賃貸の初期費用の内訳は?敷金・礼金・仲介手数料などの意味と、家賃の何ヶ月分かの見方
賃貸の初期費用は、「預け金(返る可能性があるお金)」「返らない一時金」「仲介の報酬」「前払いの家賃」「付帯の費用」に分けると読めます。家賃の何ヶ月分かは一律ではなく、どの項目があるかで幅が出ます。見積書の名称が違っても、契約内容で性質が決まります。
このページは、民間の賃貸住宅(居住用)を借りるときに、契約の際に払う費用の意味を整理します。UR・公社・社宅、更新料は扱いません。退去時の精算や原状回復の負担は、別のページ(引っ越し前後のチェックリスト)に任せます。ガイドラインや事例集の記述は一般的な整理で、標準契約書はひな形です。個別の契約の解釈は、契約書と不動産会社・管理会社への確認を前提にしてください。
最終更新日: 編集:RAXUS Link編集部
この記事で分かること
- 1初期費用の項目は「返る可能性・返らない・報酬・前払い家賃・付帯費用」の性質で読み分ける
- 2敷金は債務を控除した残額が返る。仲介手数料の原則は借主0.55ヶ月分以内など、名称でなく制度と契約内容で決まる
- 3家賃の何ヶ月分かは幅を持つ。見積書では項目ごとに契約条件か、承諾はあるかを確かめる
初期費用の項目一覧|何のお金で、誰に払うか
払い先は、出典に書かれている項目だけ載せています。ほかは見積書で確認してください。
| 項目 | 何のお金か | 払い先 | 返る可能性 | 詳細 |
|---|---|---|---|---|
| 敷金 | 借主の債務を担保するために預けるお金 | 貸主 | 債務を控除した残額が返る | 次の節 |
| 礼金 | 返さないお金。契約条件として合意すれば払う | 見積書で確認 | 返らない | 次の節 |
| 仲介手数料 | 仲介した宅建業者への報酬(成功報酬) | 仲介した宅建業者 | 契約が成立すると請求権が発生する成功報酬 | 3つ目の節 |
| 前家賃・日割り家賃 | 家賃の前払い | 見積書で確認 | 家賃の性質 | 4つ目の節 |
| 保証料 | 保証会社の利用が契約条件のときに払う | 保証会社 | 見積書で確認 | 5つ目の節 |
| 火災保険料 | 加入が契約条件のときに払う | 見積書で確認 | 見積書で確認 | 5つ目の節 |
| 鍵交換など | 入居時の負担を定めた公的基準は未確認。契約書の特約の記載を確認 | 見積書で確認 | 見積書で確認 | 5つ目の節 |
国土交通省の相談対応事例集は、契約時の一時金を3パターンに整理しています。借主の債務不履行がなければ全額返るもの(敷金)、借主に返さないもの(礼金、権利金等)、一定の額を控除して残りを返すもの(償却、敷引)です。名称ではなく、契約内容を確認することが前提です。
出典:国土交通省(賃貸借トラブルに係る相談対応研究会)「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改訂版)」令和4年3月、民法第622条の2、宅地建物取引業法第46条(2026-10-31確認)
敷金と礼金の違い|返る可能性があるお金と、返らないお金
思い込み: 「敷金は全額返る」「名前で性質が決まる」。実際は次のとおりです。
敷金は、民法622条の2で「いかなる名目によるかを問わず」賃借人が賃貸人に交付する金銭で、債務を担保する目的のものと定められています。賃貸借が終わって明渡しを受けたとき、貸主は敷金から債務額を控除した残額を返します。控除の対象は、賃料の滞納など、賃貸借に基づく借主の金銭債務です。借主の側から、敷金を家賃に充てるよう請求することはできません。
礼金は、借主に返さないお金です。事例集は、一時金の支払いが契約条件となっており、これを合意した場合には支払う必要があるとしています。契約条件になっていない場合の扱いは、事例集に記載がありません。
名称にかかわらず、一定額を控除して残りを返す契約もあります。敷引(償却)です。事例集は、敷引特約は西日本に多くみられると言われているとしています。最高裁(平成23年3月24日)は、敷引金の額が通常損耗等の補修費用として通常想定される額、賃料額、礼金等の一時金の有無などに照らして高額に過ぎると評価すべき場合は、特段の事情がない限り、消費者契約法10条により無効になるという規範を示しました。そのうえで、その事案の特約は無効とはいえないと判断しています。自分の契約の特約が有効かどうかは、このページでは判断しません。
| パターン | 名称の例 | 借主への返り方 |
|---|---|---|
| 返るもの | 敷金 | 債務不履行がなければ全額返る |
| 返らないもの | 礼金、権利金など | 返らない |
| 一定額を控除するもの | 償却、敷引 | 控除した残りを返す |
礼金を取る理由と地域差は、国土交通省の令和3年10月のアンケート(事例集の参考資料として掲載)に出ています。現在の相場ではなく、当時の管理会社への調査です。母数が違うので、別々に読んでください。
