中古住宅の購入後、すぐ修繕が必要なのはどこ?「すぐ直す」を3つの見方で分ける
中古住宅を買ったあと、すべてを入居前に直す必要があるとは限りません。「すぐ直すもの」は、期限があるか・放置で悪化や安全に関わるか・住んでからだと負担が増えるか、の3つの見方で分けて考えられます。
この記事は、物件ごとの優先順位を決めるものではありません。分け方と、直す前に確かめることを整理します。個別の判断は、インスペクション(建物状況調査)の結果や施工業者、水道事業者など、専門家に確認してください。対象は戸建てが中心です。
最終更新日: 編集:RAXUS Link編集部
この記事で分かること
- 1中古住宅は購入時点で築年数ぶんの劣化があるのが前提だが、購入後すぐ直すものは一部で、全部を入居前に直す必要があるとは限らない
- 2「すぐ」は、期限があるか・放置で悪化や安全に関わるか・住んでからだと負担が増えるかの3つの見方で分けられる(編集部の整理)
- 3築年数の目安、契約書の欄、工事に連鎖する保険・防蟻保証・石綿の事前調査を、直す前に確かめる
中古住宅の購入後、すぐ修繕が必要なのは「全部」ではない
中古住宅は、築年数ぶんの劣化があるのが前提です。購入した既存住宅の平均築後年数は、戸建て27.1年、集合住宅29.6年でした。(出典: 国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査 報告書」。令和6年4月〜令和7年3月に入居または入居予定の既存住宅購入世帯。既存住宅の回収1,123件)
では、購入後にリフォームをした人はどれくらいいるのでしょうか。同じ調査で、購入後にリフォームをした(1年以内の予定を含む)のは、戸建て45.8%、集合住宅26.2%です。(出典: 同上)
この数字は「修繕が必要だった割合」ではありません。調査上のリフォームは、増築・改築・模様替えなどの工事全般を指します。(出典: 同上「用語の解説」)修繕に限らず、間取りや設備の更新も含みえます。工事の内容別の内訳や費用は、この調査の既存住宅の章には載っていません。
また、戸建ての割合は年度で動きます。令和3年度から7年度まで順に43.1%・52.1%・37.1%・43.0%・45.8%です。(出典: 同上)1年度の値を典型として受け取らないでください。
一方で、不具合を放置すると状態が悪化し、元に戻すのに莫大な費用がかかる、と住宅金融支援機構は案内しています。(出典: 住宅金融支援機構「入居後の住まいの保守管理」)だから、何を先にするかの分け方が要ります。
なお、マンションの共用部の将来の修繕は別の確認になります。マンションの修繕積立金・長期修繕計画の見方で整理しています。この記事で扱うのは、専有部と戸建ての話です。
「すぐ直す」を分ける3つの見方
次の3つは、編集部が整理した見方です。出典に書かれた分類ではありません。
| 見方 | 見る問い | 当てはまる例 |
|---|---|---|
| 期限があるか | 自分の契約書で、買主から売主へ契約不適合を通知できる期間はいつまでか | 契約書の「通知期間」の欄(日数は契約ごとに違う) |
| 放置で悪化・安全に関わるか | 放っておくと状態が進む、または安全に関わる箇所か | 雨漏り、シロアリ(防蟻)、基礎のひび割れ、ガス機器 |
| 住んでからだと負担が増えるか | 家具を入れた後だと、工事の手間や暮らしへの影響が大きくなるか | 床、水回りの取替え |
雨漏りやガス機器など安全に関わる箇所は、自分で見立てて済ませず、専門家や施工業者、メーカーに確認します。
内装(クロスなど)は、機構の目安でも点検時期は「随時」、取替えは「状況に応じて検討」とされています。(出典: 住宅金融支援機構「マイホーム維持管理の目安【一戸建て(木造住宅)】」)年数で区切る期限型ではありません。
3つの見方は、1つの箇所に複数当てはまることもあります。「期限がある=いちばん先」と決めるものでもありません。
築年数ぶんの「目安」に達している部位がある
住宅金融支援機構は、木造一戸建ての部位ごとに、点検時期と取替えの目安を載せています。購入した家の築年数がこの目安に近ければ、購入時点で「検討を始める時期」に入っている部位があるかもしれません。
| 部位 | 点検・取替えの目安(木造一戸建て) |
|---|---|
| 給湯器(ガス設備) | 点検は1年ごと。10年位で取替えを検討 |
| 水栓器具 | 10〜15年位で取替え |
| 給水管 | 15〜20年位で全面取替え |
