中古住宅の購入の流れ|どこまで引き返せて、どこから戻れないか
中古住宅の購入手順は、7つ前後のステップに並べるだけでは足りません。同じ手順でも、購入申込みまでは戻れ、契約後は手付解除の期日や相手の履行の着手を過ぎると戻れなくなります。この記事は、その線を先に引いたうえで、各段階で何を決め、進む前に何を確認するかを整理します。
対象は中古の戸建て住宅を中心とした売買です。マンション固有の論点(管理状態や修繕積立金)は扱いません。マンションを検討している場合は中古マンションの修繕積立金と管理状態の確認を先に見てください。
最終更新日: 編集:RAXUS Link編集部
この記事で分かること
- 1流れの順序と、戻れる地点(購入申込み・契約後の手付解除期日まで)・戻れない地点の整理
- 2契約で決まること(手付・ローン特約・契約不適合)と、売主が宅建業者か個人かによる違い
- 3フラット35や住宅ローン控除の条件が物件選びに戻ってくること
購入の流れと、引き返せる地点の早見表
不動産適正取引推進機構(RETIO)などが監修した「不動産売買の手引」(令和8年度版)にある既存住宅の購入の流れは、物件情報収集、物件の選定、物件の見学・確認、購入申込み、重要事項説明、売買契約締結(手付金の授受)、決済・引渡し、登記完了の順です。媒介業者に依頼する場合は媒介契約を締結します。売主や販売会社によって異なる場合があります。(出典: RETIO「不動産売買の手引 令和8年度版」)
国土交通省の2014年の検討会資料にある例示図では、契約後の流れは、住宅ローン契約の締結、物件の最終確認、残金決済、物件の引渡し、登記手続き、引越し・入居の順です。住宅ローン契約は売買契約の後に置かれています。ただしこれは2014年時点の例示図で、現行の手続をすべて網羅したものではありません。宅建業法で書面交付が義務とされているのは、この図では媒介契約・重要事項説明・売買契約の3つです。(出典: 国土交通省「重要事項説明・書面交付制度の概要」)
| 段階 | ここで決めること | 引き返せるか |
|---|---|---|
| 物件探し・内見 | 条件(融資・控除に合う物件か) | 戻れる。まだ何も約束していない |
| 購入申込み(買付証明書) | 買う意思を示す | 契約は成立していないと解される。ただしキャンセル料を請求された事例がある |
| 重要事項説明 | 契約してよいか | 戻れる。契約前に判断できる最後の機会 |
| 売買契約・手付の授受 | 契約書の内容 | 手付解除は、相手方が履行に着手するまで |
| ローン契約・決済 | 融資の承認と残金 | ローン特約があれば、最終予定日までに承認が出ないと契約は自動的に消滅する(期日・内容は契約ごと) |
| 引渡し後 | 不具合の通知 | 契約不適合を知ってから1年以内の通知が民法の原則(特約がない場合)。個人売主は特約で短縮・免責が一般的(下の売買契約の節を参照) |
各行の根拠は、以降の節で出典とあわせて書きます。
物件探し・内見: 先に条件で落ちる物件がある
融資や税の控除には、物件そのものの条件があります。気に入った物件が、あとから条件を満たさないと分かることがあります。
| 制度 | 物件の条件 | 基準日 |
|---|---|---|
| フラット35(中古) | 原則として機構の技術基準に適合していることを示す適合証明書が必要。床面積は一戸建て50㎡以上(共同建ては30㎡以上)。接道は原則として一般の道に2m以上 | 建築確認日が昭和56年6月1日以後(それ以前は耐震評価基準への適合が必要) |
| 住宅ローン控除(中古) | 床面積50㎡以上で、2分の1以上が専ら自己の居住用。控除を受ける年分の合計所得金額が2,000万円以下 | 昭和57年1月1日以後に建築。昭和56年12月31日以前の家屋は、取得の日前2年以内に耐震基準適合の証明を受ける(耐震住宅)、または要耐震改修住宅の手続が必要 |
(出典: 住宅金融支援機構【フラット35】「対象となる住宅・技術基準」/国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」。令和8年4月1日現在法令等。フラット35の一戸建て等には地上2階以下の共同建てを含みます)
新耐震設計基準は昭和56年6月から施行され、木造は平成12年にさらに耐震性を強化する改正がありました。ただし、個々の建物の耐震強度は耐震診断を受けないと判断が困難です。また、水防法に基づくハザードマップ(洪水・雨水出水・高潮)のうち市町村提供のものは重要事項説明の項目ですが、これ以外のハザードマップは宅建業者の説明は原則ないため、自分で確認します。(出典: RETIO「不動産売買の手引 令和8年度版」)
物件の条件が見えたら、中古住宅の総予算を試算するで総額を置いてみると、融資の前提が具体的になります。
購入申込み(買付証明書): 契約ではないが、軽くもない
