このページの要点

神奈川県に個人留学への費用補助はなく、使えるのは市区町村・民間財団・国の3つです。

  • 県の学費支援ページ(2026年10月5日更新)の掲載10制度に、海外留学費用の補助はない。県の事業はメリーランド州へ約8日間・台湾新北市へ4日間の短期派遣
  • 留学費用そのものを補助するのは横浜市の最大150万円/20万円と、はまぎん財団の最大300万円(2名程度)
  • 横浜市民以外は、市町の短期派遣(公式に実額が分かるのは平塚市18万円・鎌倉市4万円・横須賀市は航空運賃を市負担)と国のトビタテが現実的な入口

神奈川県の高校生留学支援を探すと、県のページには行き当たりません。県の学費支援ページに並ぶのは就学支援金や奨学給付金で、海外留学の費用を補助する制度は掲載されていないためです。県が実施しているのはメリーランド州へ約8日間、台湾・新北市へ4日間という短期の派遣で、個人の留学費用を補助する事業ではありません。留学費用そのものに充てられるのは、横浜市の「はまっこ留学support」、県内在住または在籍が条件のはまぎん財団の奨学金、そして国のトビタテです。つまり結論は、お住まいの市区町村と在籍校でほぼ決まります。

【結論】神奈川県の高校生が使える留学支援は4系統

POINT

「県の制度」を探すのをやめて、①横浜市の補助 ②はまぎん財団の奨学金 ③お住まいの市町の短期派遣 ④国の制度、の4つを上から順に当てはめるのが最短です。

神奈川県の高校生が留学費用の支援を受けられるかどうかは、「神奈川県民かどうか」ではなく「どの市区町村に住んでいるか」「どの高校に在籍しているか」でほぼ決まります。まず全体像を一枚で見てください。金額の桁が制度によってまったく違うことが分かります。

神奈川県の高校生が使える留学支援の全体像(すべて2026年11月4日に各実施主体の公式ページで確認)

系統制度の例支援の形上限・規模対象になる人
① 市区町村の留学費用補助横浜市「はまっこ留学support」費用の一部を補助(給付)長期 補助対象経費の2分の1以内・上限150万円で25名程度/短期 上限20万円で75名程度横浜市内在住または市内在学の高校生
② 民間財団の留学奨学金はまぎん産業文化振興財団「Voyage」返済不要の給付1人につき最大300万円・2名程度県内在住、または県外在住で県内在籍の生徒(中学3年生も応募可)
③ 市町の短期派遣事業横須賀市・平塚市・鎌倉市・三浦市など9市町市が企画する短期派遣(渡航費を市が負担する例と、参加者負担がある例の両方。費用の補助ではない)公式に人数が分かるのは横須賀市8名・平塚市10名以内・鎌倉市9名・三浦市8名。藤沢市は2025年に青少年29名。期間は4日〜約2週間その市町に住民票がある(または在学する)生徒。対象学年は市ごとに違う(座間市は小6〜高2、藤沢市・大和市は公式表記が「青少年」のみ)
④ 国の制度トビタテ!留学JAPAN 高校生等(第12期)月額奨学金+留学準備金全国で600名・月額12万または16万円+準備金15万または25万円全国の高校生等(住所要件なし)
(参考)県の事業高校生国際交流支援事業(メリーランド州・台湾新北市)教育特使としての派遣令和8年3月はメリーランド11名・新北市6名。メリーランドは例年3月に約8日間県内高校生(国内での書類選考と面接)。ただしメリーランド派遣は県の事業ページでは「県立高校生」と表記されている

出典:横浜市は同市の募集要項と記者発表(当サイトの整理は横浜市の留学支援の倍率)、はまぎん財団は同財団「高校生向け海外留学奨学金 Voyage」第5回の募集ページ、トビタテは文部科学省・日本学生支援機構の第12期募集に関する報道発表、県の事業は神奈川県教育委員会「令和7年度 高校生国際交流支援事業」(2026年9月28日更新)。金額・人数・時期は年度ごとに変わるため、申し込む年度の要項を必ずご自身で確認してください。

神奈川県に「個人の留学への費用補助」はない——公式資料で確認した構造

POINT

県の学費支援ページの掲載10制度に海外留学費用の補助はなく、県が集約した市町村制度一覧PDFの33制度にも1件もありません。見つからないのは探し方のせいではありません。

最初に、多くのご家庭がつまずくところをはっきりさせます。神奈川県の「就学支援制度」のページ(2026年10月5日更新)に掲載されているのは、高等学校等就学支援金、高校生等・新修学支援金、学び直し支援金、神奈川県高校生等奨学給付金、神奈川県高等学校奨学金、母子父子寡婦福祉資金、生活福祉資金、国の教育ローン、交通遺児育英会奨学金、そして市町村の制度の10項目です。このなかに海外留学の費用を補助する制度はありません。私立高校生向けの学費支援のページにも、留学費用の助成という項目はありませんでした。

