このページの要点

国費高校生留学促進事業は、学校の短期派遣に1人6万円。応募は学校単位で、家庭からは申し込めません。

  • 対象は学校の派遣プログラム:学校・自治体・留学団体が主催する原則10日以上1か月未満の海外派遣に、学校教育活動の一環として参加する中学生・高校生が対象です。支給は都道府県を通じて1人6万円(令和8年度公募要領)。
  • 生徒側にも成績要件がある:全体の評定平均値3.5以上(10段階なら7.0以上)かつ外国語科目の評定値4.0以上(同8.0以上)、または外部試験で同等以上。目的意識は小論文や面接で確認されます。
  • 動くのは前年度の冬:令和8年度は3月13日が都道府県の公募締切で、交付内定は4月上旬。在籍校がこの時期に手を挙げていなければ、その年度は対象になりません。

国費高校生留学促進事業は、文部科学省が都道府県を通じて高校生等の短期海外派遣を支援する補助事業です。支援額は1人6万円、支援人数は全国で1,700人(令和8年度公募要領)。ただし「学校単位での応募を原則とする」と要領に明記されているため、保護者や生徒が自分で応募することはできません。保護者ができるのは、在籍校がこの事業に応募しているかを確かめ、校内選考の条件(成績要件と目的意識)を満たしにいくことです。対象になる費目も要領で9項目に限定されており、小遣いや食費は対象外です。

結論早見表:この6万円は誰が、いつ、どこへ申し込む制度か

POINT

申請の主体は学校と都道府県です。家庭が窓口に行く制度ではありません。まず「学校が手を挙げているか」を確かめるところから始まります。

検索でこの事業名にたどり着いた保護者の多くが、「どこに申し込めばいいのか」を探しています。先に結論を出します。申し込むのは学校です。都道府県が文部科学省に申請し、学校が都道府県に申請し、生徒は学校の校内選考を受けます。ご家庭が直接提出する書類はありません。

国費高校生留学促進事業の要点(令和8年度公募要領ベース)

項目内容
制度の正式名国費高校生留学促進事業(文部科学省総合教育政策局国際教育課)
補助事業者(お金を受け取る主体)都道府県。都道府県を通じて生徒に支給される
支援額1人当たり6万円
支援人数全国で1,700人(採択予定件数47件)
対象になる派遣学校・地方公共団体・中学生高校生の留学交流を扱う民間団体等が主催する短期の海外派遣プログラムに、学校教育活動の一環として参加する場合
期間原則10日間以上1か月未満(移動日を含まない海外での実施期間)
派遣の条件派遣前の語学学習・目標設定・オリエンテーションと帰国後のフォローアップを十分に行うことが条件。派遣された生徒は学内や域内で成果を発表し、学校は帰国後1か月以内に実施報告書と派遣生の状況報告を提出する
対象になる生徒国公私立の中学校・義務教育学校(7〜9年次)・高等学校・中等教育学校(1〜6年次)・特別支援学校中学部高等部・高等専門学校(1〜3年次)・専修学校高等課程に在籍する生徒
成績要件全体の評定平均値3.5(10段階で7.0)以上、かつ外国語科目の評定値4.0(同8.0)以上。外部試験で同等以上と認められる場合も可
応募の主体学校単位での応募が原則。家庭・生徒個人からの応募は不可
令和8年度の都道府県の公募締切令和8年3月13日(金)10:00(文部科学省への提出期限)
併給トビタテ!留学JAPAN(高校生等対象)の奨学金とは重複不可。民間団体の奨学金は併給可だが、派遣費用総額を超える分は減額。要領は他団体の奨学金等を受ける場合に「減額又は支給しないことがある」とも定めている
再受給一度支援金を受けた生徒は、再度この派遣事業の対象にはなれない

出典:令和8年度 国費高校生留学促進事業 公募要領(令和8年2月3日・文部科学省総合教育政策局国際教育課)および同事業Q&A(全22問)。公募要領には「本事業は、令和8年度予算の成立を前提に行うものであり、予算の成立状況によっては、実施方法や経費、スケジュール等を変更する場合がある」と注記されています。金額・人数・日程は年度ごとに変わるため、参加する年度の内容は在籍校と都道府県の募集要項でご確認ください。

自治体の留学支援は、この国費のほかに都道府県独自の制度と市区町村の制度があり、原資も窓口も締切が別です。3層のどこに自分が当てはまるかを先に決めたい場合は、自治体の高校生留学支援の全体像で実額と倍率を整理しています。給付型・貸与型を含む奨学金全体の順番は高校生の留学奨学金ガイドが入口です。

