中古マンションの修繕積立金は何を確認する?月額より計画と管理状態を見る
販売資料に載っている修繕積立金の月額が安いと、それだけで安心してしまいがちです。ただ、国のガイドラインが示す「目安」は、いまの月額と同じ物差しではありません。月額は、積立方式や計画の中身とセットで見て初めて意味が出ます。
最終更新日: 編集:RAXUS Link編集部
この記事で分かること
- 1修繕積立金の国の目安は計画期間全体の平均額で、いま請求されている月額とは物差しが違う
- 2積立方式・長期修繕計画・管理組合の状態の3点で見る
- 3重要事項調査報告書などの書類で確認できる項目と、専門家に頼む場面
修繕積立金の確認は「月額」ではなく「計画に対して足りるか」を見る
中古マンションの修繕積立金で確かめたいのは、次の3点です。
- 積立方式: 均等に積み立てているのか、年々引き上げる計画なのか
- 長期修繕計画: 期間・見直し時期・資金計画はどうなっているか
- 管理組合の状態: 滞納や借入れはないか、計画が総会で決議されているか
月額だけで物件を比べると、この3点が見えなくなります。たとえば、初期の月額が低いのは「あとで上がる計画だから」かもしれません。
なお長期修繕計画は、将来の修繕工事の内容・時期・費用を確定するものではありません。国のガイドラインも「確定するものではない」と位置づけています。計画は見直しながら使う前提の資料です。
出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)
国の目安の㎡単価は、いまの月額と同じ物差しではない
国土交通省のガイドライン(令和6年6月7日最終改訂)には、専有面積1㎡あたりの修繕積立金の目安が載っています。ただし、これは計画期間全体で必要な修繕工事費を、その期間で積み立てる場合の平均額です。いま請求されている月額と同じ物差しではありません。
目安の元になっているのは、長期修繕計画作成ガイドラインに概ね沿った計画の事例366件(新築30年以上・既存25年以上の計画期間)です。機械式駐車場の分は除いています。幅は、事例の上下6分の1を除いた「事例の3分の2が含まれる範囲」です。
| 建物の規模(機械式駐車場を除く) | 平均額 | 幅 |
|---|---|---|
| 地上20階未満・延床5,000㎡未満 | 335円/㎡・月 | 235〜430円 |
| 地上20階未満・5,000〜10,000㎡未満 | 252円/㎡・月 | 170〜320円 |
| 地上20階未満・10,000〜20,000㎡未満 | 271円/㎡・月 | 200〜330円 |
| 地上20階未満・20,000㎡以上 | 255円/㎡・月 | 190〜325円 |
| 地上20階以上 | 338円/㎡・月 | 240〜410円 |
出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)p.7。事例366件の計画期間全体の平均額
出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)p.5・p.11
積立方式で、将来の値上げ・一時金の見え方が変わる
修繕積立金の積み立て方には、大きく2つあります。ガイドラインは、将来の安定的な積立ての観点から、均等積立方式が望ましい方式としています。
| 均等積立方式 | 段階増額積立方式 | |
|---|---|---|
| 月額の推移(編集部の整理) | 月額を一定にそろえて積み立てる | 月額を段階的に引き上げて積み立てる |
| ガイドラインの記述 | 望ましい方式。ただし長期修繕計画の見直しで増額が必要になる場合もある(p.14・p.15) | 初期額は基準額の0.6倍以上、最終額は基準額の1.1倍以内が引上げの考え方。引上げの合意形成ができず不足する事例もある(p.14) |
ガイドラインは、段階増額の「適切な引上げの考え方」として、初期額は均等積立の月額(基準額)の0.6倍以上、最終額は基準額の1.1倍以内を挙げています。また、将来の負担増を前提とする積立方式では、区分所有者間で合意形成ができず、修繕積立金が不足する事例も生じているとしています。
均等積立なら安心、というわけでもありません。ガイドラインは、均等積立でも長期修繕計画の見直しによって増額が必要になる場合があるとしています。
出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)p.14・p.15
実態を見ると、値上げや一時金は特殊な出来事ではないことが分かります。国土交通省の令和5年度マンション総合調査(令和6年6月21日公表)では、管理組合向け調査(有効回収1,589)で、現在の積立方式は均等積立が40.5%、段階増額積立が47.1%でした。また、区分所有者向け調査(有効回収3,102)で、管理に関して取り組むべき課題として「修繕積立金の積立金額の見直し」を挙げた人が36.2%で最も多くなっています。管理組合向け調査では、将来への不安として「修繕積立金の不足」を挙げた割合が39.6%でした。
