの募集要項を必ず確認してください。全国枠との併願が可能かどうかは各プログラムの要項で定められており、募集要項は「併願の可否を必ず確認する」よう案内しています。第12期の募集要項に「2027年度募集」として掲載されている府県は、群馬県・富山県・京都府・和歌山県・徳島県・福岡県の6府県です。第11期に拠点形成支援事業で採用があった福島県・高知県はこの一覧に載っていないため、両県の2027年度の扱いは各県と機構の最新の案内で確認してください。
もう一つの地域応援枠は、全国枠の中の仕組みです。募集要項は、日本の海外留学者数には地域差があり、特に高校生は身近に留学経験者がいないなどの課題があるとして、各都道府県にロールモデルが存在する状態をつくるためにこの枠を設けると説明しています。仕組みは、都道府県ごとの応募者が第一日程で15人以上なら、その都道府県の第一日程応募者の上位5人を優先して採用するというものです。第一日程が15人未満でも、第一・第二日程の合計が15人以上なら第二日程の応募者の上位2人が優先されます。これにより「これまで高校生の留学が少なかった都道府県からも派遣留学生が確実に選抜されるようにします」というのが要項の趣旨です。判定は応募者の居住地ではなく在籍高校の所在地で行われ、第12期では拠点形成支援事業の6府県(群馬・富山・京都・和歌山・徳島・福岡)には設定されません。
注意したいのは、応募者が少なすぎる都道府県には地域応援枠が設定されないことです。第一・第二日程の合計でも15人に届かなければ、優先採用の枠はありません。第11期の選考結果(文部科学省の公表資料・都道府県別)を当サイトで集計すると、拠点形成支援事業の採択県を除いてこれに当たったのは8県(岩手・秋田・山形・新潟・山梨・岐阜・佐賀・大分)で、合計は応募67名・採用16名(約4.2倍)と、全国枠全体の約3.6倍より厳しい結果でした。当サイトの読みでは、枠が効きやすいのは、第一日程の応募が15人以上あり、かつ応募者がそれほど多くない都道府県です(要項や公表資料にこうした記載があるわけではありません)。どの都道府県が対象になるかはその期の応募者数で決まるため、応募前に知ることはできません。倍率の具体的な数字はトビタテの倍率と採用の実態で扱っています。
向いている家庭・向かない家庭
POINT
「返済不要だから応募する」だけでは続きません。自分で問いを立てられるかと、家庭が段取りを支えられるかの2点で相性が決まります。
相性の見極め
| 観点 | 向いている | 慎重に考えたい |
|---|---|---|
| 留学の動機 | 自分で調べたいテーマ・問いがある | 「英語力を上げたい」だけで、活動の中身が決まらない |
| 学校との関係 | 担任や国際交流担当に相談できる/学校が留学に前向き | 学校に前例がなく、体制の整備に時間がかかりそう |
| 時間 | 事前・事後研修や発信活動に参加できる | 受験や部活の日程と重なり、研修に出られない可能性が高い |
| 資金 | 短期なら帰国後の入金までを立て替えられる | 手元資金がなく、渡航前の支払いに充てるつもりだった |
| 期間の希望 | 14日〜4か月程度の計画 | 1年間を希望(ロングの枠は全体で20人程度と小さい) |
短期の留学そのものの効果や向き不向きは高校生の短期留学ガイドでも扱っています。トビタテに落ちた場合でも、留学団体の奨学金や自治体の制度、期間や国の見直しで実現できる道は残ります。応募前に「不採用ならどうするか」を決めておくと、結果が出た日から動けます。
まとめ
トビタテ!留学JAPAN(高校生等対象)は、返済不要で、成績・語学スコアを問わず、自分の探究計画で応募できる制度です。家計基準内なら支給対象月1回分あたり12万円または16万円、留学準備金は21万円または35万円が支給されます(第12期の募集要項。第11期と同額)。第11期は700名の支援予定に対して718名が採用され、募集中の第12期は支援予定600名です。一方で、応募は在籍高校を通じてのみで学校側にも体制要件があり、面接は対面で交通費は自己負担、事前・事後研修は必須、発信活動にも参加します。そして短期(124日以下)の奨学金は留学終了後の一括支給——つまり渡航前の支払いは家庭の立替です。この制度は「お金が出るから楽になる」ものではなく、「自分の問いを持つ生徒に、家庭と学校が段取りで伴走する」制度だと捉えると判断しやすくなります。まずは第12期の募集要項の確認と在籍校への相談から始めてください。在籍高校から機構への応募申請期限は第一日程が2027年1月21日、第二日程(新高校1年生のみ)が4月21日で、校内の提出期限はそれより前に設定されます。
応募前の準備チェック(保護者向け・7項目)
制度の中身を理解したら、応募までに家庭側で整えることを自己点検してください。段取りと資金の準備が、この制度の実務です。
チェックはこの画面の中だけの表示で、保存も送信もされません。
Q.トビタテは成績が良くないと通りませんか?
