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AI時代に大学生は何を学ぶ?専門とAI活用のどちらを先にするか

AI時代に身につけたい力は、一覧にすればいくつも挙がります。ただ、大学生が迷うのはその先、専門の勉強とAIの使い方のどちらに先に時間を振るかです。この記事は、力の一覧ではなく、その順番を自分の状態で決める見方を整理します。

最終更新日: 編集:RAXUS Link編集部

この記事で分かること

  1. 1専門かAIかは「重要度」ではなく、いまの自分にAIの出力を確かめられる領域があるかで先後が変わる
  2. 2直接回答を得る使い方とヒント・方法を得る使い方で、AIを使えない状態になったときの成績の落ち方が違う傾向(厚労省が紹介する研究)
  3. 3学生を対象に先後を測ったデータはなく、授業での使い方・自分の大学のプログラム確認という次の一歩を選べる

結論:「専門かAIか」より、順番は「自分で確かめられる領域があるか」で決まる

身につける力の中心は、2つに絞れます。自分の専攻でAIの出力を確かめられる土台と、AIを答え取りではなくヒント・検証に使う使い方です(編集部の整理。研究が比べているのは「直接回答を得る」と「ヒント・方法を得る」で、「検証」は編集部が足した使い方です)。

そのうえで、どちらに先に時間を振るかは、いまの自分の状態で変わります。

  • 確かめられる領域の中でAIを使うか、確かめられない領域までAIを広げるか。 実験では、AIが苦手な1課題で、AIを使った群の正答が使わない群より19ポイント(Dell'Acquaほか)低くなりました。
  • AIを、答えを得るために使うか、ヒントや検証に使うか(編集部の整理)。 厚生労働省が紹介する研究に、直接回答を得る使い方とヒント・方法を得る使い方で、AIを使えない状態になったときの成績の落ち方が違う傾向を示すものがあります(下の「順番を決める2つの変数」)。

最初に限界を書きます。学生を対象に「専門を先にした場合」と「AIを先にした場合」を比べた測定結果は、この記事の材料にはありません。以下は、研究や公的資料が示すことと、そこから編集部がどう整理したかを分けて書きます。

「AI活用力」とは何か:使い方を知ることと、出力を判断することは別

文部科学省の数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度は、リテラシーレベルの目的を、数理・データサイエンス・AIを「適切に理解し活用する基礎的な能力」としています。応用基礎レベルは、課題を解決するための実践的な能力です。これは制度上の定義の一例で、生成AIの使い方に限った話ではありません。

AIを使う力は、次の2つに分けて考えられます(分け方は編集部の整理)。

中身何をするか専門との関係
指示の出し方目的に合わせて、AIへの依頼(プロンプト)を設計する専門が浅くても始められる
結果の妥当性の判断出てきた答えが正しいか、使えるかを見極めるその領域の知識が要る場面が出てくる

厚生労働省は、Georgiou(2025年)の研究を紹介する形で、AIの活用にあたって、適切なプロンプト設計や結果の妥当性の判断の過程で、人間の認知能力が重要な役割を果たすと整理しています。先行研究の紹介で、この記事の判断軸そのものを実証した数値ではありません。

雇用主の見込みも、一言だけ見ておきます。世界経済フォーラム(WEF)の雇用主調査(1,000社超)では、2025〜2030年に重要度が増すと雇用主が見込むスキルの先頭がAIとビッグデータでした。あわせて、創造的思考、レジリエンス(柔軟さと機敏さ)、好奇心と生涯学習も増すと見込まれています。これは雇用主の見込みで、実績ではありません。

(出典: 文部科学省「令和8年度 数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度の認定・選定結果」2026年8月28日/厚生労働省「令和8年版 労働経済の分析」2026年9月/World Economic Forum「The Future of Jobs Report 2025」2025年1月)

「専門知識はAIに置き換わる」は、測られた結果ではない

文部科学省のサイトに載る会議資料には、外部講師(PKSHA Technology 代表取締役)の見解として、「AIが最も代替しやすいのは、第一層である専門知識・専門技能である」「知識を保有していること自体の価値は相対的に低下している」という記述があります。

