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留学中の緊急時、お金は誰が出す?病気・盗難・資金不足の「出どころ」を整理する

留学中の緊急時にお金が出る先は、事態によって違います。病気・ケガは保険、盗難・紛失は現金なら補償がなく、カードなら届け出を条件にカード会社が補償し、資金不足は家族からの送金か現地での引き出しです。ただし、海外療養費は先に全額を自分で支払う仕組みで、盗まれた現金は戻らず、送金や引き出しには手数料がかかるなど、先に自分が負担する場面もあります。

この記事は、その仕組みを事態ごとに分けて整理します。保険の商品比較や、予備費の金額の目安は扱いません。

最終更新日: 編集:RAXUS Link編集部

この記事で分かること

  1. 1緊急時のお金は、病気・盗難・資金不足で出どころが違い、海外療養費の立て替えや現金の盗難などでは先に自分が払う
  2. 2在外公館は医療費の立て替えも支払い保証も金銭の供与もしない
  3. 3予備費は保険と別の現金需要(立て替え・対象外・手数料・つなぎ)を受け持つ

1. 緊急時のお金の出どころは、事態の種類で変わる

事態最初にお金が出る先予備費の役割詳しい節
病気・ケガ留学保険(治療費用は実費で、保険金額が上限)。日本の健康保険の海外療養費は後から払い戻される立て替え・保険の対象外・免責のつなぎ3、6
現金の盗難・紛失補償なし失った現金そのものと、再発行までのつなぎ4、6
カードの盗難・紛失届け出を条件に、カード会社が不正利用の損害を補償(条件はカード会社ごと)再発行までのつなぎ4、6
資金不足家族からの送金、カードのキャッシング・デビットでの引き出し送金・引き出しの手数料5、6

海外旅行保険に入らないまま、病気・ケガ・盗難で多額の損害を被った日本人旅行者は数多くいる、と外務省は注意を呼びかけています。現金は盗難・紛失時の補償がないとJASSOも説明しています。

(出典: 外務省 海外安全ホームページ「海外旅行保険加入のおすすめ」、JASSO 海外留学情報サイト「お金の管理」。カードの補償は規約の一例で、4で説明します)

2. 「大使館が助けてくれる」は誤解

外務省の案内によると、在外公館にできないこと・できることは次のとおりです。

  • できない: 病院との交渉、医療費・移送費の負担、支払い保証、立て替え
  • できない: 金銭の供与、クレジットカードの失効手続、航空券の再発行手続の代行、現地警察への被害届提出の代行
  • できない: 大規模な自然災害・騒乱・戦争・テロなどの緊急事態での退避費用の負担(現金などを持ち合わせていない場合は在外公館に相談するよう案内されていますが、これは相談の案内で、費用を負担するという意味ではありません)
  • できる: 家族や知人からの送金に関する助言(日本からの送金方法の案内)、現地警察への届出に関する助言

(出典: 外務省 海外安全ホームページ「海外で困ったら 大使館・総領事館のできること」)

実際に在外公館が援護した件数は、外務省の2025年(令和7年)の統計で次のとおりです。

区分件数
援護の総件数(全世界)12,239件
傷病(Ⅲ.その他)573件
困窮(Ⅲ.その他)201件
窃盗被害(Ⅱ.犯罪)1,424件
遺失・拾得物(Ⅲ.その他)2,290件

(出典: 外務省 領事局「2025年(令和7年)海外邦人援護統計」。2025年・全世界の件数で、留学生に限りません。Ⅲ.その他は前年以前からの継続案件を含み、Ⅱ.犯罪は2025年中の新規事案のみで、窃盗は未遂・致死を含みます。在外公館からの報告に基づく集計で、全事案を網羅したものではなく、渡航者数との割合は示していません)

この件数は、在外公館が関わった事案の数であり、緊急時に在外公館がお金を出してくれるという意味ではありません。

3. 病気・ケガ: 治療費は保険と健康保険の払い戻しで考える

保険は実費払いで、保険金額が上限になる

海外では日本に比べ治療費が高額になる場合もある、と日本損害保険協会は説明しています。海外旅行保険の治療費用は、契約時に設定した保険金額を限度に、治療に要した実費が支払われます(定額払いではありません)。JASSOは、保険金額を治療費用の補償と救援費用を中心に、渡航先の医療事情を勘案して設定するよう案内しています。救援費用とは、家族などが駆けつけるための渡航・宿泊費用などです。

(出典: 日本損害保険協会「損害保険Q&A 問77 海外旅行保険」、JASSO「留学中の保険」、外務省「海外旅行保険加入のおすすめ」)

支払われた保険金の例として、損保ジャパンは次の事例を公表しています。いずれも1件の事例で、実際にお支払いした保険金です。平均や相場ではなく、実際の医療費の総額でもありません。