対象になる派遣・ならない派遣(期間と中身の線引き)

POINT

10日以上1か月未満という期間は、移動日を含まない海外での実施期間で数えます。要領の書き方は「原則」ですが、1年留学も1週間の研修も原則として対象から外れます。

この事業でいちばん誤解されるのが期間の数え方です。公募要領は「プログラム実施期間が、原則10日間以上1か月未満の計画であるもの」と定めていますが、Q&Aはその数え方をはっきり書いています。「補助対象となる原則10日間以上とは、移動日を含まない海外でのプログラム実施期間(土日を含む)を指し、出国〜帰国を含む移動日数は含まれない」。つまり日本を出る日と帰る日は数に入りません。

ここは学校の日程表の見方に直結します。「10日間の海外研修」と案内されていても、往復の移動日を含んだ10日間なら、現地での実施期間は8日程度で要件に届かない可能性があります。逆に、現地で10日あれば移動を含めて12日前後の日程になります。説明会で確認するのは旅程の総日数ではなく、現地でのプログラム日数です。

対象になる派遣・ならない派遣

区分具体例対象
期間現地でのプログラム実施期間が10日以上1か月未満(移動日は数えない)対象
期間現地5日間の語学研修、1週間の海外修学旅行原則として対象外(10日に届かない)
期間3か月・半年・1年の交換留学や高校留学原則として対象外(1か月以上)
主催学校、地方公共団体、中学生・高校生の留学交流を扱う民間団体が主催し、学校教育活動の一環として参加するプログラム対象
主催家庭が旅行会社や留学エージェントに個人で申し込んだ短期留学原則として対象外(学校単位の応募が原則)
中身語学研修に加え、現地校の授業参加・スポーツ活動・芸術活動・文化体験・インターンシップを含むもの対象
中身語学学習のみのプログラム申請は可能(ただしQ&Aは現地行政機関への訪問や現地高校生との交流が組み込まれていることが望ましいとしている)
時期令和8年度に出発するプログラム(令和9年3月31日出発も対象)対象
時期海外でのプログラム開始が4月以降なら、事前学習が3月以前でもよい対象

在籍校の種類も要領で指定されています。国公私立の中学校、義務教育学校の7〜9年次、高等学校、中等教育学校の1〜6年次、特別支援学校の中学部・高等部、高等専門学校の1〜3年次、専修学校高等課程です。Q&Aによれば中学生が対象に入ったのは令和7年度からで、「中学生の枠は特段設けない」とされています。同じプログラムに中学生と高校生が参加する場合は、1つのプログラムとして学校が連名で申請します。

もうひとつ、申請要件として派遣の前後にやることが決まっています。公募要領は「派遣前の語学学習や課題設定、オリエンテーション及び帰国後のフォローアップが、教育委員会あるいは学校において十分に行われるもの」を要件とし、そのうえで「派遣した生徒に対し、学内や域内において、本事業を通じて得た成果を発表させること」と定めています。さらに、支援金の支給を受けた生徒について「学校としてフォローアップのための追跡調査に協力できる体制にあるもの」も要件です。

実務としては、採択を受けた学校が帰国後1か月以内に「プログラム実施報告書」(プログラムの実施結果に係る報告)と「支給対象者修了報告書」(派遣生の状況報告)を都道府県教育委員会に提出します。後者には学習成果、派遣先国の理解・印象、今後の進路、これから留学しようとする人へのアドバイスなどを書く欄があり、優良事例は文部科学省のホームページ等で公表されるほか、派遣後のフォローアップと進路状況の調査が予定されています。つまり6万円には、行って終わりではなく「帰ってから話す・書く」までが付いています。出発前の事前学習と帰国後の報告まで含めて、お子さんの負担と学校行事の予定を見ておいてください。

トビタテとの違いに注意:語学学習のみのプログラムについて、国費高校生留学促進事業のQ&Aは「語学学習のみを行うプログラムの場合であっても、申請することは可能である」としています(ただし現地行政機関等への訪問や現地高校生等との交流が組み込まれていることが望ましいとされています)。一方高校生の留学奨学金ガイドで扱っているトビタテ!留学JAPANは、語学学習のみの計画を支援の対象外としています。同じ公的な支援でも、計画の中身に対する考え方が違います。