さらに決定的なのが、県が市町村の制度を集約して公開している一覧資料です。掲載されている33の制度はすべて奨学金・就学支援・通学費の補助で、海外留学の費用を助成するものは1件も含まれていません。横浜市の制度も、この一覧には載っていません。県の資料だけを頼りに探すと、県内で最も金額の大きい制度を取りこぼすことになります。

では県は何もしていないのか、というとそうではありません。県教育委員会は「高校生国際交流支援事業」として、友好交流地域である米国メリーランド州と台湾・新北市へ高校生を教育特使として派遣しています。令和8年3月はメリーランド州へ11名、新北市へ6名でした。メリーランド州派遣は平成17年度に始まり、累計130名以上。例年3月に約8日間で、現地の高校に4日ほど通い、州政府を表敬訪問します。選抜は国内での書類選考と面接です。

ここが大事な点です。この事業は「個人の留学費用を補助する制度」ではなく、県が企画した短期の派遣プログラムに選ばれて参加するものです。1年間の留学を考えているご家庭が、県に申請して費用の一部を受け取る、という使い方はできません。しかも規模は限られています。県は寄附を募って派遣人数を10名から14名へ増やす計画を掲げましたが、寄附総額は359,000円(募集金額200万円)で募集を終了しています。県自身が「費用の面などで10人の生徒しか派遣できていない現状があります」と書いている事業です。

避けたい

「神奈川県 留学 奨学金」で検索して出てきた記事の制度名を、そのまま県に問い合わせる

こうすればOK

県のページに留学費用の補助がないことを前提に、横浜市・はまぎん財団・お住まいの市町・トビタテの4つを個別に確認する。県への問い合わせは、県立高校の派遣事業について聞くときだけに絞る

避けたい

県の「市町村の制度一覧」を見て、留学の補助はないと結論づける

こうすればOK

その一覧は奨学金・就学支援・通学費補助のみで、横浜市の留学補助も載っていない。市区町村の公式サイトで「国際交流」「姉妹都市」「留学」を直接探す

避けたい

「かながわ国際交流財団の高校派遣事業」を留学の奨学金だと思って申し込もうとする

こうすればOK

同財団の高校派遣事業は、県内の高校へ講師を派遣して国際教育を支援する事業。生徒を海外へ派遣したり留学費用を助成するものではない

確認ポイント:私立高校生向けに、県(私学振興課)や私学の団体が留学費用を助成する制度は、2026年11月4日時点で公式サイト上に見当たりませんでした。ただし「公開されていない」ことと「存在しない」ことは別です。私立高校に在籍している場合は、学校の進路指導・国際交流の担当に「校内で案内される留学の助成はあるか」を必ず確認してください。東京都のように私学の財団が独自の助成を持つ例もあります(東京都の高校生留学支援)。

お住まいの市区町村で結論が100万円単位で変わる

POINT

留学費用そのものを補助しているのは横浜市だけです。9市町にあるのは「市が企画した短期の派遣事業」で、別物として考える必要があります。

県内の市区町村を公式ページで一つずつ確認すると、はっきりした分かれ方が見えてきます。制度を4つの型に分けて整理しました。ご自身の市区町村がどこに入るかを先に確認してください。

神奈川県内の市区町村の高校生向け海外事業(2026年11月4日に各自治体の公式ページで確認。自己負担は公式に実額の記載があるものだけを掲載)