成績や語学試験のスコアは応募の必須要件になっていません。募集要項では審査を「人物」と「計画」の2観点で行い、人物の観点をより重視すると明記されています。評価されるのは、自分で問いを立てて探究しようとする姿勢や、成果を社会に還元する意欲です。ただし在籍高校が派遣を許可することが要件なので、校内での学習状況が全く関係しないわけではありません。
Q.保護者が申し込めますか? 学校が動いてくれない場合はどうすれば?
個人(家庭)での応募申請はできません。在籍高校等がオンラインシステムのアカウントを取得し、生徒の計画を確認して機構へ申請する仕組みです。学校側にも学修管理・危機管理・事務手続きの体制要件があるため、まず担任・進路指導・国際交流担当に相談し、制度の存在と締切(校内→アカウント申請→機構申請の3段階)を共有してください。学校が対応できない場合は、留学団体の奨学金や自治体の制度など学校経由でないルートを検討します。
Q.奨学金はいつ振り込まれますか? 渡航費の支払いに使えますか?
留学期間124日以下の場合、奨学金は留学終了後に支給申請を行い、総額が一括で振り込まれます。渡航前に受け取れるのは留学準備金(アジア21万円・その他35万円)で、こちらは事前研修参加後・原則として留学開始前の支給です。したがって航空券やプログラム費用の支払いは家庭で立て替える前提になります。125日以上の場合は毎月の申請・翌月送金です。
Q.1年間の留学でも応募できますか?
留学期間は14日以上1年以内で、1年の計画も応募できます(第12期では、ロングの計画は2029年1月31日までに留学を終える必要があります)。ただし2028年3月に高校等を卒業予定の人は2028年3月31日までに帰国する必要があり、留学開始は2027年7月10日以降なので、1年間の計画は組めません(卒業せず2028年4月以降も在籍する場合を除く。公式FAQ)。また第11期・第12期とも、125日以上の「ロング」の計画は支援予定人数全体のうち20人程度の採用予定とされており、枠が非常に小さいのが実情です。1年を希望する場合は、交換留学団体の奨学金や自治体の派遣プログラムも並行して検討してください。
Q.他の奨学金と併用できますか?
条件付きで可能です。他団体等からの給付型奨学金やインターンシップ等の報酬の総額が、本制度の奨学金総額(留学準備金を除く)を超えないことが要件で、相手方の団体が併給を認めているかの確認も必要です。なお、文部科学省の「初等中等教育段階からの国際交流促進事業(国費高校生留学促進事業)」の留学支援金とは併給できません(第12期の募集要項の名称。第11期の要項では「社会総がかりで行う高校生国際交流促進事業」と表記)。
Q.落ちたら翌年また応募できますか?
採用歴による応募の制限は、過去に本制度・拠点形成支援事業・旧制度の派遣留学生として採用された人だけが対象です(本人の責によらず留学開始前に辞退した場合を除く)。不採用だったこと自体で次の期に応募できなくなるわけではありません。ただし、応募できるのはその期の募集要項が定める学年などの要件を満たす人に限られます(第12期なら、2027年4月に高校等の第2・3学年に進級する生徒等と、高校等に進学する生徒等。高等専門学校は第3学年以下)。たとえば新高校3年生として応募して不採用だった場合、翌年度は卒業しているため対象から外れます。新高校1年生として第二日程で応募した場合、翌年は新高校2年生として第一日程のみの応募になり、締切が約3か月早まります。選考や採否の理由は一切開示されないため、次の応募では計画の完成度を自分たちで見直す必要があります。