  • アメリカで交通事故に遭い、右手を骨折して手術後5日間入院した事例: 治療費用 2,291,236円
  • アメリカ滞在中に急性心筋こうそくと診断され入院し、日本から家族が駆けつけた事例: 治療費用 10,000,000円、救援者費用 3,114,449円、合計 13,114,449円

(出典: 損害保険ジャパン「off!(オフ)治療費用」「off!(オフ)救援者費用」のお支払事例。年月は不明。事例の紹介であり、特定の商品を勧めるものではありません)

治療費が大きくなり得る、という例としてだけ読んでください。

長期滞在では、保険の期間と対象外を確かめる

通常の海外旅行保険は、短期旅行者を対象とした商品です。留学・駐在などの長期滞在では、保険期間を滞在日数に設定し、必要な補償を追加して契約できる場合があります(保険会社・商品により異なります。帰国予定のない場合や永住は契約できません)。借家人賠償責任・自家用車の損害賠償責任・家財の損害といった長期滞在特有のリスクには、通常の海外旅行保険は対応していないことが一般的と思われる、と同協会は述べています。

(出典: 日本損害保険協会「損害保険Q&A 問77 海外旅行保険」)

(出典: 日本損害保険協会「損害保険Q&A 問77 海外旅行保険」)

留学先の国によっては、保険の加入や補償額が条件になることもあります。たとえばアメリカのJ1ビザでは、治療費用10万ドル・救援費用2万5千ドル・本国への搬送費用5万ドル、病気や事故の免責額が500ドルを超えないこと、という保険の要件があります(J1ビザの場合の一例で、他のビザ・国は別です。円換算はしていません)。

(出典: JASSO「留学中の保険」)

日本の健康保険の海外療養費は「払い戻し」

JASSOは、短期の留学などで海外滞在中も日本の健康保険に継続加入している場合、帰国後に日本の健康保険から払い戻しを受けられると説明しています。以下は、協会けんぽ(被保険者・被扶養者)の海外療養費の説明です。他の健康保険は別に確認が必要です。

項目保険(民間の留学保険)海外療養費(協会けんぽの例)
お金が出る時期保険金として支払われる(損保ジャパンの事例1件では、キャッシュレス治療サービスが提供された)先に全額を自分で支払い、あとから支給される
金額の決まり方保険金額を限度に実費日本国内で同じ傷病を治療した場合の費用を基準に計算した額(実際に支払った額のほうが低いときはその額)から、自己負担相当額を差し引いた額
注意点対象外がある。免責額がある保険もある(J1ビザの要件の例では500ドル以内)支給額が大幅に少なくなることがある。審査には通常数か月。支払った翌日から2年で時効。海外への直接送金はできない(日本在住の家族などに受け取りを委任する)

海外療養費は、国内で保険診療として認められている医療行為が対象で、治療を目的に海外へ渡航して診療を受けた場合は対象外です。外貨で支払った医療費は、支給決定日の外国為替換算率(売レート)で円に換算して支給額を計算します。

(出典: 全国健康保険協会(協会けんぽ)「海外療養費」、JASSO「留学中の保険」。留学生がどの健康保険に入っているか、支給の対象になるかは加入先によるため、加入している健康保険に確認してください)

4. 盗難・紛失: 現金は戻らず、カードは届け出の早さで負担が変わる

現金は補償がない

現金は盗難・紛失時の補償がありません。JASSOは、多額の現金を持ち歩くのは紛失・盗難を考えると得策ではなく、少額の現金とカードを持ち歩くよう案内しています。現金と全てのカードが入った財布を失うと複数の管理方法の意味がなくなるため、現金とカードは分散して持ち歩くことも案内しています。

(出典: JASSO「お金の管理」)

カードを失くしたときの流れ

カード会社の規約は会社ごとに異なります。以下は、JCBカードと楽天カードの案内を、規約の一例として整理したものです。2社を比べたり、どちらかを勧めたりするものではありません。

  1. 直ちにカード会社で利用停止の手続きをする(在外公館はクレジットカードの失効手続を代行しません)
  2. 警察へ紛失届を提出する(不正利用による補償の手続きで必要になる)
  3. カードの再発行を受ける

(出典: JCB「カードの紛失・盗難」、外務省「海外で困ったら 大使館・総領事館のできること」)

補償の条件の例は次のとおりです。

  • 補償の範囲: JCBは、紛失登録完了から60日前にさかのぼり、それ以降の損害額を補償します。楽天カードは、紛失・盗難を届け出た60日前にさかのぼり、それ以降の損害額をカード会社が負担します。この「60日」は2社の規約の一例で、一般の基準ではありません。
  • 連絡が遅れた場合やカード保管義務に違反していた場合は、利用者に請求される場合があります(楽天カード)。
  • 会員の家族・同居人など会員の関係者による利用は、補償の対象外です(JCB。他の対象外ケースもあります)。