型自治体内容期間・人数生徒の費用負担
留学費用を補助横浜市はまっこ留学support。長期は補助対象経費の2分の1以内で上限150万円、短期は上限20万円長期90日以上365日以下で25名程度/短期75名程度補助の残りが自己負担。申請は令和8年5月8日〜6月7日
短期派遣(渡航費を市が負担)横須賀市姉妹都市交換学生事業。コーパスクリスティ(米)・ブレスト(仏)・フリマントル(豪)・メッドウェイ(英)7月中旬〜8月下旬のうち約2週間・各2名で計8名航空運賃は市が負担。旅券手数料・電子渡航認証・海外旅行保険・自宅から国内空港までの交通費・個人的な費用は自己負担
短期派遣(参加者負担あり)平塚市青少年海外派遣事業。姉妹都市の米カンザス州ローレンス市令和8年7月24日〜8月3日の11日間・市内在住の中学生・高校生等10名以内参加者負担金180,000円(非課税世帯は160,000円)の予定。旅券取得費用や個人的経費は別途
短期派遣(参加者負担あり)鎌倉市青少年国際文化交流プログラム。韓国・安城市令和8年8月20日〜23日の3泊4日・市内在住または在学の高校生9名参加費40,000円(往復航空運賃と現地滞在費を含む)。旅券取得費用・自宅から国内空港までの交通費は別途
短期派遣(負担額は非公表)三浦市・座間市・秦野市・大和市・藤沢市・大磯町姉妹都市・友好都市への青少年派遣。三浦市は豪ウォーナンブール市、座間市は米スマーナ市、秦野市は米パサデナ市、大和市は韓国・光明市、藤沢市は中国・昆明市、大磯町は米ラシン市三浦市は令和7年8月に派遣生8名(高校生4・中学生4)、秦野市は2026年1月に中高生4名を含む訪問団8名。座間市は3年1サイクルで令和9年度が派遣年公式ページに記載がないため本記事では金額を書きません。各市町へ直接確認が必要
終了・見合わせ厚木市・小田原市・葉山町厚木市の高校生短期留学「FLY TO NZ PROJECT」は令和8年度の事業見直しで終了。小田原市の中高生相互派遣「ときめき国際学校」は令和8年度現在実施を見合わせ。葉山町は平成21年に交換留学が中止され、姉妹都市協定も令和5年12月14日に解消——
確認できず川崎市・相模原市・茅ヶ崎市・海老名市・綾瀬市・逗子市・南足柄市・伊勢原市・寒川町・開成町国際交流のページを確認したが、高校生の海外留学・海外派遣への費用補助は見当たらない(茅ヶ崎市の海外派遣は小学生対象、逗子市の奨学金は大学生・大学院生対象)——

1年分の留学費用を補助してもらえるのは横浜市だけ

この表から読み取っていただきたいことが3つあります。第一に、1年間の留学費用を補助してもらえるのは、県内では横浜市民(または横浜市内の高校に通う生徒)だけです。1年の高校留学はおよそ200〜600万円かかるため(高校留学の費用)、上限150万円の補助が出るか出ないかは家計への影響が決定的に違います。

9市町の「短期派遣」は留学費用の補助ではない

第二に、横浜市以外の9市町にあるのは「留学の補助」ではなく「市が企画した短期派遣」です。費用の持ち方は市によって違い、横須賀市は航空運賃を市が負担しますが、平塚市は参加者負担金180,000円(非課税世帯は160,000円)、鎌倉市は参加費40,000円です。共通しているのは、行き先・期間・時期をすべて市が決めることです。お子さんが「アメリカの高校に1年通いたい」と考えている場合、横須賀市の2週間の交換学生事業はその願いを叶える制度ではありません。ここを混同したまま申し込むと、選ばれても目的がずれます。短期の渡航そのものには十分な意味がありますが、1〜2週間のプログラム料金は15〜45万円が目安で(高校生の短期留学の費用)、1年の留学とは費用も得られるものも別物です。

近年、3件の事業が終了・見合わせ・協定解消になっている

第三に、この分野は縮んでいます。厚木市は令和8年度の事業見直しで高校生短期留学プログラム「FLY TO NZ PROJECT」を終了し、小田原市は中高生の相互派遣「ときめき国際学校」を令和8年度現在実施を見合わせています。葉山町は平成21年の新型インフルエンザによる中止以降、交換留学が再開されないまま、姉妹都市協定そのものが令和5年12月14日に解消されました。いずれも各自治体の公式ページに書かれていることです。「去年の記事に載っていたから今年もあるはず」という前提は、神奈川県では通用しません。制度を見つけたら、必ずその年度の募集ページで生きているかを確認してください。

確認ポイント:大磯町の高校生ホームステイについては、根拠となる町の公式ページの更新日が2013年1月28日で、現在も隔年で実施されているかを確認できませんでした。秦野市の青少年訪問団も、実施主体は秦野パサデナ友好協会(事務局が市の文化振興課)で、現行の募集要項は市の公式サイトで確認できていません。三浦市・座間市・秦野市・大和市・藤沢市の参加者負担額、および藤沢市・大和市の対象に高校生が含まれるか(公式表記は「青少年」のみ)も公式ページでは分かりません。該当する市町にお住まいの場合は、担当課に電話で確認するのが確実です。

はまぎん財団Voyage:県内在住・在籍なら最大300万円(2名程度)

POINT

神奈川県の高校生だけが使える最大の制度です。金額は最大300万円の給付ですが、枠は2名程度。評定平均3.5以上と世帯年収の上限があり、年収の上限は世帯人数で変わります。