- 礼金を徴収する主な理由(有効回答138社・複数回答): 「損耗を補修するための財源」39.1%、「長年の慣習」18.8%、「一時金収入として見込んでいる」18.1%
- 礼金を徴収している割合と平均額(有効回答217社。全国・東京・大阪の内訳の社数は未記載):
管理会社が回答した、典型的な賃料帯の賃貸借契約での値です(個別の物件の相場ではありません)。
| 地域 | 徴収している割合 | 平均額 |
|---|---|---|
| 全国 | 61.1% | 月額賃料の1.1ヶ月分 |
| 東京 | 86.0% | 月額賃料の1.0ヶ月分 |
| 大阪 | 76.9% | 月額賃料の1.3ヶ月分 |
出典:事例集(再改訂版)(参考2〜4、Q2-2の判例の項。原調査は未取得)、民法第622条の2(2026-10-31確認)
敷金礼金なしの物件でも、退去時の精算が別になることがあります。国民生活センターには、家賃5万円・敷金礼金0円の1LDKに2年住んだ後、原状回復費用の請求が合計10万円を超えたという相談が1件載っています(2022年4月受付。契約書にクリーニングの特約あり)。1件の事例で、一般化はできません。出典:国民生活センター「賃貸住宅の「原状回復」トラブルにご注意」令和5年2月1日
敷金が実際にいくら返るかは、退去時の負担区分で決まります。入居前に知っておくには、退去時の費用負担(原状回復)を確認するを見てください。
仲介手数料の上限|賃料1ヶ月分が当たり前ではない
思い込み: 「仲介手数料は賃料1ヶ月分が当たり前」。実際は次のとおりです。
宅建業者は、国土交通大臣の定める額を超えて報酬を受けられません(宅建業法46条)。居住用の賃貸借の原則は、貸主・借主それぞれから賃料の0.55ヶ月分(税込)以内で、合計1.1ヶ月分以内です。
| 場合 | 借主から受けられる額 |
|---|---|
| 原則 | 賃料の0.55ヶ月分以内(税込) |
| 依頼者の承諾がある場合 | 0.55ヶ月分を超えてもよい。ただし貸主分と合計で1.1ヶ月分を超えない範囲 |
事例集は、借主1ヶ月分と貸主0.1ヶ月分でもよい例を挙げています。
仲介手数料は、賃貸借契約が成立したときに請求権が発生する成功報酬です。事前に媒介契約で合意した内容によります。
国土交通省の令和7年度の調査(三大都市圏・民間賃貸住宅・回収数590)では、仲介手数料があった世帯が48.0%、なしが37.1%、無回答が14.9%でした。この割合が借主の払った分かは、調査票上は断定できません。「仲介手数料を払わずに済む」「交渉で無くせる」の根拠にはしないでください。
出典:国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」、事例集(再改訂版)(令和4年3月時点の記述)、宅地建物取引業法第46条、国土交通省住宅局「令和7年度 住宅市場動向調査報告書」令和8年7月p.317(2026-10-31確認)
前家賃・日割り家賃|契約の開始日で変わる家賃の前払い
思い込み: 「家賃は入居した日から」。実際は、家賃の支払義務は基本的に契約期間の開始日から生じます。入居したかどうかは問いません。入居できない状態なら、入居可能日が始期になります(国土交通省の事例集)。
契約時に払う日割り家賃や前家賃の額は、契約期間の開始日と、契約書に書かれた家賃の支払時期で決まります。日割りの分母は契約によります。国土交通省の標準契約書は、日割りの分母を1か月30日とする考え方です。個別の契約が同じとは限らないので、自分の契約書の賃料の条を見てください。
「前家賃は翌月分」といった定義は、このページが使う公的資料に記載がないため、断定しません。契約書の賃料・支払時期の条と、見積書の内訳で確かめてください。
契約が成立する前に支払った申込金は、預かり金として返還を請求できます。成立した後の入居前キャンセルでは、返金されない例があります。国民生活センターの相談事例(2021年1月受付)では、契約書に署名して支払いをした後に入居前の解約を申し出たところ、支払った約18万円(仲介手数料と敷金1か月分を含む)のうち、返還できると言われたのは清掃費用2万円のみでした。契約書には解約時の違約金として家賃1か月分の記載がありました。1件の事例で、一般化はできません。
出典:事例集(再改訂版)、国土交通省「賃貸住宅標準契約書(改訂版)解説コメント」令和6年12月改訂、国民生活センター「新しいお部屋で新生活!「賃貸借契約」を理解して、トラブルを防ごう!!」令和4年3月3日(2026-10-31確認)
保証料・火災保険料・鍵交換など付帯費用|契約条件かどうかで見る
思い込み: 「法律で決まっているから払う」。実際は、火災保険等(住宅総合保険、火災保険、借家人賠償責任保険)の加入は、法令で強制されていません。契約条件になっている場合は、加入が前提になります。
保証会社は、連帯保証人を確保することが難しいこともあり、利用するケースがあります。保証会社との契約が契約条件のときは必要で、借主は保証会社に保証料を支払います。保証料と火災保険料の金額・月数は、国土交通省の資料に記載がないため、このページでは書きません。