買付証明書や売渡承諾書を作成しても、確定的な意思表示ではなく、契約は成立していないと解されます。ただし、申込みを取り消したらキャンセル料を請求された事例があります。また、「仮契約だから」といわれて気軽に署名・押印し、やめると言ったら多額の違約金を求められた事例もあり、仮契約書は作らないよう注意されています。(出典: RETIO「不動産売買の手引 令和8年度版」)
申込み後〜契約前: 重要事項説明とインスペクション
重要事項説明は、宅建業者が契約が成立するまでの間に書面(重要事項説明書)を交付し、宅地建物取引士が説明することが義務づけられています。買主は説明を受ける際に宅建士証を確認します。契約前のできるだけ早い時期に受けるのがよいとされています。宅建業者の禁止行為には、契約するかどうかを判断するために必要な時間を与えることを拒むことも含まれます。編集部の助言として、契約当日に初めて説明を受ける進め方は避けるのが安全です。(出典: RETIO「不動産売買の手引 令和8年度版」)
宅建業者に耐震診断の実施自体の義務はなく、診断記録があるときにその内容が説明されます。(同上)
インスペクション(建物状況調査)の手順上の位置は次のとおりです。
| 論点 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 誰の承諾が要るか | 買主が実施するには、事前に売主の承諾が必要 | RETIO 手引 令和8年度版 |
| 媒介契約時 | 既存住宅の媒介契約では、調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載した書面を媒介業者が依頼者に交付する(平成30年4月から)。あっせん「無」とするときは理由を記入する(令和6年4月から) | 国土交通省(建物状況調査の制度ページ・Q&A)、RETIO 手引 令和8年度版 |
| 結果の行き先 | 結果の概要は重要事項として買主に説明され、契約の成立時には建物の状況について当事者の双方が確認した事項を記載した書面が交付される | 国土交通省(建物状況調査の制度ページ) |
| 重要事項説明の対象になる鮮度 | 木造戸建ては調査実施から1年以内、鉄筋コンクリート造等のマンションは2年以内のもの(令和6年4月1日現在) | 国土交通省Q&A |
次にやること
売買契約: ここから戻れなくなる点を契約書で確認する
契約後に引き返せるかは、手付、ローン特約、契約不適合責任の3つの条項で決まります。売主が宅建業者か個人かで、適用される制度が違います。
| 項目 | 売主が宅建業者 | 売主が個人 |
|---|---|---|
| 手付の上限 | 売買代金の20%を超える手付金は受領できない | 上限の制限はない |
| 手付金等の保全措置 | 手付金等が売買代金の10%(完成物件=既存住宅)または1,000万円を超えるときは保証書等の保全措置が必要。保証書がなければ支払いを拒める | 義務は適用されない |
| 手付解除 | 売主が履行に着手するまで、買主はいつでも解除できる | 解除できる期日を契約書に定めるのが一般的 |
| 契約不適合責任の期間 | 引渡しの日から2年以上の特約を除き、民法より買主に不利な特約はできない(例: 引渡しから1年は無効) | 一定期間に短縮する、または負わないとする特約が一般に行われる |
(出典: RETIO「不動産売買の手引 令和8年度版」。保全措置の10%は完成物件の場合で、未完成物件は5%)
手付と解除。 手付は原則として解約手付で、相手方が履行に着手するまでは、買主は手付を放棄し、売主は倍額を償還して契約を解除できます(例: 手付100万円なら買主は100万円を放棄、売主は200万円を支払う)。理由は不要ですが、相手方の履行の着手後は手付解除できません。手引は、手付解除の期限について、制度趣旨から長い期限の設定が望まれ、契約締結日から少なくとも1か月以上が望ましいとしています。これは手引が示す期限設定の推奨で、法律上の決まりではありません。手付の額は、一般に売買金額の5〜10%程度とされることが多いようです。これは上限・下限の定めではなく、手付なしや少額の手付での契約はトラブルが多いとされます。(出典: RETIO「不動産売買の手引 令和8年度版」)
ローン特約。 融資利用の特約があるとき、契約書のひな形では、融資承認予定日のうち最終予定日までに承認を得られないと契約は自動的に消滅し、売主は受領済の金員を無利息で返還します。期日と内容は契約ごとに違います。ひな形には買主が速やかに融資を申し込む義務も定められており、怠ると解除できない場合があります。(出典: 同上)
契約不適合責任。 民法の原則(特約がない場合)では、買主は種類・品質の契約不適合を知ってから1年以内に売主に通知しないと、追完請求・代金減額・解除・損害賠償請求ができなくなります。ただし上の表のとおり、売主が宅建業者なら引渡しから2年以上の特約が可能で、個人売主では短縮や免責の特約が一般的です。そのため、売主が負う期間や、売主が明示した故障・欠陥の内容は、契約前に契約書で確認する項目です。(出典: 同上)