公益財団法人はまぎん産業文化振興財団の「高校生向け海外留学奨学金 Voyage」は、神奈川県に住んでいる、または県内の高校等に在籍している生徒が応募できる給付型の奨学金です。第5回(2026年度)の募集期間は2026年7月1日から9月30日まででした。本記事の公開時点で第5回の募集は終了しており、第6回(2027年度)については財団が「内容が確定次第、ご案内いたします」としています。来年の応募を考えるご家庭は、第5回の条件を目安に準備を始める形になります。

はまぎん財団「Voyage」第5回(2026年度)の要件(同財団公式ページ・2026年11月4日確認)

項目内容
支給額1人につき最大300万円(給付・返済不要)
募集人数2名程度
居住・在籍要件2026年4月1日時点で県内に在住し県内外の高校等に在籍、または県外に在住して県内の高校等に在籍。加えて出発日および帰国日において県内在住または県内在学であること
学年中学3年生も応募可(その場合は高校等の在学証明書の写し等を別途確認)
成績要件履修した全科目の評定平均値が3.5以上
対象となる留学外国における正規の後期中等教育機関(日本の高等学校に相当するもの)への概ね1年間の留学
留学出発時期2027年7月1日から2028年3月31日までの間に出発するもの
選考外部審査委員等による書類審査と、書類審査通過者のみの面接審査
日程募集2026年7月1日〜9月30日/採否通知2026年11月下旬/交付式2026年12月14日(予定)

世帯年収の上限は「1,250万円」の一律ではない

ここで注意していただきたいのが世帯年収の要件です。インターネット上の解説記事では「年収1,250万円以下」という単一の数字で紹介されていることがありますが、公式の要件は世帯人数ごとに金額が違います。しかも金額は世帯人数の順に単純に並んでいません(2人世帯1,166万円、3人世帯1,113万円、4人世帯1,250万円、5人以上1,334万円)。必ずご自身の世帯人数の行を見てください。また給与所得者以外の世帯(自営業など)は、同じ世帯人数の給与所得者世帯より230万〜380万円ほど低い基準です。単一の数字だけで判断すると、応募できるつもりが対象外だった、あるいはその逆、という事故が起きます。

Voyage第5回の世帯年収の上限(同財団公式ページの記載。世帯人数別)

世帯人数給与所得者世帯給与所得者以外の世帯
2名1,166万円893万円
3名1,113万円879万円
4名1,250万円892万円
5名以上1,334万円958万円

居住・在籍要件の作りもよく読む価値があります。「県内在住」と「県内在籍」のどちらかを満たせばよいため、県外の高校に通っている神奈川県民も、県外から神奈川県内の高校に通っている生徒も対象です。一方で、出発日と帰国日の時点でもその状態を保っている必要があります。留学中にご家族が県外へ転居する予定がある場合は、応募前に財団へ確認しておくべき点です。中学3年生の段階から応募できる設計になっていることも、準備のスケジュールに直結します。高校1年の夏に募集が始まり、出発は翌々年度という時間軸なので、志望校選びと並行して動く必要があります。

確認ポイント:Voyageの過去の採用実績(応募者数・採用者数)は財団の公式ページに記載がないため、本記事では倍率を示しません。2名程度という枠に対してどれくらいの応募があるかは公表情報からは分かりません。民間財団の奨学金をほかにも探す場合は高校生の留学奨学金・民間編に全国の制度を整理しています。

国の制度:トビタテは住所を問わない、JASSOの協定派遣は高校生が使えない

POINT

横浜市民ではないご家庭にとって、現実的な大きい選択肢は国のトビタテです。一方でJASSOの「海外留学支援制度(協定派遣)」は対象機関に高校が含まれておらず、高校生は利用できません。

住んでいる市区町村に制度がないご家庭でも、国の制度は住所を問わずに応募できます。トビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラムの高校生等対象(第12期)は、全国で600名を募集しています。コースはSTEAM探究140人、スポーツ・芸術探究120人、マイ好奇心探究210人、社会課題探究130人の4つです。支援は月額奨学金120,000円または160,000円(留学先の国・地域による。授業料は月額奨学金に含まれます)に加え、留学準備金がアジア地域150,000円、その他の地域250,000円。さらに円安・物価高騰を踏まえ、アジア地域は60,000円、その他の地域は100,000円が増額されます。家計基準を超える場合の月額は60,000円ですが、支援予定人数全体の1割程度を上限に家計基準外の生徒も採用されます。