出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果〔概要編〕」(令和6年6月21日公表。管理組合向け n=1,589・区分所有者向け n=3,102)
積立方式は、重要事項調査報告書(令和7年12月改訂版)の「修繕積立金に関する事項」で、均等積立方式か段階増額積立方式かを選んで記載する項目になっています。
出典:一般社団法人マンション管理業協会「管理に係る重要事項調査報告書作成に関するガイドライン」(令和7年12月改訂)p.11
長期修繕計画は「期間・見直し時期・資金計画」で読む
長期修繕計画は、次の観点で読みます。
- 計画期間: 作成ガイドラインでは、30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上とされています。新築時に30年の計画を立てた場合、修繕周期が30年を超える工事項目は盛り込まれていません
- 見直し時期: どの積立方式でも、5年程度ごとの見直しが想定されています。築年数が進んだ物件ほど、計画の作成・見直しの年月を確かめます
- 資金計画: 長期修繕計画作成ガイドラインに収載の標準管理規約第32条のコメントでは、最低限必要な内容として、計画期間・対象工事と周期・全体の工事金額が挙げられています
出典:国土交通省「長期修繕計画標準様式・長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」(令和6年6月改定)、「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)p.4・p.15
国土交通省の令和5年度マンション総合調査(管理組合向け n=1,589)では、長期修繕計画を作成している管理組合は88.4%でした。計画期間は「30年以上」が72.7%で最も多く、見直し時期は「5年毎を目安に定期的に見直している」が63.2%でした。一方で、現在の積立額が計画上の積立額に比べて不足しているマンションは36.6%(20%を超えて不足しているのは11.7%)あります。
出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果〔概要編〕」(令和6年6月21日公表。管理組合向け n=1,589、配布4,270件・回収率37.2%)
つまり、計画があること自体より、「いまの積立額が計画に追いついているか」が確認の中心です。重要事項調査報告書には、長期修繕計画の有無、総会承認年月、作成(見直し)年月を記入する項目があり、総会で決議された計画を添付することになっています。
出典:一般社団法人マンション管理業協会「管理に係る重要事項調査報告書作成に関するガイドライン」(令和7年12月改訂)p.13
管理組合の状態は、管理計画認定の基準を物差しにして見る
管理組合の状態を確かめるとき、国の管理計画認定制度の基準が物差しとして使えます。認定を受けるには16項目すべてを満たす必要があります。そのうち、購入前に書類で確かめやすい項目は次のとおりです。
| 認定基準(主なもの) | 購入者が見る書類(編集部の整理) |
|---|---|
| 長期修繕計画の作成・見直しが7年以内 | 重要事項調査報告書、長期修繕計画 |
| 計画期間が30年以上で、残存期間内に大規模修繕2回以上 | 長期修繕計画 |
| 一時的な修繕積立金の徴収を予定していない | 長期修繕計画、重要事項調査報告書 |
| 修繕積立金の平均額が著しく低額でない | 長期修繕計画 |
| 計画期間の最終年度に借入金残高がない計画 | 長期修繕計画、重要事項調査報告書 |
| 修繕積立金の3か月以上の滞納額が全体の1割以内(直前の事業年度終了日時点) | 重要事項調査報告書 |
| 管理費と修繕積立金を区分経理し、修繕積立金会計から他の会計への充当がない | 総会議案書・決算資料 |
| 計画の内容と修繕積立金額が総会で決議されている | 総会議事録 |
出典:国土交通省 マンション管理・再生ポータルサイト「管理計画認定制度」(認定基準16項目)。右列の「購入者が見る書類」は編集部の整理
認定基準の「見直しが7年以内」は認定を受けるための最低線で、標準的な見直しの想定は5年程度ごとです(前の節)。両者は矛盾しません。
この制度は令和4年度に始まり、認定の有効期間は5年(更新あり)です。認定を行うのは管理適正化推進計画を作った市・特別区(町村部は都道府県)で、自治体ごとの独自基準がある場合もあります。認定を受けたマンションは、住宅金融支援機構のフラット35の金利引下げの対象になります。
