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プログラミングは大学生に必要?「職業・基礎知識・道具」の3つに分けて決める

「プログラミングは必要か」への答えが「目的次第」で終わりがちなのは、「必要」の中身が混ざっているからです。この記事では「必要」を3つに分け、それぞれにどこまでの水準が要るかを見て、自分の分を選びます。

最終更新日: 編集:RAXUS Link編集部

この記事で分かること

  1. 1「必要」は、職業・全員向けの基礎知識・自分の作業の道具の3つに分かれる
  2. 2全員向けの公的な水準は「プログラミング的思考」で、コードを書く力は求めていない
  3. 3自分の状況でどの「必要」を選ぶかと、最初の小さな試行が分かる

結論:全員がコードを書く必要はない。ただし「必要」は3つに分かれる

「必要」は次の3つです。求められる水準が違います。

  • 職業としてコードを書く: 学ぶ必要があり、時間をかけます。公的な標準(IPA のデジタルスキル標準の DSS-P)で、専門性を持って DX を推進する人材の類型に、ソフトウェアエンジニアなどが挙げられています。この項目の「職業としてコードを書く」という切り出しと、専門的な実装を前提にするという見方は編集部の整理です。(出典: IPA「デジタルスキル標準 ver.2.0」2026年4月。類型の記述まで)
  • どの仕事でも要る基礎知識: 水準は「考え方を知る」までです。IPA のデジタルスキル標準の DSS-L は全てのビジネスパーソンが対象で、学習項目例は「プログラミング的思考」です。コードを書く力を求める記述ではありません。(出典: IPA「デジタルスキル標準 ver.2.0」2026年4月)
  • 自分の作業の道具: 自動化したい作業が決まっているなら、その作業ができる分だけ学びます。決まっていなければ、今は急ぎません。この項目の「道具」という切り出しは編集部の整理で、公的な水準はありません。

「まだ何も決まっていない」人は、2つ目の水準(考え方と指示の考え方を知る)を押さえれば、今コードを書く学習に大きな時間を割く判断を急がなくて構いません。

「必要」の3つを比べる

職業としてコードを書くどの仕事でも要る基礎知識自分の作業の道具
誰向けかソフトウェアエンジニアなど、専門性を持って DX を推進する人全てのビジネスパーソン自動化・試作したい作業を持つ人
求められる水準(編集部の整理)専門的な実装が要る場合が多いプログラミング的思考(アルゴリズムの基本的な考え方、プログラミング言語の特徴)。指示の考え方と IT 部門の業務を知る目的の作業ができる分だけ
時間の考え方大学生活の時間をまとまって使う前提で、ほかの経験との取り合いを考える短時間で足りる水準。ほかの経験を削って優先する水準ではない作業が決まっていれば、その作業の分だけ。決まっていなければ後回し
代替手段少ない(職業として担う側)学ばずに IT 部門に任せきりだと、会話が成り立ちにくいAI や詳しい人に頼む選択もある。ただし頼んだ結果を読んで確かめる側は自分

「時間」「代替手段」の行と、「道具」の列、「職業」列の水準のセルは編集部の整理です。公的な出典はありません。DSS-P と DSS-L の記述は、次の出典によります。

(出典: IPA「デジタルスキル標準 ver.2.0」2026年4月)

全員向けの水準は「考え方を知る」まで

DSS-L(DX リテラシー標準)の対象は、経営層を含む全てのビジネスパーソンです。IT 技術者に限りません。学習項目例には「プログラミング的思考:アルゴリズムの基本的な考え方、プログラミング言語の特徴」があり、説明欄には、開発部門と円滑に連携するため、コンピュータへの指示の考え方や IT 部門の業務を知る必要がある、とあります。ここにあるのは知識の水準で、「コードを書ける」ことを求める記述ではありません。

一方、DSS-P(DX 推進スキル標準)は、専門性を持って DX の取組みを推進する役割の人材が対象です。類型にはソフトウェアエンジニアやサイバーセキュリティなどがあります。編集部の整理では、プログラミングの専門的な実装が要るのは主にこの側と見ています(DSS の記述ではありません)。類型は例であって、プログラミングが必要な人がソフトウェアエンジニアだけという意味ではありません。

DSS は、個人の学習や企業の人材確保・育成の指針です。義務や資格要件ではありません。

大学の側も、同じ方向です。文部科学省の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」は、数理・データサイエンス・AI を「適切に理解し活用する基礎的な能力」の育成を目的にしています。令和8年度(2026年度)の認定は、リテラシーレベル47件、応用基礎レベル40件でした。件数は大学・短大・高専の教育プログラム単位で、大学の数ではありません。プログラミングを必修にする制度でもありません。

道具として使う利点(自動化できるなど)は、自動化したい作業がある場合に限って生きます。作業がなければ、利点は「あるかもしれない」にとどまります。

(出典: IPA「デジタルスキル標準 ver.2.0」2026年4月/文部科学省「令和8年度『数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度』の認定・選定結果をお知らせします」2026年8月28日)

あなたの出発点:高校で「情報Ⅰ」を学んだ世代か

2022年(令和4年)4月1日以降に高校の第1学年に入学した生徒から、平成30年告示の高等学校学習指導要領が適用されています。この指導要領で、共通必履修科目「情報Ⅰ」が新設され、全ての生徒がプログラミングやネットワーク、データベースの基礎等について学習します。

大学生の学年に当てはめると、次のとおりです。

条件「情報Ⅰ」が高校の必履修になった世代か
標準の3年で高校を卒業し、浪人せず現役で大学に進学した人2026年度に大学2年生以下なら、新課程の履修者(編集部の算出)
浪人・留年・編入などで入学した人、単位制などの人入学年が基準なので、この目安は当てはまらない。自分が高校に入学した年で確かめる