確認ポイント:原則1か月未満という上限があるため、1年間の交換留学や高校留学の費用をこの事業で支えることは想定されていません。長期の留学費用を組み立てる場合は、トビタテ!留学JAPAN 高校生等や留学団体・自治体の制度が主軸になります。短期と長期で使える制度がまったく違う点は高校生の短期留学でも整理しています。

6万円は何に使えるのか——対象になる費目と、ならない費目

POINT

対象は航空運賃・空港税・ビザ・保険・宿泊・研修費など9項目。小遣い・食費・衣服代・事前の語学研修費は対象外です。

6万円と聞くと「参加費が6万円安くなる」と考えがちですが、公募要領は支援金の対象になる費用の範囲を9項目に限定しています。言い換えると、6万円は参加費の値引きではなく、要領が列挙した費目の実費に対して払われる補助です。だから支給には「派遣費用の支出を証する書類」の提出が必ず求められ、プログラム参加費として一括で払っている場合は、その内訳を証する書類も求められます。支払った時期についても定めがあり、令和8年度の事業では「生徒が令和7年度及び令和8年度に支払った派遣費用」が対象です。前年度の冬に払った申込金や航空券代も対象になりうるということなので、領収書は早い段階から残しておいてください。

支援金の対象になる費用・ならない費用(令和8年度公募要領 3.(3)(ⅵ))

対象になる費用対象にならない費用
国際航空運賃(1往復分)派遣先での小遣い
自宅から出国する国際空港までの国内交通運賃(1往復分)通学交通費
受入国の国際空港から派遣先までの国内交通運賃(1往復分)部活遠征費
空港税、燃油サーチャージ、出国手続諸費用通信諸費用
査証(ビザ)・旅券(パスポート)取得手続諸費用食費
プログラムに必要な研修費、施設利用費等衣服代
海外傷害保険料事前語学研修費用
宿泊費(ホームステイならホストファミリーに支払う費用)選考の受験料・受験会場までの交通費など、派遣が決定する前に生じる費用
上記の一部または全部を含むプログラム参加費—

注目したいのは、右の列に事前語学研修費用と選考の受験料が入っていることです。学校の派遣プログラムでは、出発前の語学講座や面接対策が別料金になっていることがあります。その分は6万円の対象外で、ご家庭の負担として残ります。パスポートとビザの取得費用は対象に入る一方、ESTAのような渡航認証や超過手荷物料金は要領の列挙に名前がありません。対象になるかどうかは要領からは読み取れないため、必要なら都道府県や学校に確認してください。説明会では「参加費に何が含まれているか」の内訳表をもらってください。

避けたい

「6万円出るなら、総額から6万円引いて予算を組めばいい」と考える

こうすればOK

参加費の内訳をもらい、6万円の対象になる費目の実費がいくらかを確認する。小遣い・食費・事前語学研修費は対象外で、別に用意する必要がある

避けたい

旅程表の「10日間」を見て要件を満たしていると判断する

こうすればOK

移動日を除いた現地での実施期間を数える。Q&Aは「移動日を含まない海外でのプログラム実施期間」と明記している

避けたい

学校の案内が来ないので、自分で都道府県の窓口に申し込もうとする

こうすればOK

在籍校に「国費高校生留学促進事業に応募している短期派遣はありますか」と聞く。応募は学校単位が原則で、家庭からは出せない

支給対象になる生徒の条件——成績要件は評定平均3.5以上かつ外国語4.0以上

POINT

国費留学生として派遣される制度なので、生徒側にも要件があります。評定の数字は要領に明記されています。

学校がプログラムの採択を受けても、参加者全員に6万円が出るわけではありません。プログラムに割り当てられた人数の範囲で、学校(または都道府県)が選考します。その選考基準が公募要領に書かれています。支給対象になるのは「在籍学校の正規の課程に卒業を目的として在籍し、学校が実施するプログラムに参加する者」で、次の要件を満たす生徒です。

  1. 1成績要件:全体の評定平均値が3.5(10段階評価なら7.0)以上であり、かつ外国語科目の評定値が4.0(同8.0)以上であること。または、外部試験の結果等によりそれと同等程度以上の学力を有すると認められること。
  2. 2目的意識:国費による留学生として派遣されることに明確な目的意識を持ち、派遣終了後はその経験を生かし、より長期の留学や国際社会で活躍しようとする高い志を有すると認められること。これは小論文や面接等により確認することと要領に書かれています。