神奈川県のご家庭にとって見逃せないのが、都道府県ごとの応援枠です。第12期の報道発表には「各都道府県からの応募者が、第一日程で15人以上の場合は第一日程の応募者の上位5人を優先して採用します」と書かれています。人口の多い神奈川県は応募が集まりやすく、この枠が機能する可能性が高い一方、県内の応募者同士の競争にもなります。申請は在籍校を通して行い、第一日程は2026年12月上旬(予定)から2027年1月21日まで、第二日程は2027年4月1日から4月21日まで。留学先での活動期間は14日以上1年以内で、留学開始は2027年7月10日から2028年3月31日の間です。全コースで新高校1年生の応募が可能です。詳しくはトビタテ!留学JAPAN高校生とトビタテの倍率で扱っています。

もうひとつ、国には学校単位で使う制度があります。文部科学省の国費高校生留学促進事業は、自治体や学校等が主催する原則10日以上1か月未満の海外派遣プログラムに参加する生徒を、都道府県を通じて支援するもので、支援金額は1人6万円、対象人数は1,700人(令和8年度予算の主要事項より)。学校単位での応募を原則としているため、ご家庭から直接申し込む制度ではありません。在籍校が使っているかどうかを学校に聞くのが唯一の入口です。全国の自治体支援と国費の関係は自治体の高校生留学支援で整理しています。

逆に、期待してはいけない制度もはっきりさせておきます。JASSOの「海外留学支援制度(協定派遣)」は、月額8万〜12万円に渡航支援金が付く手厚い制度ですが、対象は「日本の大学、大学院、短期大学、高等専門学校又は専門課程若しくは専攻科を置く専修学校」です。この列挙に高等学校・中等教育学校は含まれていません。高校生向けの奨学金一覧にJASSOの名前が並んでいることがありますが、高校生が使えるのはトビタテ側であり、協定派遣は大学進学後の選択肢です。お子さんが海外大学への進学も視野に入れているなら、この制度は数年後に効いてきます(海外大学進学とは)。

併給できるのか——重ねられる組み合わせと、重ねられない組み合わせ

POINT

「市の補助と財団の奨学金と国の制度を全部もらう」は原則できません。制度側に明文の制約があり、組み合わせ方で受け取れる総額が変わります。

どの記事も書いていない論点が併給です。保護者にとっては「結局いくら手元に入るのか」に直結します。公式に確認できる制約を並べます。

  • 横浜市のはまっこ留学supportは、他団体の奨学金と合わせて補助対象経費を超えない範囲での補助です。つまり財団の奨学金で費用がほぼ埋まっていれば、市の補助は減ります。補助額そのものも補助対象経費の2分の1以内で上限150万円という二段の上限です。
  • トビタテは、他団体の給付型奨学金等の総額が本制度の奨学金総額(留学準備金を除く)を超えないことが条件で、相手方の団体が併給を認めていない場合もあります。
  • 国費高校生留学促進事業の留学支援金とトビタテの奨学金は併給できません(トビタテ募集要項に明文)。
  • JASSOの海外留学支援制度(協定派遣)とトビタテも併給は認められません(JASSO公式に明文)。高校生には協定派遣が使えないので実際には大学以降の話です。
  • はまぎん財団Voyageの併給の可否は、応募する回の募集要項で確認してください。本記事では公式ページで確認した要件のみを記載しており、併給条件は書かれていません。

実務的な結論はこうです。「多く出る制度から順に押さえ、重ねるのではなく埋める」と考えてください。最大300万円の財団奨学金が取れればそれが主軸になり、横浜市の補助は残った経費の範囲で機能します。逆に、どの給付型も取れなかった場合に総額をどう作るかは、次の章の代替ルートの話になります。

どれくらい狭き門か——定員と応募者数で見る

POINT

公表されている応募者数があるのは横浜市だけです。令和7年度は長期82人の応募に対し補助対象者40人、短期146人に対し60人でした。財団の2名程度という枠は、これよりはるかに狭い前提で考える必要があります。

「申し込めば受かる」制度ではないことを、数字で確認しておきます。横浜市は審査結果を記者発表しているため、応募者数と補助対象者数の両方が分かります。令和7年度は長期留学で82人の応募に対して40人、短期留学で146人の応募に対して60人、合計228人の応募に対して100人が補助対象になりました。年度ごとの推移や倍率の読み方は横浜市の留学支援の倍率で詳しく扱っています。令和8年度は長期25名程度・短期75名程度へ枠が組み替えられており、長期を狙う場合の競争は前年より厳しくなる構えです。

一方で、はまぎん財団は2名程度、県のメリーランド派遣は令和8年3月で11名です。市町の短期派遣で公式に人数が分かるのは横須賀市8名・平塚市10名以内・鎌倉市9名・三浦市8名(高校生4・中学生4)で、藤沢市は2025年に青少年29名を派遣しています(座間市・大和市・大磯町は人数が公表されていません)。いずれも応募者数が公表されていないため倍率は計算できませんが、枠の絶対数が小さい制度が多いことははっきりしています。選考は書類だけでなく面接やグループワーク、筆記試験を含むものが多く(横須賀市は4月19日に筆記試験、5月17日に面接とグループワーク。平塚市は一次がグループワーク、二次が面接)、短期間で準備するのは難しい内容です。