この表は算出値で、前提を満たす人に限った目安です。2年生以下の全員が履修済みだという意味ではありません。また、科目で学ぶ内容の範囲を示すだけで、習得の深さや大学入学時点の技能は分かりません。「大学で初めて触れる」と決めつけず、「高校で触れた内容に、自分は何を足すか」と問いを置き換えるほうが、判断しやすくなります。

(出典: 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」告示の附則、同「高等学校学習指導要領 情報科関係資料」。学年への当てはめは編集部算出)

あなたの状況ならどれを選ぶか

文系か理系かでは分けません。分かれるのは、3つの「必要」のうち、どれが自分に当てはまるかです。実装力を求めるのは、職業としてコードを書く場合だけです。

自分の状況選ぶ「必要」今やること
IT・エンジニアを目指している職業としてコードを書く専門の学びに時間を割く。ほかの経験との取り合いを見て、いつ始めるかを決める
IT 以外で働くが、IT 部門と関わりそうどの仕事でも要る基礎知識プログラミング的思考と、指示の考え方を知る。コードを書く学習に大きな時間は割かない
卒論・研究・日々の作業を自動化したい自分の作業の道具自動化したい作業を1つ決め、その作業ができる分だけ学ぶ
まだ何も決まっていないどの仕事でも要る基礎知識の水準プログラミング的思考と指示の考え方を押さえる。今コードを書く学習に大きな時間を割く判断は、急がなくてよい

最後の行の人は、自動化したい作業や志望が決まった時点で、この表をもう一度見直してください。状況が変われば、選ぶ「必要」も変わります。

この表の分け方は、公的な基準ではなく、編集部の整理です。

AI がコードを書く時代に、それでも学ぶ意味はあるか

ここは編集部の整理です。AI が書く量は増えても、何を頼むかという指示の考え方と、出てきたものが目的に合うかを読んで判断する側は、人に残ると考えます。全員向けの水準の節で見たとおり、DSS-L の水準には「コンピュータへの指示の考え方」が入っています。ただし、これは水準に指示の考え方が含まれているという事実であり、AI の影響を示す根拠ではありません。

職業として選ぶ場合の雇用の現在地は、研究が割れています。

  • 米国(ADP の給与データ、2026年6月まで): AI 曝露度の高い職業(例:ソフトウェア開発者)に就く22〜25歳の雇用は、低曝露の同年代に歩調を合わせた場合より19%低い水準です(2026年8月版)。経験者に同様の差はありません。著者は因果の推定ではなく早期の記述的な指標だと留保しています。同じ研究は、経済全体にわたる広範な雇用の置き換えの証拠は見つからなかったとも述べています。
  • スウェーデン: 同じ企業内で、曝露度の高い職業の22〜25歳の雇用は低曝露の職業より5.5%減り、50歳超は1.3%増えました(厚生労働省が紹介した2026年の研究)。
  • デンマーク: AI 導入企業と非導入企業の比較で、総雇用者数や若者の雇用等について、統計的に有意な影響は確認されていません(同、2025年の研究)。

厚生労働省は、雇用が大規模に代替されているわけではないと評価しています。これは測定値ではなく評価です。米国の結果は、プログラミングを学ぶ学生の就職率を測ったものでもありません。「エンジニアは安泰」とも「終わり」とも言い切れない、というのが現在地です。

職業として選ぶかを考える人は、AI で若年層の雇用はどう変わったか(予測と実際の統計の読み分け)で、予測と統計の違いを確認できます。

(出典: Stanford Digital Economy Lab「Canaries in the Coal Mine? Six Facts about the Recent Employment Effects of Artificial Intelligence」2026年8月12日版/厚生労働省「令和8年版 労働経済の分析」2026年9月/IPA「デジタルスキル標準 ver.2.0」2026年4月)

意味がなくなる学び方

学んでも続かなかったり、使いどころがなかったりするのは、次のような学び方です。

  • 目的がない: 3つの「必要」のどれにも当てはまらないまま始めると、何をもって学び終えたのか決められません。
  • 手を動かさない: 読んで理解した気になるだけで、自分の作業に当てはめない。
  • 「有利になる」と言われたからだけ: この記事では、プログラミングが就活で有利になるかを示す公的な統計を確認できませんでした。「有利」という主張は、判断の根拠にしにくいものです。

代わりに、判断軸を3つ置いてください。目的(どの「必要」か)、時間(大学生活の中で、ほかの経験と取り合いにならないか)、代替手段(AI や詳しい人に頼むという選択肢があるか)です。

学習時間の目安や挫折率の数字は、この記事では扱いません。学び方・教材・言語選び・スクール・資格・アルバイトも扱いません。

次の判断:小さな試行で確かめる

自分の「必要」を1つ決めたら、次は試して確かめます。

身近な作業を1つ選んで AI に頼み、出てきたものを読んで確かめるのが、試行の一例です。読んで目的に合うか判断できるかどうかが、自分の水準を知る手がかりになります。職業としてコードを書く人は専門の学びへ、基礎知識の人は考え方の確認へ、道具の人はその作業ができる分だけ学ぶ方向へ進みます。

何から学ぶかの入口は、まず身近な作業を1つ決めることです。学び方・教材・言語選びは、この記事では扱いません。

次にやること

  1. STEP 1「AIで仕事はどう変わる?」を読む職業として選ぶ前に、予測と実際の統計の違いを確認する

出典

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