確認ポイント:要領は主催者について「学校や地方公共団体、中学生・高校生の留学・交流を扱う民間団体等が主催する」プログラムを対象としている一方、支給対象者の定義では「学校が実施するプログラムに参加する者」と書いており、箇所によって文言が異なります。自治体や民間団体が主催するプログラムに学校教育活動の一環として参加する場合の扱いは、在籍校と都道府県の募集要項で確認してください。

この2つの読み方が実務的に大事です。成績要件は「全体の評定平均値」と「外国語科目の評定値」の2本立てで、外国語の方が高い水準(4.0)を求められます。英語の評定が3のお子さんは、全体の平均が高くても要件の本文には当たりません。ただし「外部試験の結果等によりそれと同等程度以上の学力を有すると認められる者」という道が併記されているので、英検やGTEC、TOEFLなどのスコアで補う可能性があります。どのスコアを同等と見るかは要領に書かれておらず、都道府県や学校の募集要項で決まる部分です。

2つめの「より長期の留学や国際社会で活躍しようとする高い志」は、小論文や面接で問われる観点そのものです。短期の体験で終わらせず、その先に何を考えているかを言葉にできるかが見られます。高校留学のあとに海外大学進学という進路を視野に入れているご家庭は、その道筋を本人が自分の言葉で説明できるようにしておくと、この観点に素直に答えられます。

もうひとつ、採択審査の「評価の観点」には、都道府県の募集要項に関する条件が入っています。「支援対象の派遣生の選定に際しては、高等学校等就学支援金の支給対象者を優先する等、経済的支援が真に必要な生徒への配慮を行うことを、都道府県の募集要項等に示している」ことが評価されるという書き方です。つまり成績だけの競争ではなく、家計への配慮が制度設計に組み込まれています。就学支援金を受けているご家庭は、校内選考でその点を申告できるかを学校に確認してみてください。

学校が動く時期と、家庭が間に合う時期(令和8年度のカレンダー)

POINT

都道府県の公募締切は3月中旬。夏の研修分は4〜5月に人数が確定し、7月上旬に追加内定があります。

この事業が「調べても申し込めない」と感じられる最大の理由が、スケジュールです。公募要領が公表されるのは年度が始まる前の冬で、都道府県が文部科学省に申請する締切は3月中旬。つまり4月に新学年が始まってから探し始めると、その年度の枠はもう申請が終わっています。

国費高校生留学促進事業の年間スケジュール(公募要領の記載)

段階令和8年度令和7年度
公募要領の公表令和8年2月3日令和7年1月30日
公募(事業計画書)締切=都道府県が文部科学省へ提出令和8年3月13日(金)10:00 厳守令和7年3月14日(金)10:00 厳守
書類審査令和8年3月中旬頃〜3月下旬頃令和7年3月中旬頃〜3月下旬頃
補助金交付の内定令和8年4月上旬令和7年3月下旬頃
補助金交付申請書等の締切令和8年5月中旬頃令和7年4月下旬頃
補助金交付決定令和8年5月下旬頃(夏季実施分は5月初旬を目途)令和7年5月初旬頃(夏季実施分は4月中旬を目途)
追加内定(2回目)7月上旬を目途に追加内定、7月末を目途に2回目の交付決定同様の2段階の記載あり
補助事業期間交付決定日〜令和9年3月31日交付決定日〜令和8年3月31日

夏の研修を狙うなら、校内選考は5月までに動く

令和8年度の公募要領には、注意事項としてこう書かれています。「より多くのプログラムを採択するため、令和8年度においては、執行の考え方を以下のとおり整理する」。そのうえで、特に夏季(7〜9月)に実施するプログラムについては、5月中旬の交付申請の時点で可能な限り校内選考を終えて確定した人数で交付申請を行ってほしいとし、その後の申請状況に応じて7月上旬を目途に追加内定を行う、と明記しています。

ここから保護者が読み取れることは2つあります。ひとつは、夏の研修に参加するなら校内選考は5月までに動くということ。説明会や校内募集が春にあるのは、このスケジュールに合わせているからです。要領は選考についても期限を決めており、学校(または都道府県)はプログラム開始の1か月前までに支援金の対象者を都道府県へ報告しなければなりません。出発の1か月前には校内選考が終わっている必要があるということです。もうひとつは、7月に追加内定があるということ。1回目で枠が付かなかったプログラムが、夏休み明け以降の派遣で後から支援対象になる可能性があります。学校から「今年は支援が付かなかった」と言われた場合でも、秋以降の派遣なら夏の追加内定で状況が変わることがあるので、7月末ごろにもう一度確認する価値があります。