(出典: JCB「カードの紛失・盗難」、楽天カード「カードの紛失・盗難」。補償の期間・条件はカード会社・会員規約ごとに異なります。自分のカードの会員規約で確認してください)

海外からの連絡は専用の窓口になります。JCBは海外用の受付デスクで通話料は無料(トールフリー)ですが、携帯電話からは有料または利用できない場合があります。楽天カードの海外専用ダイヤルは24時間対応で、海外渡航先からはコレクトコールで電話します。番号は国・地域ごとに異なるので、渡航前に自分のカードの案内で確認してください。

再発行カードは、JCBの案内では手続き後1〜2週間でのお届けです(手続き内容やカードにより2週間以上かかる場合があります)。希望者向けに、再発行したカードを現地の窓口で渡す「海外専用緊急再発行カード」もあります(JCBの例。受取場所は限られます)。再発行までの間は、カードが使えない期間を現金などでつなぐことになります。

(出典: JCB「カードの紛失・盗難」、楽天カード「カードの紛失・盗難」)

パスポートの再発行はお金と時間がかかる

パスポートを盗難・紛失した場合、在外公館は旅券の新規発給と、旅券に代わる「帰国のための渡航書」の発給ができます(要手数料。額はここでは扱いません)。紛失した旅券の届出には、警察署の発行した紛失届受理証明書等などが必要です。一般旅券は、2025年3月24日から日本国内で作成して申請した在外公館へ配送する方式になり、申請から交付まで最短でも2週間以上かかります(この注記は一般旅券のものです)。

(出典: 外務省 海外安全ホームページ「海外で困ったら 大使館・総領事館のできること」)

5. 資金が足りなくなったとき: 家族からの送金と現地での引き出し

在外公館は、日本からの送金方法の案内といった助言はできますが、送金や立て替えそのものはしません。手段ごとの違いは次のとおりです。

手段お金の性格注意点
クレジットカードの海外キャッシング借り入れ(利息が発生する)為替レートの上乗せ・ATM利用手数料がかかる
デビットカードでの現金引き出し口座預金からの引き出し(利息はかからない)ATM引き出しは回数を減らすと手数料を抑えられる
日本からの海外送金家族などが送る送金元と受取り銀行の間に他の銀行を経由すると、その銀行からも手数料が差し引かれる場合がある

利率や手数料の額は、カード会社・銀行ごとに異なります。

(出典: JASSO「お金の管理」、外務省「海外で困ったら 大使館・総領事館のできること」)

6. 予備費は「何のための現金」か

保険は、治療費用や救援費用を実費で払う仕組みです。予備費は、保険では払われない、または払われるまでに時間がかかる現金需要を受け持ちます。これまでの節から、その種類を整理すると次のとおりです。

  • 立て替え: 海外療養費は、先に全額を自分で支払い、数か月かけて審査されたあとに払い戻されます
  • 免責・対象外: 免責額がある保険もあり(J1ビザの要件の例では500ドル以内)、歯科疾病など支払われない場合もあります
  • 保険金額を超える部分: 治療費用は保険金額が上限です
  • 手数料: 送金の経由銀行の手数料、ATMの手数料、キャッシングの利息など
  • つなぎ: カードの再発行までの1〜2週間(JCBの例)、盗まれた現金そのもの
  • 手続きの費用: 帰国のための渡航書の手数料(要手数料)

予備費の金額については、公的な一律の目安は見つかりませんでした。予備費を総費用の割合で示す記事はありますが、出所の明示された目安は確認できなかったため、この記事では金額も割合も示しません。金額は国・期間・保険の有無によって変わります。費用そのものの相場は「留学費用の国別・期間別の相場」で、JASSO調査の定義と限界つきで整理しています。

7. 渡航前に確かめること

  • 加入する保険の対象(治療費用・救援費用)・保険金額・長期滞在への対応を確かめた
  • 保険の対象外(歯科・妊娠関連・発病時期など)と免責額を確かめた
  • 加入している健康保険で、海外療養費がどう扱われるかを確かめた
  • 持っていくカードの、海外からの紛失・盗難の連絡先と、補償の条件(届け出の期限)を確かめた
  • 家族からの送金の手段と、手数料が引かれる場合があることを確かめた

出発前に必要な現金や支払いの時期は、次のツールで確かめられます。費用全体の中で、保険や予備費がどこに入るかは総額と内訳のページで見直せます。

次にやること

  1. STEP 1留学費用の支払い時期と出発前に必要な現金を試算する予備費を考える前に、出発前に必要な現金を確かめる
  2. STEP 2留学費用の総額と内訳費用全体の中で、保険や予備費がどこに入るかを見直す

出典

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