| 屋根(化粧スレート葺き) | 点検は4〜6年ごと。15〜30年位で全面葺替えを検討 |
| 外壁(窯業系サイディング) | 点検は3〜4年ごと。15〜20年位で全面補修を検討 |
| 土台・床組 | 点検は4〜5年ごと。防腐・防蟻の再処理は5〜10年 |
注: 木造一戸建て住宅の標準的な保全計画の目安です。点検時期や取替えの目安は、立地条件・使用状況・点検や手入れの程度で変わり、数値は「大体の目安」と注記されています。(出典: 住宅金融支援機構「マイホーム維持管理の目安【一戸建て(木造住宅)】」)
この年数は「期限」ではなく、「点検や取替えの検討を始める目安」として読んでください。
給湯器の10年は、別の根拠もあります。日本ガス石油機器工業会は、ガス給湯器が標準的に使われた場合に安全に支障なく使える年数(設計上の標準使用期間)を10年と定め、10年たったら点検または取替えをすすめています。(出典: 一般社団法人日本ガス石油機器工業会「ガス給湯器 点検・取替えの目安は10年」令和6年10月版)10年で使えなくなるという意味ではなく、経年劣化のリスクが高まる年数として示されています。
古い給水管についても一点あります。鉛製給水管は1980年代後半まで全国で使われてきました。国は、家屋の建替えのタイミングでの更新を、水道事業者・水道工事関係団体・住宅関係団体に要請しています(令和8年1月30日取りまとめ)。(出典: 国土交通省「鉛製給水管の解消に向けた対応方針」「今後の鉛製給水管の解消に向けた対応方針」)宅内部分の費用負担などは、水道事業者に確認してください。
引渡し後・入居前に自分で確かめること
購入前にインスペクションを実施した人は、戸建てで16.6%、集合住宅で11.9%でした(売主が実施した場合と、自分で検査人に依頼した場合の合計)。(出典: 国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査 報告書」)多くの人は、診断の結果がないまま入居します。診断で分かること・分からないことは、中古住宅のインスペクション(建物状況調査)で分かること・分からないことにまとめています。
診断がない場合は、引渡し後に自分で次を確かめることになります。
- 契約書の付帯設備表で、「有」とされた設備は何か
- 契約書の契約不適合責任の通知期間の欄に、何と書いてあるか
- 給湯器など主要な設備の製造年は何年か
- 床下や屋根裏を見られる場所があるか(点検口の有無)
- 売主がリフォーム済みの場合、どの範囲を工事したのか(説明書類があるか)
売主が購入前の1年以内にリフォームした割合は、戸建て37.9%、集合住宅48.6%です。(出典: 国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査 報告書」)ただし、その範囲が内装だけなのか、設備や配管まで含むのかは、この調査からは分かりません。「リフォーム済み」と聞いたら、範囲を確かめてください。
設備の扱いは、契約書の欄で決まります。全国宅地建物取引業協会連合会の標準書式では、付帯設備表で「有」としたものは引き渡されますが、その設備の故障や不具合について、売主は修補・損害賠償その他一切の責任を負わないとされています。契約不適合責任の通知期間は、書式上は「物件引渡し後 _ 間」の空欄で、契約ごとに書き入れます。(出典: 公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会「不動産売買契約書(土地建物公簿用)」。標準書式で、実際の契約は個別に異なります)
この記事では日数を示しません。自分の契約書のどこを見るかが大事だからです。民法上の通知期間や個人売主の特約は、契約不適合責任の通知期間と引き返せる地点(購入の流れ)で整理しています。
ガス給湯器の点検にも注意点があります。屋内に設置するガス給湯器・ふろがまは、令和3年8月1日に法律上の「特定保守製品」から除外されました。以後の点検は法定のものではなく、メーカーが自主的に行う有償の「あんしん点検」です。(出典: 一般社団法人日本ガス石油機器工業会「ガス給湯器 点検・取替えの目安は10年」)
住所変更やライフラインの手続きなど入居前の手続きは、この記事の範囲外です。引っ越し前後にやることチェックリストで確認してください。
工事を頼む前に知っておく連鎖:保険・防蟻保証・石綿
直す順番を決めるときは、工事に連鎖することを先に確かめます。