家庭の逆算:秋のうちに来年度の予定を聞く

逆算すると、家庭の動き方はこうなります。お子さんが高1の秋に短期研修に関心を持ったなら、狙うのは高2の夏か高2の春の派遣です。学校が前年度の冬(1〜3月)に申請するので、秋のうちに在籍校へ「来年度、国費の短期派遣に応募する予定はありますか」と聞いておくのが最も効きます。学校が初めて申請する場合でも不利ではありません。公募要領の選定方法には「新規に派遣を行う学校や前年度と比較して派遣人数を増加して実施する学校について考慮の上、審査を行い」という一文があり、新しく始める学校は考慮の対象として明記されています。

確認ポイント:公募要領の公表日は令和7年度が1月30日、令和8年度が2月3日で、いずれも3月中旬が締切でした。令和9年度(2027年度)分も同じ時期になるとは限りません。本記事は2026年11月8日時点で公開されている令和8年度の要領とQ&Aをもとにしています。次年度の日程は、文部科学省の事業ページまたはお住まいの都道府県教育委員会(私立校は都道府県の私学担当課)の公募告知で確認してください。

6万円が満額来ないことがある——減額と併給のルール

POINT

「1人6万円」は原則です。予算配分、派遣費用の総額、他の奨学金との合算で、受け取る額は下がりえます。

支援額は1人6万円ですが、要領とQ&Aを読むと満額にならないパターンが3つあります。期待値を正しく持つために、ここは先に知っておいた方がよい部分です。

満額にならない3つのパターン

6万円が満額にならない3つのパターン

パターン何が起きるか根拠
① 予算配分で1人当たりを減らし、人数を増やす1プログラムの上限(概ね20人以内)の範囲で、1人当たりの額を減額して20人を超える生徒に支援することが認められている。Q&Aは「申請人数20人に対して10人分の予算しか配分されなかったため、10人分の留学支援金を割って20人に支給することは可能か」という問いに「可能とする」と答えている公募要領 3.(3)(ⅵ)エ(a)/Q&A Q12
② 派遣費用の総額が6万円を下回る補助対象になるのは原則として都道府県が1人6万円を支給する場合だが、要領は「派遣費用の総額が6万円を下回る場合を除く」としている。実費を超える支給は想定されていない公募要領 3.(3)(ⅵ)エ(a)
③ 他の奨学金との合算が派遣費用を超える民間団体等の奨学金を受けても併給自体は可能。ただし奨学金等と支援金の総額が対象費目の派遣費用総額を超える場合、その超える額について支援金が減額される。要領は他団体から奨学金等の支給を受ける場合に「減額又は支給しないことがある」とも定めており、学校は都道府県に申告する義務がある公募要領 3.(3)(ⅱ)・(ⅵ)エ(b)

①は「6万円もらえる」という説明が実際とずれる主な理由です。全国の支援人数は1,700人と決まっているため、申請が集中すると1人当たりが薄まる形で調整されます。Q&Aは「プログラムの採択=申請人数が全て採択されると考えて良いか」という問いに、「原則として申請人数が全て採択される。ただし、予算に応じて支援金を調整することがある」と答えています。採否より金額の方が動く制度だと理解しておくと、学校からの連絡を正しく受け取れます。

併給と再受給の線引き

併給については、相手の制度によって扱いが分かれます。文部科学省のトビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム(高校生等対象)の奨学金を受ける生徒は、この事業の支援金を重複して受けられません。どちらも公的な給付なので「両方出しておこう」と考えがちですが、ここは択一です。一方、民間財団の給付型奨学金は併給できます。ただし合算が実際にかかった派遣費用を超える分は減額されます。返済不要の制度を複数組み合わせる考え方は高校生の留学奨学金は返済不要で整理しています。

もうひとつ見落としやすいのが再受給の禁止です。公募要領は、この事業で支援金を支給された生徒について「再度、当該派遣事業の対象となることはできない」と定めています。高1の夏に6万円を受けた生徒は、高2の春の派遣では対象外です。学校が毎年プログラムを出していても、同じ生徒が2回使うことはできません。きょうだいで順番に、あるいは1回をどの学年で使うかという設計になります。

住んでいる都道府県で変わること(上積み・窓口・審査での評価)