契約後〜決済・引渡し: 融資承認から登記まで
契約後の流れは次のとおりです(国土交通省の例示図に基づく)。
- 住宅ローン契約の締結(ローン特約の最終予定日までに承認が得られる必要がある)
- 物件の最終確認
- 残金決済
- 物件の引渡し
- 登記手続き
- 引越し・入居
(出典: 国土交通省「重要事項説明・書面交付制度の概要」。2014年の例示図)
事前審査を含む融資の手続きの順序は、利用する金融機関で確認してください。
- ローン特約の最終予定日までに融資の承認が得られる段取りか
- 契約書で確認した物件の状況(明示された故障・欠陥)が、引渡し前の最終確認で変わっていないか
- 手付金等の保全措置が必要な取引(売主が宅建業者)で、保証書などが交付されているか
- 引渡し日と、入居できる日の段取りが合っているか(控除を受けるなら、取得から6か月以内に居住開始)
住宅ローン控除(中古)は、取得の日から6か月以内に居住の用に供することが要件です。控除を受ける最初の年分は確定申告が必要で、給与所得者は2年目以降、年末調整で適用を受けられます。給与所得者以外は、年末調整での適用はありません(確定申告)。(出典: 国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」。令和8年4月1日現在法令等)
補足として、媒介報酬の上限の例を1つ挙げます。物件価格1,000万円(税別)の売買で、依頼者の一方から受けることができる上限は、200万円×5.5%+200万円×4.4%+(1,000−400)万円×3.3%=39.6万円(税込)です。(出典: 国土交通省「不動産取引に関するお知らせ」)
期間はどう考えるか
購入全体にかかる期間は、各社のコラムで「1〜3か月」などと書かれていますが、出所が示されていません。今回の調査では、全体の所要期間を示す公的な統計は確認できませんでした。そのため、この記事は期間を数値で言い切らず、制度や契約書で決まっている区切りだけを表にします。
| 区切り | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 重要事項説明 | 契約前のできるだけ早い時期 | RETIO 手引 |
| 手付解除の期日 | 契約書で確認(個人間は期日を定めるのが一般的。手引は期限を長めに設定することを望ましいとし、少なくとも1か月以上を推奨。法律上の決まりではない) | RETIO 手引 |
| ローン特約の期日 | 契約書の融資承認の最終予定日 | RETIO 手引 |
| 建物状況調査の鮮度 | 木造戸建て1年以内、マンション2年以内 | 国土交通省Q&A |
| 契約不適合の通知 | 民法の原則(特約がない場合)で知ってから1年以内。宅建業者売主は引渡しから2年以上の特約が可、個人売主は短縮・免責の特約が一般的 | RETIO 手引 |
| 控除を受ける入居 | 取得の日から6か月以内 | 国税庁 |
自分の購入の期間は、この区切りを契約書の日付に置き換えて逆算するほうが確かです。
自分の場合の進め方: 次に確認すること
- 売主が宅建業者か個人かを最初に確認します。手付の上限・保全措置・契約不適合責任の期間が変わります。
- 融資の種類を決めます。フラット35を使うなら、築年・床面積・接道・適合証明書の条件が物件選びに戻ってきます。住宅ローン控除を受けるなら、築年・床面積・入居期限と所得の条件を確認します。
- 築年が昭和56年前後なら、耐震の基準日が制度ごとに違うことを前提に、どの制度の条件に当たるかを見ます。
- 申込みの前に、重要事項説明を早めに受けられるか、インスペクションを入れるなら売主の承諾が取れるかを確認します。
次にやること
出典
- (一財)不動産適正取引推進機構(RETIO)・都道府県 監修「不動産売買の手引 令和8年度版」(2026年6月掲載)
- 国土交通省「重要事項説明・書面交付制度の概要」(資料3)。B: 平成26年4月の検討会資料
- 国土交通省「宅地建物取引業法における建物状況調査に関するQ&A」(令和6年4月1日現在。写しは住宅瑕疵担保責任保険協会サイトの掲載)
- 国土交通省「住宅瑕疵担保履行法および住まいの安心総合支援サイト(既存住宅の建物状況調査)」
- 国土交通省「建設産業・不動産業:<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」
- 住宅金融支援機構【フラット35】「対象となる住宅・技術基準」
- 国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」(令和8年4月1日現在法令等)。B: 現行の題は「中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合」