避けたい

金額が大きい制度だけに1本勝負で応募し、落ちたら留学そのものを諦める

こうすればOK

給付型を複数(財団・市の補助・トビタテ)に出願しつつ、全部落ちた場合の資金計画を先に作っておく。合否が出る時期が制度ごとに違うため、落ちてから次を探すと出発時期に間に合わない

避けたい

「倍率が高いから無理」と、公表されていない制度まで諦める

こうすればOK

倍率が分かるのは横浜市だけ。定員が小さい制度は、要件(住所・在籍・評定・世帯年収)で先に絞られているため、要件に合致するなら応募する価値がある

申請の段取りと年間カレンダー

POINT

制度ごとに締切が春と夏に分かれ、しかも「募集の年」と「出発の年」が1年以上ずれるものがあります。高校1年の春に動き始めないと、選択肢が減ります。

神奈川県の制度でいちばん事故が起きやすいのは時間軸です。市町の短期派遣は4月から5月に募集して同じ年の夏に出発しますが、はまぎん財団は夏に募集して翌々年度に出発します。トビタテは冬に申請して翌年の夏以降に出発します。1枚のカレンダーに並べると、どの学年で何をすべきかが見えてきます。

神奈川県の高校生が使える制度の年間スケジュール(令和8年度・第5回・第12期の実績ベース。年度ごとに変わります)

時期動くもの出発の時期
4月上旬〜中旬横須賀市の交換学生事業(4月1日〜4月16日17:30必着、筆記試験4月19日)、平塚市の青少年海外派遣(4月1日〜4月17日17時)同年7〜8月
4月下旬〜5月中旬鎌倉市の青少年国際文化交流(4月27日〜5月17日、面接5月23日または24日)同年8月
5月上旬〜6月上旬横浜市のはまっこ留学support(令和8年5月8日10:00〜6月7日23:59。6月に書類と面接、7月中旬決定)決定後。長期は90日以上365日以下
7月〜9月はまぎん財団Voyage第5回(2026年7月1日〜9月30日。採否通知は11月下旬)2027年7月1日〜2028年3月31日
12月〜翌1月トビタテ第12期の第一日程(2026年12月上旬予定〜2027年1月21日。在籍校を通して申請)2027年7月10日〜2028年3月31日
翌4月トビタテ第12期の第二日程(2027年4月1日〜4月21日)同上

このカレンダーから導かれる段取りは次のとおりです。高校1年の4月までに在籍校へ相談を済ませておくのが、どの制度にも共通する前提になります。トビタテも国費も学校経由ですし、長期留学の単位認定を判断するのも校長です。

  1. 1在籍校に聞く(最優先)。校内で案内される留学の助成、学校が使っている国費のプログラム、留学した場合の単位認定と学年の扱いを確認する。県のFAQも問い合わせ先を「在籍している高等学校又は中等教育学校」としている。
  2. 2お住まいの市区町村の公式サイトで「国際交流」「姉妹都市」を確認する。横浜市なら留学費用の補助、他の市町なら短期派遣があるかどうか。前年度の記事ではなく今年度の募集ページを見る。
  3. 3世帯年収と評定平均を先に確認する。はまぎん財団は評定平均3.5以上と世帯人数別の年収上限、トビタテは原則として家計基準があり、横浜市は申請時に前年度の成績表(出欠の実績を含む)を求める。要件に届かない制度に時間を使わない。
  4. 4合否が出る時期を書き出し、全部落ちた場合の資金計画を同時に作る。財団は11月下旬、横浜市は7月中旬、トビタテは春。出発までに資金を確定させる必要がある。
  5. 5申請書類は本人が書く。横浜市は作文を申請者本人が作成することを求めており、どの制度も面接がある。保護者が代わりに書いたものは面接で通らない。

対象外・不採択だったときの代替ルート

POINT

給付型が取れなくても道は閉じません。期間を短くする、国の教育ローンを使う、在籍校の交流プログラムに乗る、という3つの方向があります。

ここは上位の解説記事がほとんど書かない部分です。神奈川県の制度構成を踏まえると、現実的な代替は次の3つになります。

ひとつ目は期間を組み替えることです。 1年の留学はおよそ200〜600万円ですが、1〜2週間のプログラムなら料金は15〜45万円が目安です。横浜市のはまっこ留学supportも短期(上限20万円)のほうが枠が75名程度と大きく、市町の短期派遣にも、横須賀市のように市が航空運賃を負担する例があります。「1年でなければ意味がない」と決める前に、短期で行って高校卒業後に長期を考える、という順番も選択肢に入れてください。ただし神奈川県のFAQにあるとおり、1年に満たない短期の海外経験は在籍校では欠席や休学の扱いとなり単位認定の対象にはなりません(高校留学で留年しない条件)。短期なら在籍校を離れずに済みますが、単位認定の対象にはならない(欠席・休学の扱いになる)、という理解が正確です。