POINT

同じ国の6万円でも、都道府県ごとに要項が別に作られます。県独自の支援実績は採択審査で積極的に評価されます。

この事業は国の補助金ですが、実施主体は都道府県です。Q&Aは「都道府県ごとの要項等の作成が必要か」という問いに、「国費高校生留学促進事業は、都道府県が実施する高校生留学促進のための事業に対する補助金であり、都道府県ごとの要項等が必要である」と答えています。つまり、生徒が実際に読む募集要項は都道府県の文書で、選考の細かい運用はそこで決まります。

さらに踏み込んだ記載があります。Q&Aは「各都道府県における支援金額の上積みや独自の取組の有無、また経済的必要性への配慮の有無は、採択に影響するか」という問いに、審査の主眼はプログラム内容としつつ、経済的支援や基盤整備を行っていることを「採択の際の審査の観点のひとつとして積極的に評価する」と答えています。別の問いでは、独自支援がないことで不採択にはしないとした上で、「都道府県独自の予算措置により、支援金の額や対象人数を上積みして支出している都道府県など」を積極的に評価すると書いています。申請人数が1,700人を超えた場合の調整でも、都道府県独自の支援事業の実績が考慮の要素に挙げられています。

ここが保護者にとっての現実的な意味です。国の制度なのに、住んでいる都道府県の留学支援の手厚さが、採択の当たりやすさに影響しうる構造になっています。文部科学省の令和5年度調査では、高校生の留学支援または留学環境整備に関する取組を実施している都道府県は47都道府県(令和3年度は39都道府県)で、内容は「研修旅行にかかる経費の支援」「外国人高校生の高校への受入れ」が最も多いとされています。全都道府県が何かはやっていますが、金額の上積みまでしているかは県によって違います。都道府県ごとの実額は自治体の高校生留学支援にまとめました。

都道府県の層で確認しておくこと

確認することなぜどこで分かるか
公立校か私立校かで庁内の窓口が違う公立は教育委員会、私立は私学担当課が公募を告知している。大阪府は私立中学校・私立高等学校・私立高等専修学校の主催プログラムについて私学課が公募を出し「限度額6万円」と明記している都道府県の教育委員会/私学担当課のお知らせページ
県独自の留学支援事業が併走しているか北海道は平成24年度から道独自の「高校生留学促進事業」を実施し、国費の公募要領も同じページで公開している都道府県の実施要綱・募集要項
支援金を受け取るのが生徒か保護者か国のQ&Aは「都道府県が直接、当該生徒に支給するようお願いしたい」としているが、北海道の実施要綱は補助の対象を「生徒の保護者」と定めている都道府県の実施要綱・補助金交付要綱
学校への公募通知の時期北海道教育委員会は毎年2月頃に学校へ公募を通知すると案内している。年度ごとに手続時期や対象要件が異なるとも書かれている都道府県の公募告知ページ

都道府県レベルでどう動いているかの具体例は、北海道の高校生留学支援と奨学金と、県に金銭支援がなく市町村の層で費用が動く千葉県の事例が対照的です。同じ国の6万円を使っていても、県の上積みと市町村の派遣事業の有無で、家庭の自己負担はまったく違う額になります。

1,700人という規模をどう受け止めるか

POINT

全国1,700人は、短期で海外に出た高校生の約5%にあたる規模です。狙う価値はありますが、主軸には据えられません。

最後に、期待値の置き方です。この事業の支援人数は全国で1,700人、採択予定件数は47件。事業規模(予算)は104,406千円で、内訳は留学支援金60千円×1,700人=102,000千円と、その他の経費2,406千円です(令和8年度公募要領)。この事業の補助事業者は都道府県なので、採択予定の47件は全国47都道府県に対応すると読めます。そう読むと、1都道府県あたりの平均は約36人です。

数字の出どころについて:本記事の予算額は公募要領の「事業規模(予算)」104,406千円を採っています。文部科学省の令和8年度予算(案)資料では本事業の予算額が104,846千円と記載されており(当サイトの自治体の高校生留学支援で確認した数値)、440千円の差があります。公募要領の内訳(留学支援金60千円×1,700人=102,000千円+その他の経費2,406千円)は104,406千円で整合するため、本記事は公募要領の数値で統一しました。支援額1人6万円と支援人数1,700人は、予算資料・公募要領・前年度の令和7年度公募要領のいずれでも同じです。