| 項目 | 契約条件のとき | 契約条件でないとき |
|---|---|---|
| 火災保険等 | 加入が前提 | 法令で強制されていない。加入するかを不動産会社に確かめる |
| 保証会社 | 利用が必要で、保証料は借主が保証会社に払う | 利用するかを不動産会社に確かめる |
| 鍵交換など | 契約書の特約の記載を確認 | 契約書の特約の記載を確認 |
入居時の鍵交換や消毒などの費用の負担を定めた公的な基準は、確認できていません。見積書にあれば、契約書の特約の記載を確かめてください。なお、退去時の鍵の取り替えは、借主の破損・紛失がなければ貸主負担が妥当、というのが国土交通省ガイドラインの考え方です。これは退去時の話で、入居時とは別です。
出典:事例集(再改訂版)(2026-10-31確認)
総額は家賃の何ヶ月分?|目安が幅を持つ理由
思い込み: 「初期費用は家賃の○ヶ月分の一律の額」。実際は幅があります。
国土交通省の住まリテは、賃貸の入居時に用意しておく費用の目安を、家賃の5〜7か月分としています。「地域差はあります」との注記つきで、算定根拠の記載はありません。契約時の初期費用の総額を調べた統計ではないので、「初期費用の相場」とは言い換えません。
実際の総額は、どの項目があるかで決まります。国土交通省の令和7年度の調査(民間賃貸住宅・三大都市圏・回収数590世帯・令和7年9月1日〜12月9日・訪問留め置き)では、項目ごとの有無は次のとおりでした。全国値ではありません。
| 項目 | あり | なし | 無回答 |
|---|---|---|---|
| 敷金/保証金 | 51.9% | 37.6% | 10.5% |
| 礼金 | 43.1% | 45.8% | 11.2% |
| 仲介手数料 | 48.0% | 37.1% | 14.9% |
| その他費用 | 15.6% | 68.0% | 16.4% |
「その他費用」は、家賃・共益費・敷金/保証金・礼金・仲介手数料・更新手数料以外の費用です。付帯費用の割合ではありません。礼金「あり」は、令和3〜7年度で45.9%、44.8%、38.3%、42.6%、43.1%と動いており、1年分だけでは傾向と言えません。月数の分布や平均額は、母数が公表されていないため載せません。
自分の見積書は、項目ごとに「あり・なし」を数え、最初の表に当てはめて読んでください。
出典:国土交通省「住まいにはどんな費用がかかる?|住まリテ」、国土交通省住宅局「令和7年度 住宅市場動向調査報告書」令和8年7月p.10・p.315〜319(2026-10-31確認)
見積書を受け取ったら確かめること
次の表は、編集部が作った確認用のもので、公式の様式ではありません。「未確認なら」の欄は、契約前に書面か担当者の回答で確かめる、という意味です。
| 確認対象 | 相手への質問 | 根拠書類 | 未確認なら |
|---|---|---|---|
| 礼金・保証料・火災保険料などが契約条件か | この費用は契約条件ですか。任意ですか | 契約書(特約を含む) | 契約前に書面か担当者の回答で確かめる |
| 仲介手数料の額 | 借主側が0.55ヶ月分を超えるなら、依頼時の承諾は取っていますか | 見積書・契約書など書面 | 同上 |
| 敷金の返し方 | 控除されるのはどの債務ですか。償却や敷引はありますか | 契約書(特約を含む) | 同上 |
| 日割り家賃の計算 | 契約期間の開始日はいつで、日割りの日数はどう数えますか | 契約書(特約を含む) | 同上 |
| 成立後のキャンセル | 契約成立後に入居前に解約した場合、返金はありますか | 契約書(特約を含む) | 同上 |
初期費用を抑える方法(礼金なしの物件、フリーレント、交渉)は、別の判断になります。このページでは名前を挙げるだけで、効果や有無は書きません。
次にやること
出典
- 国土交通省「住まいにはどんな費用がかかる?|住まリテ」
- 国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」
- 民法(明治29年法律第89号)第622条の2(e-Gov法令検索 API 経由)
- 宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第46条(e-Gov法令検索 API 経由)
- 賃貸借トラブルに係る相談対応研究会(国土交通省)「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改訂版)」令和4年3月
- 国土交通省「賃貸住宅標準契約書(改訂版)解説コメント」令和6年12月改訂
- 国土交通省住宅局「令和7年度 住宅市場動向調査報告書」令和8年7月
- 国民生活センター「住み始める時から、「いつか出ていく時」に備えておこう!―賃貸住宅の「原状回復」トラブルにご注意―」令和5年2月1日
- 国民生活センター「【若者向け注意喚起シリーズ<No.10>】新しいお部屋で新生活!「賃貸借契約」を理解して、トラブルを防ごう!!」令和4年3月3日