ふたつ目は国の教育ローンです。 日本政策金融公庫の教育一般貸付は、海外留学資金として子ども1人につき上限450万円まで借り入れできます。金利は固定で年4.60%(令和8年11月時点の表示値で変動します)。対象は修業年限3か月以上で中学校卒業以上を対象とする外国教育施設への留学で、子どもが2人以内の世帯であれば、海外留学資金であることを理由に世帯年収の上限が990万円(所得790万円)まで緩和されます。借入である以上は返済が必要ですが、給付型の合否が出る前から審査を進められるため、資金計画の土台としては使いやすい制度です(高校留学で教育ローンは使える)。

みっつ目は在籍校の交流プログラムです。 私立高校や県立高校には、姉妹校交流や学校独自の短期研修を持つところがあります。これらは外部の公募制度ではないため検索では出てきませんが、校内で案内され、学校が主催するため費用が抑えられている場合があります。国費高校生留学促進事業も学校単位での応募が原則なので、学校が使っていれば1人6万円の支援が付きます。進路指導や国際交流の担当に聞くことが、検索で見つからない選択肢に触れる唯一の方法です。

世帯の経済状況によって使える制度が変わる場合もあります。返済不要の奨学金を優先的に探す考え方は高校生の留学奨学金ガイド、ひとり親世帯の選択肢は母子家庭の高校留学にまとめています。

保護者が見落としやすい確認ポイント

POINT

制度を取れるかどうかとは別に、「留学中に在籍校の支援がどうなるか」「単位はどうなるか」は、公式に書かれていないことが多い領域です。思い込みで進めないことが重要です。

最後に、調べても答えが出ない論点を正直に共有します。これらは「分からないまま進める」のではなく「学校と制度の窓口に確認する」べき項目です。

就学支援金と奨学給付金が留学中にどうなるかは、公式に明記されていません。 神奈川県高校生等奨学給付金の支給条件は「対象となる高校生等が高等学校等に在籍していること」で、海外留学への言及はありません。文部科学省の就学支援金の事務処理要領(令和8年4月)で確認できるのは、休学して支給停止を申し出た場合に「支給が停止された月は、支給上限期間の算定には含まない」こと、そして受給資格消滅通知が「海外留学からの帰国等により高等学校等に在籍することとなった際に」残受給期間を確認するために必要であることまでです。つまり在籍したまま1年間留学した場合に支給が続くのかどうかは、公開資料からは判断できません。在籍校の事務室に確認してください。

単位認定は校長の判断です。 神奈川県のFAQは「1年間の学習の成果が日本の在籍校の学習と同等とみなすと校長が判断した場合、最大36単位を修得することができます」と書いています。制度の補助が取れても、単位が認定されなければ留年します。逆に補助が取れなくても単位は認定されえます。この2つは別の手続きです(高校留学の単位認定を確実に受けるには)。

インターネット上の「神奈川県の制度」には、一次情報が確認できないものが混ざっています。 当サイトが上位の解説記事を実際に読んだところ、県の制度として紹介されている名称のうち、県や関係機関の公式ページで確認できないものがありました。かながわ国際交流財団の「高校派遣事業」が留学奨学金として紹介されている例もありました(実際は講師を学校へ派遣する事業です)。制度名を見つけたら、実施主体の公式ページで同じ名前の募集要項が出るかを必ず確かめてください。出てこない制度は、問い合わせても存在しません。

動き出す前の最終チェック

次の項目に「はい」と答えられれば、申請の準備に入って大丈夫です。

チェックはこの画面の中だけの表示で、保存も送信もされません。

まとめ:ご家庭が最初にやること

POINT

「神奈川県の制度を探す」から「自分の市区町村と在籍校で何が使えるかを確かめる」へ、調べ方を切り替えるのが最初の一歩です。

神奈川県の高校生留学支援は、県に個人留学への費用補助がないという構造から出発します。県の学費支援ページの掲載10制度、県が集約した市町村制度一覧の33制度に、海外留学費用の助成は含まれていません。県がやっているのはメリーランド州へ約8日間(令和8年3月20日〜27日)、台湾・新北市へ4日間(同3月16日〜19日)という短期の派遣で、令和8年3月の派遣は合計17名でした。