母数と比べてみます。文部科学省の令和5年度調査(令和7年3月28日公表)によると、外国への研修旅行(3か月未満)に派遣された高校生は31,711人、派遣した学校数は延べ3,055校(実数1,484校=公立872校・私立600校・国立12校)でした。1,700人はこの31,711人の約5%、おおよそ19人に1人という規模です。また1プログラムの支給割当人数は概ね20人以内で、1学校当たり1プログラムまでの採択とされているため、1,700人は全国で少なくとも85プログラム=85校程度に分かれます。短期派遣を実施した1,484校に対して5.7%以上ということになります。

数字の読み方:31,711人は延べ数(同一の生徒が複数の国に研修旅行した場合はそれぞれの国・地域に集計)で、10日未満の短い日程も含まれます(外国への修学旅行は66,618人として別に集計されています)。したがって、この事業の要件(現地10日以上)に当てはまる生徒の数は31,711人より少なく、実際の競争率は単純比より緩くなります。逆方向の留保もあります。1,700人には中学生も含まれ、1人当たりの額を減らして20人を超える生徒に配る運用も認められているため、実際に支援金を受け取る生徒は1,700人を上回ることがあります。本記事の「約5%」「19人に1人」は、母数に31,711人を置いた場合の目安であって、採択率そのものではありません。この調査は隔年実施で、令和5年度分が18回目です。

この規模感から導かれる結論はシンプルです。6万円は「取れたら助かる」規模であって、留学費用の設計の軸にはならない。文部科学省が掲げる目標は、第4期教育振興基本計画の「2033年に日本人高校生の海外留学生12万人」で、令和5年度の実績は約3.5万人(研修旅行31,711人と3か月以上の留学3,174人の計)。コロナ禍前の平成29年度の約4.7万人にも届いていません。国全体として短期派遣を増やしたい流れにはありますが、1,700人という枠は当面この規模です。

だからこそ、学校の派遣プログラムそのものの中身と費用を見る目が重要になります。学校主催の研修は引率と事前指導が強みですが、参加費の内訳・取消料・出席と単位の扱いが見えにくいという弱点があります。説明会で何を聞くべきかは高校の海外研修のデメリットに整理しました。

まとめ:保護者が今日できること

国費高校生留学促進事業は、国が都道府県を通じて学校の短期派遣を支援する補助事業です。支援額は1人6万円、支援人数は全国1,700人。対象は原則10日以上1か月未満(移動日を除く現地での実施期間)の派遣で、学校単位での応募が原則です。ご家庭から直接申し込む窓口はありません。

そのうえで、保護者が動ける余地は3つあります。第一に、在籍校に応募状況を聞く。これが最初の関門で、学校が手を挙げていなければ成績要件を満たしても対象になりません。第二に、時期を外さない。都道府県の締切は3月中旬、夏の研修分の人数確定は5月、追加内定は7月上旬です。ただし3月中旬は都道府県が文部科学省へ出す期限で、学校が都道府県へ出す期限は都道府県が別に定めます(北海道教育委員会は毎年2月頃に学校へ公募を通知しています)。校内の締切はこれより早いと考えてください。秋のうちに来年度の予定を確認しておくのがいちばん効きます。第三に、要件を満たしにいく。評定平均3.5以上かつ外国語4.0以上という数字は要領に明記されているので、英語の評定か外部試験のスコアは、動ける時期から積んでおけます。

そして6万円が付いたあとに残る費用を、先に見積もっておいてください。小遣い・食費・衣服代・事前語学研修費・選考の受験料は対象外です。短期留学の総額の考え方は高校生の短期留学、奨学金全体をどの順で狙うかは高校生の留学奨学金ガイドにまとめています。

本記事の金額・人数・要件・日程は、2026年11月8日に令和8年度 国費高校生留学促進事業 公募要領(令和8年2月3日・文部科学省総合教育政策局国際教育課)、同事業Q&A、令和7年度公募要領、文部科学省「令和5年度高等学校等における国際交流等の状況について」、北海道教育委員会および大阪府の公募告知で確認したものです。都道府県ごとの募集要項の内容までは全数確認していません。公募要領自体に「予算の成立状況によっては、実施方法や経費、スケジュール等を変更する場合がある」と注記があるため、参加する年度の条件は在籍校と都道府県の要項で必ずご自身で確認してください。

最後にチェック

在籍校に確認する前に、自分の状況を整理しておくと話が早く進みます。

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Q.国費高校生留学促進事業は、保護者や生徒が自分で応募できますか?