- 売買かし保険: 既存住宅売買かし保険(個人間売買)では、保険期間開始後に実施された改修工事や修補工事の部分、およびその工事に起因する損害は、保険金の支払い対象になりません。契約自体が無効になるとは書かれていません。(出典: 一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会「【上級編】既存住宅売買かし保険(個人)について」Q&A)
- 防蟻処理: 防除施工標準仕様書では5年を目途に再処理をするとしています。しろあり工事の5年保証は、増改築を行った場合は無効になります。(出典: 一般社団法人関西・北陸しろあり対策協会「シロアリQ&A」)
- 石綿(アスベスト)の事前調査: 解体・改修工事は、規模の大小にかかわらず、工事前に作業に係る部分の全ての材料について、石綿含有の有無の事前調査を行う必要があります。事前調査は、建築物石綿含有建材調査者などの一定の要件を満たす者が行う必要があり、建築物は令和5年(2023年)10月から必要です。(出典: 厚生労働省「石綿(アスベスト)総合情報サイト:改修・リフォーム業者のみなさまへ」)
事前調査の結果の報告は、原文では「一定規模(解体工事の場合は解体部分の延べ床面積80㎡、改修工事の場合は請負金額が100万円)以上」の場合に、労働基準監督署へ電子システムで行う、と書かれています(令和4年4月から)。これは報告の基準であって、事前調査が要るかどうかの基準ではありません。(出典: 同上)
費用は何で決まるか(金額を載せない理由)
この記事には、修繕費の「〇〇万円」は載せません。購入後の修繕費について、公的な実額の統計を確認できていないためです。住宅市場動向調査の既存住宅の章にも、購入後リフォームの内容別・費用の設問は見当たりません。事業者やメディアの金額は、出所が分からないものを使わない方針です。
費用は、どの部位か、取替えの目安にどれだけ近いか、工事の範囲、時期で決まります。放置して状態が悪化すると、復旧の費用が大きくなる、と機構は案内しています。(出典: 住宅金融支援機構「入居後の住まいの保守管理」)
税制の面では、購入後にリフォームを行った世帯のうち、リフォーム促進税制の適用を「受けた」または「受ける予定」と答えたのは、戸建て14.7%、集合住宅12.2%でした。(出典: 国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査 報告書」)手続きの案内はしません。
修繕費を購入費や諸費用とあわせた総額で見るには、中古住宅の総予算を試算するツールが使えます。
よくある誤解と、次に確認すること
| 誤解 | 実際 | 見る場所 |
|---|---|---|
| 入居前に全部直さないといけない | 期限・悪化や安全・住んでからの負担の3つで分けて考えられる(編集部の整理) | 契約書の通知期間の欄、目安の表 |
| リフォーム済みなら安心 | 売主のリフォームの割合は分かるが、範囲は調査から分からない | 売主の説明書類、工事の範囲 |
| 給湯器は10年たったら使えない | 設計上の標準使用期間で、点検または取替えを考える目安 | 製造年、メーカーの点検 |
どれも、物件を見ないと決まりません。次の確認先は4つです。
次にやること
出典
- 国土交通省住宅局「令和7年度 住宅市場動向調査 報告書」(令和8年7月)
- 国土交通省「令和7年度住宅市場動向調査 調査結果の概要(抜粋)」
- 住宅金融支援機構「入居後の住まいの保守管理」
- 住宅金融支援機構「マイホーム維持管理の目安【一戸建て(木造住宅)】」(PDF 2ページ・画像で文字抽出不可)
- 一般社団法人日本ガス石油機器工業会「ガス給湯器 点検・取替えの目安は10年」(あんしん点検チラシ・G202410)
- 国土交通省「上下水道:鉛製給水管の解消に向けた対応方針(令和8年1月30日取りまとめ)」
- 国土交通省「今後の鉛製給水管の解消に向けた対応方針」(PDF)
- 一般社団法人関西・北陸しろあり対策協会「シロアリQ&A」
- 厚生労働省「石綿(アスベスト)総合情報サイト:改修・リフォーム業者のみなさまへ」
- 一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会「【上級編】既存住宅売買かし保険(個人)について」(Q&A)
- 公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会「不動産売買契約書(土地建物公簿用)」