これは一人の有識者の意見です。資料には、この主張の根拠になる数字は載っていません。文部科学省の見解でもありません。

そのため、この記事は2つの読み方をしません。「だから専門は不要」とも、「だから専門が必須」とも言いません。判断の材料にするのは、次の節で見る、測定された結果のほうです。

(出典: 文部科学省サイト掲載の会議資料(資料2-2)「AI時代において重要となる教育とは」2026年7月15日)

順番を決める2つの変数

次の表は、研究や公的資料が示すことと、その限界を並べたものです。「どちらを先にするか」の整理は編集部のもので、学生を対象に測った結果ではありません。

変数示すこと限界
(a)AIの出力を、自分で確かめられる領域かDell'Acquaほかの実験(758人)で、AIの苦手領域に置かれた1課題(373人)では、AIを使った群の正答が、使わない群より平均19ポイント低かった(対照群の正答は約84.5%、AI条件は60%と70.6%)。課題がAIの得意・不得意のどちらに入るかは、事前に分かりにくい1課題だけの結果で、著者も限界と記している。この結果から「専門知識が要る」とは言えない
(b)AIを、答え取りに使うか、ヒント・方法を得るために使うか厚生労働省が紹介するBastaniほか(2025年)の研究:直接問題の回答を得る使い方をした学生は、ヒント・方法を得る使い方をした学生と比べて、AIを使えない状態になると大きく成績が落ちる傾向厚労省の記述の範囲の定性的な傾向で、対象は「学生」とのみ記載。大学生に当てはまるとは限らず、落ち幅の数字は使わない
参考:AIの使い始めやすさ(順番を決める変数ではない)厚労省が先行研究を整理した記述として、同一職種内では、低スキルの労働者ほどAIによる生産性向上の効果が大きい可能性。カスタマーサポート業務の研究では、低スキルの労働者で34%の労働生産性向上効果があり、高スキルの労働者では統計的に有意な差は認められなかった「可能性」の記述で、同一職種内に限る。働く人の研究で、学生・新卒には当てはめられない。34%の背景について、厚労省はベテランの暗黙知をAIが標準化したためと推測している(推測)

(a)と(b)から、編集部は次のように整理しました。AIを使うこと自体は、専門が浅くても始められます。ただ、使うほど「出てきた答えが正しいか」を自分で確かめる場面に当たります。確かめられる領域を持つことは、AIと対立するものではなく、AIを使う前提の土台になります。参考の行は、使い始めやすいことは示しても、「使えば専門は要らない」を示すものではありません。

(出典: Dell'Acqua ほか「Navigating the Jagged Technological Frontier」Organization Science 2026年3月11日オンライン公開/厚生労働省「令和8年版 労働経済の分析」2026年9月。34%・19ポイントの値は各出典の公表値)

あなたの状況なら、先に何をするか

次の表は、上の2つの変数から導いた編集部の整理です。学生を測った結果ではなく、「専門は不要」「AIを先に学べば有利」のどちらも意味しません。

いまの状況先にすることAIの使い方確かめ方
A 基礎科目の最中で、専攻の土台がまだ浅い専攻の基礎を先に固めるヒント・解説・自分の答えの検証に限るAIなしで解けるかを確かめる
B 専攻の課題や研究に入っている専攻の中でAIを使う範囲を広げる下調べ、案出し、文章の整理にも使う出力を原典や自分の知識で照合する
C バイト・インターンなど実務で触れた領域があるその領域でAI活用を先に試す実務の作業の一部をAIで補う経験のない領域の出力は鵜呑みにしない
D 専攻も進路も、まだ決まっていない授業の基礎を優先する先に自分の案を書いてから、AIに見せるAIの答えと自分の案の違いを、自分で説明できるか