できません。令和8年度公募要領は「学校単位での応募を原則とする」と明記しており、対象も「学校教育活動の一環として参加する」中学生・高校生等に限られます。手続きの流れは、都道府県が文部科学省に申請し、学校が都道府県に申請し、生徒は学校(または都道府県)の選考を受けるという形です。ご家庭ができるのは、在籍校に「国費高校生留学促進事業に応募している短期派遣はありますか」と確認することと、成績要件と目的意識の条件を満たしにいくことです。なお、家庭が旅行会社や留学エージェントに個人で申し込んだ短期留学は、学校教育活動の一環としての派遣にあたらないため原則として対象になりません。

Q.「10日以上1か月未満」の10日は、出発日から数えますか?

数えません。事業のQ&Aは「補助対象となる原則10日間以上とは、移動日を含まない海外でのプログラム実施期間(土日を含む)を指し、出国〜帰国を含む移動日数は含まれない」としています。つまり現地でのプログラム日数で判定します。旅程表に「10日間の海外研修」と書かれていても、往復の移動日を含んだ10日間なら現地は8日程度で、要件に届かない可能性があります。確認するのは総日数ではなく現地での実施日数です。なお事前学習については、海外でのプログラムが年度の4月以降に開始されるのであれば、事前学習自体が3月以前に行われていても対象になるとQ&Aに書かれています。

Q.6万円はいつ、誰に振り込まれますか?参加費から差し引かれるのですか?

支給は都道府県を通じて行われます。国のQ&Aは「予算執行の透明性確保の観点から、都道府県が直接、当該生徒に支給するようお願いしたい」としていますが、都道府県の要綱で受け取る人が決まっており、たとえば北海道教育委員会の高校生留学促進事業実施要綱は補助の対象を「生徒の保護者」と定めています。参加費から自動的に値引きされる仕組みではなく、支給には「派遣費用の支出を証する書類」の提出が必ず求められます。プログラム参加費として一括で払っている場合は、その内訳を証する書類も必要です。時期と方法はお住まいの都道府県の要項で確認してください。

Q.評定平均が3.5に届きません。それでも校内選考に出せますか?

出せるかどうかは学校・都道府県の募集要項によりますが、国の公募要領が定める支給対象者の要件は「全体の評定平均値が3.5(7.0)以上、かつ、外国語科目の評定値が4.0(8.0)以上であること」で、括弧内は10段階評価の場合の数値です。ただし同じ条文に「若しくは、外部試験の結果等によりそれと同等程度以上の学力を有すると認められる者」という道が併記されています。どの外部試験のどのスコアを同等と見るかは公募要領に書かれておらず、都道府県や学校の運用で決まる部分です。英検・GTEC・TOEFLなどのスコアで補える可能性があるため、在籍校に「外部試験での代替は認められますか。認められる場合の目安はありますか」と具体的に聞いてください。

Q.トビタテ!留学JAPANと両方申し込んでもいいですか?

重複して支給を受けることはできません。公募要領は、文部科学省が実施する官民協働海外留学支援制度(トビタテ!留学JAPAN新・日本代表プログラム【高校生等対象】)により奨学金を受ける生徒等は「本事業により重複して支給を受けることはできない」と定めています。どちらも公的な給付なので択一です。一方、民間団体の奨学金とは併給できますが、奨学金等と支援金の総額が対象費目の派遣費用総額を超える場合は、超える分が減額されます。学校はその旨を都道府県に申告する義務があります。制度の性格が違うため、短期の学校派遣なら国費、長期や自分の探究テーマで出るならトビタテ、という住み分けで考えるのが実務的です。

Q.学校から「今年は支援が付かなかった」と言われました。もう無理ですか?

その年度の派遣時期によっては、まだ可能性があります。令和8年度公募要領の注意事項には、5月中旬の交付申請の状況に応じて「7月上旬を目途に、当初公募をいただいたプログラムの中から審査結果を踏まえて追加内定を行い」、7月末を目途に2回目の交付決定を行う予定と書かれています。つまり1回目で枠が付かなかったプログラムが、後から支援対象になる余地があります。ただし追加内定の対象は「当初公募をいただいたプログラム」なので、そもそも学校が3月の公募に出していない場合は対象外です。秋以降の派遣を予定しているなら、7月末ごろに学校へもう一度確認してみてください。あわせて、お住まいの都道府県や市区町村の制度、民間財団の給付型も並行して見ておくと取りこぼしが減ります。