留学費用そのものに充てられるのは、横浜市のはまっこ留学support(長期は上限150万円で25名程度、短期は上限20万円で75名程度)、はまぎん財団のVoyage(最大300万円で2名程度・県内在住または県内在籍)、そして国のトビタテ(全国600名)です。市町の短期派遣は9市町にありますが、それは市が企画した渡航プログラムであり、1年間の留学費用の補助ではありません。しかも厚木市は令和8年度で事業を終了し、小田原市は令和8年度現在実施を見合わせ、葉山町は姉妹都市協定そのものを令和5年12月14日に解消しています。

ご家庭が最初にやることは2つです。ひとつは在籍校に相談すること。校内で案内される助成、学校の交流プログラム、留学した場合の単位認定と在籍の扱いは、学校でしか分かりません。もうひとつはお住まいの市区町村の今年度の募集ページを自分で開くこと。横浜市かどうかで結論が100万円単位で変わり、昨年あった制度が今年はないこともあります。制度を探す前に、この2つで自分の立ち位置を確定させてください。

Q.神奈川県に住んでいれば、県から留学の補助金はもらえますか?

県に個人の留学費用を補助する制度は確認できません。県の「就学支援制度」のページ(2026年10月5日更新)に掲載されている10制度はすべて国内の就学支援・奨学金で、海外留学費用の補助はありません。県が集約した市町村制度の一覧(33制度)にも含まれていません。県が実施しているのは、メリーランド州と台湾・新北市への短期派遣(教育特使派遣)で、個人の留学費用を補助するものではありません。

Q.横浜市以外に住んでいます。留学費用の補助はありますか?

県内で「留学費用の補助」を持つのは横浜市だけです。横須賀市・平塚市・鎌倉市・三浦市・座間市・秦野市・大和市・藤沢市・大磯町には、市町が企画した短期の派遣事業があります(期間は4日〜約2週間)。これは費用の補助ではなく、選ばれて参加するプログラムです。1年間の留学を考えている場合は、はまぎん財団の奨学金と国のトビタテ、そして国の教育ローンが現実的な選択肢になります。

Q.はまぎん財団の奨学金は、県外の高校に通っていても応募できますか?

できます。第5回(2026年度)の要件は「県内に在住し県内外の高校等に在籍」または「県外に在住して県内の高校等に在籍」のいずれかで、どちらか一方を満たせば対象です。ただし出発日および帰国日の時点でも県内在住または県内在学である必要があります。留学中に県外へ転居する予定がある場合は、応募前に財団へ確認してください。

Q.中学3年生でも応募できる制度はありますか?

はまぎん財団のVoyageは中学3年生も応募可能で、その場合は高校等の在学証明書の写し等を別途確認するとされています。トビタテ第12期も全コースで新高校1年生の応募が可能です。一方、横浜市のはまっこ留学supportや市町の派遣事業は高校生を対象としているものが中心です(座間市は小学6年生から高校2年生が対象)。応募する年の要項で学年の条件を確認してください。

Q.横浜市の補助とはまぎん財団の奨学金は、両方もらえますか?

重ねて満額を受け取ることはできません。横浜市の補助は、他団体の奨学金と合わせて補助対象経費を超えない範囲で交付されるため、財団の奨学金で費用が埋まっていれば市の補助は減ります。トビタテも他団体の給付型奨学金等の総額が制度の奨学金総額を超えないことが条件です。また国費高校生留学促進事業の留学支援金とトビタテは併給できません。財団側の併給条件は応募する回の募集要項で確認してください。

Q.1年間留学したら、就学支援金や奨学給付金はどうなりますか?

在籍したまま留学した場合に支給が続くかどうかは、公開されている資料からは判断できませんでした。神奈川県の奨学給付金の支給条件は「高等学校等に在籍していること」とされ、留学への言及はありません。文部科学省の事務処理要領で確認できるのは、休学して支給停止を申し出た場合に停止月は支給上限期間に算入されないこと、海外留学からの帰国時に残受給期間を確認する仕組みがあることまでです。必ず在籍校の事務室に確認してください。

Q.評定平均が3.5に届きません。ほかに方法はありますか?

評定平均3.5以上ははまぎん財団Voyageの要件です。横浜市のはまっこ留学supportは前年度の成績表(出欠の実績を含む)の提出を求めていますが、公表されている要件に評定平均の下限はありません。トビタテは探究内容と計画で評価されるコース制で、家計基準を超える生徒も1割程度を上限に採用されます。評定だけで進路が閉じるわけではないので、制度ごとの評価軸を確認して出願先を選んでください。