出典:国土交通省「マンション管理計画認定制度」、マンションの管理の適正化の推進に関する法律第5条の16
出典:国土交通省「マンション管理計画認定制度」
実態として、管理費・修繕積立金を3か月以上滞納している住戸があるマンションは30.1%でした(令和5年度マンション総合調査・管理組合向け n=1,589。築年数が古いほど高い傾向)。滞納が「ある」こと自体より、全体に占める割合と推移を見ます。
出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果〔概要編〕」
民間の制度としては、マンション管理業協会の「マンション管理適正評価制度」があります。30項目を評価して6段階で表示し、有効期間は1年間です(認定制度は5年)。
出典:一般社団法人マンション管理業協会「マンション管理適正評価制度」
書類ごとに何を見るか(重要事項調査報告書を中心に)
中心になるのは重要事項調査報告書です。令和7年12月改訂版のガイドラインでは、次の項目が記載事項になっています。
- 重要事項調査報告書: 修繕積立金の積立方式(均等積立方式か段階増額積立方式か)(p.11)
- 重要事項調査報告書: 修繕積立金の変更予定時期と変更予定額、修繕一時金の変更予定(総会承認・上程決定・理事会検討の区分。把握できているものに限る)(p.11)
- 重要事項調査報告書: 管理組合の修繕積立金の滞納額、売主分の修繕積立金・修繕一時金の月額と滞納額(p.8・p.10)
- 重要事項調査報告書: 借入金残高(p.10)
- 重要事項調査報告書: 長期修繕計画の有無、総会承認年月、作成(見直し)年月と、総会で決議された計画の添付(p.13)
- 重要事項調査報告書: 共用部分の修繕工事の実施状況と、実施予定の有無(年月・工事概要)(p.13)
- 長期修繕計画本体: 計画期間、工事の項目と周期、資金計画(積立額が足りているか)
- 総会議事録: 計画と修繕積立金額が総会で決議されているか、値上げ・一時金の議論があるか
出典:一般社団法人マンション管理業協会「管理に係る重要事項調査報告書作成に関するガイドライン」(令和7年12月改訂)。最後の2行は認定基準の項目を購入者が書類で確かめる場合の編集部の整理
宅地建物取引業法施行規則第16条の2では、区分所有建物の売買で、計画的な維持修繕費用の積立てに関する規約の定めがあるときは、その内容と既に積み立てられている額を説明することになっています。ただし、長期修繕計画の有無そのものは条文には書かれていません。報告書や計画の資料は、仲介会社などを通じて入手できるかを早めに確かめておくとよいでしょう。書類をどの段階で取り寄せるかは、中古住宅の購入の流れと各段階の確認事項とあわせて確認してください。
出典:e-Gov 法令検索「宅地建物取引業法施行規則」第16条の2
専門家に頼むのは、書類を読んでも判断できないとき
書類は取り寄せても、読み方に迷うことがあります。たとえば、次のような場面です。
- 計画と積立額の整合が分からないとき(積立額が計画に追いついているか読み取れない)
- 値上げや一時金の予定が書かれているが、いつ・どれだけ負担が増えるのか把握できないとき
- 書類の内容と、仲介会社の説明が合わないとき
こうした場面では、マンションの管理や修繕計画に詳しい専門家に相談するという選択肢があります。必須というわけではなく、自分で読めて納得できるなら不要です。
建物そのものの劣化を調べる調査は、書類の確認とは別の役割です。どちらが何を調べるのかは、建物状況調査(インスペクションとは)で整理しています。
次に確認すること
次にやること
出典
- 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(平成23年4月策定・令和6年6月改定)
- 国土交通省「長期修繕計画標準様式・長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」(令和6年6月改定)
- 国土交通省「マンション管理計画認定制度」
- 国土交通省 マンション管理・再生ポータルサイト「管理計画認定制度」
- 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果〔概要編〕」
- e-Gov 法令検索「宅地建物取引業法施行規則」第16条の2
- 一般社団法人マンション管理業協会「管理に係る重要事項調査報告書作成に関するガイドライン」(令和7年12月改訂)
- 一般社団法人マンション管理業協会「マンション管理適正評価制度」
- 国土交通省「住宅:マンション管理」(ガイドライン等の掲載ページ)
- e-Gov 法令API「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」第5条の16(認定の更新)