Cについて、一例だけ紹介します。ラグザス株式会社のオウンドメディアRaxMedia(元記事)に、2026年7月2日の関西大学商学部「マーケティング論」での特別講演の再録があります。RAXUS Link も同社が運営しています。その中で、取締役COOが、同社の新卒3年目(2024年時点)の社員の例として、マーケティング企画や営業を経験した後にAIを本格的に活用し、企画から約2週間で新規事業のプロトタイプ(サービスの試作)をリリースした、と紹介されています。この社員はデザインやプログラミングの経験がありませんでした。

これは同社の社員一人の事例で、取締役COOの講演での紹介です。効果の根拠にも、「経験があれば誰でもできる」「AIで何でもできる」の根拠にもなりません。ある領域の経験がある人が、別の作業をAIで補った例、というところまでの紹介です。

(出典: ラグザス株式会社 RaxMedia「【関西大学×ラグザス株式会社 特別講演】社会の変化とマーケティングの進化。そしてAI時代に求められるマーケティングとは」2026年8月31日/ラグザス株式会社 会社情報(raxus.inc/about)/RAXUS Link 運営者表記(media.raxus.inc/news/policy))

授業・レポートでAIをどう使うか

厚生労働省が紹介する研究には、直接問題の回答を得る使い方をした学生は、ヒント・方法を得る使い方をした学生と比べて、AIを使えない状態になると大きく成績が落ちる傾向がある、というものがあります(「順番を決める2つの変数」の(b))。対象は「学生」とのみ記載されていて、大学生に当てはまるとは限りません。この範囲で、授業やレポートでの動作を3つ提案します。動作は編集部の提案で、研究の結果ではありません。

まず1つ選んで、今週の課題で試してみてください。

  1. 出力の根拠を、原典で確かめる。 自分の専攻の課題では、AIの答えを教科書や論文、授業資料と照らします。確かめられる領域が、そのまま使える範囲です。
  2. 先に自分の案を書いてから、AIに見せる。 答えを丸ごと出してもらう前に、自分の考えを一度形にします。
  3. AIなしで解けるかを確かめる。 AIの助けを借りた課題を、あとでAIを使わずに説明・再現できるかを試します。

(出典: 厚生労働省「令和8年版 労働経済の分析」2026年9月/Dell'Acqua ほか 同上)

この判断が当てはまらないとき・分かっていないこと

  • 学生の測定がありません。 新卒採用で専門とAI活用のどちらが優先されるかは、この記事の材料からは言えません。
  • 研究の範囲に限りがあります。 AIの苦手領域の結果は1課題のもので、使い方の研究は対象が「学生」とのみ記載されています。
  • 専門は学部の勉強とは限りません。 実務やバイトで触れた領域も、確かめられる領域になり得ます。

若年層の雇用についての研究もあります。Stanford Digital Economy Labの2026年8月版では、米国でAI曝露度の高い職業の22〜25歳の雇用が、曝露の低い同年代に歩調を合わせた場合より19%低い水準でした。経験者に同様の差はなく、AIが人の業務を主に置き換える職業で雇用が減り、補完する職業では横ばいか増加(特に経験者)という結果でした。ここから「AIを使えるだけでは入口の優位とは限らない」可能性は読めますが、断定はできません。予測と実績の読み分けは、「なくなる」予測と実際の統計の読み分けで整理しています。

(出典: Stanford Digital Economy Lab「Canaries in the Coal Mine? Six Facts about the Recent Employment Effects of Artificial Intelligence」2026年8月12日版)

次にすること

まず、自分の大学に、数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル、応用基礎レベル)があるかを確認します。文部科学省の認定数は、2026年8月時点でリテラシーレベル655件、応用基礎レベル421件です(プログラム数で、学校数ではありません)。1学年あたりの受講可能な学生数は、約61万人と約29万人ですが、受講者数ではなく受講できる枠です。自分の大学にあるかは、大学ごとに確認が要ります。

(出典: 文部科学省「令和8年度 数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度の認定・選定結果」別添資料3、2026年8月)

プログラミングを学ぶ必要があるかは、AI活用力の中でも別に決める問いです。

次にやること

  1. STEP 1プログラミングは必要?職業・基礎知識・道具に分けて決める自分にプログラミングが要るかを決める判断基準

出典

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